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海の向こうに立山連峰を望む
富山・氷見を味わう
観光づくり

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

富山湾と立山連峰。

山々が海に浮かんだように見えるこの景観は、日本はもちろん、世界でも珍しいそうです。

そんな贅沢な景色を楽しめるのは、富山県・氷見(ひみ)市

漁港には、日本海で育った新鮮な海の幸が毎朝ならび、内陸には美しい棚田が広がる。温泉郷もあって、藤子不二雄Ⓐ先生のふるさとであることから「忍者ハットリくんに会えるまち」とも言われているそう。

より多くの人に、氷見の魅力を知ってもらいたい。実際に訪れてもらいたい。

そこで今回、氷見市の地域おこし協力隊として、地域の新しい観光をつくっていくコーディネーターを募集することになりました。

氷見ならではの観光プログラムを企画し、運営すること。氷見を味わう古民家ホテルづくりに携わること。この二つが大きな活動となります。

支えてくれるプロや行政の人たちと一緒に、氷見の魅力を日本はもちろん、海外の方にも伝えていく仕事だと思います。

観光業やホテル業の経験はなくても大丈夫。まずはやってみたい、そんな思いがある人を求めています。



朝8時前、東京駅から新幹線に乗る。

車窓からの眺めは、次第に田園風景に変わっていく。高崎を過ぎると森が広がり、10時過ぎには日本海が見えてきた。穏やかな海を眺めること30分。富山駅に到着した。

そこから電車を乗り継いで1時間ほどで、富山湾に面する氷見に着いた。

車でお迎えいただいて、まず向かったのが氷見市役所。

ここはもともと、高校の体育館だったそう。

以前の市役所が、津波の浸水想定区域にあり老朽化も進んでいたため、別の場所での建替えが必要に。新しく建てようという話もあったなか、費用負担が少ないこともあり、廃校となった高校の体育館を利用することに決まった。

市役所をリノベーションでつくるって、なんだか新しい。

迎えてくれたのは、副市長の小野さん。33歳だそう。

お若いですね!

「副市長は60歳前後のベテランの方が務めることが多いので、職員たちも『若いあんちゃんが来たぞ…』と戸惑ったんじゃないかと思います」

国家公務員である小野さん。1年半前に氷見市から依頼を受け、地方創生推進のため東京からやってきた。

まず感じたのが「氷見には面白い場所がたくさんあるんだな」ということだったそう。

毎年多くの観光客が訪れる氷見。寒ぶりなど有名な特産品や、年間120万人もの人が立ち寄る道の駅の「ひみ番屋街」もある。

日本まんが界の巨匠、藤子不二雄Ⓐ先生のふるさとであることから、中心市街地商店街のあちこちにあるキャラクター目当てにファンが訪れることもあるそう。「美人になれる湯」として知られる氷見温泉郷だってある。

「魅力的な場所がある一方で、泊まってくれる人が少なくてもったいないと思ったんです。氷見に来ても、番屋街に寄ったらその日のうちにお隣の石川県の和倉温泉や金沢に行ってしまう人が多いみたいで」

平成初期には40万人を超えていた宿泊客数も、今では20万人に減ってしまったそう。氷見には約40軒の温泉民宿があるものの、廃業する民宿も出てきている。

「これからは、ただ待つのではいけない。氷見を訪れた方がより長く観光を楽しんでくれるような仕組みが必要だと考えて。今回募集する人には、氷見の人たちと関わりながら、氷見の魅力を味わえるような体験プログラムを企画してほしいんです」

氷見の魅力。たとえばどんなものがあるでしょうか?

「たとえば、氷見で有名なのが“ひみ寒ぶり”です。脂のノリが格別で、寒ブリ漁の聖地っていわれているほどなんですよ。ブリ以外にも、マグロをはじめ季節ごとにおいしい魚が豊富にそろっていて」

「氷見を訪れて、釣りだけを1日中楽しむ人もいるくらいなんです。何か魚を活かした体験もできると思います」

食べたり、釣ったりするだけじゃない。氷見の魚を使って、新しい事業を生み出した人もいる。

たとえば氷見市地域おこし協力隊の一人は、魚の皮をつかって新たなレザーブランドを立ち上げた。

長年の研究の末、氷見で収穫されたブリやスズキ、タイなどの皮を使ってレザーをつくり出すことに成功。いろいろな魚の皮を使ってレザーをつくり出す技術は、世界でもほとんど類をみないそう。

魚のレザーを使ったバッジづくりなどのワークショップを実施するとともに、ついに魚のレザーでつくった財布や名刺入れなどの商品開発・販売もはじめたんだとか。

「横浜から来た中学生たちに、フィッシュレザーをつかった革の小物づくりをしてもらったこともあって。『これ魚の皮なの?』って、みんなびっくり。楽しそうに取り組んでいました」

海の幸だけではない。内陸にも、まだ広く知られていない魅力がある。

農地の9割が田んぼである氷見。長坂地区にある棚田が有名で、日本の棚田100選にも選ばれている。

稲作体験やお米を利用したワークショップなど、棚田からアイデアを膨らますこともできそうだ。

「地元の人が気づいていないような魅力もきっとある。実際に暮らしてみることで、徐々に氷見を好きになってくれたら嬉しいですね」

普段手に入らないようや食材や、古くから受け継がれているグルメレシピなど。

改めて何かつくり出さなくても、もともとある地域の良さをうまく発信すれば、興味を持ってくれる人はいるかもしれない。

体験プログラムが氷見の魅力をより深く知ってもらうための仕組みだとすれば、より長く滞在してもらうための仕組みづくりもはじまっている。

それが、市内の古民家を活用したホテル事業。

持ち家比率と家の大きさが国内トップクラスだという氷見。ホテルとして使えそうな大きな古民家もいくつかあるそう。

プロジェクトには、外部パートナーとして古民家ホテル運営のプロも携わっている。

たとえばファイナンスや全般的な運営をサポートするのは、株式会社NOTE。古民家再生を起点に、宿やレストランなど、それぞれの地域に合わせた産業をつくっていて、すでに全国各地で古民家ホテルの事例もある。

