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仕事を決めるにも、移住するにも、楽しそうな人たちのいる場所には自然と心惹かれます。今回訪ねたのは高知県。
そこに暮らすみなさんの開放的でカラッとした雰囲気は、きっと“県民性”のようなもの。ゆく先々で楽しそうに語る人たちと出会ったのも、単なる偶然じゃないような気がする。
そんな人たちと出会い、高知での暮らしと仕事を垣間見る、日帰り弾丸ツアーの参加者を募集しています。
朝一番に集合し、県内の複数の企業を訪ね、18時ごろには解散というなかなかのハードスケジュール。多少駆け足になるけれど、1日のうちにギュギュッと、いろんな角度から高知の仕事を知ることができます。
それに、開催は12月1日の金曜日なので、そのまま滞在して週末を高知で過ごすのもいいかもしれません。
今とは違う生き方働き方や移住に興味を抱いている方。あるいは、地元の高知にUターンを考えているけれど、仕事が心配という方も。
一足先に、今回みなさんが巡る3企業を訪ねて、お話を聞いてきました。
羽田空港から高知龍馬空港までは、1時間と少し。
空港でレンタカーを借り、20分ほど車を走らせると高知市街へ到着。
最初に訪ねたのは、澁谷食品株式会社の展開するお店「芋屋金次郎 卸団地店」だ。
澁谷食品株式会社は昭和27年創業の芋菓子メーカー。鹿児島の大地でさつまいもを育て、高知と九州の工場で加工し、全国のスーパーやコンビニを通して卸販売している。
主力商品の芋けんぴは、なんと全国シェアの約半数を占めるという。
創業者にちなんで名付けられた直営店「芋屋金次郎」は、高知県内2店舗のほか、愛媛県の松山店や道後店、香川県の高松店など四国各地に展開。3年前からは東京・日本橋の「コレド室町2」にも進出している。
店内のカフェスペースで、まずは管理本部部長の福田さんに話を聞いた。
大阪出身で、東京でも働いていたことがあるという福田さん。
Iターンのきっかけはなんだったのだろう。
「地方から発信している会社で働きたいなと思ったんです。高知だけでなく、北海道から沖縄まで、全国に目を向けて探していました」
登録していた人材会社を経由して、たまたま澁谷食品のことを知ったそう。
芋けんぴの原材料は、芋と砂糖と油のみ。無添加でいいものをつくっている。
加えて、全国の約半数のシェアがあり、当時は直営店の展開にも一層力を入れはじめた時期だった。
「たとえば東京・日本橋の店舗は、スペースの半分以上を製造に充て、できたての芋けんぴを食べてもらえるようにしているんです。賃料も高知の水準よりも高いなかで、地方の企業なのにかなり攻めているなと思いました」
ほかにも、芋を使ったデザートや芋焼酎など、芋けんぴ以外の商品を開発したり、店内でくつろげるようにカフェスペースを設けたり。
新たな取り組みにも積極的な社長のもと、刺激的な日々を送っているという。
「高知の人って、カラッとしてますよね。人間関係がギスギスしないんです」
そのあたりは、ご出身の大阪とも雰囲気が近そうですね。
「大阪人は商売人気質なところがあって、付き合うのも早いけど、切るときも早い(笑)。逆に京都だと、入り込むのに時間がかかるぶん、関係が築けると大丈夫だったり」
「その点、高知は開放しちゃうんですよ」
開放?
「たとえば、高知にはもともと土佐和紙という紙の文化があって。すごい技術を持っていたんですけど、『構わん、構わん』という感じで外に出してしまった。造船の技術もそうです。今じゃ全部愛媛のほうが有名になってますね(笑)」
人も文化も開放的で、いいものはすぐ取り入れるし、広めたくなる。
高知県発祥の「よさこい祭り」が全国各地で開催されるようになったのも、そんな県民性によるのかもしれない。
「高知は地元好きな人が多いと思いますよ」
そう話すのは、店舗事業部と通信販売部のマネージャーを務める広末さん。
「わたし自身、大学は東京に行ったんですけど、1年生のゴールデンウィークに帰ってきて。やっぱり高知がいいなと」
大学卒業後に販売スタッフとして入社。その後は製造現場や店長を経験し、マネージャーになった。
この8年間で店舗は5店舗増え、売上はもちろんスタッフや新しい部署も増えているそう。
「やっぱり会社に残ることをやっていきたいですね。今できることを責任持ってやり抜くと、次の目標も見えてくる。もちろん悩んだり落ち込んだりもしますが、楽しく仕事できることに感謝しています」
仕事に対する熱い想いが伝わってくる。
ただ、「仕事以外もいろいろ楽しみたい方のほうが、高知暮らしは向いているんじゃないかな」と広末さん。
「都会ほど娯楽施設はないですけど、プライベートの部分で田舎を感じられるのが高知の良さだと思うので。海や山のアクティビティもありますし、おいしいものもたくさんあります」
たとえば、県内外の人に人気の「ひろめ市場」。さまざまな飲食店が集まっていて、席に座ると自然と人の輪が広がっていく。
「いきなり話しかけられたら身構えちゃうと思うんですけど、いつのまにか壁を壊されちゃう。『カツオ食べるんやったらあそこがおいしいで』とか、『唐揚げ分けちゃるき、ちょっと食べや』って声をかけられて、いつの間にか一緒にお酒呑んでたり(笑)」
そういう雰囲気が苦手な人でも、高知では不思議と馴染めたりするらしい。
