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ゲストハウス、レストラン、カフェ、ショップ…
古い建物の利活用が盛んになり、魅力的な空間が次々に登場しています。
どこも洗練されたデザインで、センスよく情報発信している。ただ、そういった場所もだんだんと増えてきたように思います。
これからはどこで差別化されるのか。それは“人”かもしれません。
ちょっとした会話が楽しいお客さん、久々に会いに行きたくなる店員さん、ゆるくて心地良いコミュニティ。
そんなところには何度も通いたくなるものです。
株式会社R.projectはまさにそんな場所を生み出している会社だと思いました。
今回はR.projectが運営する合宿所のスタッフを募集します。
舞台は富士山の麓、山中湖村にある清風荘という施設です。
接客業や宿泊業の経験は必須ではありません。
ホテルや旅館とは一味違う宿泊施設に人を集めるには、どうしたらいいのか。固定観念にとらわれずに、新しい施設運営のあり方を一緒につくっていける人を求めています。
東京・JR馬喰町駅のすぐ近くにある『Train Hostel北斗星』。
惜しまれつつも引退した寝台列車『北斗星』をビル1棟まるごと使って再現した、これまでにない新しいホステルだ。
企画・運営しているのがR.project。解体直前だった北斗星をホステルとして蘇らせることを提案し、 JR東日本グループ協力のもと実現したプロジェクトだという。
このビルの7階にあるR.projectの東京営業所で、まずは代表の丹埜(たんの)さんに話を伺った。
R.project は地方にある未活用不動産を活かして合宿施設をつくりだしたり、Train Hostel北斗星のようなバジェットトラベラー向けの宿泊施設を運営したりしている。
最近は新たに教育事業をはじめようとしていて、自社の合宿所を拠点にサマースクールを開催したり、インターナショナルスクールを開校することを計画しているのだという。
「これまでとは少し違うことをはじめるんですね、と言われることがあるのですが、事業同士のシナジーはすごくあると思っていまして。根底にある考えも一緒なんです」
根底にある考え?
「ええ。世の中には決め付けられてしまっていたり、誰もが『当たり前だ』と思ってしまっていることがありますよね。たとえば教育。日本のほとんどの学校では受験に向けた勉強になってると思うんですよ」
「だけど、受験って通過点でしかない。本来であれば、社会に出て活躍するためとか、豊かな人生を送れるように教育ってあるはず。でも子どもたちは何のために勉強しているのか腹落ちしていないし、先生も説明できていないんです」
そこで丹埜さんたちは、既存のカリキュラムにとらわれないインターナショナルスクールを日本に広げていくチャレンジを開始する。
「学校は5教科が普通だとか、みんながそうやってるからって問い直さないことが多い。けど、そういうところにこそ可能性を見出すことができるんじゃないかって。教育は全国民に関わることなので、ビジネスとしてのチャンスも、社会的な意義もすごくあると思うんです」
丹埜さんたちが掲げる言葉のひとつに「Rediscover Japan」がある。
社会の固定観念に問題提起し、日本のポテンシャルに可能性を見出す。それがR.projectのミッションだ。
創業当初から展開している合宿事業も、地方にある使われていない公共施設や遊休不動産を有効活用しようとはじまったもの。
「過疎地だから難しい」「単価の低い学生相手の商売は難しい」と言われていたが、しっかり施設をプロデュースすることで集客を増やしてきた。
年々施設数も増やし、今や9つの合宿所を全国各地で運営している。
人気の秘密は何なのだろう。
「ただ箱物を提供するだけではダメなんです。施設を常にきれいにしておいたり、食事が美味しいことも必要だけど、何よりも大事なのは合宿所がお客さんをパートナーとして迎え入れることができるかってことで」
パートナーとして?
「ええ、実際にサッカーの練習の手伝いをするわけではないですよ。でも、お客さんと一緒にすごく楽しくてワクワクするような良い合宿をつくりあげるんです」
それは一体どういうことなのだろう。
詳細を話してくれたのは、清風荘でスタッフを務める諸橋さん。
たまたまこの日は東京にいるとのことで、そのまま東京営業所で話を伺った。
清風荘があるのは山梨県山中湖村。
山中湖周辺は標高1000mと高い場所に位置しているので、避暑地のほかにも夏合宿のメッカとして知られている。
清風荘は17面のテニスコートと2つの体育館、そしてプロジェクターや大型モニターなどを備えた研修棟があり、最大170名が宿泊できる大きな合宿所だ。
お客さんの多くは大学生の部活やサークルで、企業研修にもよく使われるという。
諸橋さんは清風荘の予約管理から清掃、簡単な調理まで、合宿に関わるありとあらゆる業務を担当している。
「仕事の流れとしては、まず予約の時点でお客さまに何を目的にされているのかを伺います。一口に合宿と言っても練習をガッツリやりたいのか、飲み会をメインでやりたいのか、お客さまによって全然違うんですよ」
お客さん側もそんなことを聞かれるとは思っていないものだから、驚かれることが多いそうだ。
でも丁寧に話を聞いていくと、卒業する先輩のために何かサプライズをしようか迷っていた、といった幹事の学生の悩みが見えてきたりする。
「じゃあ、せっかくだからやろうよって。たとえば駐車場でビールかけができるよって提案するんです」
「ビールとブルーシートはうちにあるから、養生と片付けは自分たちでやってね、匂いがするからほかの団体さんと会ったときには『すみません』とか言っておくんだよって」
もちろん宿泊や施設に関する要望にもできる限り応えるようにしている。
学年ごとで部屋を細かく分けたい、練習所はほかの団体から離れた場所がいいなど、要望は実に様々だ。
「お迎えしてからは、お客さまの行動を見るのも大事です。合宿では食事の前に大切な話をされることが多いので、調理場での洗い物の音が響かないようにドアをそっと閉めたり。耳をすませて終わったなと思ったら、片付けの準備をはじめたり」
予約客を型どおりにはめ込むようなことは絶対にしない。
「最初にお客さまをお迎えするときは、自分たちだけの合宿と思わないでくださいって言うんです。私たちも含めて一緒にいい合宿にしましょうって」
ただ夏の繁忙期は目が回るのほどの忙しさだという。毎日170名のお客さんが入れ替わり立ち替わりする。
そうなると、細かなところまで気が回らなくなってしまわないだろうか。
「たしかに夏になると難しいです。でも、私は自分のやってることがサービスだと思ってなくて。普通のことだと思ってやっているから、忙しいのに気も遣わなくちゃいけなくて大変、とは思わないんです」
普通のこと?
