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考えて、手でたしかめて、
繰り返す
生きている場をつくる

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

DIYをしたり、草木で布を染めたり、味噌を手づくりしたり。

なんでも手に入る時代に、あえて生活に手間をかけることを「豊か」だと感じる。

それは身の回りにあるものを自分の手でたしかめることで、暮らしを実感できるからなのかもしれない。

舞台は広島・尾道。

ここに自分たちの手で実験と検証を繰り返していく「LOG(ログ)」という場所が生まれます。

手がけるのは、尾道を代表する観光施設「ONOMICHI U2」を運営するディスカバーリンクせとうち。

LOGは瀬戸内ののどかな地域性を感じられるホテルやダイニング、地元の人もふらっと立ち寄れるカフェやギャラリーを併設し、ワークショップや映画上映など、人が集うきっかけとなるイベントなども開催していく予定です。

年内の開業を目指すこの施設の運営に関わっていく人と、食の部門を任せられる人を募集します。明確な役割分担をするというよりも、一緒に全体をつくっていくことになります。

大切にしているのは、常に考え、自分たちの手でつくり続けること。柔軟に変わり続ける、生きた場づくりがはじまっています。

 

 

東京から新尾道駅までは4時間ほど。

地名はよく耳にするものの、訪ねるのはこれがはじめて。新幹線に揺られながらどんな場所なのか検索してみる。

尾道は瀬戸内海に浮かぶしまなみ海道の入口として観光で訪れる人が多い町。

穏やかな海に面していることから、江戸時代には寄港地として賑わった。海を見下ろす山手には多くの豪商が居宅を構え、その庇護を受けた文化人も多く暮らしたそう。

幅のせまい石段を100段ほど登ると、尾道の町を見渡すことができた。

たどり着いたのは、昭和38年に建てられた3階建て鉄筋コンクリートの建物。中では何人もの職人が、黙々と改装作業をしている。

プロジェクトのリーダーを務める吉田さんが、案内しながら話を聞かせてくれる。

以前は東京でバーテンダーをしていたという吉田さん。レストランの立ち上げに誘われて広島に来たそうだ。

「町の様子に危機感を感じた地元の有志が集まって、ディスカバーリンクせとうちが生まれました。あらたな雇用を創出するために観光業に取り組みはじめたんです。6年ほど前から、この近くにある『せとうち 湊のやど』という貸家スタイルの滞在型施設や『ONOMICHI U2』の運営に取り組んでいます」

ONOMICHI U2は海に面した複合施設。

しまなみ海道へのサイクリングを楽しむ人が泊まれるホテルやカフェ、サイクルショップをはじめ、瀬戸内生まれの特産品が並ぶショップを併設。サイクリストや観光客から地元の人まで、休日にはたくさんの人が行き交う場所になっている。

「ONOMICHI U2ができる前、駅から西側は街灯もなくて、住民も歩かないような場所だったんです。今では20万人以上の人が行き来するようになりました。成功事例として紹介してもらうことも多いんですが、まだまだ試行錯誤を続けているんですよ」

ONOMICHI U2はテナントを入れず、自分たちで運営している。たとえばパン屋を運営するのもはじめてだったから、パンづくりを教えてもらうところからのスタートだったそう。

観光施設をいくつもつくっている会社のプロジェクトだと思っていたので、試行錯誤しながらつくってきた場所だと聞いてちょっと意外だった。

名の知れたテナントを誘致して場所を貸せば、お金を稼ぐスピードは早くなるという考え方もありますよね。

「それは50年先に残っているものではないと思うんです。僕たちは地域をどう残していけるのかを優先して考えます。ようやく地域のみなさんにも認めてもらって、尾道には日常の暮らしがあり、観光にも来てもらえる場所だというブランディングができはじめたんじゃないかな」

「海側の賑わいをつくることができた。次は山側だっていうとき課題だったのが、つくる過程で地域とどう関わっていくかということでした。僕ららしいやり方はなんだろうと考えているときに出会ったのが、ビジョイ・ジェインだったんです」

ビジョイさんはインドでスタジオ・ムンバイという建築集団を率いる建築家。オーガニックな素材や伝統的な工法を取り入れ、地域の職人の技を残していくためにも、1つひとつを手作業で進めることを大切にしている。

「彼とだったら僕ららしい賑わいのつくり方を考えていけるんじゃないか。つくる過程も開業後も、実験と検証を繰り返し続けることで未来を考えていく施設にしよう。そうしてプロジェクトがはじまったのが、もう4年も前のことになりますね」

実際に工事に取り掛かったものの、60年ほど前の建物は耐震補強をするだけでも数億円ものお金がかかることがわかった。1つひとつ考えるのに時間も必要で、事業を見直すために工事を止めていた時期もあった。

今は観光まちづくりのモデル事業として国のサポートを受け、無事準備を進められる体制が整ったそう。

吉田さんが大変なことも包み隠さずに話してくれるのが印象的だった。

「LOGは山の上にある千光寺に続く道の途中にあって、お寺をめがけて月に5万人が目の前を通ります。宿泊という機能だけではなく、観光で来た人や地元の人がふらっとお茶や庭だけでも楽しんでくれるような、多目的空間をつくろうとしています」

