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染色や漂白をしていない、素材そのものの繊維の色を「きなり」と表すことがあります。転じて、飾らないありのままの様子を指すことも。

飾らないありのままの心で、自分たちがよいと思うことを仕事にしている。
1990年から、オーガニックコットンにこだわりつづけるアバンティ。全国に展開しているアパレルブランドPRISTINE(プリスティン)の販売スタッフと、営業スタッフを募集しています。
東京・吉祥寺。
JR吉祥寺駅の北口を出て、中道通りへ。
この通りにはセレクトショップやカフェ、食品店など個人商店が並び、いつも人でにぎわっている。
駅から5分ほど歩き、脇道に少し入ったところにあるのがプリスティン吉祥寺店。
ゆっくり木の扉をあけると、淡い色味のナチュラルな空間がひろがった。
ベビー用品に女性用のリラクシングウェアや下着、寝具やタオルなど肌触りの良さそうなものがずらりと並んでいる。

そう話してくれたのは、プリスティンを運営するアバンティ代表の渡邊さん。

アバンティは1985年に渡邊さんが立ち上げた会社。日本でオーガニックという言葉がまだまだ浸透していないころから、オーガニックコットンにこだわりつづけてきた。
原綿を輸入することからはじまった事業は、国内での糸と生地の企画製造、そして自社ブランドプリスティンへと枝分かれしながら拡がってきた。
話は、渡邊さんとオーガニックコットンとの出会いまでさかのぼる。
学生のころから独立精神が旺盛で、いつかは会社を起こしたいと思っていたという渡邊さん。光学機器を扱う商社に勤め、30代で独立。
ちょうどそのころ、知り合いからオーガニックコットンを使った生地の輸入の話を持ちかけられたそう。
「知識も情報もなかったから、自分でアメリカのテキサス州にあったオーガニックコットンの農場を見に行ったんです」

印象に残ったのは、あるファーマーの言葉だった。
「『健康な大地を神に返すため。あとは、ちゃんとビジネスができるからこの仕事をしているんだよ』と率直に言うんです。彼の言葉は嘘がなかった。私はこの仕事をしたいと思いました」
このときの渡邊さんは、環境問題に対して強い気持ちがあったわけではないという。
決め手は何だったのでしょう。
「私は自分に嘘をつきたくないって思っているの」
嘘をつきたくない。
「自分のなかにグレーな部分や負い目がないことであれば、誰かに対して一歩前に出て自信を持って勧められるでしょう?この仕事なら、それができると思ったんです」
それ以来、このテキサス州のファーマーたちと契約を結び、原綿の輸入を続けてきた。
「あとはこれ。ちょっと見てみて」

水を吸って沈むと思った綿花は、しばらく待っても沈みそうにない。
綿って、こんなに水分を吸わないものなんですね。
「そうなの。綿は風雪から種を守るためにすごく油分を含んでいて。染めるためには脱脂して染料をのせた後、定着させないといけない。最終製品にするまでに6回くらいは薬剤と大量の水を使うんです」
渡邊さんにとってその事実は、見過ごせることではなかった。だから、アバンティはこの28年「染めない」ということを徹底している。
「色を変えれば10の展開ができる生地を1つに絞るんです。見た目も派手ではないし、決して売りやすいものじゃない。誰もやりたくないことでしょうね(笑)」
まっすぐな想いに共感してくれるデザイナーや工場と協力しながら、綿の微妙な色味の掛け合わせ、糸の太さや織り方を工夫することでさまざまなバリエーションの生地をつくってきた。
糸、生地、製品をつくってくれている工場は少なく見積もっても国内に200ほど。どこでどのような加工が行われているのか、隠すことなく製品づくりを続けてきた。

嘘がない状態を続けるのは素晴らしいこと。でも、続けていくことは大変なことでもある。
「生地を染めて売上を上げようという話が出たこともあります。でも私はノーと言いました」
「このブランドのPRISTINEという言葉には、『清らかな状態を、長く続けていくこと』という意味があるんですよ。続けていくことに意味があるんです」
そんなブランドを任される人は日々どんなことを考えているのだろう。吉祥寺店店長の押見さんにも話を聞いた。
「私たちの生活って、どうしても環境に負荷をかけてしまうことが多いじゃないですか。私はできるだけそういうことを避けたいという思いがずっとあって」
「アバンティならあまり負荷をかけずに仕事ができると思ったし、プリスティンの商品も好きだったのでここで働きたいと思いました」

