※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
いいものを使いたいのに、なかなか満足のいくものに出会えない。自分が納得できるような商品を開発したいのに、つくり手側の都合であきらめる。
商品を手にする人も、つくる人も、みんなが満足できるものをつくりたい。
たかくら新産業は、ナチュラルやオーガニック商品をつくるメーカーです。
つくりたいものは、自分がほしいと思えたり、家族に使っても安心なもの。
今回はここで、商品開発を担当する人を募集します。
加えて営業担当とECショップ運営担当も募集するので、興味のある方は読んでみてください。
東京・西麻布。
六本木駅から表参道方面へ歩いて8分ほどのビルの3階に、たかくら新産業のオフィスがある。
たくさんの商品が並べられている打ち合わせスペースで、まずは代表の高倉さんに話を伺った。
高倉さんに会って思ったのは、明快でエネルギッシュな人だなぁということ。
若いころは渋谷の西武百貨店で働いていたり、有名アパレルブランドの洋服をつくっていた。
1993年にこの会社を立ち上げてからは「日本にはまだないもの」をコンセプトに世界中の商品を日本へ輸入してきた。
たとえば、今や多くの人が使っている、アロマ虫よけスプレーを日本へ広めた仕掛け人が、実は高倉さんなんだとか。
「僕が買い付けるときの基準は、もう単純に僕がほしいかほしくないか。それは昔からずっと変わらなくて、今も僕は自分がほしい商品しかつくっていないんですよ」
オーガニックやナチュラルな商品をつくるようになったのは、自身やご家族の病気がきっかけだったそう。
「オーガニックっていうものに興味を持ちはじめていたときに、ある日、うちの奥さんが『100%オーガニックのシャンプーを見つけた』と買ってきたんです」
100%オーガニックなんてあり得るのだろうか。そう思って高倉さんはラベルの裏を見てみると、シャンプーの中にわずかに含まれているエッセンシャルオイルのみがオーガニック100%だということが判明した。
「食品と違ってコスメにはオーガニックのルールがほぼないんですよ。商品の中に0.1%でもオーガニック成分が入っていれば、オーガニックって大きく書いても誰も怒らない。これは日本だけじゃなくて世界中です。それにまず僕はすごく衝撃を受けました」
「自分で本当に納得いくものじゃないとイヤだと思って。オリジナルのオーガニックコスメをつくることにしたんです」
高倉さんがまず取り組んだのは、オーガニックパーセンテージの表記基準を自分たちでつくってしまおうということ。
食品の表示基準に習い、水と塩を除いた全原料のオーガニックの割合を商品に明記するようにした。これは世界でもはじめてのこと。
「その次に、どんな商品をつくろうかと考えました。ただ、右から左まで全部の日用品をオーガニックにしたら、お金がいくらあっても足りないじゃないですか。だから、オーガニックにするべきものとしなくてもいいものって何だろうって考えた。それで『経皮吸収』っていう言葉にたどり着いたんです」
経皮吸収とは、物質が人の皮膚を経由して体内に吸収されること。
腕の内側に付着した物質が吸収される量を1とすれば、頭皮はその3.5倍を吸収する。アゴの下は14倍で、男性の睾丸はなんと42倍にもなる。
「だから、そういうところに使うものこそオーガニックにするべきだと思って、歯磨き粉・デオドラント・ヘアケア・デリケートゾーンの製品をオーガニックでつくりだしました」
高倉さんは化学成分を忌避しているわけではないという。なぜなら奥さんが病気で倒れたとき、救ってくれたのは化学薬品だったから。
「僕はフェイシャルの商品って1個もつくっていないんです。だって、きれいになるためには高機能の化粧品のほうがいいじゃないですか」
本当にどこまでも消費者目線なのですね。
「そう、僕は常に消費者側からしか見ていない。自分がほしいかどうかです。もし、身の回りのものすべてオーガニックにしろって言われても、僕はイヤですよ」
できる限り100%オーガニックに近づけたり、成分効果をきちんと証明できるエビデンスを揃えたり。自分がほしいと思えるかどうか、ということのほかにも、高倉さんにはいくつものこだわりがある。
たとえば、既にあるような商品は絶対につくらないようにしている。新しい価値を創造することに興味があるのは、「日本にまだないもの」を輸入していた時代からずっと変わらない。
そして、高倉さんが一番思いを込めていると話すのが、日常的にオーガニック商品を使ってもらうために、できる限り価格を安くすること。
「百貨店さんによく言われるんです。なんでこんなに安くするんですか、こんなにいいものなら3倍の値段にしたらいいじゃないですかって。でも僕は、いいものが安くて何がわるいの?って思うんですよ」
「別に、洋服から食べものまですごくストイックにオーガニックで揃えている人だけに買ってもらいたいわけではないんです。日本中の人に日常的に使ってほしいから、価格は安くするし、売り場も百貨店からバラエティショップ、コンビニまで、いろんなところへ販路を広げています」
価格を抑えるために、メーカーや生産者と価格交渉することもよくあるという。
でもそれは、彼らを苦しめることにつながってしまわないのだろうか。
「もちろん取引価格が高いとつくり手側はハッピーです。でも、それって一時的なもので、続かないんですよ。続かないから新商品にコロコロ変えることになって、結局つくり手側がどんどん疲弊していく」
「だから僕が交渉する際は、『日本中の人に届けるために僕たちもあまり利益をとらないから、あなたたちも価格を抑えて売ってください』ってお願いをするんです。もちろんその代わりに、たくさん売る努力をしますよ」
高倉さんは、日本中の人たちが日々の生活の中で当たり前のようにオーガニック・ナチュラル商品を使えるような世の中にしたい、と話していた。
いいものづくりをするだけでなく、そういった視点で取り組んでいる会社はなかなかいないと思う。
「でもそれは、自分は社会起業家なんだとか、大げさなことを言うつもりじゃなくて。基本的なことなんですよ」
基本的なこと?
