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「自信を持って説明できるものを、自分が納得するまでつくる。嘘なく伝えて、できるだけリーズナブルに売って、ありがとうって言ってもらう。僕はこれからのビジネスって、利他だと思ってるんです」
ものをつくって、伝えて、売る。
ときには効率を優先したり、ちょっと大げさに伝えたり、楽な方法を選んでしまいたくなることもあるかもしれません。
それでもできるだけ、社会にも自分にも嘘をつかず、誠実でいられる仕事をしていきたい。
たかくら新産業の代表、高倉さんのまっすぐな話を聞きながら、そんなことを思いました。
たかくら新産業はオーガニック成分を使い、ボディーケア製品や食品、ペット用品をつくっている会社です。
つくっているのはどれも、自分が欲しいと思えるもの、そして家族に安心して使ってもらえるもの。
今回はここで、ECサイト運営、SNSの運営など、Webを通じて伝えていく役割を担う人を募集します。
目標は、自分たちのことを誠実に伝え、会社のファンを増やすこと。
マーケティングやWeb、SNSの運営などで伝える仕事に関わっているものの、もっと素直にやってみたいと考えている人は、ぜひ読んでみてください。
向かったのは、東京・西麻布。
六本木駅から8分ほど歩いたビルの3階まで上がると、「こんにちは、よろしくお願いします!」と、はつらつとした声で代表の高倉さんが出迎えてくれた。
百貨店やアパレルブランドで働いたのち、たかくら新産業を立ち上げたのが28年前のこと。
「日本にはまだないもの」をコンセプトに、世界中の商品を輸入するところからはじまり、今ではオーガニックな製品を自分たちで製造している。
「オーガニックっていうものに興味を持ちはじめていたころ、うちの奥さんが『100%オーガニックのシャンプーを見つけた』と買ってきたんです」
100%なんてあり得るのだろうか。そう思って高倉さんはラベルの裏を見てみると、シャンプーのなかにわずかに含まれている、エッセンシャルオイルのみがオーガニック100%だということがわかった。
「食品と違って、コスメにはルールがほぼないんですよ。商品の中に0.1%でもオーガニック成分が入っていれば、オーガニックって大きく書いても誰も怒らない。これは日本だけじゃなくて世界中です。それにまず僕は衝撃を受けました」
「自分で本当に納得のいくものじゃないとイヤだと思って、オーガニックコスメをつくることにしたんです。大切な人に使ってほしいと思える、絶対的に自信があるものしかつくりません。オーガニックとナチュラルをデイリーユースにする、日常のなかで使えるものにするというのが、僕らのミッションです」
毎日使えるシャンプーやボディークリーム、消臭スプレーやデリケートゾーンのスキンケア商品など、生み出してきた製品やブランドはさまざま。オーガニック成分をなるべく多く使い、その比率も正直に表記している。
ここ最近は、食品の開発にも力を入れているそう。
「アウタービューティーと呼ばれるものだけ気をつけていても、なかなか身体は変わっていかないのを僕自身が感じていて。やっぱり食べるものを変えていかないとだめだっていうことで、3年ほどかけて、オーガニックでユニークな食品を開発しています」
食品ブランドの名前は「だいじょうぶなもの」。
農薬などを使わずに育てたシーベリーのドリンクやツルアラメという海藻を使ったサプリメントなど、見慣れない食材や商品が並んでいる。
なかでも、有機植物発酵エキスという商品をつくったときのことを、高倉さんが教えてくれた。
「食品についていろいろ調べていくなかで、一番大事なのは腸だろうという結論に行き着いたんですね。腸をよくして、免疫を上げるものをつくろうと、いろいろな人に話を聞きに行きました」
「話を聞いているうちに、コスメをはじめたとき感じたように、え?って思うことがたくさんあったんですね。大したことないのに効くって言っていたりとか、値段ばっかり高いものだったりとか。それがすごくイヤだと思ったんですよ」
そんななかで耳にしたのが、滋賀県で有機JAS認証を受けた発酵食品をつくろうとしている人のこと。
おもしろい人がいればすぐに会いに行くという高倉さん。このときも、翌週には滋賀に飛んでいったそう。
「農家さん、生産者、工場まで全部自分で行って、話して、徹底的に質問するわけ。僕らは商品を預かって、売る責任がある。どうやって、どんな思いで、どこにこだわってつくっているかを、生産者と同じくらい語りたい。そうやって、自分が納得できるものをつくっているんです」
納得するまでじっくり聞いて、話して、試していく。
大切なことだと思うものの、そんなに時間や労力をかけて大丈夫なんだろうか。
「僕はものをつくるとき、圧倒的に利他なの。事業計画はつくらないんです。発売日が決まっていると、そこに合わせて帳尻を合わせなくちゃいけなくなるでしょう。それで最高のものができればいいけど、どうしても売るための考えが入ってきて、利己的になってくるんです」
スカッと気持ちよく話をしてくれる高倉さん。納得できるものができず、発売時期を1年延ばすようなことは少なくないんだとか。
商品をつくる過程も、売り方や伝え方も、消費者にとってはうれしいことばかりだけれど、会社としてやっていくのは大変なことも多いと思う。
いいと思うことを貫いていく高倉さんのエネルギーは、どこから来ているものなんでしょう?
