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富山県の南部にある、利賀村(とがむら)。人口はおよそ500人。標高1000mを超える山々に囲まれた、自然豊かな村です。

さらに毎年夏には国際的な演劇祭がひらかれ、世界中から人が集まってくる村でもあります。首都圏の大学生がフィールドワークに訪れるなど、面白い動きも起こっているようです。
今回はそんな利賀村に暮らし、観光に携わるスタッフを募集します。
勤め先となるのは、利賀ふるさと財団。温泉やキャンプ場など、村内のさまざまな施設を運営しています。
ある日は温泉施設でお客さんを迎え入れて、ある日はキャンプ場でハイキングなどのアクティビティを企画する。
そんなふうに、“観光”を切り口にいろんな顔を持って働くことができそうです。
富山駅からJR高山本線に乗って30分ほど。越中八尾(えっちゅうやつお)駅で、利賀村行きのマイクロバスに乗り換える。
バスは市街地を抜けて、山道を登っていく。坂道はだんだん急になり、粉雪も降りはじめた。
駅を発っておよそ1時間。あたりがすっかり雪景色に変わったころ、運転手さんがアナウンスで利賀村に入ったことを知らせてくれた。

「長旅お疲れさまです。こっちの3月はまだ冬ですから、寒いでしょう」
玄関口で声をかけてくれたのは、総支配人の秋山さん。
村の地図とたくさんのパンフレットを手元に広げながら、ロビーで話を聞かせてもらう。

お隣は、合掌造りで知られる岐阜県白川村。「世界遺産まで車で40分、最寄りのコンビニやスーパーも車で40分」なのだそう。
そんな雪深い小さな集落の村は、「演劇の聖地」でもある。
「毎年8月末から9月頭にかけて演劇祭が開催されていて。世界中から演劇ファンが集まって、すごい活気に包まれるんです」
「なかでも去年の夏は特別で『シアター・オリンピックス』という国際的な舞台芸術の祭典がひらかれました。人口500人のこの村に、約1ヶ月で2万人も訪れて。この温泉にも世界中の監督や演者が泊まりに来てくれたんですよ」
山の上の小さな村に、世界中から人がやって来る。そのギャップが面白いなあ。
演劇シーズン以外の村は、どんな雰囲気なんですか?
「のんびりとしていますよ。ガイドブックを片手に、ここに行こう! あれを見よう!って方はまず来ないです(笑)。ゆっくり癒されに来ました、という方が多いですね」

春は、ウドやコゴミといった山菜の季節。夏は清流での川遊びが楽しめて、秋はキノコやそば、新米が実る。そして冬になると、真っ白な銀世界がやってくる。
そんな自然豊かな環境を活かしたイベントも季節ごとにひらかれている。とくに初夏のトレイルランニングや3月のそば祭りは、村をあげての一大イベント。村外からも大勢の人が集まるのだそう。

利賀ふるさと財団は、天竺温泉など村内の6つの市営施設を指定管理者として運営している。

とくに温泉やキャンプ場は、村外からも多くの人が訪れる人気施設。
ただ、雪が降ると村を訪れる人も減ってしまうため、毎年12月〜4月は温泉以外の施設を休館にしているそう。雪がない時期の集客についても、試行錯誤している状況だという。
「正直、今は施設を開けて誰かが来てくれるのを待っている状態で。それではもったいないので、これからは施設を使った新しいアクティビティを企画したり、施設同士をつなげたり、利賀を楽しめる仕掛けをつくりたいと思っているんです」
そこで今回、これらの施設を活かして利賀の観光を盛り上げるスタッフを募集することになった。
具体的には、どんな働き方になりそうでしょうか?
「本人の興味や適性を踏まえて、メインの拠点を決めます。たとえばアウトドアが好きな人だったらキャンプ場、という感じです。そのうえでほかの施設にも関わりを持ってほしくて」
たとえばキャンプ場がメインとなる場合。
春から秋は日常の施設運営のかたわら、トレッキングやハイキングなどのアクティビティを企画したり、村内を回る観光プログラムを考えたり。
どの施設も少ない人数で運営しているので、忙しいときは手伝いに行くこともある。週のうち1日は天竺温泉で接客をして、もう1日はそばの資料館でツアー客を案内する、というような週もあるかもしれない。
そして冬は天竺温泉で働きながら、新たに冬キャンプのプランを企画して、冬季もキャンプ場が稼働できる状態を整えていく、といった感じ。