古民家ホテルをつくるだけでは、観光客を呼び込むのは難しい。

重要なのは、この古民家ホテルで何を体験できるのか、ということ。どんな食事が食べられて、どんな思い出がつくれるのか。

今回募集する人は、そうした視点から古民家ホテルづくりに参加してほしいという。

具体的には、行政やNOTEをはじめとするプロジェクトの推進者、そして地域住民の方々とともに、話し合いに加わる。ホテルが稼働するまでの過程に参加しながら、古民家ホテルに泊まった人にどんな体験プログラムを提供できるか考えて、企画していってほしい。

プロジェクトが始動したのは今年の6月。実際に設計などのプランニングを進めていくのが来年、ホテルの整備が始まるのは再来年の予定だ。

古民家ホテルの特徴を活かした、新しい形の体験プログラムにも挑戦できるかもしれない。



富山県で活躍する建築家の山川さんは、氷見市やNOTEとともに古民家ホテルの建物を作り上げていくキーマンの一人。

山川さん自身も、宿泊施設やカフェのプロデュースをしているそう。

「今までは新築の大きな建物をつくっていたけれど、自分の力は町をよりよくしていくことにも役立てるんじゃないかと思ったんです」

そんなときご縁が生まれたのが、富山県南砺(なんと)市の井波地区。人口8000人のうち、200人以上が木彫刻師という、日本一の木彫りの町。氷見から車で1時間ほど南にある地域。

山川さんはこの地区に興味を持って、職人さんのもとを回っていたそう。そこで出会ったのが、女性像やお雛様などの人形彫刻をつくっていたトモル工房さん。作品を見て、衝撃を受けた。

「こんないいものをつくっているのに、なんで世の中の人に知られていないんだ!と思って。世間に広めるために、宿をつくったらどうかなと考えました」

ただ、交通の便が悪く、最寄り駅までも徒歩で1時間半かかってしまう井波地区。観光地として訪れる人はほとんどいなかった。

そこではじめたのが「職人に弟子入りできる宿 BED AND CRAFT」。

宿には、木彫刻家の作品を展示。カフェでは、木を彫るときに出る木くずを使った燻製料理を提供することに。ヒノキやクリ、サクラなど木の種類によって、さまざまな薫りを楽しめるそう。

職人さんにも声をかけて、工房でスプーンやお皿をつくれるワークショップも用意した。

「今回のホテルも、地元の人と観光客を繋げていくような場所にしたい。どういう体験ができるホテルにするのか、一緒に考えてもらえたら嬉しいです」

地域おこし協力隊の活動任期中は副業もOKとのこと。山川さんのもとでアルバイトをしながら、ホテルのコンセプトづくりや経営のノウハウを教えてもらうこともできるかもしれない。

3年間の活動を終えた後は、体験観光プランの運営に携わったり、古民家ホテルで働いたり。いろいろな道が考えられそうだ。



移住先となる氷見には、どんな人たちが住んでいるんだろう。

氷見市地域おこし協力隊のOBである澤田さんに話を伺った。

銀行員として長く働いており、ホテルに出向していたこともある澤田さん。お金のことからホテルのことまで、気軽に相談することができそうだ。

今は、レストラン兼ゲストハウス「SORAIRO」を経営している。ここは、移住者の皆さんが集まる拠点でもあるんだとか。みんなを取りまとめてくれている、頼もしい存在。

移住してきて、大変だったことはありますか。

「氷見の人はものすごい早口で。例えば大声で『わ、なんしとら!』みたいに言われるんですよ」

わ、なんしとら?

「あなたは何をしているんですか?という意味なんです。特に海に近い地域の方は、漁の際に船の上で正確に指示を伝える必要があったことから、喋るのが早く声も大きくなったと言われています」

初めは、怒られているように感じてしまう人も多いかもしれません。

「怒っているわけではないんですけどね。僕は慣れました」

「あと集落ごとに文化も違うんですよ。まとまりが強いから、他の集落に対して、ライバル意識とかもあるんです」

たとえば、氷見で毎年行われる獅子舞も、集落ごとに開催時期やその方法はばらばら。

みなさん、自分たちの獅子舞に誇りを持っている。

「同じ氷見のなかでも競い合うようなのは、びっくりするかもしれないですね。たしかに難しい部分もあったんですが、こちらも慣れちゃいました。面白いなとも思えてきて」

澤田さんのように、文化の違いも、肩の力を抜いて楽しめる人がいいのかもしれない。

「近所づきあいとか、田舎ならではの慣習もいろいろあるんですが、そういうのが苦手であれば、自分が間に入るようにします。最初から無理はせず、徐々になじんでいけばでいいと思います」

「最近は移住者が増えてきて、協力隊のOBや現役生もいっぱいいる。そこの繋がりはものすごく強いんです。仲間はいっぱいいると思って安心して来てほしいですね」



この場所でこんなことをやってみたいな、と浮かぶものがあったら。

その思いに、氷見は全力で応えてくれると思います。

(2019/10/25取材 鈴木花菜)
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