「やっぱり自分が病気をしたことじゃないかな。体重が13キロも落ちて、食事もできなくて、死ぬんだと思ったの。自暴自棄になった時期もあったよ。だけど、やっぱりこのまま死にたくなかった。それまでも変な商売をしていたわけじゃないけど、元気になったら、本当にいいことをやって生きようって思ったんだよね」
「利他に徹するって話すと、理想論だって言う人もいるわけよ。だけどね、お客さまに本当にありがとうって言ってもらえることを続けていれば、それは僕らに返ってくるから。効率やスピードだけじゃなくて、お客さまに納得していただけるものをつくるっていうことを、僕はずっと続けてきたんです」
そんな高倉さんの姿勢が強く表れていることの一つが、伝え方。
コスメや健康食品の世界では効果を大きく打ち出したものをよく目にするけれど、たかくら新産業では、ありのままを伝えることを大切にしている。
「僕はオーバーマーケティングとか嘘って大嫌いなのね。もちろんたくさんの人に買ってもらいたいけれど、それ以上に、本当にいいものを届けて、健康になってもらいたいわけ。僕たちがこだわっていることを伝えて、納得して買ってもらえるECサイトにしていきたいと考えているんです」
高倉さんのもとで、マーケティング担当として働いている永井さんにも話を聞かせてもらう。
「ここで働く前は、フリーランスでウェブのデザインをしていました。当時、高倉が登壇するセミナーに参加したことがあって。この人おもしろいな、いつか一緒にお仕事できたらいいなって思ったんです」
オーガニック製品にも関心が強かったという永井さん。きっかけは、なんだったんでしょう。
「10年くらい前にオーストラリアに行く機会があって。向こうはオーガニックなものが当たり前に並んでいるんですよね。自分や家族の健康に対する考え方がすごくいいなと感じました」
「皮膚につけたり食べたりするものって、自分の血や肉になるものですよね。よくないものを身体に蓄積してしまうことで病気のリスクも高まります。将来子どもを産むかもしれないっていう選択肢があるなかで、すごく気にかけるようになりました」
できるだけオーガニックなものを取り入れるようにしているものの、ケミカルなものをすべて排除しているわけではないという永井さん。
自分にとっていいと思えるバランスを見ながら、生活に取り入れていく。そんな姿勢は、たかくら新産業のものづくりとも重なるところがあるという。
社員にならないかと誘われ、入社したのはちょうど1年前。今はライフスタイル製品と食品のマーケティングや、店舗で使う什器の制作、SNSの運営など、伝える仕事を幅広く担当している。
製品に添える言葉や写真選びにも、気を使うことが多いそう。
「薬機法が関わるので、ダイレクトに効果を言えないのはむずかしいポイントです。聞き慣れない成分のことや効能を自分のなかで噛み砕いて、なるべくフランクに、かしこまりすぎないように言葉を選んでいます」
新しく入る人には、永井さんが担当しているSNSや、今は外部に委託しているECサイトの運営をしてもらいたい。
ECサイトは今後、どんなふうにしていきたいですか。
「いろいろなブランドがあるがゆえに、セレクトショップのように見えてしまって。ひとつのメーカーとして認識されていないことが悩みなんです。私たちが日々考えていることや、商品が生まれる根っこになる考え方、たかくら新産業の世界観を伝えられるようなサイトにしたいと思っています」
売るサイトというよりも、自分たちの考えを伝えていくサイト。
「なにをするにも、ありのままを見せることは大切にしていきたいです。誠実にやっていれば、認めてくれる人がいるということは実感していて。ただただ、誠実にやっていきたい。それは、自分の仕事に対する自信にもつながっていると感じています」
誠実に伝えていく。それはたかくら新産業のもうひとつの軸、ペット用品のマーケティングでも同じこと。
担当している永田さんは、トリマーとして製品を使う側だった経験のある方。
ペット用品をつくるチームも、食品やボディーケア製品と同じように、オーガニックな成分を使いながら、シャンプーやオーラルケアができるものなどをつくっている。
「大切にしているのは、コミュニケーションのきっかけをつくることです。犬や猫って人間と違ってしゃべらないので、手で触ってお世話することで体調がわかってくるんです」
今は秋に予定しているブランドリニューアルに向けて、商品のことをどう伝えていくか考えている真っ最中。
「私は、ものをつくる人たちの気持ちを大切にしていきたいと思っています。開発や製造担当の人たちの話を聞く時間は、意識的につくるようにしています」
製造過程でのこだわりやエピソードを伝えるのも、自分たちでつくっているメーカーだからできること。永田さんは自ら開発チームのなかに入っていって、商品をつくる過程に立ち合ったり、雑談のなかからつくり手の声をひろうようにしている。
販促物をデザインしたり、マーケティングの方法を考えるフェーズに入っても、つくる側の意見を取り入れているそう。
「みんなで意見を出し合うので、なかなか決まっていかない難しさがあるのは正直なところですね。最終的にいいものを、お客さんにちゃんと伝えることが大事なので。そこを目指して毎回試行錯誤の連続です」
誠実な仕事をし続けるには、楽な方を選ばない難しさがあるんだと思います。
それでもここで働いている人たちには、素直でいられることの清々しさがありました。
(2021/6/29 取材 中嶋希実)
※撮影時はマスクを外していただきました。