「お店は、私たちがこれまで育ててきたものとお客さまを繋ぐ場所。商品や会社への理解を、ふつうのアパレルの仕事よりも求められるんじゃないかなって思うんです」
どうしてこの綿で、この色で、この生地でなければならないのか。
商品が生まれるまでの地続きの物語を、知りたいと思う人が多く訪れる。包み隠さずに伝えるためには、知識を蓄えておく必要がある。
「最初は覚えることがたくさんあって本当に大変でしたね」
2年間は無我夢中で商品の背景について学んだ。押見さんは、3年目からようやく落ち着けたと感じたそう。
お昼休みの時間は、自社ホームページに載っている製品や工場の情報を見ながら勉強しているスタッフも多いのだとか。
「プリスティンの商品は、背景も製品のことも知ったうえで、素直に使いたいと思えるものばかりなんです」
「自分自身が好きだから覚えたくなるし、話したくなる。思わず紹介してしまいたくなる商品を扱えることは幸せですよ」

それは社員たちが工場に足を運ぶ機会が多く、商品の背景を自分の目で見ているからなのかもしれない。毎年行われる社員旅行は、全国各地の協力工場を訪れるのだという。
一昨年は愛媛のタオル工場を訪ねた。
「製品ができあがっていく様子を目の当たりにして。機械の大きさにも素直に感動しましたし、どんな人たちがつくっているのかということまでを知り、お客さまに話せるのはすごいことだなって」
「納得できる商品のことを、自分の言葉で伝えられる。それを楽しいと思える人は向いている仕事です」
きっとそれは、営業を担当する人にも言えること。心からよいと思っている製品の話なら、自信を持って紹介できると思う。

定期的に店舗で行われる「おもてなし会」というイベントでは、講師とお客さまを呼び、ワークショップ形式のさまざまな取り組みをしている。
たとえば、オーガニックコットンの生地を使ってバッグをつくったり、壁に飾るリースをつくったり。
おもてなしをするのは販売スタッフの仕事で、ときには手づくりのお菓子を用意することもあるそうだ。
それに加えて、肌トラブルを抱える人や、肌の弱い赤ちゃんのための肌着を求めてくる人も少なくない。

「悩みに応えたいと、糸までオーガニックコットンをつかったブラジャーをつくったりもしています。一般的には、伸びにくいオーガニックコットンの糸を伸縮性の求められる下着に使うことはまずなくて。業界初の試みなんですよ」
商品の話をするとき、押見さんは終始ニコニコと楽しそう。大げさな言葉は使わないものの、心からプリスティンを大切に思っていることがよく伝わってくる。
「毎年新しい製品を開発しているのですが、やっぱり個人的にも使いたいって思うんです。お客さまに好みのものを推してしまいそうになるけど、そこはバランスを取りつつ冷静にならないといけないですね(笑)」
いつかそのまま土に還るものだから、“着倒す”という言葉が似合うくらい長く使えるものと出会ってほしい。
だから、その人の好みのものというよりは、似合うものをお勧めするようにしているそう。
「物を売るって消費活動だけど、プリスティンを買ってもらうことでゆくゆくは環境がよくなるってすごいこと」
「自分がよいと思っていることでなければ、心からお勧めはできませんから。プリスティンの考え方や商品を好きでいることは大事だと思います」
ここで働くのは、どんな人がいいだろう。
お話を聞きながら考えていると、ふたたび代表の渡邊さんがこんなお話をしてくれた。
「私は毎年お正月に、全社員に『あなたの夢は何?』って聞くようにしているんです」
それは、どうしてですか?
「アバンティは自分の信念や夢を叶えるためのステップにしてもらってかまわないと思っていて。でないと、100%自分の力を発揮して仕事をするのは難しいと思うんです」
「稼ぐ手段ということではなく、『アバンティで仕事をする』ということに意味を感じられる人と一緒に働きたいですね」

ここでなら嘘のない働き方ができるように思いました。
惹かれるものがあったら、一度お店を訪れてみてください。直営店は東京以外にも、北海道、名古屋、大阪、神戸などにも展開しています。
製品に触れ、スタッフのみなさんと話すなかで伝わることもあるはずです。
(2018/2/26 取材 遠藤沙紀)