求人 NEW

できることを増やしながら
長く深い付き合いを編む
まちの不動産建築屋さん

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「この住宅業界で、誰と働いても恥ずかしくない仕事をしていたいです。お客さまに喜んでもらうサービスなら、誰にも負けない。そんな気持ちで働きたいと常に思っています」

これは、住まいの松栄の社長・酒井洋輔さんの言葉です。

住まいの松栄は、横浜・妙蓮寺で58年続く小さな不動産建築会社です。

不動産の賃貸管理や、住宅の設計・建築、さらに古民家を活用したコミュニティスペースや、「おばあちゃんの家事付き」という珍しいシェアハウスの運用まで。

地域に根付いて、住まいに関するあらゆることを手がけています。

今回募集するのは、賃貸部門を担当するスタッフ。賃貸分野から住宅業界を学んで、ゆくゆくは興味がある分野で働いていけるようです。


 
渋谷駅から東横線に乗り、特急と各停で25分。横浜市にある妙蓮寺駅に到着する。

駅前に広がる小さな商店街を背になだらかな坂道を進んでいくと、5分ほどでお店を見つけた。

住宅街の中の、まちの不動産建築屋さんという感じ。

建物の写真を撮っていると、後ろから「こんにちは」という声。

振り返ると、社長の酒井洋輔さんだった。

ちょうど息抜きを兼ねて、外で職場に飾る花を選んでいたと教えてくれる。

話がとてもわかりやすくて、細かな気遣いも欠かさない方なんだと感じる。

松栄は、58年前に洋輔さんのおじいさんが創業した会社。建売分譲からはじまった仕事は、地域の方から住まいの相談に一つひとつ応えるうちに、不動産の仲介、建築と、徐々に広がっていったそう。

「ずっとこの地域に根付いてやってきて。いまも仕事ができているのは、祖父の代からの信用が大きいと思います」

「でも、僕にとって、不動産屋は世界一やりたくない商売でした」

えっ、そうなんですか。

「祖父の後を継いだ父と母も、やっぱり真面目に商売をしていたんです。でも強引な仕事を堂々とする人が業界にはたくさんいて。なんて怖い世界なんだ、と思っていました」

大学卒業後はCGデザイナーに。ところが、お母さんが体調を崩したことをきっかけに、家業を手伝うことになる。

最初はどのように仕事をしていけばいいのか、悩んだそう。

「当時、売り上げの大きな会社さんは、夜遅くまでお客さんに営業電話をかけたり、契約を迫ったりしていて。これからは自分もそうしなきゃいけないのかな、でも絶対にいやだっていう問答を繰り返していました」

それならば、自分なりの方法で仕事をするしかなかった。

「僕は無理に契約を迫るより、ちゃんとお客さまに喜んでもらえることがしたい。まず、お客さまに聞かれたことはすべて答えられるようになろうと思いました」

20代のうちに宅建士や建築士、住宅診断士など、さまざまな資格を取得。

接客のなかで、自分の仕事の方法も少しずつ確立していった。

「うちは、お客さまに営業トークをしたことが今まで一度もないんです」

どういうことでしょう。

「買ってください、借りてくださいとは言わないんです。その不動産の良い点と注意点をしっかりお伝えして、判断はお客さまにお任せする。ただ、絶対にお客さまのためにならないものは勧めません」

たとえば以前、「いい土地を見つけたから申込書をつくってほしい」と頼まれたときのこと。

一見して問題なさそうだったものの、よく調べてみると、周辺よりも坪単価が高く、再販するときに損をしてしまったり、起業予定の事業の許可が下りない可能性があることがわかった。

そのことを正直に伝えた結果、お客さんは購入をやめることになったものの、「松栄なら安心だから」といろんなお客さんを連れて来てくれるようになったそう。

ほかにもリノベーションを依頼されたときには、お客さんの細かな要望にすべて対応するため、職人さんに頭を下げて、何度も作業をやり直してもらったこともあった。

「時間も手間もかかるので、大変でした。でも最後、お客さまから『松栄さんなら必ず対応してくれるってわかっているから全部言えたんですよ』と言ってもらえて。すごくうれしかったです」

「きれいごとだと笑われるかもしれませんが、お客さまが喜んでくれたら、ちゃんと仕事は回っていく。お客さまに無理強いするときは、店を閉めるときだと本気で思っています」

目の前の案件を機械的にこなしていったほうが楽かもしれない。それでも、たとえ遠回りでも「この人なら大丈夫」と信頼を積み重ねていったほうがお互いに気持ちがいいし、結果的に長く深い付き合いになるのだと思う。

さらに、経験や知識が積み重なるにつれて、仕事の幅も広がっている。

たとえば、洋輔さんが企画から建物の設計まで手がけた「おばあちゃんの家事付きシェアハウス」。

一人暮らしのお客さんが多い地域性に着目して、家事と調理を担当してくれるおばあちゃんがいるシェアハウスをつくったらどうだろうと考えた。

予想は当たり、オープンから4年間、ずっと満室だそう。

さらに最近では、空き家となった古民家で、地域の人たちが料理を一品ずつ持ち寄る「もちより食堂」を開いたり、版権を借りて映画の上映会を開催したりと、地域の場づくりも行っている。

