「単純に儲かったらいいわけでもないんです。やっぱり『面白い会社』って言われたい。普通の不動産会社さんでは追随できひんような、ちょっと突き抜けたことをやっていきたいですね」
京都にある、株式会社八清(はちせ)。代表の西村さんがそう話すように、八清はちょっと変わった不動産の会社。
扱うのは、主に古い京町家。
建物をリノベーションして、現代的な住まいやシェアハウス、一棟貸しの旅館など、数多くのユニークな物件を生み出してきました。

最近では京町家の再生に加えて、古ビルの利活用提案にも幅を広げているところ。
ほかにもWebメディアの発信を積極的に推進したり、社員同士が有志で「投資クラブ」をつくって、ランチを食べながら金融リテラシーを高め合ったり。
不動産という枠にこだわらず、自分たちがワクワクすることをまずやってみる。うまくいったら、みんなで磨いていく。そんな循環を大切にしています。
今回募集するのは、「暮らし企画部」の建築プロデューサー。
京町家の再生販売を中心に担う、八清の中核のようなポジション。
最大の特徴は、完全な分業制ではなく、一人の担当者が一気通貫で動くこと。
建物を仕入れ、どうすれば魅力的な空間になるか。企画し、工事を見届け、そして新しい住まい手に引き渡すまで、そのすべてを自分ごととして関わります。
京都駅から地下鉄烏丸線に乗って2駅。
四条駅で降りて地上に出ると、四条烏丸の大きな交差点。銀行やオフィスビルが立ち並び、多くの車や人が行き交っている。
駅から3分ほどの場所に、八清のオフィスを見つけた。

中で待ってくれていたのが、代表の西村さん。
取材はこれで4回目。「毎回、お世話になっています」とおだやかな言葉をかけてくれ、肩の力が抜ける。

1956年に創業した、八清。
繊維製品の卸売業として始まり、その後不動産業へ。先代からは、当時はまだ珍しかった中古住宅の再生へと舵を切る。時代の変化に合わせて、柔軟にその形を変えてきた。
なかでも八清の代名詞となったのが、京町家の再生。
一人の担当者が、仕入れから企画、販売までを一貫して担う。あえて個人の裁量に任せることで、担当者の「らしさ」や遊び心がそのまま物件の個性として現れる。
たとえば、築100年のレトロな雰囲気を活かすために壁をすべて塗装仕上げにしたり、階段に赤い絨毯を敷いて大正ロマンを感じる空間にしたり。
これまでにない、ユニークな物件を数多く生み出してきた。

「そして今も、八清は転換期を迎えていて」
「京町家という建物は、どうしても老朽化で倒壊したりして、年々数が減ってきている。これからも京都の風景を守り続けていくためには、京町家の一本足打法ではなく、もう一つの柱が必要だと考えました」
そこではじめたのが、古ビルの利活用提案。
「マンションを一棟まるごとリノベーションして売る、という選択肢もありました。でも、すでに入居されている方がいるので、大胆な改修は難しい。その点、ビルなら自由度が高いんです」
たとえば、1階には店舗を入れ、上階をオフィスにする。あるいはオーナー自身のセカンドハウスを最上階につくって、残りを収益物件として貸し出す。そんなふうに用途をミックスさせた使い方を提案できる。
新しい柱をつくろうとしている今、社員の働き方も見直しているところ。
「売上は上がっていますが、昔のような『遅くまで頑張ってなんぼ』みたいな昭和的な働き方はやめようと。ちゃんと自分の時間を確保して、しっかり休んで、次のことを考える。そんな余裕のある組織にしていきたいんです」
そう考えた西村さんは、この1年をかけて、幹部メンバーとともに会社の理念を見直してきた。
行き着いたのは、“京都の「くらし」を共創し、京都を魅力あふれる「まち」”にすること。
「僕らが考える魅力的な京都の暮らしを、一つひとつつくっていく。点としての物件だけでなく、それらが面となって、楽しい経済圏のようなものができたらいい。いつかは八清の関わった場所がマップ上でつながって、『八清ワールド』みたいになったら楽しいな、なんて考えています」
「京都のためになり、自分たちも面白いと思えることをやってみる。じっくりと、でもほかが簡単に真似できないようなユニークなことを、楽しみながら積み重ねてきたことで、今の八清があると思います」
そんな取り組みを現場で支えているのが、暮らし企画部部長の村田さん。
「実は、僕が八清のこと知ったのも『日本仕事百貨』の記事でした。もう10年ぐらい前ですかね」

学生時代は建築や都市計画を学び、新卒で東京の会社へ。東日本大震災の復興支援の仕事を経て、大規模な土地区画整理の仕事に携わっていた。
広い「面」を整備する仕事にやりがいを感じつつも、もっとそこで暮らす「個」の建物や人に向き合いたい。そう考えてたどり着いたのが、八清だった。
現在は部長として、9人のチームを率いている。
「僕らの仕事は、京町家や古い建物が持つポテンシャルを見つけ出して、磨き上げること。どんなふうに直したら面白いか、どんな人に届けたら喜んでもらえるか。それを考えて、実際に形にしていく役割ですね」
どんなふうに仕事を進めていくのか。村田さんが過去に担当した物件を例に教えてもらう。
「京都市の北部に、平家の物件があって。伝統的な工法で建てられた良い建物だったんですが、長年使われていなくて、あちこち傷んでいました」

