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ホテルのような
華やぐバターサンド

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

遡ること19世紀。江戸にいちばん近い港として開港した横浜。

石鹸、ビール、アイスクリーム、パン、新聞、ガス灯、競馬、写真など…。多くの外国文化が海を越え、横浜から日本中へと広まっていきました。

そんな横浜港のほど近くに、1947年創業の老舗洋菓子店「横浜かをり」はあります。

ブランデーに浸けたレーズンを使用した、レーズンサンドが看板商品。長く、横浜の人々に親しまれています。

そんなレーズンサンドの製造を手がける株式会社かをりが、2021年に立ち上げたブランドが「Huffnagel(フフナーゲル)」。

バターサンドをメインに、ケークも展開するパティスリーブランドです。

まず目を惹くのが、華やかなパッケージ。

プレーン、あんバター、レモン、チョコレート、セサミポテト…。どれを選ぼうか、迷ってしまう。

かをりの伝統的なレーズンサンドを大切に受け継ぎながら、レシピはフレーバーごとにアレンジしています。

今回は、赤レンガ倉庫に構えるお店のストアマネージャー、接客・販売スタッフの募集です。あわせて、横浜市金沢区の製菓工場で働く、製品開発、営業事務、品質管理、製造ラインスタッフもそれぞれ募集します。

 

横浜の海に近いエリアは、歩道が広々としている。潮風がよく通って気持ちいい。

みなとみらい線の日本大通り駅から歩くこと6分ほどで、赤レンガ倉庫へと到着。

「フラワーガーデン」という催事が開かれていて、たくさんの人が行き交っている。

中へ入ると、飲食やインテリア、生活雑貨など多種多様なお店が並ぶ。立ち止まりたい気持ちを抑えつつ、通路を抜けてフフナーゲルの店舗へ。

お店の前では、ブランドの代表の中原奈々さんが待っていてくれた。

奈々さんが「社長!」と呼ぶと、奥から旦那さんの一久さんが。

代表としての役割は、二人で分担しているんだそう。

「着実に進めるべき事務系の手続きは、社長に担ってもらっていて。私はデザインや、見せ方を整えるようなブランドづくりをしています」

「社長が会社を守るディフェンス、私はブランドをつくるオフェンス、のようなイメージです」

二人だからこそ成り立っているバランスがあるんだなあと考えていると、今日の朝、ドライヤーのタイミングが被ったことを教えてくれた。気取らない仲の良さに、安心する。

さっそく、フフナーゲルができるまでの話を聞いてみる。

横浜開港当時の1860年、横浜港の近くに日本初の西洋式ホテルが誕生。

そのホテルの跡地に建てられたのが、フフナーゲルの源流となるフレンチレストラン「かをり」だった。

深緑の蔦に包まれた建物の足元には、ホテル発祥地の碑が立っている。外国の文化も受け入れながら、横浜の地らしい食を提供してきた。

近年はレストランから洋菓子へと比重を移し、長く愛される銘菓も誕生。

なかでも看板商品として愛されているのが、レーズンサンド。

しっとりとしたクリーム、ほのかにブランデーが香るレーズン、サクサクのビスケット生地。開発時からレシピは変えていないという。

「転機はコロナ禍でした。旅行もできないし、買い物さえ難しい状況が続きましたよね。いろんな人が、体も心も疲弊していると思ったんです」

「誰かと集まることができないなら、一人で自分のことを労わってあげる、そんな豊かな時間を提供できないか、と。その一翼を担えるお菓子をつくろうと思い立ちました」

かをりの源流は、フレンチレストラン。さらに遡れば、ホテルでもあった。

たとえば、ホテルに滞在するような贅沢で豊かな時間を、お菓子で提供できないだろうか。食べるだけでなく、手に取る体験自体も演出できたら。

ホテルのアフタヌーンティー、ハイクラスの価格帯、一流のおもてなし…。さまざまなアイデアが出るなかで、2021年2月、新たなブランドとしてフフナーゲルが生まれた。

リズム感の良いブランド名は、西洋式ホテルのオーナーの名前Huffnagel(フフナーゲル)から。

「これまで横浜港には、欧米諸国から多くの人が訪れてきました。通訳として中国人も住んでいたことから、中華街がすぐ近くにできて。かをりは、さまざまな歴史や文化が混ざり合った場所にあるんです」

「もしも19世紀に建てられたホテルが現存していて、イノベーションされるなら、どんな姿になっているだろう。そう思い起こして、文化も時間も越えて新しい価値を提供するホテルを、パティスリーのブランドで表現しようと決めました」

とくにこだわったのが、10種類以上のフレーバー展開と、パッケージ。

「選ぶ愉しさがあったほうが絶対いいと思って。並んで見たときに、統一感はありつつ、味などそれぞれの個性を表現できるデザインにしました」

最初はオンライン販売のみだったものの、催事にも参加するように。少しずつ認知を拡大し、テレビに取り上げられることも増えた。

2022年には赤レンガ倉庫の店舗をオープン。

立ち上げからわずか3年。怒涛の勢いですね。

「実はつい最近、2店舗目の提案のお話もいただきました。いろいろな引き合いも重なって、今年は勝負の年になりそうです!」

「ブランドを広げていくためにも、出店には前向きに取り組んでいきたいと思っています」

出店の機会が増えているのも、ブランドの世界観への共感があってこそ。フフナーゲルはまだまだこれから成長していくところだ。

 