「嘘をつかないようにしたいとか、素直な人間であろうとか。ちゃんとした商品を売りたいんです」
たかくら新産業の商品はどのように開発されているのだろう。
今度は、商品開発を担当している4人のうちのひとり、奥山さんに話を伺った。
商品開発ではほとんどの場合、高倉さんのアイディアがきっかけになるそう。
高倉さんはオーガニック原料の調査のため日々世界中を飛び回っていて、そこで見つけた原料から商品を発想するケースが多いのだという。
たとえば、乾燥性敏感肌に対応する『モイストリペア』という商品シリーズ。
高倉さんは、天然ヒト型セラミドという成分を世界ではじめて抽出に成功した日本企業に出会い、この成分に着目。
自身が乾燥肌に悩んでいたこともあって、保湿効果の高い商品をつくろうと考えた。
「乾燥性かゆみ肌をケアするというテーマ、キーになる原料、クリームなのかオイルなのかっていう商品のタイプ、いつも大体その3つの条件を提示されて開発を進めてきます」
「それでモイストリペアをつくるときは、かゆみってどうして起こるのかなってメカニズムを調べるところからはじめて。スタッフに説明するためにも自分で図をつくったりしました」
そんなところから調べるのですね。
「なんとなく効果がありそう、じゃなくて、『この成分がこうやって効く』と説明ができれば、しっかり語れる商品になっていくので。お付き合いのある工場さんに協力いただきながら、何回も試作を重ねてつくっていきます」
新しい商品を開発するときは、オーストラリアの工場が協力してくれる。知識を惜しげなく提供してくれるし、ソープ系・ローション系・クリーム系など、彼らが持つレシピをベースに開発を進めることもあるという。
ただ、オーストラリア人に合わせたものなので、日本人に合うように成分を変えるなど、試行錯誤は欠かせない。
「開発中のボディソープに、この精油をあと少しだけ加えたらもう完成だ!と思っても、急に泡立たなくなってダメになったりすることがあるんです。原料の多くは天然のものなので、産地とかその年によって香りや状態も変わるんですよ。大変だけど、面白いところです」
ほかにも仕事の大変なところはありますか?
「んー… 社長に新しいものが降ってくるタイミングが分からないってことですかね」
降ってくるタイミング?
「社長が出張とか展示会に行っている間に新しいものに出会ってしまうと、そこでまた新しい案件が1個増えるんです。開発途中のものも、やっぱりこっちの原料にしようって変更になることがあって」
せっかくここまでつくってたのに…って思いません?
「最初はそう思うこともありましたよ。でも、社長は純粋に自分がほしいものをつくりたいと思ってるだけなんですよね」
自分がほしいもの。
「そうなんです。そこに対して今までどれだけ時間をかけて苦労したかってことは別に重要じゃない。そんなことより、いいものが見つかったらそっちにチャレンジしていくべきなんだって、私も思うようになりました」
「私も社長と一緒に出張へ行くので、最近はなんとなく分かるようになってきたんですよ。『あ、この件来るな』みたいな(笑)」
奥山さんは以前、イギリスのインテリアとアパレルを扱う会社で働いていたそう。
そこで販売を5年、商品開発を5年経験し、約2年半前にたかくら新産業に入社した。
入ってすぐの仕事は、すでに開発されていた「オーガニックのどスプレー」の有機JAS認証を取得することだった。日本の制度が追いついていないために、取得するだけで2年もかかったという。
「当初、よく分からずミーティングに参加したら、みんながあきらめずになんとか可能性を探ろうって話し合いをしていて。ああ、そういう会社なんだなって」
「社長と工場の間に立って伝書鳩のように動いたり、価格交渉したり、細々したこともたくさんあるんですけど。みんなが頑張ってるから、自分も頑張れるんです」
奥山さんは、どんな人に来てほしいですか?
「自分の知らない分野とか、専門じゃないところを突き詰めていって、それが形になって世に出るのってすごいことだと思うんです。だから、今までの経験にとらわれず、新しい世界でも試行錯誤することを面白いと思えるような人なら、すごく魅力のある仕事だと思います」
高倉さんはこれから新たに食品の開発に力を入れていくそうです。
テーマは「予防食品」。サプリじゃつまらないから、食べることを楽しみながら健康体をつくれる商品にするのだとか。
これからどんな「ほしいもの」が生まれるか、楽しみです。
(2018/2/1 取材 森田曜光)