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パンと石のある風景

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

栃木県宇都宮市。

このまちの名産として、多くの人が思い浮かべるのは餃子かもしれません。

でも実は、おいしいパンと美しい石のまちでもあるんです。

JR宇都宮駅から車で30分弱。宇都宮市内でも北西部に位置する大谷町に、来年の春、大型ベーカリーレストランがオープンします。

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かつてのドライブインを改装し、テラスのある開放的な空間に。内装や音響など細部までこだわった店内では、栃木県産の農産物を使った料理を味わえるほか、本格的なハード系のパンも製造・販売するそうです。

この新店舗立ち上げから関わる店長候補のホールサービススタッフと、ベーカリー・レストラン両部門の調理スタッフおよび責任者候補を募集します。

現地を案内してくれたのは、運営会社であるCULTURE BANK STUDIOの代表、松本さん。

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背後に見えるのが、これから改装していくドライブインだそう。

「ここは大谷観音の参道の入り口に位置しています。ほとんどの観光の方は通る道なので、ここが明るくなればまち全体のイメージも変わるかなって」

大谷観音とは、弘法大師の作と伝えられる日本最古の石仏のこと。

古くからこの一帯で採れる「大谷石」は、やわらかく加工しやすい性質から建材として重宝されてきた。周辺には石造りの塀や住居が今でも残っており、旧帝国ホテルではエントランス部分の建材として使われたそう。

かつての大谷町には、多いときで年間100万人もの人が訪れたという。

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ところが、今からおよそ30年前に採石場の陥没事故が発生。マイナスイメージは簡単には拭えず、まちとしてもPRに悩む時期が長く続いた。

「一時は年間10万人ほどまで減ったものの、2013年ごろから再び少しずつ発信できるようになってきました。昨年は年間40万人、今年はもう少し増えていると思います」

採石場の広大な地下空間を活かした映画やPVなどの撮影、パーティーやウェディングなどイベント利用も増加。若年層からの認知度も上がってきて、県も大谷町のPRに力を入れはじめているという。

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とはいえ、大谷観音や採石場などを一通り回っても、滞在時間は1〜2時間ほどにしかならない。

宿泊施設もないため、大谷町に立ち寄り、その後は足利や日光方面に抜ける観光客が多いのが現実だ。

「せっかく都市部からもお客さんが来ているのだから、滞留時間を伸ばしたくて。まずは食事機能が必要だということで、ベーカリーレストランを開くことにしたんです」

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参道の入り口に、100坪の敷地。テラスがあることで、内と外はゆるやかにつながっている。

レストラン・ベーカリー部門は、それぞれ栃木を代表する料理人が監修していて、県産の食材を活かした料理とパンを楽しむことができる。

参道の途中にある広場は今のところあまり活用されていないのだけど、ゆくゆくはそこにもパラソルを立てて、この一帯を人が集まれる場所にしたいと松本さんは話す。

「ベーカリーレストランの発想が先にあったわけではなく、まちに必要なコンテンツを考えたら、こういう形になったんです。ぼくは、まちを活気づけるための投資だと思っています」

栃木県内に生まれ育った松本さん。もともと商業施設や店舗開発のコンサルティングをしていて、現在も週4日は東京で働いているそう。

「栃木での仕事は去年からはじめて、徐々に増やしてきた感じです。宇都宮駅から新幹線も出ているから、東京へのアクセスもいい。住みやすいんですよね」

昨年は、「大谷資料館」のすぐそばに「ROCKSIDE MARKET」をオープン。松本さんがディレクターを務め、同級生のオーナーとともに経営している。

今回立ち上げるベーカリーレストランとは少し特色が異なるけれど、お店を通して地域を活気づけたいという想いは同じ。

そこで、ROCKSIDE MARKETで働いている人にも話を聞くことに。

お店で迎えてくれたのは、商品の買い付けやイベントの管理、スタッフマネジメントなどを担当している北館さん。

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家具・インテリア雑貨ブランドのFrancfrancに10年勤め、都内数店舗を統括するエリアマネージャーを経験。地元栃木にUターンし、今年1月からROCKSIDE MARKETで働いているという。

「前職の仕事は好きでしたし、最初は転職をためらいました。ただ、2人目の子どもが生まれていよいよ家庭と仕事のバランスがとれなくなるな、というのも目に見えていたので。前職の経験を活かしつつ、新たなステージに進もうという気持ちで入社しました」

年収が下がるうえに、お店はオープンしたばかり。周りからは止められたそう。

実際に半年ほど働いて、どうですか。

「一番はやっぱり家族と一緒の時間が増えたことですね。負い目がなくなったというか。ぼくの家での仕事は、毎日ふたりの子どもをお風呂に入れることなんですよ」

仕事の内容にも変化があった、と北館さん。

「前職は大きい会社ではあったけれど、現場の仕事一筋という感じで、視野が狭くなりがちでした。今はいろんな仕事をやるし、いろんな人たちとも関わるので、そこから新しい考え方が生まれやすいです」

ROCKSIDE MARKETでは、コーヒーやジェラートなどのカフェメニューのほか、栃木県で活動する作家さんのアクセサリーや器なども販売していて、こうした作家さんとのネットワークづくりも北館さんの仕事のひとつ。

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「今朝も多肉植物を育ててる方を訪ねて。ものすごく面白いんですよ。24歳の茶髪の兄ちゃんなんですけど、まっすぐで、熱い想いを持っていて」

