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まちの未来は観光にあり

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「僕らは観光を利用して茅野のファンを増やすことで、将来的なまちづくりにつなげていきたい。そうして、地域の豊かな自然や文化、人の営みが100年先にも続いていくことを目指しています」

これは長野県茅野市で新たに始まった観光まちづくりに取り組む、ちの観光まちづくり推進機構の高砂さんの言葉。

“ちの”という地名にピンとこなくても、市内にある白樺湖や蓼科などのリゾート地のことなら聞いたことがある人も多いかもしれません。

そんな茅野市で今年、行政と民間が共同でスタートした観光まちづくり。

まだ団体を立ち上げたばかりなので、地域おこし協力隊の制度を活用しつつ、一緒に働く人たちを募集することになりました。

通常の協力隊のイメージとは、少し異なる働き方になるように思います。ベンチャー企業のように、一人ひとりが仕事も働き方も自分でつくっていくというスタイルで運営している。

だから協力隊の任期である3年間があけたあとも、そのまま機構に残って働いてほしい、という思いがあります。

営業職や旅行業など活かせる経験はさまざま。できれば、システムエンジニアや総務の経験がある人も来てくれたら、とてもうれしいそうです。

新宿から特急に乗り、茅野までは約2時間。山々の間を抜けて甲府盆地に入り、八ヶ岳が見えたら、茅野はもうすぐ。

まずは、ちの観光まちづくり推進機構の専務理事でもある高砂さんに会いにいく。

茅野にやってくる前、高砂さんは家族で長崎県五島列島の北端、小値賀町に住んでいた。

移り住んだ当初、まちの人口は約2600人、高齢化率43.4%と、地域としての存続が危ぶまれていた。そこで高砂さんは観光を通じて地域を活性化する観光まちづくりに参加、島の一般家庭に観光客が宿泊する民泊や、島ならではの旅づくりに着手した。

その結果、年間2万人もの観光客が訪れるように。

その後、縁あって茅野へと移住してきた高砂さんは、いわば観光まちづくりの第一人者。今は機構で忙しく動き回っている。

「ここの魅力は冬が原点だと思うんですよね。東京からそう遠くないのに、気候は北海道という感じで。この土地の言葉で「凍みる」といわれる厳しい寒さがある」

「僕も畑をやっているけれど、作物が育つのは5月から10月の間だけ。だからこそ厳しい冬を乗り越えるための生業があって、包丁や農具など暮らしにまつわる刃物をつくる野鍛冶や、保存食の文化が生まれているんです」

一方で、茅野は避暑地として多くの観光客が訪れる場所でもある。それなら、大々的なまちづくりを考える必要はない気がします。

「確かに、この10年人口はほとんど減っていません。ただ、茅野でも急激に少子高齢化が進んでいて。ピーク時には700万人ほどいた観光客も、現在は300万人に減少しています」

「茅野は移住先としては人気があるけれど、観光客の満足度は高いとは言えません。僕らはそこのギャップをどう埋めていくかを考えています」

そこで高砂さんたちが掲げたのが、茅野市らしい時間の流れを楽しんでもらう「ちの旅」という新しい旅のかたち。定番の観光名所だけをまわる旅ではなく、地域の人たちと交流しながら茅野ならではの暮らしや食を体験してもらう。

ちの旅を通して訪れる人と暮らす人をつなぎ、「茅野を第二のふるさとのように感じてくれるファン」をつくっていく。今後は国内外でも認知度を上げ、何度も茅野を訪ねる人を増やし、ゆくゆくは定住してもらうことを思い描いている。

ちの旅では、自然体験や商工技術を生かしたものづくり、郷土料理体験など地域の中で行うさまざまなアクティビティを用意し、滞在型の交流プログラムを提案。参加者はオーダーメイドの旅を体験できるそう。

2018年から旅のコンシェルジュを担う「ちの旅案内所」が開設され、少しずつオリジナルツアーの販売もはじまっている。

具体的には、どんなふうに働いているんだろう。

協力隊として、ちの観光まちづくり推進機構で働くクリスティーナさんにも話を伺った。

イタリアから1年間の語学留学をきっかけに来日し、山梨県にあるホテルで働いていたそう。遊びにいっていた長野で接する人たちの優しくて面倒見のいい人柄に惹かれて、移住を決めた。

「地域のためになる仕事を通して、自然とコミュニティに入っていけるような暮らしがしたかったんです。だからこの仕事はぴったりだなと思って」

地域の資源から、みんなが楽しめるようなプログラムを考えるのが主な仕事。なかでも食を通じて茅野のよさがわかる体験をつくりたいと考えていた。

だけど、最初はとても苦しかったそう。

「茅野の郷土料理を聞いても、そんなのないよって言われることが多くて。地域に対する誇りがほとんどないんですよね。それが悲しいなって思いました」

それでも、調べていくと少しずつ郷土料理が見つかった。地元の人には当たり前で、魅力あるものには映っていなかった料理も、クリスティーナさんから見れば大切な資源。

「たとえば、茅野の寒さを利用した保存食。寒天とか、凍み大根に凍り豆腐とか。フリーズドライと同じ原理なんです。茹でた食材を軒先に干して凍っては溶けを繰り返すうちに、しっかり乾いて保存食になっていきます」

この地域ならではの文化でもある郷土料理。なんとか残していきたいという思いで地域をまわっていたクリスティーナさんは、笹原という地区で同じ思いを持つお母さんたちに出会う。

