求人 NEW

「働きたい」を支える
エンパワーメントと課題解決

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

わかっているようで、意外と知らない「自分」のこと。

考え込んで探すのではなく、どこかに行ったり、誰かと話したり、「自分」は外側にある対象を通じて見えてくるものかもしれません。

職を求める活動は、自己発見の契機のひとつ。

それは同時に、求められたり縁がなかったり、大きく心を揺さぶられる経験でもあります。

「職につくまでの『移行』の支援は、常に変化に立ち会う、スピード感が必要とされる仕事です。福祉業界のなかでも大変だといわれているし、実際そうだと思います。ただ、利用者さんが手応えを掴んで自ら歩んでいかれる過程に立ち会えるのは、何にも代えがたいうれしさがあるんですよ」

そう話すのは、ヴィストキャリアの就労移行支援員、榎本さん。

ヴィストは、症状や特性から働きづらさを感じている人の「働きたい」を、さまざまなかたちでサポートする会社です。

どんな仕事がしたいのか、何が向いているのか。丁寧に本人と向き合いながら伴走していく、就労移行支援員を募集します。



金沢駅港口。ホテルやオフィスビルを見渡すロータリーに降り立つと、視界の右手にヴィストキャリアの入るビルが見えた。

金沢駅の近くで働くって、どんな職場環境なんだろう。海鮮のおいしい食事どころ、居心地のいいカフェ…観光では味わえない街の魅力を知れるのかな、など考えながら歩いていくと、あっという間に到着。

窓際にペンダントライトとソファ、中央にデスクの並んだ空間はコワーキングスペースのよう。眺めもよくて、居心地がよさそうだ。

「今年に入って新しくなったんです。窓が大きくて開放感がありますよね」

迎えてくれたのは、就労移行支援員であり、サービス管理責任者・精神保健福祉士の榎本さん。

ヴィストは働きづらさを感じている人を支援する、さまざまなサービスを展開する会社。

企業で働くサポートをする就労移行・定着支援のヴィストキャリア、働く環境をつくる就労継続支援A型B型のヴィストジョブズ、障害のある子どもたちと関わる児童発達支援・放課後等デイサービスのヴィストカレッジ。それぞれの事業所を金沢市・富山市を中心に複数展開している。

もとは違う福祉施設で働いていた榎本さん。就労移行支援がやりたいと、数年前にヴィストに入社したそう。

就労移行支援。具体的には、どういう支援をするんだろう。

「人によって、内容はまったく変わってきます。何がしたいかわからない人もいれば、就労経験はたくさんあっても長続きしない人もいる。働く人と企業との間に立って、必要とする支援を『ご本人に合わせて』組み立てていきます」

利用者のなかには就労経験のない学生さんもいれば、経験豊富な人もいる。

その人に合わせた形で、やりたい仕事について一緒に考えたり、応募書類の書き方や面接の練習をしたり、対人関係やストレスコントロールの講座を実施したり、企業での実習に同行したり。

どういうところで働き、どんな生活をしたいか、本人と話しながら就労に向けたアクションを重ねていく。

利用者側が支援サービスを利用できる期間には期限もある。法律で定められた期間は、2年間。

「引っ張っていくでも押すでもなく、働きたいという気持ちを大切に、相手を尊重しながら関係性を築いていくことが必要です。一方で、見学、面接、実習と、常に動いて2年のうちに次のステップへ移行しなければならない。そのバランスがむずかしくて」

利用者さんにとってその2年間は、受け入れられたり断られたり、心揺さぶられる機会の連続だと思う。

気持ちの浮き沈みも、日々伝わってくるものですか?

「そればっかりですね。1回でうまくいくことはほぼありません。でも、本当にその方に合う職場や働き方って、そういう経験を通じて見つかるものでもあって。外に出て実際的な環境に身を置くなかで気づけることがたくさんあるんですね」

「落ち込んだり、やる気になったり。気持ちの浮き沈みはあるなかで、支援員はその変化に寄り添うことが必要です」

毎日がドラマの連続だという榎本さん。今伴走している利用者さんも、まさに変わりつつあるタイミングだという。

「彼はとても自己肯定感が低くて、どうせダメだって考えになったり、かと思えばすごく難しい仕事を希望したり。はじめは支援しあぐねるところのある人でした」

風向きが変わったのは、支援者としての視点や考え方を変えたとき。「こういう仕事ならできるかな」ではなく、その人のいいところを見つけて伝えるようにした。

すると利用者さんの態度も、「自分はダメなんだ」ではなく、「自分もできるかもしれない」というように変化していった。

「自分を認めてくれる人がいることは、人生における後ろ盾になると思うんです。結果として就労に結びつかなかったとしても、その人が自分で一歩を踏み出すことに自信を持てる、心の応援団のような存在になれたら、関わった意味はあると思っていて」