「ROCKSIDE MARKETのいいところは、この店自体の認知度が上がってきているなかで、本当にいいものづくりをしている人たちを知ってもらえることですね。日の目を見ずにいる作家さんたちはまだまだいると思うので、もっと光を当てていきたいです」

ほかにも、年に2回行われるROCKSIDE MARKET主催のマルシェ運営や、地域イベントへの出店、店頭での接客にいたるまで、北館さんの仕事は幅広い。

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「夏の間はかき氷を削ってました」と北館さん。捉え方によっては「なぜそんなことまで…?」と思うかもしれないけれど、お客さんとも作家さんとも顔の見える距離感にいることが力になっているという。

「“誰かのために”っていう気持ちはそこまで強くないですけど、相手の顔が見える仕事っていい仕事だとぼくは思ってるんですよ。疲れたなってときでも、顔が浮かぶとやんなきゃなって思えるし、手を抜けなくなる」

新店舗のベーカリーレストランも、農作物をつくる農家さんや器の作家さんなど、間接的にいろんな人を紹介する役割がある。ときには実際に産地を訪ねることもあるかもしれない。

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完全な裏方としてではなく、顔の見える距離感で働きたい人にはちょうどいい仕事のように思える。

「松本さんは0から1をつくる人なんですよね。でも、誰かが1を2にしていかないと、半年後にはなくなっちゃう。それじゃあ意味がないんです」

「ぼくは1を2にしていくのは得意なので、そこは役割分担しつつ。さらに先を考えるなら、新しい事業展開にも自分の力を使えたらと思っています」

新店舗が軌道に乗れば、2、3店舗目の展開も考えられる。松本さんも、「成長欲の強い人、勢いのある人がいい」と話していた。

「主体性のある人ならどんどん任せてもらえるだろうし、逆に待っていても得られるものはない。そんな環境だと思いますね」

ROCKSIDE MARKETを離れ、松本さんとともに「パニフィカシオン・ユー」へ。新店舗のベーカリー部門は、この店のオーナーである氏家さんが監修するという。

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閑静な住宅街にひっそりと佇む店内には、焼きあがったパンのいい香りが立ち込める。

「県外から買いにくるお客さんもいるんです。イベントに出店したら大行列ですよ」と松本さん。今回の新店舗の計画も、氏家さんの協力が得られなければ実現しなかったそうだ。

「最初は乗り気じゃなかったみたいですけど、とにかく拝み倒して(笑)。面白いですよ、あの人は。小麦も普通は10種類ぐらいしか使わないんですけど、この規模で20種類以上を使っていて。こだわりが強いんです」

「それも独りよがりじゃなく、県外からもお客さんがついている。いいものを出せば、まだ開拓の余地があるという確信にもつながりました」

そんなふうに話していると、奥から氏家さんが出てきてくれた。少しだけ手を止めてもらい、話を聞く。

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もともと栃木県内のレストランの調理部門で働いていた氏家さん。

あるときパン部門に欠員が出て、試しにつくってみたところ、パンづくりに目覚める。

「ドミニク・サブロン」や「ジョエル・ロブション」など都内のレストランで修行を積み、奥さんの実家からほど近いこの場所で4年前に独立したんだそう。

「もともと食べるのは好きだったんだと思います。よくスーパーのパン屋さんとかあるじゃないですか。あのトレイに持っていく動作も好きでしたね」

つくる側になっても、やっぱりパンは好きですか。

「そうですね。おいしそうに焼きあがったときが一番うれしいです」

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「一方で、たぶんみなさんが思っているよりも体力的にきつい仕事だと思いますよ。パンをこねて、発酵させて、焼くっていう工程には時間がかかるので、朝早く夜遅い。うちはできる限り既製品を使いたくないから、より手間暇がかかっています」

この点に関して松本さんは、冬場の閑散期は週休3日にするなど、無理なく働ける体制を整えていきたいと考えているそうだ。

氏家さんも、強いこだわりを持っているものの、それを押しつけはしない人だと思う。

「どんな人も、みなさん個性があると思うんです。今まで勉強してきたこと、育ってきた環境、感性はそれぞれ違うので。それを大切に表現できればいいのかなと」

「ぼく、口で教えるのが苦手なタイプで。たとえば生地は、日によって全然違うんですよ。その日の気温や湿度、においを全身で感じながら、目で見て、触って、肌で感じて。理屈じゃなく、感覚的にベストの状態を探っていくようなやり方ですね」

もちろん、ベースとなる知識や技術は必要だから、下積みの経験を重ねて身につけていくことになる。

前向きに学ぶ気持ちさえ持っていれば、初心者でも大丈夫とのこと。

「レストランとベーカリー、これすごくいい組み合わせだと思います。ワンプレートに料理とパンを乗せてみたり、ここだと衛生的に難しいサンドイッチもつくってみたい」

「あとは楽しくできればいいですかね。あまり堅っ苦しいことをやろうとは思っていなくて。ラフだけどかっこいい、そしておいしい。そんな感じで注目されるお店にしていけるといいですね」

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帰りにいくつかパンを買ったら、店頭の奥さんが焼き菓子をひとつおまけしてくれた。

規模も違えば同じようにはいかないかもしれないけれど、できることなら、こんなやりとりがなくなってほしくないなと思う。

パンと石のある風景。一緒に築いていく人を募集しています。

(2017/10/3 中川晃輔)

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