求人 NEW

肉あり魚あり野菜あり
“とれたて”ばかりの
まちの縁側のカフェ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

樹からもぎとった果実をそのままかじる。畑でとれたての野菜をいただく。少し焼いて、パラパラと塩を振ってもいい。

おいしく食べるって、手間やお金をかけるだけが正解じゃないんだなと思います。さまざまな技術やじっくりと時間をかけてつくる料理のおいしさも、もちろんあるけれど、素材のまま味わうおいしさもある。

そしてそれは、産地に近ければ近いほど、感じられるものかもしれません。どういう土地で、どんなふうに育まれた命をいただいているのか。畑や海、山の近くでの食事は、味覚以外の感覚も働いて、素材をよりおいしく味わえるような気がします。

そんな産地としての魅力を詰め込んだようなまちが、山口県の北部にあります。人口およそ3000人のまち、阿武町(あぶちょう)です。

日本海に面した阿武町では、定置網の漁業が盛ん。また、和牛4品種のうちの1品種である無角和牛は、その大多数が町内で育てられているほか、多品種を栽培する若手農家さんがいたり、高原地を活かした梨やすいかをつくっていたりと、食材のバリエーションに富んでいます。

道の駅発祥の地とも言われていて、毎朝とれたての魚や野菜、新鮮な肉が並びます。この道の駅の隣に新たにオープンするのが「ABU(あぶ)キャンプフィールド」。今回は、その一角につくられるカフェの運営を担う地域おこし協力隊を募集します。

プロジェクトの脇を固めるのは、店舗の立ち上げ・運営や食にまつわる企画に携わってきた人たちばかり。素材を活かしたシンプルな料理を提供していきたいので、調理経験は問いません。

食べることが何よりも好き。その気持ちが最初の入り口になると思います。

 

山口宇部空港から車で1時間半ほど北へ。

道の駅や漁港、役場などが集まる奈古(なご)という地区にやってきた。新たにキャンプフィールドやカフェができるのもこのあたり。

施設はまだ工事中ということで、近隣のフリースペースshiBanoに集まって話を聞くことに。

まずは今回のプロジェクトの立ち上げ当初から関わってきた、役場の岡村さん。

そもそもキャンプフィールドは、どんな経緯でつくられることになったんでしょうか。

「漁協のそばに町の遊休地があって。芝生を植えてみたものの、ほとんど使われないままだったんです。それで、2017年にマーケットサウンディングを行ったところ、挙がってきた案のひとつがキャンプ場で」

キャンプ場なら芝生をそのまま活用できるし、道の駅で仕入れた食材をバーベキューなどで楽しみやすい。大きなコストをかけずに滞在性を高められて、雇用の創出にもつながる。さっそく取り掛かろう!ということになった。

ところが、いざ動きはじめると、このフィールドで実現したいことがほかにもいろいろと見えてきた。

「最初は町長の発案で、『来た人をお迎えするビジターセンターも必要だろう』と。たしかに、道の駅にたくさんの人が訪れているにもかかわらず、観光案内の機能がなかったんです」

2018年、萩市や山口市の一部とともに、全域が日本ジオパークに認定された阿武町。

ジオパークとは、地質学的に価値あるエリアを認定・保護するプログラム。お隣の萩市にはビジターセンターがすでにあったものの、阿武町には拠点となる場所がなかった。

そこで、ただ情報を伝えるだけでなく、シーカヤックやトレッキングなどのアクティビティを通じて体験する機会を増やそうと、DMO的組織の立ち上げなどに取り組んできた。

「そのほかにも『道の駅で買ったものを座って食べられるようなイートインコーナーをつくろう』とか、『そこにコーヒーマシンを置くだけじゃもったいない、カフェが必要だ』とか、『じゃあその隣にテストキッチンもほしい』と広がって」

雪だるま式に。

「そうそう。『いっそ道の駅も全部改装して全体を新しい施設に…』という話まで出たんですが、一回落ち着きましょう、と(笑)。キャンプ場に加えて、カフェやテストキッチンを備えたビジターセンターをつくろう、というところで計画が進んでいます」

その過程で、キャンプ場には株式会社スノーピーク地方創生コンサルティングがプロデュースに関わっているとのこと。テストイベントも開きつつ、オープンは年内を予定している。

 

カフェをつくる背景として、「町内に飲食店が数えるほどしかないこともポイント」と話すのは、一般社団法人STAGEの石坂さん。

役場のみなさんと二人三脚でこのプロジェクトを進めているうちのひとりだ。

「腰を落ち着けて食べられるお店が2軒、テイクアウトできるところが3軒とか、それくらいで」

そんなに少ないんですね。

「飲食店がほとんどないなか、道の駅には年間40万人のお客さんが来ていて、食材も豊富。これからキャンプのお客さんも新たに増える。ほとんどブルーオーシャンだから失敗しにくいですよね」

町としても数年がかりで大事にあたためてきた取り組み。外から来た人だけでなく、地元の人も自信を持っておすすめできるようなお店にしていきたい。

もともとはぐるなびで自治体やメーカーと組んだプロモーションや、博多ファーマーズマーケットというマルシェの責任者を務めるなど、食に携わってきた石坂さん。

そんな立場からみて、阿武町の食の魅力ってどんなところに感じますか。

「道の駅に行ってもらうとわかると思うんですが、肉あり、魚あり、野菜ありで、バランスがすごくいいんです。特徴的なところでいうと、無角和牛。全国で約200頭育てられているうちの130頭ほどが阿武町にいます」