それが、郷土料理部会のみなさん。この日も、一緒に取材に参加してくれた。

クリスティーナさんと部会のみなさんは郷土料理体験のツアーを企画することに。

「こういうふうにやってみませんか?と私がアイディアを投げかけて、それを元にみなさんが提案をしてくれます。ツアーは地元の人が主役なので、私たちはファシリテーターみたいな役割ですね」

ある程度形にできたら、モニターツアーを開催。これまでのモニターツアーのなかで印象に残っているのは、イタリアの大学生のことだという。

食を専門に学ぶ大学から30名もの学生がやってきて、手づくりかんぴょうの海苔巻きや凍み大根を煮たもの、それから寒天にさまざまな具材を入れる「天寄せ」などを一緒につくった。

ツアーは大成功。学生さんたちにとても喜ばれ、満足度の高いツアーが実現できたそう。

「参加者はもちろん、地元の人たちが楽しんでいたのが一番うれしかったんです。最初のモニターのときは、みなさん教えることもうまくいかなくて。でもその都度改善しながら、このときはすごく上手に進められるようになった」

「イタリアの学生が、茅野や郷土料理に興味があることに、みんな幸せそうで。自信も持ってもらえたと思います。私たちがやっていることは間違いじゃないなって思いますね」

部会のみなさんも、「本当に楽しかったよね」とうれしそう。なんだかお母さんが増えたみたいだとクリスティーナさんは笑う。

機構には、ほかにも13人の協力隊が所属。宿泊事業者と連携を取る人や、広告の担当、ウェブサイトの担当など、それぞれが専門の資格や経験を発揮しながら、組織を運営していくための役割を担っている。

「どの役割でも、みんなツアーの企画には関わると思います。売るためにもまずはどんなものか知らないといけないので」

「やっぱり、自分が本当にいいと思っているものを売れるのがいいですね」

本当にいいもの。

「そう。誰かがつくったよくわからないツアーじゃなくて、自分たちが本当にいいと思ってつくったものだから。自信を持っておすすめできます」

ここでは、仕事も働き方も自分たちでつくっていく。自分で課題を見つけて、やりたいと思ったことを提案していくスタイルだ。

それを実践しているのが、同じく協力隊の麗美さんです。

「私がメインで担当しているのが、ペンションでのアクティビティ。まずはすでに茅野で事業を展開されている観光事業者さんたちへの挨拶回りからはじめました。1年間で100件はご挨拶したと思います」

地元の観光事業者の間でも、観光客の減少に危機感はあるものの、ちの旅は長い目でまちの将来を見据えたプロジェクト。さらに、すでにリゾート地としてブランド化された地域をリブランドしていく取り組みは、理解を得るまでが難しいかもしれない。

「口下手な方も多いので一緒にお酒を飲んだりとか、何度も足を運んで、粘り強く話をするしかなくて。ときには反発が起きることも、本気でぶつかって怒ったこともあります」

「でもこちらの本気が伝わったから『やるよ』って言ってくれた人もいて。反発があるのも、そのエリアが好きな人がいるっていうことだと私は思っています」

働く人にも、強い思いがないと展開していかない事業だと思う。

なぜそんなに頑張れるのか聞くと、今のうちにやらないと手遅れになる、という気持ちが強いらしい。

茅野で活動をはじめてまもなく1年。少しずつではあるものの、手応えも感じている。

宿泊施設を運営している方々と、ペンションでの職業体験ツアーについて話し合っていたときのこと。

「金額面での議論になるかなと思っていたら、みなさんツアーの名前が気になると。“ペンションホームステイ”っていう名前では今の時代やりたいと思ってもらえない、“ちのリゾート宿”にしようって。1時間ぐらい話し合ったんです」

自分たちが届ける価値について真剣に考えてくれている。その気持ちがとてもうれしかったという。

「みんなで意見を出し合って、全員で進んでいく。小さくても、こういう気持ちをつくっていくのが、観光まちづくりなんだなって思います」

茅野にはたくさんの資源があり、プログラムとして活用しようとするとまだまだ人手が足りないのが現状。

そこで新たに、地元の農家さんと一緒に体験をつくっていく「農業体験」の担当者や、八ヶ岳をはじめとする自然の楽しみ方を地元のガイドとともに届ける「自然体験」の担当者を探している。

クリスティーナさんや麗美さんのように、すでに事業を始めている観光事業者さんや、地元の方から知恵をもらいながらツアー商品をつくっていってほしい。

ほかにも、体験プログラムをつくったら、次はそれを世界に発信し、届ける仕組みが必要になる。

現在はコンシェルジュが電話やメールで対応をしているものの、より多くの方にちの旅を届けるために、予約販売できるシステムを新たに構築中。

システムエンジニア経験がある人がいればぜひ担当してほしいし、隊員たちの活動を支える労務管理や総務の担当者も募集しているそう。関わりしろはたくさん用意されている。

茅野で動き出したばかりの観光まちづくり。

「地域の人と交流する旅」という新たな価値観をゼロから生み出していくには、一筋縄でいかないことも多いと思います。

それでも、やがて未来のまちづくりにつながることを信じて、ちの観光まちづくり機構では、関わる全員が自分なりに考え、活動していました。

自分にもできることがありそうだと感じたら、ぜひ仲間に加わってください。

(2018/6/12 取材 並木仁美)

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