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それぞれの好き

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

好きなことをしている人がいる場所は、心地いい。

株式会社たまやが運営するお店を訪ねて感じたことです。

三重・四日市で、サブカルチャーを軸にスポーツ、アウトドア、アパレルや玩具など幅広く事業を展開しているたまや。

サブカルチャーと伝統工芸とを融合させた商品をつくったり、今はライフスタイルショップの立ち上げも進めています。

今回は、たまやの運営する各店舗の販売スタッフと通販スタッフを募集します。

経験がない人も、将来お店を持ちたいと考えている人も、伝統工芸に関心のある人も歓迎とのこと。

いろいろな好きが集まって形になっている会社です。

 

新幹線で名古屋駅へ。

近鉄線で四日市へ向かい、四日市あすなろう鉄道に乗り換える。

レトロな列車に乗って10分ほどで泊駅に到着。

のんびりした空気感が漂う住宅街を5分ほど歩くと、横断歩道の先に大きな建物が見えてきた。

手前と奥の建物と道路を挟んで反対側にあるビルの合計3棟が現在のたまやの拠点。ここで8つの店舗を運営している。

最初にお話を伺ったのは、代表の安保(あぼ)さん。

大手電気機器メーカーに10年勤めたのち、趣味をなりわいにしようとスノーボードのお店を構えたことが、たまやを立ち上げるきっかけだった。

「1993年にスノーボードのお店からはじまって。もっとお客さんが好むものを提案していこうと、だんだんアパレル、アウトドア、玩具へと裾野を広げていきました」

安保さんいわく、たまやは「サブカルチャー・カウンターカルチャーに特化した小売にこだわる集団」だという。

それぞれのお店に共通するのは、価値・品質・価格のバランスが取れたものをセレクトし、販売していること。

「数が少ないものや価格の高いものだけが良いとは思っていなくて。しっかりとした背景のあるものを選びたい」

たとえば、メンズアパレルのお店「Diffusion」で取り揃えているのは、トレンドに左右されないデザインの洋服。

写真のシャツは、無農薬の草を食べて育った羊のウール100%の生地を海外から輸入し、日本でつくられたもの。

肌にやさしく、肌触りもなめらか。それでいてまったく手に届かないような価格ではないという。

「安ければ何でもいいという考え方には文化がないよね。やっぱり着るものや使うもの、口にするものにはこだわったほうがいいんじゃないかな」

ものへのこだわりについて考えを深めていくと、伝統工芸にも興味を持つように。

そうして伝統工芸品とサブカルチャーを融合させたオリジナル事業「mimie(ミミエ)」を立ち上げた。

2016年にはスノーボード界の先駆者「BURTON」とコラボして、三重の伝統工芸・伊勢型紙のデザインをあしらったビンディングを製作。

「日本文化を象徴する伝統工芸とグローバルなもの。一見、両極端にあるようなもの同士を融合させることで化学反応が起き、今までにない新しいものがつくれるんじゃないかと考えて」

「つくった商品が多くの人の手に渡るようになれば、伝統工芸品を現代につないでいけるかもしれない。もっともっとブラッシュアップしていきたいですね」

さらに今年は、家具や食器、洋服が一度に楽しめるライフスタイルショップを建てる予定。

カフェも併設して、スポーツからアウトドア、アパレル、ライフスタイルまですべて体感してもらえるような場所を目指しているとのこと。

これまでの25年間、常にトライアンドエラーを繰り返し、失敗もたくさんしてきたという安保さん。

それでも四日市にこだわって仕事を積み重ねてきたのには理由がある。

「生まれ育った土地ということもある。それから、ここは大手流通グループの発祥の地で。僕も利用するけど、今の大型スーパーってどの地域も同じお店ばかり出店されて、まちが多様性をなくしてしまったと感じているのね」

「僕は、まちというのは多様性があるほど文化を生むと考えています。文化にこだわった人を四日市に溢れさせたい。だから、サブカルチャーにこだわって、地元でやるんです」

ここでの販売の仕事は、ただものを売ることにとどまらない。

「お客さんに来ていただいて、スタッフとお話しして、いろんなことを感じたり発見してもらう。そういうコミュニティを僕たちがリアルにつくっていかないかんと思うね」



お店では、どんなふうにコミュニティをつくっていくのだろう。

アウトドアショップ「moderate」で働く松下さんにも話を聞かせてもらう。

「はじめてお越しになる方は、緊張されていることも多いです。気持ちをほぐすところからスタートするようにしています」

「お客さまと会話を楽しみながら、その方がどういった遊びをされているのか、どういった服が好きなのか、いろんな情報を見つけていって。その方に気に入っていただけるように商品を提案していますね」

スタッフは商品のバイイングも手がけていて、メーカー担当者から商品の背景について直に話を聞く機会も多い。

「たとえば、この防水のジャケット。トレイルランニングで小さいリュックサックを背負って山を走るとき、上から羽織れるように背中側を膨らませたデザインになっています。リュックのベルト部分に飲みものを取り付けることもあるので、取り出しやすいように胸部分にはジッパーがつけてあるんです」

