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誰もが自分の持つ可能性を活かし、生きられる未来を。
そんなビジョンに向かって歩み続けている人たちがいます。
NPO法人soar(ソアー)のみなさんです。
障害者や難病患者、LGBT、貧困や虐待のさなかにいる人たち、広い意味では高齢者や妊婦さんなど。社会的マイノリティの人たちに焦点を当て、その可能性が広がるような事例や物語を伝えるWebメディア、soar。
最近では、企業の新人研修や教育機関での講演など、目指す未来に向けてメディアの枠を超えた取り組みも活発になってきています。
立ち上げから3周年を迎えるタイミングで、今回新たに迎えるのはプロジェクトマネージャーと編集部スタッフ。いずれもこれからのsoarをつくっていくのには欠かせない、大事なポジションです。
リモートワークや時短勤務など、働き方も柔軟に相談することができるので、自分なりの関わり方を想像しながら読んでみてください。
東京・目黒区。
地下鉄の池尻大橋駅から地上に出て、首都高速に沿って歩く。
道中には、目黒川が流れていたり、少しの緑があったり、小さな神社があったり。都会のまちなみのなかで見つけると、どこかホッとする場所がいくつかあった。
10分ほど歩いてたどり着いたのは、マンションの一室。
扉を開けると、ほんのりといい香りが漂ってきた。
代表の工藤瑞穂さんがお茶を淹れてくれているみたいだ。
「今soar teaをつくっていて。これはわたしの目分量ブレンドですけど(笑)、よかったら飲んでみてください」
席に座って、一口いただく。
ほっと落ち着くやさしい味。日本の在来種を使った伝統茶ブランド{tabel}と共同で、1日のはじまりと終わりに飲むお茶をつくっているのだとか。
「日常のなかでゆっくりと立ち止まる時間、自分を労わる時間をつくっていただきたい。元気になってほしい人にsoarのお茶を贈ることで、気持ちを届けてもらうのもいいですよね」
「それにお茶は五感で味わうことができるので、直感的にわたしたちの届けたい価値観や想いが伝わるんじゃないかなと思って。パッケージも、ものすごくかわいいんですよ」
Webメディアにはじまり、リアルな場でのイベントやお茶のような商品開発まで、今や多方面に広がりを見せるsoar。その原点はどこにあるのだろう。
話は10年前にさかのぼる。
「身内のひとりが統合失調症になってしまったんです。10年前といえば、うつ病ですらまだよく知らない人が多かった。わたしたち家族もうまく対応できなくて。あのときどういうふうにすればひどくならなかったんだろう、と思い続けていました」
当時、日本赤十字社に勤めていた瑞穂さん。退職後に東京でフリーランスとして働いていたときも、身近な友人から発達障害の悩みを相談されたり、LGBTの当事者であることを打ち明けられたりすることがあったという。
そんな折、北海道浦河町にある「べてるの家」に出会う。
統合失調症をはじめ、精神障害を抱える当事者が共同生活を送り、働く拠点にもなっている場所。そこでは一人ひとりが医師の診断とは異なる「自己病名」をつけ、 まるで“隣人”のように病と付き合いながら暮らしていた。
「困難に出会ったとき、“情報”を知らないせいで人生は大きく変わってしまう。こんな場所があることを、もっと多くの人に伝えたい。その想いがsoarを立ち上げる原動力になりました」
立ち上げにあたって、瑞穂さんは“人が持つ可能性が広がる瞬間を捉え、伝えていく”というコンセプトを打ち立てた。
「従来のソーシャルビジネスや福祉の文脈だと、素晴らしい活動はたくさんあるものの、『大変な人を助けよう』というような、どこか深刻で地味なイメージがつきまとうなと思って。だからこそ、誰もが普遍的に抱いている想いをコンセプトにできたら、と思いました」
瑞穂さんの軽やかなスタンスと、普遍的なコンセプト。これらが相まって、soarは業界やWebメディアといった“枠”を飛び越え、3年間でますます活動の幅を広げつつある。
「企業の新人研修や新規事業創出に関わってほしい、というご依頼も増えてきました。小学校や大学など、教育機関での講演の機会もあります。立ち上げ当初には想像もできなかった人たちが、わたしたちの活動に賛同して協力してくださっていることを実感しますね」
サイトを訪れる人は毎月約30万人、活動を支えるサポーター会員の数は550人を超えた。
全国各地で開催するイベントやワークショップの参加枠が一瞬で埋まってしまうことも。
また、数字に表れない広がりもある。
「SNS上では『記事を読んで励まされた』という声がもっとも多いですね。記事をきっかけに自分の抱えていた病気や障害に気づいて治療をはじめた人や、見知らぬ人同士が『この記事を読んでみて』と、贈りもののように記事を届ける場面もよく目にします」
病院で治療中の人や、遠く離れた人ともつながれるのがインターネットのいいところ。
一方的に情報を受け取るだけでなく、誰もが双方向にコミュニケーションをとり、回復の物語や体験を共有できるように。
自身の状態や病名がわからなくて不安なときにも、Googleではなくsoarで検索できるように。
今後は、そういった社会インフラの一部となるような存在を目指していきたい、と瑞穂さん。来年の春にはWebサイトのリニューアルも予定しているそうだ。
「インフラのように使っていただくには、わたしたちの活動を一緒に支えてくださるサポーター会員の数も、soarの読者の数も、もっと増やしていきたいと思っています。soarをもうひとつ、ふたつ上のステージに進めるための仲間を増やしたいです」