積極的だけれど、押し付けがましくないというか。その感覚は、なんとなくわかるような気もする。
気づけばお昼の時間になり、次なる目的地へ。
高知県の特産品である生姜の栽培から加工・販売まで、6次産業化を実現している株式会社坂田信夫商店を目指す。
市街地から空港のほうへ引き返し、30分ほどで畑に到着。
「社名を見て、家族経営の会社と思って問い合わせいただくことが多いんですが、実は社員が250名ぐらいいるんですよ(笑)」
総務部次長の小林さんは、笑いながらそんなふうに紹介してくれた。
「全国に流通している生姜の55%は高知県産なんです。だいたい2万トンぐらいですかね。そのうち、30%はうちが出している生姜になります」
つまり、毎年およそ6000トンの生姜をつくっているんですね。
「そうですね。県内だけでなく、大分・宮崎・鹿児島でも栽培していて。トレーサビリティーにもこだわり、すべてどの畑でいつごろ採れたものなのかが追えるようになっています」
春に植えた生姜は、秋に収穫して保冷庫へ運ばれる。適切に管理すれば、1年以上は保つという。
出荷される生姜は、生鮮品としてパック詰めするものと、加工場で加工されるものに分かれる。今回は生鮮品の工場を案内してもらった。
「生姜は不規則な形をしているので、すべて手作業で剥くんです」
形を整えたら重さをはかり、2個1セットでコンベアに流してゆく。すると自動的にパック詰めされる。
一見簡単そうに見えるけれど、見た目と手の感覚を頼りに組み合わせを考えているらしい。
加工品は、すりおろし生姜やスパイスのほか、近年お菓子づくりに使われるものも増えてきたそう。
最近では、地元の高校生と一緒にまんじゅうもつくった。ほかにもOEMの商品やふるさと納税の返礼品など、さまざまな形で流通している。
畑から工場まで同行してくれた、総務部人事課課長の土居内さんにも話を聞く。
前職では営業の仕事一筋だったという土居内さん。入社してまず配属されたのは加工場だった。
「入ったときは不安でしょうがなかったですよ。生鮮品ですので、前日に注文が入って急に慌ただしくもなりますし、ひとつのミスが大きな事態につながりかねないので、責任も重いんです」
「でも、途中からすごく楽しくなりましたね。作業だけでなく、生産計画を立てたり、人員配置をしたり。加工場全体で100名近くおりましたんで、そのぶんの達成感はありました」
その後、総務人事課に移ってからも、現場での経験が活きているという。
「川上から川下まで、同じ会社にいながら経験できるのが面白さですよね。畑も見ながら、大手企業さんのOEMまでつながっていきますから」
産地から消費者の手に届くまで。高知ならではのものを全国各地に届けている会社はほかにも存在する。
大人用紙おむつを製造し、全国に販売している近澤製紙所もそのひとつ。
向かったのは、高知市の隣にある吾川郡いの町。
もともと紙の文化が根づいていたこの一帯には、たくさんの製紙所が立ち並んでいたという。
「紙おむつって正直、敬遠されるようなイメージがありますよね」
そんなふうに話を切り出したのは、開発部の森野さん。
「ただ、高齢の方が増えるにしたがって身近になってきていると思うんです。ここでも、ニーズに合わせていろんな紙おむつをつくっています」
たとえば、自力で動ける人と寝たきりの人では、適切な形やサイズ、吸水量などが変わってくる。大手企業には真似できない細かなニーズを汲み取り、商品づくりに活かしているという。
販売先は主に、全国各地の病院や介護福祉施設。最近ではアジア各国への輸出も伸びている。
「ちなみにうちの最終試験では、全員おむつを履いて使ってみるんです」
「食品会社さんが自社商品を食べたり、車屋さんが乗り心地を確かめるように、実際に履いてどう感じるか、わかった上で働こうというのが理念で」
話を聞いていて、とことん使う人の立場に立った商品づくりや提案をしているように感じる。
ときには実際に病院や施設を訪ね、おむつの適切な使い方をレクチャーすることもあるという。
営業部の田村さんは、お祖母さんの病気をきっかけに介護を経験してきた方。
「就職情報誌に載っていたこの会社の記事をたまたま見たんです。そうか、こういう形で介護に関わる仕事もあるのか、と惹かれて」
劇的な変化はないけれど、小さな積み重ねがある仕事だという。
「ついこの間、あるお客さんから注文をいただいて。娘さんがうちの商品を使われているそうなんですが、『ありとあらゆるメーカーを試して、ようやく一番肌に合うものを見つけられました。もっと早く出会いたかったです』とコメントを残してくださって。そういう小さな積み重ねが自分にとってはすごくプラスになっているなと思います」
そんなやりがいの部分はもちろんのこと、アットホームな雰囲気も続けられる理由のひとつだとお二人は話す。
「プライベートは飲みに行ってばっかりですね(笑)。今は社内の有志メンバーで、リレーマラソンに参加するために月一で練習していて。居心地はいいです」
どこで、どんな仕事をするか。
それと同じぐらい、誰と、どんなふうに働くかは大事だと思います。
取材前は少し不安だったけど、話を聞き、仕事場を見せてもらうなかで、高知をより身近に感じられるようになりました。
(2017/11/10 中川晃輔)