仕事内容をひとことで言い表すのは難しい。“何でも屋さん”のような役割になりそうですね。
「ただ、手が足りないからといって作業員がほしいわけじゃなくて。現場に溶け込みながら村や施設のことを知っていって、『こんなことやってみませんか?』と提案したり、お客さんを巻き込んだ試みをしたりしてほしいと思っています」
たとえば温泉に来たお客さんに『明日キャンプ場でバーベキューをするので来ませんか?』と誘うとか、『この辺りにいい散歩コースがあるんですよ』と声をかけるとか。ちょっとしたことの積み重ねで印象は変わってくるはず。

具体的には、温泉の厨房を拠点に、宿泊客や宴会の調理に携わる。今はパートの皆さんで回しているため、経験者にも来てもらえたら嬉しいとのこと。
「名産のイワナ、そばがメニューの中心です。将来的には、ここをセントラルキッチンにしていきたくて。キャンプ場でのBBQなど、各施設の料理も担ってもらえたらと思っています」

今、ふるさと財団では3名の職員が働いている。その一人、錦織(にしこおり)さんを紹介してもらった。

「1ヶ月間、シアター・オリンピックスのスタッフとして働いていて。毎朝縁側で山を眺めて過ごしたり、村の若者の“俺の村自慢大会”とかを聞いたりするうちに、利賀にハマっちゃって(笑)。もう少し見てみたいなと思って残ることにしました」
今は、この温泉を拠点に働いている錦織さん。
春からは今回募集する人と同じように、いくつかの施設に携わっていく予定だ。
「実は、来年の春から村の小中学校で山村留学がはじまるんです。留学生たちが暮らす宿舎として、ふるさと財団が管理する廃校が使われる予定で。ぼくも子どもたちと交流できたらいいなと思っています」
一緒にハイキングをしたり、星空観察をしたりできるかもしれないですね。
「どこまでできるかは未知数なんですけど『こんなことやったら面白いんじゃないですか?』って提案はどんどんできる環境だと思います。いろいろ仕掛けられたらいいですよね」

利賀村は、村外の人との関わりも多い地域。
学生団体『トガプロ』をはじめ、さまざまな場所から大学生が毎月フィールドワークに訪れたり、東京・武蔵野の子どもたちが村で1週間を過ごす『セカンドスクール』というプログラムが40年近く続いていたり。
錦織さんも地域の世話役としてたびたび関わっているのだそう。

「一人ひとりがいろんなことに関わらないといけないのは、仕事もプライベートも一緒かもしれないですね。でもだからこそいろんな人と会えるし、それが利賀の暮らしの楽しさだと思っています」
隣でニコニコと話を聞いていたのは、アルバイトスタッフの宮本さん。

「山暮らしが性にあっていたんでしょうね。畑や山で遊んだり、薪をつくったり、植物や動物を眺めたり。そういう生活が好きだったし、大人になってからはここで子育てをしたいなと思うようになって」
「昔から比べると今は道路もきれいになって、ちょうどいいですよ。これ以上便利にならなくていいです(笑)」

「利賀のいいところは、みんな働き者でお年寄りがすごく素敵なところ。ここのばあちゃんたちも、ぼくらを孫みたいに可愛がってくれて、よく『コーヒーを淹れたよ』ってお茶に誘ってくれます」

「めっちゃ忙しいですよ。地域の集まりがすごくあって、のんびりするには頑張って時間をつくらないといけないくらいです」
利賀村には「万雑(まんぞう)」という寄り合いが各集落にあるそう。草刈りに神社の管理、伝統の獅子舞や住民運動会など、顔をあわせる機会はとても多い。
「自分一人では暮らせない土地なんです。じいちゃんばあちゃんが多いから雪かきも手伝うし、野菜や山菜もみんなで分け合います」
「そういうコミュニケーションや助け合いも田舎暮らしの楽しみの一つだと思うし、仕事にもつながっていくと思っていて。就職しに来るというより、暮らしに来るというイメージでいるといいかもしれないですね」

自然や文化が大切に受け継がれてきたこの村には、世界中さまざまな人が訪れたり、若者とつながりを持ち続けたりと、独自の面白さがあります。
そんな地域に溶け込みながら、観光を通して魅力を伝えていく。ワクワクした人なら、きっと楽しく働けると思います。
(2020/03/05 取材 遠藤真利奈)