「就労はあくまでもひとつの手段です。重要なのは本人の選択で、その人らしく生きること。利用者さんの表情が変わっていきいきとしていく、そんなサポートをしていけたら」



一緒にお話を伺ったのは、ヴィストキャリアの石川エリアマネージャーでジョブコーチの出村さん。現在石川県内の3拠点で就労・定着支援の仕事をしている。

前職で事務の仕事をしていた出村さんは、当時、職場で休みがちな人のことが気になっていたそう。

辞めるのではなく、業務内容や勤務体制をどのように変えれば働けるのか。そんな発想で、社内環境を変えていった。

それは今の仕事にもつながっている。

「支援者対利用者、ではなく、人対人で接していたいといつも思っています」

「必要な知識は現場を通して学んでいますが、まだまだ深めていきたいことばかりで。コーディネーターとして企業の内情を知っていく必要もあるし、見通しをつける力もいる。入社の際に必要な資格はありませんが、スキルアップには限りがないと思います」

就労移行支援で就労先となる企業は、すでに実績のあるところばかりではない。求人広告を見たり、「この立地はいいんじゃないか」と、歩きながら見つけた会社に業務内容を聞きにいったり、利用者さんの希望に合わせて常に開拓していくことも、支援員の仕事。

「求人が出ているということは、何かに困っているということ。その困りごとをうかがって、就労移行支援の利用者さんが希望する内容とマッチングさせることで解決策を提案する。企業さんと利用者さんの間に入って、双方をwin-winに持っていくのが私たちの役割ですね」

企業開拓をしながら、業界に応じて必要なスキルを利用者さんに身につけてもらったり、面談に必要なものを準備したり。

企業内での実習中には現場の声を聞き、その人に本当に合っている職種かどうか、働く上での課題なども把握していく。

その上で、障害特性上の配慮が必要な業務は削る、得意な業務は増やしてもらうなど、仕事の内容まで人に合わせてカスタマイズしていくのだという。

「ものの見方を柔軟にすることも大切です。遅刻癖のある人がいたら、遅刻を治してください!じゃなくて、環境を変えたらどうだろう?って考えてみる。実際に、ヴィストには絶対遅刻してくるけど、思い切って実習をはじめてみたら、まったく遅刻しなくなった人もいました。環境を変える部分で私たちが行動することで、利用者さんも変わって、凛として笑顔が増えていくんです」

「人って本当に変わります。そこに立ち会えるのは稀有な仕事ですね」

変化に携わり、支える仕事。障害を持つ人と接する上で、望ましい態度というのはあるんだろうか。

「逆に障害の有無で『分けない』ことですね。ある種の敏感さを持っておられる方は多いので、こちらが構えると相手も構えます。それは支援者のスキルというより、人対人の関わりとして大事なことじゃないでしょうか」

人の心の痛みがわからない人には難しい。かといって「私がなんとかしてあげる」というのも続かない。こうするべき、と「支援者がしたい支援」をしてしまうのも違うと出村さん。

あくまでも主体は自分ではなく相手。その上で、感性を大切に向き合い、真摯に耳を傾けることが重要なのだという。

「2年間という期間のなかで、スケジュール管理も苦戦するかもしれません。人相手だから、変更ありきのスケジュールのなかで、見通しを立てながら機敏に対応していく。それが同時進行で何件もあって」

そうしたなかで、出村さんは「ご本人が就労を希望している限り、諦めずに一緒にやり切りたい」と言う。

「就職したいと門を叩かれているので、それをかなえるために考え抜いて行動するのは絶対だと思っていて。その上で、せっかくなら楽しく働いてほしい。生活のためと考えると疲れるけど、仕事を通じてつながれることはたくさんあって、ありがとうって感謝される機会も生まれますよね」



最後に話を聞いたのは、代表の奥山さん。外出先からオンラインで画面をつないでもらった。

奥山さんがヴィストを創業したのは9年前。お母さまが難病をきっかけに精神疾患を患い、家と病院を往復するなかで、働きづらさを感じる人が一歩踏み出すきっかけになる場をつくりたいと思った。

「心豊かに働ける、社会インフラのような存在になりたいと思ったんです。心が豊かというのは、自分とも人ともつながっている状態。自分とつながる、つまり自分を知ることは、一人ではできないことだと思っていて」

と、ここまで話して、言葉に詰まる奥山さん。

「最近は、創業当時の想いとは変化するところも出てきて…」

9年前と今。変化しつつある会社のあり方を言葉にしようと思うと、自分のなかでまとまっておらず、まだ言葉にできないという。

ただ求めるイメージは、なんとなく見えている様子。

「支援者と利用者とか、経営者と従業員とか、してあげる側とされる側的な、一方的な関係性をなくしていきたいんです」

「僕が会社を導くんじゃなくて、よりよいあり方を一緒に探求していこうぜ、一緒に成長していこうぜって。社員、利用者、地域の人、それぞれとそうなっていけたらいいなと」



今後、会社のなかでも何かしらの変化はあるのかもしれない。

どんな立場の人でも葛藤すること、言葉がまとまらないことはある。それを隠さず、お互いに支えあいながら、それぞれの人が主体性を発揮できる環境をつくり続けること。

それは仕事の枠を超えて、人や社会のあり方を問い続けることなのかもしれません。

(2021/6/8 取材 籔谷智恵)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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