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子どもの学びを支える
そのためなら、小学校と塾に
垣根はいらないと思う

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

学校と、学習塾。

両者の間には、少し距離があるように思います。

自分の学生時代を思い出しても、学校の補習と塾を天秤にかけたり、学校と塾のアドバイスの違いに迷ったり。学校の先生には、塾のことをなんとなく言いづらかった記憶もあります。

そもそも、生徒の学びをサポートするという目的は同じはず。もっと一緒に何かできないだろうか。

そんな思いを持って、塾と学校の垣根を超えてゆこうとしている人たちがいます。

学習塾あすなろ会。北海道釧路市に44年続く学習塾です。

あすなろ会はこの夏、釧路市の隣町・白糠町(しらぬかちょう)の小学校内に、放課後学習の場をつくることになりました。

スタートは、小学校の夏休みが明ける8月下旬。この取り組みについて、あすなろ会の講師である種村吉晃さんはこんなふうに話していました。

「学びを通して、子どもの成長を見守る。学校と塾が同じ目標のもと力を合わせるというのは、これからの教育のあるべき姿なのかなと思うんです」

今回は、講師を募集します。本人の希望と適性を踏まえて、小学校か塾のどちらかに配属になるとのこと。

老舗塾の新しい挑戦が始まろうとしています。


土曜日の朝一番の便で、羽田空港を飛び立つ。

飛行機に乗って1時間半ほどで釧路空港に到着。そこからさらに車を走らせて、釧路市街へと向かう。

空港から30分ほどで、取材場所の駅前教室に着いた。

土曜日の午前、まだ生徒のいない教室はとても静か。

案内された打ち合わせスペースで待っていると、「どうも、どうも」と会長の種村寿人(としひと)さんがやって来た。

「今朝、釧路に着いたんでしょう。いやあ、遠いところご苦労さまです」

まっすぐな視線と、豪快な笑顔が印象的な方。

カメラやレコーダーの準備をしていると、お茶を運んでくれた方が「子どもたちにも『ねえ、会長!』って呼ばれているんですよ」と教えてくれた。

ずいぶんと身近な会長ですね(笑)

「あはは。僕は子どもにすべて見せちゃうんだよね。自分の弱みも晒すし、ふざけたりもする。すると生徒は面白いからまたやって!って来てくれるんですよ」

「今も生徒に教えていますよ。僕は英語です。子どもは分からないときは分からないってはっきり言うし、ごまかしもきかない。そのぶんこちらが頑張れば一所懸命応えてくれる。すごいなあって、40年以上やってきて未だに思いますよ」

あすなろ会は、44年前にここ釧路で生まれた学習塾。

東京の大学を卒業したのち故郷に帰ってきた種村さんが、友人と二人で開いた小さな英数塾がはじまりだ。

当時はまだ、学習塾が一般的でなかったころ。「勉強は学校に任せればいい」「塾なんて開いてもしょうがない」… さまざまな人に反対されながら始まった塾は、少しずつ結果を積み重ねていく。

そして今や、釧路でトップの実績を持つ学習塾となった。

現在は釧路市内を中心に16校舎を構え、小学生から高校生まで数百人が通っている。高校受験では、市内上位3校の3人に1人が塾生だという。

「講師はおよそ40人です。いろんなバックグラウンドの人がいて、それぞれのキャラクターで教えていますよ。テキストも講師で分担してつくっていて」

そう話しながら、英語のテキストを開き始める種村さん。

「ほら、授業始めるぞー!なんてね。“We call him Ken.” 我々は彼をケンと呼ぶ、ってやつだね。どう、思い出してきたでしょう」

楽しそうに解説してくれる。教えることが本当に好きなんだな。

「ずっと現場にいなきゃいけないと思うよ。この44年間、時代も子どもも変わってきた。少子化という厳しい状況のなか、我々も常に変化が求められていると思います」

「だから白糠で始まる新しい取り組みは、本当にすごいものになるんじゃないかって思うんですよ」

釧路市の隣町、白糠町。

あすなろ会は8月から、この町の3つの公立小学校それぞれに入って、学校と連携した学びの場をつくり始めようとしている。

白糠町は、町長を筆頭に教育にとても熱心な町。

日本仕事百貨でも紹介した『白糠高校魅力化プロジェクト』など、町をあげて教育の質の向上を目指すなかで、小学生にもよりよい学びを提供したいと、あすなろ会に声がかかったのだそう。

「学校と塾が協力するなんてあり得るのかって思いましたよ。でも我々が白糠に行くことで、勉強が好きになる子、成績が伸びる子が増えたらどうだろう。すごく夢が広がると思ったんですよ」

あすなろ会は、1校につき1名の講師を派遣。校内に「放課後学習室」を開いて、子どもたちの学習をサポートしていく。

目指すのは、新しい形の放課後学習。

塾のノウハウや講師のキャラクターを生かしながら、子どもが思わず通いたくなるような場をつくりたいという。

「これはただの塾では終わらないぞと。地域貢献、町おこしにつながると思ったんです。そこで今回、志を持った仲間を全国から募集したいんですよ」

すでに2校では講師が決まっていて、今回配属予定の学校は全校生徒20人ほどとのこと。小さな学校なので、生徒一人ひとりを見ていけるかもしれない。

「ただね、僕らも初めての取り組みだから難しいとも思うんです。学習指導だけじゃなく、学校の先生とのコミュニケーションだって苦労するかもしれない。柔軟性や、臨機応変に考える力だって必要ですよ」