今回募集するプロジェクトマネージャーと編集部スタッフは、そんな新しいsoarを一緒につくっていく一員となる。
「NPOだからこれぐらいしかできない、という線引きはしないですね」
そう話すのは、理事の碇和生さん。
「しっかりと目標設定をして、サービスを伸ばしていく。それこそsoarに関わる人たちのためだと思うので」
とはいえ、soarではWebメディア運営のセオリーともいえる記事広告や有料会員制を取り入れていない。自分たちがいいと思う情報を、まっすぐに届けたい。困ったときには、誰でも無料でアクセスしてほしい。そんな想いがあるからだ。
だからこそ、収入面ではサポーター会員からの寄付が重要になる。今年から法人会員の受付もスタートした。
「細かく設定している目標のうち、今すごく重視しているのがサポーター会員数です。それはつまり、ぼくらの活動はどれだけの方に賛同してもらえているのか、という具体的な指標になります」
現在の会員数はおよそ550人。これから7年の間に、数十倍までその数を増やすのが目標だそう。
定期的に説明会を実施したり、サポーター会員限定のオンラインコミュニティを運営したり。これまで続けてきた地道なアプローチも継続しつつ、今後はウェブマーケティングに力を入れて、事業全体の改善に取り組んでいく。
「ぼくらはNPOでありつつも、ビジネスとしてのスピード感やスケーラビリティを考えて推進していく姿勢を大事にしています。年齢は気にしません。チームのお父さん、お母さん的な存在の方でもいいと思いますよ」
とくにプロジェクトマネージャーは、同時進行していくプロジェクトの管理・推進、企業との協働やファンドレイズなど、幅広い能力が求められる。
ハードルは高いし、タフな仕事だと思う。ただ、ここでの経験は、のちのちどんな仕事をするとしても活きてくるはず。
続いて話を聞いたのは、瑞穂さんと公私ともにパートナーであるモリジュンヤさん。
このオフィスは、ジュンヤさんの経営するInquire.Incとシェアしているため、「今回募集する人とも顔を合わせる機会は多くなりそう」とのこと。
「この環境に飛び込めば、自分が変われるんじゃないか?という受け身の姿勢の人はフィットしないと思います。自分の成長がsoarの成長につながる、というくらいの気概がないと、結構大変じゃないかな」
碇さんの話にもあった通り、「NPOだから」という枕詞はsoarでは通用しない。
新しく入る人に求めるものもとても多い気がするのだけど、ジュンヤさんは、そしてsoarは、いったいどこへ向かおうとしているのだろう。
「ぼくらの学生時代は、フローレンスやカタリバといったソーシャルベンチャーが立ち上がって数年経ったタイミングでした。ただそれ以来、ある程度のスケールをもった次世代のプレイヤーって、あまり出ていないんですよ。だから、soarが成長することで、後続や同世代にポジティブな影響を与えられるような立場を確立したい」
「もうひとつはグローバルですよね。やっていることは国内限定のテーマではないので、どうやって国外に伝えるかとか、世界の情報をどう日本で届けるかってことは、やっていくべきなんだろうと」
たしかにsoarは、NPOやソーシャルといった領域を超えて、今後より大きなムーブメントになっていく可能性があると思う。
そうなったとき、メディアが独立自走していくためにも、編集部スタッフの存在は欠かせない。
最後に話を聞いたのは、LITALICO発達ナビの編集長で、soarでも編集・企画を中心に関わっている理事の鈴木悠平さん。
悠平さんは、発起人である瑞穂さんと一緒にsoarの世界観をつくってきた。
気になっていたことのひとつが、記事の長さ。ほかのさまざまなメディアと比べても、一つひとつの記事がとても長いのはなぜなのだろう。
「ひとの人生をサマライズするというのは非常に難しいし、ある意味乱暴なことでもあるので、あれでもだいぶ凝縮はしていて」
「それにあれだけの長さがあることで、病気や障害の名前を同じくしない人にも届くんですよね。病名は違っていても、その人が経験した痛みや悲しみ、喜びや希望。”心の形”では共通点を見出すことができるし、長いと人それぞれの接点が生まれやすくなる」
最近、体調を崩したという悠平さん。過去のインタビューでの話と自分とを重ねて、救われるような経験もあったという。
「なんだろうな。僕がずっと言いたいのは、弱いままでも生きていける、みたいなこと。100点満点とはいかないけれど、生きていけそうだなっていう、小さな希望を絶やさぬように働いていきたいです」
「今後編集部に入ってくれる人も、soarがこれまで積み重ねてきたものを生かしつつも、その人らしい色を新しく加えていってくれるとうれしいですね」
soarの周りには専門家がたくさんいるし、産業医によるカウンセリングやコーチングを受けることもできる。いろいろと抱え込みがちなマネジメント職だからこそ、この環境を活かして働いてほしい。
最後に、瑞穂さんの言葉を。
「まだはじまったばかりの組織なので、全員起業家!ぐらいの気持ちで働ける方。あとはやはり、“soar”な価値観を持っている方。人の様相も、価値観もどんどん変わっていく時代なので、人の可能性を活かして生きていける社会ってどんなふうだろうと考えて、人のために動ける方。そこが一番ですね」
より高く、羽ばたいていけるように。
このチームの翼となる人を求めています。
(2018/10/26 取材 中川晃輔)