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心を尽くし
日々、自分を磨く
150年続く宿の紡ぎ人

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

長野県、野沢温泉。

山のふもとに位置し、冬はスキー客で賑わう温泉地です。

坂の多い村の中を歩くと、地域の有志で管理している共同浴場がいくつもあったり、源泉で野菜や卵を茹でる人に出会ったり。観光地でありながら、地域で暮らす人たちの体温を感じることができます。

そんな野沢温泉で、温泉旅館「住吉屋」は明治2年から営まれてきました。

来年で創業150周年と長い歴史を持つ、あたたかな雰囲気が印象的なお宿。

今回は、接客を担当する仲居さんと、裏方として宿を支える番頭さんを募集します。


野沢温泉への窓口となる飯山駅は、東京から北陸新幹線で2時間弱。駅前からバスに乗り、20分ほどで野沢温泉バスターミナルに到着する。

お土産屋さんや民宿、飲食店が並ぶ通りを10分ほど歩くと、坂の上に趣のある建物が見えてきた。

ここが、住吉屋。

「遠くまでありがとうございます」

出迎えてくれたのは、住吉屋の7代目で女将の高木美穂さん。

館内の一室に案内してもらい、お話を聞いた。

「正式に跡を継いだのは17年前です。女将と言っても、掃除や買い出しまでなんでもやりますよ」

とても気さくでフレンドリーな高木さん。

館内の雰囲気も、格式高さよりもどこかほっとするような懐かしさを感じる。

「うちは着物の方が並んで出迎えるような高級旅館ではありませんし、仰々しいおもてなしもしていません。あたたかい雰囲気のなかで、ほっとできるような過ごし方をしていただければと思っていて」

「こちらが緊張していると相手にも伝わりますから、スタッフも自然体でお客さまに接しています」

住吉屋は、客室が全14室で従業員も15人。小規模だからこそ醸し出せる、アットホームな雰囲気がある。

「旅館の仕事は、人に興味のある人に向いているなと思うんです」

「お客さまの表情や動き方を見て、いろいろなことを判断するので。具合が悪そうだから休みたいかなとか、お腹が空いているようだから料理は早く出したほうがいいかなとか。慣れてくると、目の前の人と話しているときでも、隣の人が困っていたら気がつくようになります」

そんなふうに思いやりをもって相手に接していける人なら、自分自身も学べることはたくさんある。

「自分たちがここにいながら、いろいろな人と出会えることが旅館の魅力のひとつです」

「すごく物知りな方に出会ったり、訪れたことのない旅館や土地の情報を教えてくれる方がいたり。自分から出かけていかなくても刺激を得られるのは、お客さまとの距離が近い旅館ならではだと思います」

宿泊することは、その土地に1日住むことでもある。ほかの接客の仕事と比べても、お客さんと接する時間は長く、深いものとなりやすい。

「旅館は衣食住全部に関わるんです。食事からお風呂、寝具まで、起きてから寝るまでの全部に関わる。だからこそお客さんから学べることや刺激になることがあって、面白いのかなと思います」

高木さんが従業員に求めるのは、日々いろんな刺激を受けて、自分を高めていってほしいということ。

「ここは、お客さまやほかのスタッフからいろいろなことを吸収して、自分を高めていける職場だと思います。和気あいあいとした仲のいい職場なんですけれど、それだけではなくて。凛とした上品さや、成長したいというモチベーションは常に持っていてほしいなと思うんです」

どうすればここで成長していけるのか、自分なりに日々考えながら働いてほしい。

ここでの仕事を、ステップアップのひとつと考えてもいいという。

「でも次の場所に行くなら、入ったときよりも成長していてほしい。『住吉屋で働いていたんだから大丈夫』って、自信を持って次に行けるくらいにはなってほしいですね」


実際に働く人たちにも話を聞いてみる。

仲居として働く富井さんは、野沢温泉村が地元。実家は、住吉屋から歩いて5分くらいのところで商店を営んでいる。

「大学進学のときに実家を出て、卒業後は別のホテルで働いていました。そこを退職して野沢に戻って、スキー場で働いていたときに、女将さんに声をかけていただきました」

女将さんの息子さんと同級生だった富井さん。村には知り合いが多くいる。

「地元なので気が緩む部分はありますけど、息苦しさは感じません。スキーシーズンは海外からのお客さまが多いので、大学で勉強していた英語も活かせるし、できることは意外とたくさんあるように思います」

日々の仕事はどんなことをするのだろう。

「朝は朝食の時間に合わせて7時に出勤します。そのあと客室の掃除をして、12時には一旦休憩で家に帰ります。今度は夕方の4時に来て、夕食の準備と片付けをして9時前には上がります」

