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学んで遊んで
わくわく過ごす
放課後の居場所づくり

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

学生のころ、好きな科目は何でしたか?

わたしは日本史が好きでした。放課後の自習に付き合ってくれる先生がいて、ことあるごとに褒めてくれるのがすごくうれしかった思い出があります。

気づけばいちばんの得意科目になって、大学でも専攻していました。

学びの楽しさを知るきっかけは、案外そんなささいなことなのかもしれません。

北海道の奈井江町(ないえちょう)に、来年、小学生向けの塾が生まれます。

学校から帰ってきた子どもを迎えて、隣で宿題を見て。問題が解けて「わかった!」と喜ぶ子どもたちの笑顔がたくさん見えるような場を目指しています。

今回は、地域おこし協力隊として、この塾のオープニングスタッフを募集します。

経験は問いません。子どもと一緒に、前向きに学んでいける人を探しています。



札幌の中心部から、高速に乗って1時間ほど。奈井江町のインターチェンジを降りると、一面に黄色い稲穂が実る田園地帯が広がっていた。

さえぎるものが何もない平野を走るのは気持ちがいい。よく晴れた日に高台にのぼると、遠く80km離れた札幌ドームまで見渡せるんだとか。

「ちょうど先週から稲刈りが始まって。ここは“ゆめぴりか”っていう北海道米の産地で、この時期は青い空と黄色の田んぼがすごくきれいなんです」

「収穫が終わったらあっという間に冬がやってきて、町中が白一色に変わります。春夏秋冬、いろんな景色が楽しめる町なんですよ」

そう教えてくれたのは、役場で合流した教育委員会の井上さん。

北海道のほぼ中央、石狩平野に位置する奈井江町。かつては石炭と農業の町として栄え、炭鉱が閉山してからは、農業と工業が町の主要産業になっている。

人口は5,200人。小学校と中学校が1校ずつの、小さな町だ。

「子どもは1学年30人くらいで、みんな乳児検診から一緒なんです(笑)。わたしも二人の子どもがいるんですけど、友だちものんびりした柔らかい子が多いですね。別々の高校に進学しても男女問わず仲良しで、よく集まって遊んでいるようです」

「素朴さや素直さは町の子のすごくいいところ。けれど勉強面もちょっとのんびりしちゃっているな、というのが正直なところです」

以前から学校で課題となっているのが、子どもたちの学習習慣。

この町には塾がなく、学校以外で勉強できる場所は家庭だけという子どもがほとんど。

学校は毎日の宿題などを通じて家庭学習を支援しているけれど、放課後はまず遊びという子が多く、中学への進学を目前にしても勉強に身が入らない子も少なくないという。

そんな背景もあって、小学6年生と中学3年生を対象にした全国学力調査では、全国・全道平均を下回る結果が続いている。

そこで町は2年前に中学生向けの学習塾を開設。1ヶ月に1〜2回、町外から来た塾の先生のもとで勉強できるようになった。

ただ直近の学力調査でも、多くの中学生が学習につまずいていることが明らかに。

「アンケートを取ってみると、そもそも小学校で習う基礎基本が定着していないことや、勉強に対して苦手意識が強いことがわかったんです」

「小学校だと、なんとなくでも授業についていけちゃうんですよね。曖昧だった部分が、中学校に上がってから『あれ?分からない』ってつまずきにつながる」

これからの土台となる基礎基本の定着と、自分から学んでいく姿勢を小学生のうちに身につけることが必要なんじゃないか。

「まずは、勉強も楽しいんだ!って思ってもらえる環境をつくろうと考えたんです」

そこで来年度から、小学校から歩いてすぐの公民館にあらたに塾を開設することに。

個別学習ができる場として、小学3年生から6年生であれば、平日の放課後と土曜日、自由に通うことができる。

今回は、この塾で働くオープニングスタッフを募集したい。

目指すのは、小学校の先生と連携しながら、子どもたちの学習をサポートしていくこと。

まずは、学校で学んだことを塾で復習していくサイクルをつくっていく。そうして基礎基本をおさらいしながら、子どもたちの探求心を育んでいきたい。

最初の数ヶ月は、学校からの宿題を教材にする予定。その後、子どもたちに合った教材も取り揃えていくという。

「塾で、それまで分からなかったことを一つでも二つでもクリアできれば、『なんだ、意外と自分でできるじゃん!』って自信を持てるんじゃないかなって」

「そういう小さな成功体験を積み重ねて、学ぶって楽しいかもと気づいてもらえたらすごくいいなと思っているんです」

分からない問題を気軽に質問したり、困ったときにすぐ相談できたり。

学校の先生でも、親でもない立場で一緒に考えてくれる大人の存在は、きっと子どもたちにとって新鮮なはず。

「教育の経験や資格は求めません。子どもの隣で『どうしたら解けるかな?』って一緒に考えてくれる人がいちばんだと思っています」

隣町の塾に通いたくても通えない子や、授業についていけない子。これまで勉強を諦めていた子どもたちに、この塾を届けたい。

「自分なんか…って思っていた子が、前向きになれるようなきっかけをつくりたい。はじめて教科書をもらったときみたいに、明日はどんな授業なんだろうって、学校を楽しみにしてほしいなと思います」

「子どもたちが将来進みたい道を見つけたとき、その選択肢を諦めることがないようにしたいという気持ちが大きいですね」



楽しみながら理解を深める塾にするには、どんな仕組みがあるといいだろう?