「あとは定置網漁が盛んで、いろんな魚が獲れます。イカやスズキ、ヒラマサなんかがよく獲れますが、珍しいところだと3月には沿岸部でマグロがかかることもあるんですよ。日本海側の、冷凍していない生の本マグロがこの値段で食べられるところって、なかなかないと思います」

高原地で栽培されるすいかや梨、キウイといった果実もおいしい。

一方で、地域ならではの食文化は特徴的なものが少ないと感じるそう。近場ですぐに新鮮な食材が手に入るから、保存や調理法を試行錯誤するより、素材をそのまま味わうような傾向があるのかもしれない。

「減っている人口に対して、食材の量とバリエーションが半端じゃないポテンシャルを持っているんです」と岡村さん。

「町内を回っていると、『これそこの畑でとったからどうぞ』って野菜をもらったり、『とれすぎちゃったからあげるね』って漁師さんが魚をくれたり。そういうことはよくあります」

今回のプロジェクトは、阿武町の食材を活かすことで、生産者に利益を還元することも目的のひとつ。カフェの担当者も、畑で一緒に農作業をしたり、定置網漁に出たり、牛の世話をしたり、まずは現場に入って生産者との関わりを深めていってほしい。

そこで得た知識や体感したことは、メニューに活かせたり、店頭のポップやSNSで発信できたり、生産者や料理研究家を招いたイベントにつながったりと、きっとお店の幅を広げてくれると思う。

 

「いろいろやってみたい、アイデアマンな人は楽しいと思いますよ」

そう話すのは、カフェのプロデュースで関わっている関さん。

以前は石坂さんと同じぐるなびに勤めていて、プロの料理人に教わるレシピサイト「シェフごはん」の立ち上げなどに携わっていたそう。

7年前から佐賀を拠点にお店をはじめて、現在は飲食店2店舗と米粉を使ったスイーツ専門店を1店舗経営している。

「今回のお店は、あえてつくり込まないようにしていて。新しく来る人と相談しながらつくっていくほうが、やりがいも感じられるだろうし、結果的にいいお店になっていくと思うんです」

今年、道の駅のなかに漁師めしのお店ができたことを踏まえて、競合しないように洋食メインで考えているとのこと。そのほか、阿武町の食材を使う以外の決めごとは、現時点ではないという。

着任からオープンまでは時間があるので、その間はキッチンカーでテスト販売をしつつ、地元の人たちや生産者さんとの交流を深めてほしい。経験は問わないそうだ。

「手の込んだ料理をつくるというよりも、素材のよさをそのまま活かすようなメニューを考えていきたくて。だからめちゃくちゃ料理がしたい、って人じゃないほうがいいかもしれないですね。食べることと自然が好きな人。突き詰めるとそこなのかな」

 

カフェが動き出すまでの準備段階で主に伴走してくれるのが関さんだとしたら、実際に動き出してから現場でよく関わることになるのが、こちらの手塚さん。

自動車の整備工場で働いていた経験から、現在はキッチンカーの製作を頼まれているという。海の家や、のちにミシュラン一つ星を獲得したお店でも働いていたそうで、飲食や接客についてもよき相談相手になってくれるはず。

こんな人に来てもらいたい、というイメージはありますか?

「0→1のフェーズって、正解がないんです。その人の力を引き出して、一緒に形にしていくのがぼくの役割なので、意欲があれば、どんな方でも」

「あとは、町の人が応援したくなるような人がいいですね。海鮮丼のお店をはじめた元協力隊で漁師の宮川って子、彼女がまさにそんな感じで。どこに行ってもなおちゃんって呼ばれ、よく怒られつつ(笑)、可愛がられていて。応援型スタッフっていうんですかね。そんな人がいいと思います」

7年前から協力隊の募集をはじめた阿武町。現在も7名が活動中で、宮川さんのように卒業後もこの地に残って生業をつくっている人も多い。

 

そんな協力隊の活動を温かく見守ってきた花田町長にも、最後に話を聞いた。

「我々の知らない世界を見てきた人たちが、その経験や知識を持ち込んで、まちに新しい風を吹かせてくれる。刺激を与えてくれるわけやね。そのことの意味はものすごく大きい」

「とくに最近まちに来てくれる若い人は、講釈だけじゃなしに行動するからおもしろい。彼ら彼女らと話すのは、ぼくも好きやし、『まあやってみたら?』って思うことが多いね。譲れないところは譲れんよ? でも、あのとき老婆心でいらんこと言わなくてよかったなと思うことはよくある」

花田さんにとっての譲れないところって、どんな部分ですか。

「この阿武町には、お年寄りが半分以上いらっしゃるわけで。その人たちを置いてけぼりにしてね、イケイケで進めていこうっていうのは好きじゃない。いち町民の立場として、自分だったらどう思うか?については、よく考えていると思う」

「今回のキャンプフィールドが、まちにとってなぜ必要なのか。どんな場所であったらいいのか。そういった部分まで頭に入れながら活動できる人に来てもらいたいね」

 

取材後、みんなで地域の若手農家さんのもとを訪ねた。

畑を見せてもらいながら、メニューの妄想が止まらない関さん。収穫体験や対面販売の企画を考えはじめる石坂さんと岡村さん。「手伝えることあったらいつでも呼んでください!」と楽しそうな手塚さん。

みなさんやっぱり、食べることや食にまつわる仕事が好きなんだな。それぞれの想いをこのプロジェクトに乗せつつ、その気持ちだけはブレない軸のようなものだと感じました。

食べることが生きがい。そんな人にぴったりな仕事だと思います。

(2021/4/5 取材 中川晃輔)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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