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半分は調査
もう半分はアウトドア
境界から紐とく沖縄の暮らし

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

仕事の目的を達成する過程で、副産物的な楽しさを発見することがある。

日本仕事百貨の編集者である私の場合は、取材中に求人とはまったく関係ないけど、おもしろい“こぼれ話”を聞かせてもらうこと。

本来の目的を達成するだけでなく、自分なりの楽しみ方を見つけることは、長く仕事を続ける秘訣なのかもしれません。

沖縄で土地家屋調査士をしている半嶺当徹(はんみねとうてつ)さんも、仕事を通じて出会うものや、出向く場所への愛着を感じながら働いている方。

土地家屋調査士。聞きなれない肩書きかもしれませんが、家を建てるための不動産調査には欠かせない役割。

土地の境界線など、不動産登記に関わる測量調査をするのが主な仕事です。

カタい専門職という印象も受けますが、住宅や集落を調べるうちに、人の暮らしが見えてくる。民俗学にも通じるおもしろさがあるのだとか。

畑などの原野が調査対象になるときは、沖縄の自然を感じながら過ごす時間も多い。きっと多くの人にとって、新鮮な時間の過ごし方ができる仕事だと思います。

今回は半嶺さんのアシスタントとして一緒に働く人を募集します。応募時に資格は要りません。気になったら、続けて読んでみてください。

那覇空港に降り立つと、厚い雲が垂れ込めている。同じころ、与那国島では50年に一度と言われるほどの大雨が降っていた。

沖縄本島にも、なんとなく梅雨の気配を感じる。

市の中心部から歩いて15分ほど。

緑が生い茂った公園の前の白い建物の3階に事務所がある。階下には半嶺さんのお父さんが働く司法書士事務所。

ドアをノックして中に入ると、半嶺当徹さんが迎えてくれた。さっそく、どんな仕事なのか話を聞いていく。

「大きく分けると、土地と建物、二種類の調査があります。敷地の境界線を測ったり、建物の図面が正しいか調査したり、図面がないときは家の中を全部測ったりしています」

今、ちょうど依頼を受けているのは…、と半嶺さんが見せてくれたのは、市街地の航空写真。

「ここの317-6っていう区分、線で区切られているのが本来の境界です。依頼者はブロック塀で囲まれているところを敷地だと思って購入したんですが、線と塀の範囲がずれていますよね。測ってみると、こういうことがわかるんです」

本当だ。結構ずれてますね。

「これは結構珍しい例ですけど、こういうふうに、時代の流れとか過去の工事で消えてしまった境界線を測りなおすのが仕事なんです」

依頼があれば、沖縄本島以外の島へも調査に行く。住宅地だけでなく、畑なども調査対象になる。

畑の中から、昔の人たちが使っていた境界ポイントが出てくることもあるという。

「詳しい年代まではわからないですけど、周りの人に話を聞きながら調べていく。古いものになると、公文書館で昔の資料を見て。調べものは多いです」

なんだか、考古学みたいですね。もっと事務所でのデスクワークが多いのかと思っていました。

「事務所の仕事と半分半分くらいですね。もともと僕は、山登りとか野外活動が好きだから、外に出てアウトドアを楽しめるのもこの仕事のいいところだと思います」

半嶺さんは大学卒業後、建築関係の仕事を経て、司法書士であるお父さんの仕事をしばらく手伝っていた。

大学で勉強した建築と法律、どちらも生かせるからと、今の事務所を開業したのが5年前のこと。

「土地家屋の測量って、専門でやってる人が少ないから競争がないんです。それに僕はもともと大学で建築を勉強しているときから、ものをつくるより調べるほうに興味があった」

「そのころは、デザイン性に優れた建築がスポットライトを浴びていたんですけど、僕は外に出て、昔の古い家の実測などをしていました。どっちかっていうと、文化研究みたいな勉強ですね」

ご両親が石垣島出身という半嶺さん。大学の卒業論文では島の集落を調査した。

地域によって、間取りや家の姿にもいろいろな特性がある。家屋を調べることで、人の暮らしぶりが見えてくる。

そのままの姿で古い家を保存し続けるのは難しくても、図面に起こしたり、記録をとったり。データとして残していくことに興味が湧いたという。

「昔は地域で協力しながら畑作業をしていたので、古い家は外から人が出入りしやすいつくりになっているんですね。あとは、家の中で位牌を置く場所が地域によって違ったり、集落内にお祈りをする場所があったり。そういうことから、沖縄の信仰のことがわかるんです」

なるほど。沖縄特有の文化や歴史が家や暮らしに表れているんですね。

この辺りのような市街地だとどうですか。

「この辺は戦後、占領から土地が解放されたときに、ここは私の土地ですって、言ったもんがちで自分たちの土地が決まっていったところもあって。混乱のあった地域なんですよ」

普段の依頼でも、登記資料がない場合は、現在の所有者や周囲の関係者の話をもとに調査を進めていく。

関係者が多くなると、それぞれの主張に食い違いが生じることも。根気強く話を聞くのも大切な仕事なのだそう。

「とにかく話を聞いている時間は長いです。戦争の話とか、おじいちゃんの下ネタとか、測量と関係ない話に脱線することもよくあって。宮古とか石垣のほうに行くと、方言がわからないから、家族の人に通訳してもらうんです」

「そうやって地域のつながりのなかに入っていくと、その土地の風習や名前の由来とかもわかるんですよ。たとえば石垣島だと、本土のいろんなところから人が移ってきたので、変わった苗字が多いとか」

