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本と子ども、
本と町をつなぐ
コーディネーターになる

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

福島県の最南端にある、矢祭町。

手つかずの自然がのこる山々に囲まれ、そのふもとには一級河川・久慈川がゆったりと流れる小さな町です。

また、平成の大合併が盛んだったころ、あえて合併せずに自立することを選んだ町でもあります。

ここに「もったいない図書館」という、寄贈の本でできた図書館があります。

当時、本を買う財源に悩んでいた町が、全国に本の寄贈を呼びかけたのがはじまり。集まった本の数は年々増え続け、今では47万冊にものぼります。

寄贈してくれた方々の気持ちに応えるため、「子ども司書講座」や「手づくり絵本コンクール」といったユニークな企画にも取り組み、本の活用につとめてきました。これらの取り組みは、開館して10年以上経つ今も続いています。

これからは、図書館のなかだけでなく、小学校や町の施設に出て、もっと本と人をつないでいきたいと考えているところ。今回は、そんな本と町をつなぐコーディネーターの募集です。

 

矢祭町へは、郡山や宇都宮、水戸から車で1時間半ほど、福島空港や最寄りのインターチェンジからも1時間ほどで行くことができる。

この日は郡山方面から電車で向かうことに。

水郡線は山々と田んぼを抜けていく。草木の枯れた風景も、冬らしくてなんだか風情がある。

「もったいない図書館」があるのは、東館駅から歩いてすぐのところ。

一見すると小さな公民館。でも入ってみておどろいた。

“寄贈の本でできた図書館”と聞いて、古本屋さんのようなちょっと渋い空間を想像していたのだけど、なかは明るく開放的でまさに図書館という感じ。

もともと公民館の柔剣道場だったところをリノベーションしたのだそう。

勉強している学生もいれば、絵本とおもちゃのコーナーで遊ぶ小さな子どもの姿も。

奥へ入っていくと、中庭を挟んで特別書庫や閉架書庫につながっている。中庭に面したガラスには、本を寄贈してくれた方の名前がびっしりと書いてあった。

 

落ち着いた雰囲気の特別書庫で、館長の緑川さんに、もったいない図書館ができた経緯から伺った。

「平成18年に矢祭町の総合計画をつくるとき、事前に町民アンケートをとったんですね。そうしましたところ、かなりの方から図書館がほしいという要望があって。それで、町で図書館をつくることになったのですが、当時、本を買うための財源がなかったんです」

矢祭町は、平成13年に「市町村合併をしない矢祭町宣言」を掲げていた。自主財源で歩みを進めてきたものの、本にまでは手が回らなかったという。

「そんなとき、毎日新聞さんから『“もったいない運動”というのがあるから、それにならって本の寄贈を全国に呼びかけたらどうだろう』という提案をいただいて、新聞に掲載していただきました」

「そうしたらとても大きな反響を受けまして、29万冊も集まったんです。いろんな方から寄贈があって、ひと箱すべて絵本だったり、医学書だったり。農業も美術も文学も、ほとんどのジャンルが集まりました」

その後も寄贈は続き、今では47万冊ほどになった。これは県内でも4番目の蔵書数になるそう。

「当時の町長さんの『どんな本にも価値があるのだから、一冊も無駄にしないように』との考えで、閉架書庫も建てることになりました。もったいない図書館としても、そのご厚意に応えたい。そんな思いで始まったのが、子ども司書講座と手づくり絵本コンクールなんです」

子ども司書講座は、小学4年生以上を対象としたキャリア教育の一環。図書館のことを学ぶ座学から実演まで、さまざまなカリキュラムを用意している。

修了して子ども司書となった子どもたちは、より小さな子たちへ読み聞かせすることもあるそうだ。

そしてもう一つが、手づくり絵本コンクール。一般の部と家族の部、いずれも全国から自作の絵本が集まってくる。

審査を務めるノンフィクション作家の柳田邦男さんや絵本作家のあべ弘士さんもうなるような作品が、毎年送られてくるという。

「昨年は家で過ごす時間も長かったからか、過去最高の251点の応募がありました。最優秀賞に選ばれた方には、副賞として、絵本を印刷・製本して贈呈しています。ほかにも、町内や近隣の図書館に置いたり、作者さんの住んでいる町の図書館にもお送りしています。この二つが、今ではもったいない図書館のメイン事業になっているんです」

図書館の始まり方もイベントも、アイディアをどんどん形にしているのがすごいなあと思います。

「もったいない図書館は5年前まで、家読推進プロジェクトの方や教育長さん、そして町のボランティアからなる運営委員会によって営まれていました。ときには、町外にいる矢祭町出身の方からもサポートいただいたり、みなさんでアイディアを出してやってきたそうです。やはり、自分たちでやろう、という雰囲気があったんでしょうね」

 