シフト制で夜中に働くようなことはなく、勤務時間は規則的。それぞれの仲居さんが、1日2組のお客さんを迎えてチェックアウトまで担当する。

新しく入社する人は、最初の数週間は先輩に付いて仕事を教わり、食事の準備や掃除、お茶の注ぎ方を覚えていく。

富井さんは、ここでの仕事をどう感じているんだろう。

「以前働いていたホテルは上下関係が厳しかったので、宿泊業はどこもそうなのかなと気構えていました。でも住吉屋にはそういう厳しさはなく、穏やかで安心しています」

「冬は忙しいけれど、都会のような目まぐるしさはないし、いろいろなことを考える心の余裕があるように思います。自分が将来やりたいこととか、欠点や長所はなんだろうとか、自分を見つめ直せる。今は、自分の得意なことと苦手なことのバランスをとって働いていきたいなって考えています」


同じく仲居の川村さんは、遠く高知県の出身。以前は地元で接客の仕事をしていた。

「『長野県の温泉宿で働いてみたい』っていう思いがあって、ピンポイントで転職先を探していたんです」

何度か旅行で訪れた長野の温泉旅館。信州の山の雰囲気や、フレンドリーな地域性が好きだった。

3軒ほどの候補のなかから、住吉屋のあたたかい雰囲気に惹かれたそう。

「ここは野沢のなかでも隅っこで山に近いので、ひっそり経営しているのかと勝手に想像していました。そうしたら若い従業員の方も多くて、意外と華やかな感じで(笑)」

「面接をしていただいたときも、友だちになれそうって思うくらい、女将さんが気さくにお話してくれて。遠方から来ていて緊張もしていたので、すごくほっとしたのを覚えています」

移住することへの不安はなく、高知とまったく違う暮らしがむしろ新鮮で楽しかったそう。

「雪が当たり前に降る生活がはじめてで。1日で1メートルくらい積もるんです。真っ白な冬の景色もきれいだし、雪が溶けた春にはまったく景色が変わる。都会的な便利さはないけれど、村の中で四季の変化や季節の恵みを楽しめるので、毎日楽しく過ごしています」

住吉屋で働いて7年になる川村さん。

印象に残っているお客さんのことを教えてくれた。

「こだわりの強い常連さんがいて。全然気を遣わなくていいからねっておっしゃるわりに、『こたつのコードは巻かずに伸ばしておいてください』とか細かい要望があるんです(笑)」

浴衣のサイズから、部屋にあらかじめ用意するものまで。すべてデータに残しておいて、次回は先に整えておく。

気持ちよく過ごしてもらうために心を尽くすから、お客さんは何度も帰ってきてくれる。

「その方はおしゃべりもすごく好きで。いつもいろいろとお話しさせていただくので、お見えにならない年があると気がかりなんです。こういう出会いがあるから、直接お客さまの声が聞けて、顔の見えるお仕事はやっぱり面白いなと思います」


最後に話を聞くのは、3年前から番頭として働く岡沢さん。

出身はここから1時間ほど離れた長野市。前職時代は大阪で働いていた。

「長野に帰郷するとき、電車からいつも北アルプスの風景が見えて。都会のざわざわしたなかで、これからもずっと働くのは違うのかなと思ったんですよね。旅館で働きたかったというわけではなくて、単身寮もあるし山も近いしいいなっていうのがきっかけでした」

仲居さんと同様、番頭さんも1日の勤務時間は固定されている。玄関やお風呂の掃除、布団敷きや片付け、食器洗いなど裏方の仕事がメイン。

お客さんと接する機会が少ないなかで、大切にしているのは、相手の気持ちを思いやること。

「毎日、お客さまの食事中に、布団を片付けるため部屋に入ります。そのとき使用済みのコップを見つけたら片付けると、マニュアルでは決まっている。けれど、もしそこに水が少し入っていて、近くに薬が置いてあったらあえて片付けません」

お客さんが食事から戻って来て、これで薬を飲むんだろうな、と想像を働かせる。

自分がお客さんの立場だったら、残しておいてほしいのか、片付けてほしいのか。事務的に処理するのではなく、そこにものが置いてある意味を考えながら、細やかに対応していく。

「僕はお客さまと接することが少ないので、その分従業員同士のコミュニケーションを大切にしたいなと思っています」

積極的に周囲のスタッフに話しかけて場の雰囲気をつくったり、沈んでいる様子の後輩がいたら話しかけてみたり。

とくに、日々一緒に仕事をする先輩の番頭さんの力になりたいというのが、岡沢さんのモチベーション。

「先輩の動きをよく見て、常に思いやりを持って動くと、だんだんと打ち解けてきてくれて。もちろん空回りして失敗するときもありますよ。でも、なんでも一人で頑張ってしまう方なので、少しでも助けになれたらなと思っています」

「働くなら、自分なりの目標をつくって仕事をするようにしたほうがいいと思います。僕も、ここにいるなら、一つでもなにか残そうって思いでやっています」


150年続いてきた旅館、住吉屋。

それは決して無理に存続させてきたわけではなく、一人ひとりが真摯にお客さんと向き合ってきたから、自然と続いてきたのだと思います。

ここがひとつのステップになる人にも、ずっと働き続けたいと思う人にも。

住吉屋で働くことは、人としての成長の糧になるのかもしれません。

(2018/10/19取材 増田早紀)
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