やっぱり、そういう民俗学的なものに興味があるんですね。

「そうですね。休憩しながら風景を見ているのも好きだし…。作業をこなすだけじゃなくて、自分で楽しみを見つけていくほうがいいと思っているんです」

依頼された仕事の結果を出すだけでなく、半嶺さんはその過程における出会いや発見を楽しんでいるように見える。

土地家屋調査士になるためには資格が必要だけど、今回は経験がなくてもアシスタントからスタートできるという。

仕事をしながら測量の技術や法律の知識を身につけて、資格取得試験を受けることもできるそうだ。

「専門職だからといって、敬遠しなくても大丈夫。もちろん仕事なので責任感は必要ですけど、元気で、素直で、目の前のことを受け入れられる人なら、みんなで仲良くやっていけるんじゃないかな」

半嶺さんと一緒に現地での調査を担当しているのは、高校時代の後輩でもある外間(ほかま)さん。

以前は浦添市の公園で体育館などの施設管理の仕事をしていて、測量の仕事ははじめてだった。

「仕事内容もちゃんと把握しないまま入社して。最初は測量のための三脚も立てられなかったんですけど、先輩に優しく教えてもらいながら、少しずつ覚えているところです」

依頼があれば、泊りがけで離島に行くこともある。

半分は屋外での作業なので、沖縄の気候を身近に感じることも多いという。

「沖縄はやっぱり暑いですからね。それに原野で草が生えているところだと、初日は草刈りで終わることもあります」

「道を歩いている人に『何か建てるの?』って声をかけられたり、おしゃべり好きなクライアントと話をしたり。黙々と作業するだけじゃなくて、周囲の人といい関係を築きながら仕事をするのも大切かもしれませんね」

正確に、公正に調査をしても、すべての関係者がそれを快く受け入れられるとは限らない。

作業中に、足元に誰かが投げた生卵が落ちてきたこともあるという。

「それがはじめての仕事の日だったので、当徹さんの仕事やばいって思いましたよ(笑)」

「いやいや、さすがに卵は後にも先にもそれっきりだよ〜」という半嶺さんに続いて、「それ、鳥の仕業なんじゃない?」と、みんなを笑わせてくれたのが、半嶺さんの奥さんであるみなこさん。

みなこさんは普段、届け出などの手続きをはじめ、事務の仕事を担当している。明るい笑顔で場を和ませてくれた。

一緒に働くなら、どんな人がいいですか。

「みんなと仲良くやっていける人だといいですね。遠慮せず、思ったことをはっきり言ってくれたほうが、私たちもうれしいです。外間さんと一緒に婚活してくれる人もいいかもね(笑)」

「沖縄移住を考えている人でも大歓迎。那覇はそんなに田舎でもないし、食べ物の好みさえ合えば、大丈夫だと思いますよ」

うんうん、と頷きながら話を聞いていたのは、書類整理などで調査のサポートをしている森田さん。

スタッフの中で唯一県外出身者である森田さん。沖縄で暮らしてみたいと移住したのが13年ほど前のこと。

「台風とか暑さとかを心配されますけど、日陰に入ったら夏も涼しいし、本州より住みやすいと思うこともあります」

たしかに、市街地を歩いていても風が気持ちよかったです。

「音楽とか、海とか、沖縄は仕事以外にも楽しいことがいっぱいある。新しく入る人は、もちろん仕事仲間ではあるんですけど、一緒に沖縄を楽しめる人がいいのかなと思います」

みなこさんも、森田さんも、今は子育てをしながら働くお母さん。

産休や育休、時短勤務など、お互いに協力しながら働きやすい環境づくりを目指しているところ。

新しくスタッフを迎えたら、よりフレキシブルに働ける環境を整えたいと、半嶺さんは言う。

「お客さんが満足してくれる仕事ができれば、必ずしも決められた時間に会社に通うことに縛られなくてもいいかもしれない。『生きやすい』『住みやすい』『働きやすい』職場を実現していきたいんです」

今は2人1チームでしか動けないけれど、スタッフが増えればそれぞれのチームに分かれて分担できる。

そうしたら、また新しいことに取り組んでみたいと、半嶺さんは続ける。

「今の僕たちの仕事は、調査をしてお客さんに結果をお伝えするところまで。そのあとは税理士、司法書士、不動産鑑定士など、いろんな専門家と協力しながら解決していくんです」

「ただ結果をお伝えしたときに、お客さんの表情を見て『納得してないなあ』って思うときもあって。もうちょっと家や土地を取り巻く周辺の領域までワンストップで解決できるようになったらいいと思うんです。そういうチームをつくるとか…。まだわからないですけど」

帰り際、新しくできた事務所のロゴマークを見せてもらった。

「ローマ字で事務所の名前が書いてあるんですが、重なったり入り組んだりしている線は境界線を表していて。僕たちの役割は、この赤い線のように、対象となる敷地や人の間を結ぶことなんだと思います」

土地を隔てる境界は、隣り合って暮らす人たちと円滑に関わっていくために必要な目印にもなる。

一人ひとり、さらにはその家族にとっても大切な、土地や家を扱う調査の仕事。

戦争などの歴史や風土など、この地域ならではの事情に触れることもあるかもしれません。

沖縄に暮らし、見るもの出会うものを吸収しながら、暮らしのベースをつないでいく仕事だと思います。

(2019/5/14 取材 高橋佑香子)

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