そんなもったいない図書館に、開館前から関わってきたというのが、こちらの菊池さん。

「ちょうど求職中で、地元の矢祭町に帰ってきたところでした。寄贈された本が山のようにあって、仕分けをするための人手が足りないと。有償のボランティアとして手伝いに来たのがきっかけです」

「本当に、多くの町民の力がなければ、この図書館はできなかったというか。私自身、当時一緒にボランティアをしていた方たちが『大学に行け』って言ってくださって。ここで働きながら大学に通って、司書の資格を取ることができたんです。本当に、当時の運営委員会の方々には感謝しかありません」

そして菊池さんは、5年前から司書としてこの図書館の常勤スタッフになった。

本と人をめぐる、あたたかな循環を感じる。さらに、こんな話もしてくれた。

「子ども司書講座を卒業した子のなかで、高校受験をする子がいました。その子は保育士を志望していて、面接で読み聞かせをしたいと言ってきまして。『子ども司書のときにやったかもしれないけど、もう一度やろう』と、その場でその子のための特別講座をしたんです」

「しばらくして、今日は合格発表の日だなと思いながら図書館で待っていたら、その子が学校終わりに図書館に来てくれて『合格しました!』って。ああよかった、って、とても印象にのこっていますね」

ほかにも、子ども司書の一期生が、今では矢祭こども園で幼稚園の先生をしていたり、第一回の手づくり絵本コンクールで最優秀賞をとった方が、プロのイラストレーターになったり。

エピソードは尽きない。

ふと席を立つ菊池さん。模造紙を持ってきて、広げて見せてくれた。

「これは、子ども司書の認定を受けた子たちが、今年やりたいことをみんなで出しあってまとめたものなんです。子どもたちの研修旅行とか、ビブリオバトルに出たい、読書会がしたい、あとは出張で読み聞かせをしたいとか。一緒にやっていきたいんですけど、今は手が回らなくて…」

 

そんな図書館の様子を聞いて、今回の募集を進めてきたのが、教育課長の高橋さん。

今年から教育課の担当になり、子ども司書講座に関わるなかで思うことがあったという。

「はじめは、休みの日に講座を受けるって、子どもたち大変だろうなと思っていたんです。でも、実際に司書の講座を受けたり、みんなの前で読み聞かせをしたりする様子を見ていると、そういった体験一つひとつを楽しんでいるんだなってわかって」

もっと本と触れ合う機会をつくりたい。そこで、本と人をつなぐコーディネーターを募集することになった。

「町内には、もったいない図書館のほかに本にまつわる施設が二つあります。一つは、各地区の公民館にある『もったいない文庫』です。図書館から250冊ずつ、定期的に選書して本を貸し出しています」

もう一つが、学校。町には中学校と小学校が一つずつあり、それぞれ図書スペースが設けられている。

「とくに5年前に新築した矢祭小学校は、大きな廊下に直接本棚を並べた、メディアセンター方式という形をとりました。ここには司書も一人常駐していて、子どもたちの図書活動に力を入れようという機運は高まっているんです」

今度募集する人は、図書館での日常業務よりも、こういった場所に出かけていくことが多くなるそうだ。

「まずは、小学校の司書さんや地域のもったいない文庫のサポーターさんたち、それから利用している子どもたちや町の人たちと話すところから始まると思います。そのなかで、どんなイベントがあったら楽しそうか考えて企画したり、今あるものをブラッシュアップしていったり」

「たとえば今年、『ふるさと探検隊』という放課後教室の一環として、矢祭町の子どもたちが東京の子どもたちとオンラインでつながる課外プログラムを行いました。一緒に虫探しをしたり、ゆずの香りをテーマに物語をつくったり。こういった新しい角度から、本にアプローチしていくのもおもしろいかもしれません」

もちろん、子ども司書講座や手づくり絵本コンクールの時期は忙しくなることもあるし、年に一度はすべての蔵書を点検しているので、そういったタイミングでは図書館業務に携わることにもなる。それに、イベントをつくるには、重たい本を運んだり、下準備をしたり、コツコツした作業も出てくると思う。

けれど、本が好き、子どもが好き、人と話したりイベントをつくるのが好き、という人にはおもしろい仕事になりそう。

横で聞いていた菊池さんも、こんなふうに話す。

「ただ単に本が好きで図書館に勤めたい、っていう人は違うかなと思います。私ももったいない文庫に訪問すると『ちょっとお茶飲んでいって』と声をかけられたりするんです。そういうところからも交流があるので、どんどん打ち解けて入っていけるような方がいいなと思います」

「矢祭の人、お話し好きな人多いから(笑)。いろいろ話してくれると思います」と、緑川さん。

自分から動いて形にする、そんな空気を感じる町でした。

本と子ども、イベントをつくることが好き。そんな方にぜひ、応募してほしい仕事です。

(2021/1/26 取材 倉島友香)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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