不動産建築を起点に、いろんな可能性が広がっているみたい。

「うちの仕事は全部、お客さまに喜んでもらえるか?というところからはじまっているんです。でもボランティアではないので『なんかいいこと』というふわふわした気持ちだけで仕事をするのはすごく格好悪いと思っていて」

「お客さまとコストの両方を見て、ちゃんとビジネスをする会社でいたいと思っています」

今回の募集も、そんな思いに共感してくれる人に出会いたいという思いからはじまったもの。

まずは不動産建築業の入口として、OJT形式で賃貸管理を担っていく。

具体的には、自社管理物件の契約手続きや入居者対応、賃料設定やリフォームなどの空室対策に、お客さんの部屋探しを手伝う仲介だ。

「賃貸管理は、バスケットボールでいうドリブルです。それくらい欠かせないもの。ちゃんと隣で伴走するので、まずは不動産建築業界の知識と経験を蓄えてもらいたいですね」

スタッフは7名。どの方も穏やかだし、質問もしやすいと思う。

ただ、洋輔さんをはじめ皆さんとても勉強熱心。受け身ではなく、自分から学びにいく姿勢が必要になってくるはず。

それに、お客さんに営業トークをしないというのも、なかなか大変だと思う。

「そうですね。営業トークをしなくても、お客さまに納得して次のステップに進んでもらえるような仕事を、という意味で、決して売り上げを立てなくていいということではありませんから」

そのためには、何が必要なんでしょう。

「常に自分をアップデートしていくことです。たとえば今は、ネット通販で宅配ボックスが1万円で買えるんですよ。これを知っていれば、予算をあげなくてもよりよい暮らしが提案できるかもしれないですよね」

賃貸管理の仕事が一通りできるようになったら、少しずつ自分の興味に合わせて仕事の幅を広げていってもらいたい。

不動産の売買や住宅設計、シェアハウスの企画など。興味と適性を見ながら、いろんな分野に携わることができそうだ。

「小さな会社なので、動きも早いです。やってみたいことがコストと見合っていれば、まずやってみる。でも思いだけじゃなく、きちんとビジネスとして考えられないといけません」

「住まいは絶対になくなりません。一人前の仕事ができたら、この業界で働くことがすごく楽しくなると思うんですよ」

 
続いて紹介してもらった高木さんも、未経験からはじめた一人。

賃貸管理業務を経て、いまは主に売買を担当している。OJTで、新しく入る人のサポートもしてくれる予定だ。

「転職活動中にここを知って。住宅業界の知識も土地勘もほぼなかったんですけど、会社の雰囲気が良さそうだったので応募しました」

縁あって入社した後は、まず洋輔さんや事務スタッフに教わりながら、賃貸管理を担うことに。

「必要となる知識量が多くて。土地や建物に関する知識や用語、条例や法令も。宅建の教科書はずっと読んでましたし、やりながら覚えていくことも多かったです。知識が身につくまでは、なかなか大変でしたね」

松栄では、賃貸の仲介はそれほど多くない。主な仕事は、物件の管理業務で、社員全員で共有するスタイルだそう。

「入居者から連絡があれば業者を手配したり、写真や文章で部屋の資料をつくったり。空室が長く続くようであれば、検索画面で目に留まりやすいようにアクセントクロスにしたり、場合によってはリノベーションを提案したりもします」

「この間も、半年ほど空いてしまっていた物件の賃料変更をオーナーにご相談して、下げさせてもらいました。自分で考えてやるべきだと思ったら、個人の裁量で進めることは結構多いですね」

仲介は、事前に予約してくれるお客さんがほとんどだそう。あらかじめ予算や希望などの条件を聞いておいて、3件ほどピックアップして案内する。

「日当たりや広さなど、一見して分かることはあえて推さなくても分かると思うので、すぐには分かりづらいデメリットをちゃんとお伝えします。安心して、納得して借りてもらうのが一番いいかなと」

そこでお客さんに安心してもらえる仕事ができたら、また来店してくれることもある。

「僕が売買契約をさせてもらった第一号のお客さまは、もともと賃貸で来てくださった方なんです。この街が気に入ったから、物件を買いたいということで、来店してくれて」

「道端で会って話しかけてくれたり、家族で楽しそうに生活している姿を見ると、やっぱり印象に残ります。つながりが続いていく仕事ですね」

シェアハウスや古民家活用といった華やかな面もあるけど、日々の仕事は地道なもの。物件オーナーとのやりとりや、書類作成といった細かな仕事が大半だという。

それでもコツコツ続けていれば、お客さんとの関係性が深まったり、少しずつできることも広がっていくような気がする。

「そうですね。やっぱり自分で考えて行動することが大事です。でも怒って教えたりすることはありませんから(笑)お客さまがちゃんと安心して住めるようなお手伝いを、一緒にしていきたいですね」


 
帰り際、洋輔さんのお父さんで、会長の政喜さんともお話することができた。

恥ずかしがり屋だそうで、照れ臭そうにしながらもこんなことを話してくれた。

「お客さまの顔がじかに見れる仕事だからね、どんな仕事をしたかは自分にも跳ね返ってくる。当たり前と思っていただけることを、当たり前にする。この仕事を50年間やってみて、それが大事なんじゃないかと思っています」

「やっぱり、正直に人に向き合っていける人。そんな人に来てほしいです」

まずは自分の仕事を、しっかりとやり遂げるところから。

その先で、いろんな可能性も広がっていくように感じました。

(2018/07/23 取材 遠藤真利奈)
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