「たとえば家族や友達が困ってたら手助けしますよね。そういう感覚に近い。だからタメ語で話すし、ルールを破れば怒ることもあるんです」
「この前も、夕食の唐揚げをつまみ食いした子がいて、お盆ではたいて叱りました。さとし!ダメでしょ!って(笑)」
叱ったエピソードの数々を、諸橋さんは懐かしそうに話してくれる。まるで我が子が成長していく様子を語るお母さんみたい。
お客さんにはよく「家族経営ですか?」と聞かれるそうだ。
「誰も血が繋がってないんですけどね(笑)」
「お客さまと話すのは本当に楽しくて、この仕事がすっごく好きなんです」
ちょうど昨日の夜は、企業研修に来ている2人の新入社員の男の子がフロントに遊びに来てくれたそう。
一般的なホテルや旅館であれば、フロント内にお客さんを入れることはないけれど、諸橋さんたちはいつでも遊びに来てほしいとお客さんに伝えている。
そこで若者の悩みを聞くこともあれば、一緒にお酒を飲むこともある。昨日は夜の9時から2時間話し込んだそうだ。
“一緒に良い合宿をつくる”とは、こういうことなのだろう。
合宿に訪れたお客さんから、次はプライベートで遊びに行きたいと連絡がくることもあるそうだ。夏にはお客さんと一緒にキャンプをする予定が入ったり。
「清風荘では、いろんな出会いがあるし、いろんな人とお話ができるし、その人たちの成長も見られる。昨年はペーペーだった学生の子が、今年は幹部になって指導していたりするんです(笑)」
「この仕事をして、私って人が好きなんだなって。だから人が好きな人に来てもらえるとうれしいなって思います」
今回募集する人は諸橋さんと共に、清風荘の顔として活躍してほしいという。
今度は清風荘マネージャーの吉井さんの話を伺うために、清風荘を訪ねることにした。
新宿バスタから富士急行バスに乗って約2時間。大きな富士山を眺めながら、山中湖平野というバス停で降りる。
清風荘はここから徒歩数分のところにある。
エントランスの扉を開けると、マネージャーの吉井さんが笑顔で迎えてくれた。
「どうぞ、楽にして座ってください」
フロントの奥でゆっくりしながらお茶をいただいていると、仕事を忘れていろいろ話したくなってくる。きっとコタツのおかげというよりも、吉井さんの親しみやすい人柄がそんな気分にさせるのだろう。
お客さんがフラっと遊びに来たくなる気持ちがよく分かる。
「僕らもお客さまと一緒にいるときが一番楽しいんですよ。どんなに忙しくても、お客さまがフロントに来てくれたら疲れが吹っ飛ぶんです」
前職ではリゾートホテルで働いていたという吉井さん。
その前は求人会社やゲームソフト製作会社で営業をしたり、もっと昔はバンドを組んでギターボーカルもしていたそうだ。
R.projectには3年ほど前に入社し、2017の5月から清風荘のマネージャーを務めている。
働いてみて、どうですか?
「まだまだ課題がありますね。このあたりは住宅が少ないので人員を揃えるのが大変だし、雪が積もる冬、とくに1月なんて予約が1件もなかったりするんですよ」
「この募集で人手が増えればもっと自分たちから仕掛けることができると思うので、たとえば冬に雪を使ったアクティビティを提案するとか、そういうクリエティブなことも一緒にやっていきたいです」
きっと清風荘を一緒につくり上げていく意識を持てる人だと、吉井さんたちと上手くやっていけるような気がする。
スタッフの諸橋さんも、自分の宿だと思って働いている、と話していた。そうやって責任を持って仕事をしたほうが楽しい、とも。
「清風荘もそうだし、うちの会社もまだまだいろんなところが足りていないんです。けど、すごく柔軟な会社だと思う。批判するよりは『じゃあどうする?』と考えられると、面白く働けると思うんですよね」
様々な固定観念を覆そうとするR.projectには、がちがちのマニュアルもルールもありません。
清風荘に人を呼び込むためにはどうしたらいいのか。きっと時間はかかるだろうけれど、いつしか多くの人に愛される場へと成長していけると思います。
(2018/4/12 取材 2019/3/26 更新 森田曜光)