言うなれば0から1を生み出す仕事。

1校丸ごと任されるということは、自由なぶん責任も伴う。学校の要望も大切にしなければいけないし、最初は思い通りにいかないことのほうがずっと多いと思う。

「でも、この取り組みには絶対に意味がある。配属が決まっている先生も、白糠で頑張りたいんだって言ってくれているんだよね。ちょうど授業中じゃないかな、今から行ってみますか」


種村さんと一緒に廊下に出る。その瞬間、大きな歓声が聞こえてきた。

声をたどって教室の扉を開けると、子どもたちがカルタをしている。

「きりたんぽといえば?」という先生の掛け声を聞いて、一斉に「秋田県だ!」とカードを探す子どもたち。「私のほうが早かった!」「先生、早く次!」と、どの子もとてもパワフルだ。

輪の中心にいるのが、猪爪(いのつめ)さん。子どもたちを見送ったあと、教室で話を聞かせてもらう。

「もう、すっごく元気な子たちなんですよ! パワーをもらって、私も最高の気分です」

はつらつとした笑顔がよく似合う方。一緒にいるとこちらまで元気になる。

「今の子たちは、小学校の低学年で。黒板やチョークの代わりに歌やパズル、カードゲームをたくさん使って、植物の名前や都道府県、歴史の時代順なんかを学んでいくんですよ」

そういえば、さっきも都道府県の名産でゲームをしていましたね。

「そうなんです。覚えなさい!なんて一度も言ったことがないんですけど、全身を使って遊ぶうちに覚えていってくれて。みんな、お気に入りの都道府県があるんですよ(笑)」

「そんなふうに、気づいたらできていたって感覚が大好きで。白糠でも、ワクワクしてたまらない、知らないうちに楽しく学んでいたって場をつくっていけたらいいなあって思うんです」

東京の大学を卒業して10年ほど世界を旅したのち、故郷の釧路に戻ってきた猪爪さん。6歳と2歳、0歳の3人のお子さんのお母さんでもある。

あすなろ会に入社して5年。今回の取り組みにワクワクしているみたい。

「打診されて、すぐに行ってみたいと思いました。学校と塾のコラボなんて面白いし、絶対に私も勉強になる。それぞれノウハウがあるから、連動できる部分も多いんじゃないかなって思って」

「何より1校丸ごと任せてもらえるなんて、私が今までやりたかったことが全部できるんじゃないかって思ったんです」

今までやりたかったこと?

「さっきの授業みたいに、今まで知らなかったことを知るワクワクや、学ぶって面白い!って気づけるような場をつくりたいんです。私、本当は机も椅子も全部なくしてしまいたいくらいで(笑) だって、子どもって楽しかったら自然と立ったり跳ねたりする生きものだと思うから」

「もちろん、いきなり理想通りにはいかないとは思います。でも苦手科目の勉強だけじゃなくて、楽しい!とか、知りたい!とか、そんな気持ちも一緒に分かち合えるような場にしたいんですよね」

経験を重ねた猪爪さんでも、放課後学習がどんな場になるかは予測しきれないそう。

まずは学校の要望や子どもの様子を見ながら、関係性をしっかり築いていきたいという。

「まだまだ見えないことも多いけど、学校って楽しいなって一人でも多くの子が思ってくれたらいいなあって。そしたら学校の先生のことも町のことももっと好きになってくれる。いい循環が生めたら、もう最高ですね」


もし今回の取り組みがうまくいけば、いつか道内のほかの市町村でも塾と学校の連携が進んでいくかもしれない。

そんな未来も見据えて、今回はあすなろ会で働く塾講師も募集したい。

「ノウハウは教えられるので、経験はなくても大丈夫です。人が好きって人にぜひ来てほしいですね」

そう話すのは、種村吉晃(よしあき)さん。

種村会長の息子さんで、東京で4年半働いたのち、3年前にあすなろ会に入社した。

「誰かに教えた経験なんてないまま、すぐに教壇に立って。子どもたちとコミュニケーションをとることは自信があったので、まずはそこでカバー… というか、乗り切りました」

そう笑う吉晃さんも、もちろん教科指導の技術は磨いている。あすなろ会では、全単元の授業を録画した映像があるほか、教科ごとの勉強会も定期的に開かれているのだそう。

「子どものころを思い出したら、好きな先生や科目では勉強を頑張れたなって思うんです」

「僕は子どもたちを下の名前で呼んでいて。僕もジュニアとか、種ちゃんとか呼ばれています(笑)勉強以外の話もしますし、子どもの話も前のめりになって聞くし。楽しければ一緒に大声で笑いますしね」

なるほど。それは子どもたちも嬉しいだろうなあ。

「そうなんですよ。すると『次、ジュニアの授業だ!』って楽しみにしてくれるし、分からないこともすぐに聞いてくれる。多少教え方が下手でも、好きな先生の科目だからって一所懸命に理解してくれるんです」

裏を返せば、ただ知識を伝えるだけでは子どもたちの頭には入っていかないということ。

大人や子どもの垣根なく、人同士で付き合っていく仕事なんだろうな。

「僕たち、集まったらすぐ子どもの話をしちゃうんですよ。最近あの子がさ、って誰かが話したら、そうそう!って」

「もちろん受験期は忙しいし、プレッシャーだってありますよ。でもやっぱり子どもが可愛いから頑張れるんですよね。そんな仲間が、ここには少なからずいると僕は思っています」

子どもと学校と手を取り合いながら、新しい教育の形を築いてゆく。

思うようにいかないこともあるかもしれないけど、その経験もきっと糧になると思います。

この塾の皆さんは、新たな仲間の挑戦を楽しみに待っているはずです。

(2019/05/11 取材 遠藤 真利奈)

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