「自分自身が成長していきたいという思いと、ブランドの成長が私のなかで重なっていて。一緒に歩みを進めているような心地ですね」

そう話すのは、フフナーゲル店長の上野さん。

ご両親の勧めもあり、幼いころから音楽に触れ、その道へ進んでいた上野さん。

「大きな不満はないんだけれど、敷かれたレールを歩いているような気がしたんですよね。自分で選んだものに、挑戦してみたいと思いはじめて」

「心ときめくものってなんだろう?」と考えたときに浮かんだのが、お菓子やケーキ。

接客スタッフとして広尾の洋菓子店に就職。そのお店で販売される洋菓子の一部をかをりがOEMで製造していた縁もあり、フフナーゲルが催事へ初出展するとき、店頭に立つスタッフとして声がかかった。

その接客を受けた奈々さんが「一目惚れ」。後日、一緒に働きたいとオファーを受けた。

「ちょうど私が働いてたショップが、コロナ禍の影響で路面店を畳みオンラインへ移行しようとしていた時期だったんです」

「ショップも私も、新しい方向へ進むタイミングが重なって。オーナーさんにも『フフナーゲルさんのところへ行っておいで』と、快く送り出してもらえました」

現在は、店長として店舗運営をしているほか、SNSやECサイトの運営もしている。

上野さんは今後、よりブランドの内部のことを考えていく立場になってもらいたいため、これから募集するストアマネージャーにお店のことを任せていきたい。

「お店では、全体を見渡すような立ち位置です。アルバイトさんの教育もしたり、在庫やギフトボックスなど資材がなくならないよう、先回りして取ってきたり。一段高い視点でものごとを見るよう、気をつけていますね」

「目の前の作業に没頭しすぎず、まわりの気配を感じて動く。次に来る仕事を予測して段取りを立てる。そういった力が求められるので、ひとつのことにグッと集中して取り組みたい方には合わないかもしれません」

今は社員2名、アルバイト8名でお店を運営している。

繁忙期は、年末に赤レンガ倉庫で開かれるクリスマスマーケットと、ホワイトデー。

「修学旅行の中高生や、最近は海外からの観光客の方も増えてきて。立地もあり、老若男女が訪れるので、接客はとても楽しいです」

接客においては、どんなことを意識しているんだろう。

「10種類以上のフレーバーがあるので、どれを選ぶか迷われるお客さまが多いんです。それぞれのフレーバーを、自分の言葉で説明できるようにしています」

フフナーゲルは、ホテルをイメージしたブランド。親しみやすくも、特別な時間を過ごしてもらえるように。言葉遣い、聞く姿勢、ものを渡す所作、細やかなところまで気を遣っているという。

「宝石を選ぶような感覚で、お客さまに選んでほしくて。ここで買ってよかった、幸せになったって思ってもらえるように。カチッとしたマニュアルは決めていないので、正解のないなか、自分で考えて行動することが大切です」

「まだ始まったばかりのブランドです。一緒に成長していくことに、ワクワクする人がうれしいですね」

 

続いて話を聞いたのは、製品開発担当の梶谷さん。工場からオンラインで参加してくれた。

「私の主な仕事は、新商品を開発することです。新しいお菓子をつくる事と、既存のお菓子をよりよくすることですね」

「日々、新しいトレンドをリサーチしていて。工場で使えるもの、ないかな?と。毎日が取材!みたいな感じですよ(笑)」

たとえば、流行りの飲み物は、次にお菓子のフレーバーになることが多いんだとか。

「抹茶とアールグレイはもう定番ですよね。たぶん、次に流行るのは… ジャスミンじゃないかな」

なんだか、楽しそうです。

「楽しいですよ、仕事。何をすれば喜んでもらえるかを想像して、新しいものを生み出す仕事って、幸せだなって思います」

フフナーゲルのフレーバーにも、すべて1から携わっているという梶谷さん。

フレーバーに合わせて、クッキーを味付けしたり、レーズンを入れたり、入れなかったりと、細やかなこだわりがある。

「製造から梱包までほとんどが手作業なんです。使うクリームは、食感にこだわってやわらかさを調整しているので、機械に通せない。一個ずつ絞っているんです。クリームに乗せるレーズンもすべて同じ向きにするくらい、こだわっています」

かをりの工場では、自社製品だけでなく、さまざまな製品の製造をOEMで請け負っている。製造ラインのうち、フフナーゲルの割合は4割ほどで、経験のあるベテランスタッフが担当しているとのこと。

「バターサンドに使うクリームを初めてつくって食べたときは、もう衝撃でした。自分でつくったものなのに、おいしい!って。冷やしてみたら?って冷蔵したらそれもおいしくて。そういう繰り返しでバターサンドが生まれたんですよ」

じつは梶谷さん、今年9月に退職し、次のステップに進む予定。

梶谷さんは製品開発だけでなく、フフナーゲルの在庫管理、ECサイトのお客さん対応など、営業事務の役割も担っている。

これから入る人は、まずは基本的なレシピでお菓子をつくれるようにしながら、適正に応じてできることを増やしていくイメージ。

一つひとつ覚えていくことは多いけれど、すべての業務において、お菓子が届けるお客さんを想像することが大切。

どうしたらおいしくなるだろう? 品質を保つには、どんな工夫が必要だろう?

お菓子に向き合いながら、日々探求するような仕事だと思う。

 

手に取る人の、豊かな時間を演出するお菓子。

興味を持ったら一度、店舗を訪れてみてください。フフナーゲルとして大切にしたいものを、温度をもって感じられると思います。

(2024/04/11 取材 田辺宏太)

5/27(月)には、代表である中原一久さんと奈々さんをゲストに迎え、しごとバーを開催します。今年からアドバイザーとしてブランディングに携わっている、株式会社メソッドの山田遊さんもご登壇いただきます。こちらもあわせてご参加ください。

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