教育長の相澤さんには、いくつかアイデアがあるみたい。

「学習指導の仕組みをある程度整えられたら、次のステップとして、ちょっと遊び感覚の教室をはじめても面白そうだと考えていて」

たとえば、どんなものでしょう?

「塾は土曜日も空いているから、ふだん塾に通っていない小学生も自由に来られる日をつくりたいんです。たとえば、みんなで紙飛行機をつくって上手に飛ばす方法を考える教室や、実験器具を使ってお菓子をつくる教室とかね」

「あとは、地元の大人に塾の講師をしてもらうというアイデアがあって。仕事体験をしたり、自分の仕事について語ってもらったり」

たとえば、奈井江の農家さん。町の特産品のお米“ゆめぴりか”は、いくつものコンテストで最高賞に輝いている。一緒におにぎりを握りながら、どうしてこの仕事に就いたのか聞くのはどうだろう。

それに町内のある企業は、自動車や船、鉄鋼など幅広い工業分野で使われている刃先交換式チップを製造していて、国内トップクラスのシェアを誇っている。輸出先の国で働く人たちと、オンラインで話してみるのも面白いかもしれない。

「こんなのんびりした町だけど、日本や世界と渡り合う大人がいるんだよって子どもたちに伝えたいんです」

「小学生のうちは、高校受験や大学進学なんてすごく遠い話でしょう。でも将来、自分が大人になったときにどんな可能性があるのか、ちょっと覗ける機会をつくってあげたいんですよね」

新しい塾は、塾のスタッフと井上さんたち教育委員会、小学校の先生、そして全国で公営塾の運営をサポートしている民間のコンサルタントで連携しながら形づくっていく。

町にとっても初めての試みで、まだ決まっていないことのほうがずっと多い。思うように進まず、想定外のことが起こる場面も少なくないはず。

それでも、子どもたちのことを想って、アイデアも困りごとも教育委員会や学校と共有しながら取り組める人であれば、きっと前向きに進めていけると思う。

そうやってできた塾は、きっと子どもにとって大きな存在になるんじゃないかな。



話が一段落したところで、小学校に移動する。

ちょうど4時間目の最中で、子どもたちが授業を受けていた。


「1年生は体育館で、ジンギスカンって曲に合わせて一所懸命踊っています。4年生は外で写生画の作成。6年生はもうすぐ修学旅行なので、旅先について調べたり、しおりをつくったりしています」

「授業中は落ち着いて学習に取り組んで、休み時間は思い思い元気に過ごして。明るく素直で、本当に子どもらしい子たちですよ」

校内を案内してくれたのは、校長の古谷(こたに)先生。

古谷先生は、5年前からこの学校の子どもたちを見守ってきた。

「4年生だけ2クラスで、あとは1学年1クラスです。ほとんどの先生が30人近くの子どもを一人で担任しているので、どうしても全員には目が届きづらい。先生も一人ひとりにしっかり向き合おうと毎日遅くまで残って仕事をしていますが、学校での学習だけでは十分ではないのが現状なんですよね」

「子どもたちの学びを支えて、成長を見守ってくれる大人が増えるのは、いいことだと思います」

塾が始まってからは教頭先生が窓口の役割を担い、塾スタッフと教育委員会に、授業や学力の様子を共有していく予定。

一方で、塾は学校にとってもはじめての取り組み。学校の先生たちとうまく連携していくには、どうしたらいいだろう。

「塾スタッフの方には、子どもたちがどんなふうに勉強しているのか、まずは授業見学に来てもらえるといいかな。先生とは別の視点をもっていると思うから、塾での教え方の参考にもなると思います」

たしかに、これまで取材で訪れた公営塾は、どこも学校の先生とのコミュニケーションを大切にしていたのを思い出す。

学校に顔を出したり、積極的に交流の場をつくったり。その先で先生たちと信頼関係を築ければ、きっと塾でできることが広がっていくと思う。



保護者の方は、新しくできる塾に何を期待しているんだろう。

お会いしたのは、二人の小学生のお子さんをもつ三原(みはら)さん。

実は三原さん、もともと民間塾に務めていた方。

当時は子どもから「なんで勉強するの?」と質問されることも多かったという。

「答えは一つじゃないし、どう答えたらいいかすごく難しいですよね。ただ、先生自身が何かに向かって頑張っていると、必ず言葉ににじみ出るものがあって、子どもも信頼してくれると思うんです」

「勉強が得意とか、教えるのが上手とかって、あんまり重要じゃない。子どもを想って、褒めて叱って、ニコニコ一緒に歩いてくれる人が一番だなと思います」

今、町の子どもたちにとって身近な大人といえば、先生や親、習い事の先生くらい。

町外で暮らしていたり、今まで聞いたことのない職業に就いていたり。塾スタッフとの出会いそのものが、新鮮な刺激になると思う。

「塾の先生には、とにかく子どもをいっぱい褒めてあげてほしいですね。他の子は褒めてあげられるんですけど、自分の子となるとすごい難しくて(笑)」

おだやかな風が吹く町で育った子どもたち。塾をきっかけに、どんな芽が生まれるだろう。

きっとみんな、次の春の出会いを楽しみに待っているはずです。

(2020/09/17取材 遠藤真利奈)
※撮影時にはマスクを外していただいております。

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