6室のホテルやダイニング、カフェ、ギャラリーなどの機能を併設。瀬戸内の食材や伝統技術、大切にされてきた生活の知恵に触れる機会をつくっていく。

着々と進む空間づくりの様子を聞いていると、海から山に向かって風が通る空間のつくり方や色彩は、どこかインドのゆったりとした時間を感じる。

「壁面の色を決めるのにも、色見本から選ぶんじゃなくて、実際に壁に塗ってみて考えます。人がどう感じてどう動くのかを検証しながら家具のサイズを決めたり、アメニティを考えたり。とにかく1つ1つを検証するんです」

中庭にはもともと、平屋の小屋があったそう。解体したときに出た瓦や土壁は、再生して施設のなかに取り入れていく予定。

「車が入れない場所なので、全部坂の下に降ろして破棄するぐらいならここで使おうって。土ふるって再利用しています」

「コンセプト的にも、コストの面でも。瓶に入った飲みものも石段を登って運んでいたら大変だから、継続していけるようできるだけここで育ててつくれるようにしていきたいですね」

庭でハーブを育ててドリンクや料理に使ったり、染色ワークショップをひらいたり。この地域らしいオリジナル家具やアメニティをつくって販売するのもいいかもしれない。

ホテルやカフェの運営をするなかで、訪れた人とどう関わっていくのかも、この場所らしい方法を考えていきたい。

「このあたりには化学肥料を使わない野菜や柑橘、お茶の農家さんや漁師さん、酪農家さんもいるんです。プロジェクトには料理家の細川亜衣さんにプロジェクトに加わっていただき、瀬戸内の食材を活かしたメニューを開発しています」

自分たちの手で検証して、考えて、つくっていく。

それは簡単なことではないし、とにかく時間がかかりそう。

「そうなんです。ダラダラ検証ばかりやっているうちに、商店街のシャッターが全部閉じてしまったら意味がない。ベンチャーなので、時間とお金のことも考えながらチャレンジし続けています」

新しく仲間になる人も、経験よりも考え行動していくことを求めているそうだ。

「町のためになることをまず考えて、そのあとお金がついてくる方法を死ぬほど考える。意見を言わないとうちの会社では埋もれます。自分がどうしていきたいかを考えながら、一緒に泥水飲んで汗かいていける人を探しています」

 

 

吉田さんとともに開業の準備を進めているのが、新卒で入社して2年が経つという中尾さん。

美大で建築を学びインテリアデザイナーとして内定をもらっていたものの、卒業直前の旅で訪れた尾道にひかれ、翌週にはここに引っ越してきたんだそう。

「街の人と密接に関わりながら空間をつくっていきたいと思ったんです。デザインをして納品して終わりではなくて、自分でもずっと運営しながら街に関わっていくような働き方をしたいなって」

最初の仕事は尾道水道が一望できる場所にある宿泊施設のお茶室をリノベーションすること。1人で予算やスケジュールを組むところからはじまった。

「たとえば床板はホームセンターで買おうと思ってたけど、お寺に行けばいい材料がもらえるって言われて。200年くらい前の分厚い板を引っ張り出してきました。重いしほこりがすごくって」

「足ですーっとなでても気持ちがいいくらいに何度も磨きました。大変でもつくるのは楽しいし、実際に使う空間を想像するのがワクワクします。LOGはその規模がとんでもなく大きくなった感じですね」

開業に向けてアメニティを決めたり、食事やイベントを考えるために農家さんとつながりをつくったり。建物の施工を手伝うことも少なくない。

最近は顔料と漆喰で壁を塗るワークショップや、部屋に使う手漉きの和紙を職人さんと重ねながら貼り合わせる企画を進めているそう。

「吉田さんになにをすればいいか聞いても、答えはくれないんです。ここでは待っているだけだと仕事がなくなります。LOGをつくるために今必要なことを自分で考えて動いています」

先日は机の上に、器がぽつんと置かれていたことがあったそう。

「ちゃんと備品リストをつくって、これもそのなかに入れてねっていうことだったんですけど。ヒントをもらって、そこから自分で考えて答えを出す練習をさせてもらっている感じです」

「自分なんかが考えても効率が悪いって思っていたこともあるんです。でもやってみて失敗しないと、次のレベルには行けなくて。多少遠回りしても考えて、たしかめながらやるっていうことの繰り返しです」

考えながら場所をつくるということはおもしろさがある反面、地道で、どこに向かっていいか不安になることもあるように思う。

「私のイメージではLOGっていう建物のなかにはファミリーが住んでいて。農業に感心が高いおじいちゃんおばあちゃん、野菜を使って料理をふるまうのが好きなお母さん。お父さんはDIYが好きで、子どもたちは映画や音楽を聞くのが好きで、月を見ながらヨガをしたりもする」

「その家にお客さんが遊びにくるような感じです。複数人のアイデンティティがある建物だから、年齢や性別でターゲット層を絞るわけではなくて。観光で訪れた人も地元の人たちも関わって広がっていくようなイメージがあります」

画面のなかの情報や誰かの経験談をなぞるのではなく、自分の手でたしかめて考える。そのときにいいと思うものを選ぶ。

そうやっていけば、いい空気が流れていくはず。

次に訪れるとき、LOGがどんな表情を見せてくれるのかとても楽しみです。

(2018/6/26 取材 中嶋希実)

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