「使う人のことがよく考えられた機能になっている。そういうところまでうまく伝えていくのも、僕らの仕事です」

松下さんたちが伝えているのは、商品についてだけではない。

moderateのスタッフはスポーツプレイヤーが多く、お客さんを連れてスノーボードのツアーを企画したりクライミングイベントを開催したりすることで、体験まで届けている。

「山を走るのに、はじめてだとどこに行くのがいいかわからないという方もいるので。『今度うちでイベントをやるので一緒に走りに行きましょう』とお声がけしたりしています」

「購入された道具を実際に使ってもらうことで、お客さまに本当の価値を感じていただきたいんです」

イベントを終えて、お客さんから「楽しかった!」と言ってもらえることが何よりうれしいと、松下さん。

安保さんの言っていたコミュニティというのは、こうしてつくられていくのかもしれない。

松下さんは山が好きで、もともとお客さんとしてmoderateに訪れていたそう。

前の会社を退職し、6年ほど前にここでアルバイトをはじめた。一度父親の仕事を手伝うために離れてから、2年前に社員として入社。

「アルバイトをしていたのは、以前の小さかったお店から現在のmoderateのように店舗を拡大するタイミングで。店内のつくり込みにも携わりました」

「それがもう楽しくて!引越し作業はめちゃめちゃ大変だったんですけど、自分たちのお店なんだという認識が強くなりましたね」

たまやで働くことを選んだのは、仕事と趣味の境目がないライフスタイルを送りかったから。

一方で、趣味を仕事にすることについて悩んだ時期があったそう。

「好きだから休みの日にも山に行くんですよ。趣味が常に仕事に関わる一部になっちゃうと、気を抜くところがない。このライフスタイルはどうなんだろう?と思うところがありました」

「でもなんだかんだで、今はそれがベストだなと思っています。やっぱり楽しいんですよね」

楽しい。

「ただ単に山が好き、道具が好きという気持ちだけじゃなくて。どういう魅力があるのかをお客さまに伝えたいという思いが出てきたので」

「山に登っていい景色を見て感動する。また登りたくなって、いい道具を揃えたくなる。そういうお客さまの心を豊かにするサイクルの一つが自分の仕事なんだと思ったときから、気持ちが変化して。一歩踏み込んでいけるようになりましたね」

接客以外にも、オンラインショップの対応をしたり、ホームページに載せるブログの文章を書いたり、写真を撮影したり、事務仕事もある。

いろんな種類の仕事を同時進行していくのは、慣れるまで大変に感じるかもしれない。

裁量権も大きく、責任はダイレクトに自分に跳ね返ってくる。

でもその分、自分自身の成長を実感できる環境だと思う。

 

メンズアパレルショップ「Diffusion」で働く木下さんも、自分にできることを広げている方。入社して1年半になる。

木下さんは、仕事の時間以外にも工夫していることがあるそう。

「遠方からのお客さまも多く、この辺りで美味しいものを食べられるお店がないかよく聞かれるんです」

「ただ洋服を売るだけでなく、せっかくの時間を楽しんでもらいたいから、休日は外食に行くようにしておすすめの店を見つけています。でもやりはじめたら自分がはまっちゃって(笑)」

思いを持って働いていると、訪れた人も自然と感化されていくかもしれない。

「高校時代おしゃれには関心がなかった友人が、今はお客さんとしてよく来てくれるんです」

「決して安い買い物ではないはずだけど、僕から買いたいと言ってくれる。それがすごくうれしいですね」

 

最後に通販事業部の仕事について、女性スタッフの野上さんに話を伺う。

表に出るのは苦手とのことで、残念ながら写真はありません。

お話しして感じるのは、ものごし柔らかな口調のなかにも芯を持っている方だということ。たまやに勤めてもうすぐ5年になる。

野上さんは趣味が仕事になったわけではないという。

前職でデザインや通販の仕事をしてきて、その経験を活かせる仕事を探していたとき、たまたま募集を見つけたのがきっかけだった。

「通販事業部の1日の流れは、注文や入金のチェックをして、受注数を確認して商品をピックします。その後、梱包・出荷、出品作業なども進めていきます」

現在は8人のスタッフで運営しているそう。

日々繰り返していく仕事が多いなか、野上さんはいろいろな工夫を積み重ねてきた方だと感じる。

「出荷する際、袋にお店のスタンプを押すのですが、以前は梱包した後に押していたので出荷までに乾かす時間が必要でした。その時間がもったいないから、手が空いたときに前もってやるようにして。今は前よりスムーズに出荷できています」

「あとは、その日出荷するものとしないもの、ラッピングが必要なものなど、それぞれ見分けがつきやすいように区別の仕方を変えたり。ちょっとしたことですけど、もっとこうしてみようと思うことを少しずつ形にしています」


今後会社としては売上が伸びている通販事業部で働く人たちの環境をより良くすることを目指していて、事務所リニューアルに向けた準備を進めているという。

また、たまやの大事にしていることがより伝わる形で商品を発信したいと、新しく撮影スタジオもつくるそう。

趣味が仕事になった人もいるし、仕事の中身に面白さを感じている人もいました。

それぞれの好きが広がって、形になっていく会社だと思います。

(2018/02/19 取材 後藤響子)

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