「当初は、2000万円ほどかけてリノベーションして、一般的な価格で販売するという計画でした。これなら周辺相場ともズレないし、確実に利益が出せる」
建築プロデューサーの仕事は、業者さんから情報をもらい、現地を見に行く仕入れに始まる。物件をいくらで買って、改装し販売するか、みずから考えプロジェクトをつくっていく。
ただ、現地を訪れるなかで、きれいな庭と静かな周辺の地域性に、別の可能性を感じた。
生活の便利さを求める人よりも、「京都で特別な時間を過ごしたい」と考える人に向けて、とびきりのセカンドハウスとしてつくり込んだほうがいいんじゃないか。
村田さんは、計画を根本から見直すことに。
一般的なビニールクロスではなく、職人さんに頼んで左官仕上げの壁にしたらどうか。既製品のドアではなく、古建具屋まで足を運んで一点物のアンティークを探し出すなど。
ターゲットに合わせてこだわりを盛り込んだ結果、工事費は当初の2000万円から、最終的には4000万円近くまで膨れ上がった。

「もう、全く別のプロジェクトですよね(笑)。当然、販売価格も上げざるを得ません。売れ残れば大きな損失になるから、『本当に売れるのか』というプレッシャーは相当なものでした」
物件が完成したら、社内のメディアチームと相談して、ウェブサイトに掲載する販売ページをつくってもらう。
問い合わせがあれば、自ら現地を案内し、契約を結び、鍵を引き渡すまで。基本的には一人で横断的に関わっていく。
狙い通り、完成した物件はセカンドハウスとして購入されたそう。
華々しく感じるかもしれないけれど、9割の仕事は地味なんですよ、と村田さん。
「たとえば、京都のまちなかは建物が密集しているから、隣の家との境界が曖昧なこともあって。『認識としてはあるけど、物理的にない』みたいな(笑)。だから測量士さんを入れて境界を確定させたり、ご近所さんに挨拶に行ったり」
「ご近所さんやお客さまからダイレクトに反響が返ってくるからこそ、やりがいがあるし、それが、この仕事の面白いところですね」
これから入る人は、まずは先輩の現場に同行するところから。半年から1年ほどかけて、じっくりと仕事を覚えていく。

「実は、来年退職して独立するメンバーがいて。彼は一級建築士の資格を持っていて、いま会社が力を入れている『資産形成チーム』を先導している存在なんです」
資産形成チームとは、部署を横断して結成されたプロジェクトチーム。西村さんも話していたような、古いビルを再生して、投資用として物件の価値を高める取り組みを行っている。
今回入社する人も、この資産形成チームに参加してもらいたい。
「だからといって、すぐ彼の代わりになってくれとは言いません。でも、ゆくゆくはその役割を担ってくれるような方と一緒に働きたいな、とは思ってます」
資産形成チームの一員として紹介してもらったのが、清水さん。
東京の設計事務所で10年ほど働き、2年前に京都へUターンしてきた。

「東京にいるころから、八清のサイトで物件探しをしていたんです。いずれ京都に帰ったら、京町家をリノベーションして住みたいなと思っていて」
「前職の設計に加え、不動産の知識も掛け合わせたほうが、自分の武器になるんじゃないかと。これは個人的な野望なんですけど、将来は大家さんになりたくて。八清のお客さまは投資家の方も多いので、そのノウハウを近くで学べるのも魅力でしたね」
入社後は、建築ディレクション部に配属。
仕入れた物件をどう直すか、構造の補強はどうするか。設計事務所や工務店とやりとりをして、建物としての品質を担保する役割。
そして部署の枠を超えて資産形成チームにも参加している。
「前職では鉄筋コンクリートや鉄骨造の建物も扱っていたので、その知識が今のビルの再生に役立っています」
「古いビルには、木造の京町家とはまた違った、厄介なハードルがあって。検査済証がない建物が、古いビルにも多いんです」
検査済証とは、建物が法律通りに建てられたことを証明する書類のこと。これがないと、不動産としての価値が低くなってしまう。
「だから、今の法律に合わせて防火設備を直したり、窓ガラスを替えたりして、もう一度検査を受けて、適法な状態にする。そうやって建物の価値を再生させるんです」
さらに、資産としての価値をベースアップさせるため、八清らしい遊び心も加えていく。
「たとえば、1階にカフェを入れて、上の階を住居にしたら、これくらいの家賃収入が見込めますよ、という活用プランまで考えて提案するんです。僕らはこれを『妄想プラン』って呼んでいます」

「ここまでやってはじめて、安心して買ってもらえる商品になるんです」
建築の知識を武器に、不動産の価値を最大化する。
そうした専門知識を持つ人にも、ぜひ加わってほしい。
「もちろん僕もサポートしますし、社内にはいろんなバックグラウンドを持ったメンバーがいるんですよね。お互いに知恵を出し合いながら、新しい京都の風景をつくっていけたらうれしいですね」

自分のアイデアと行動が、そのまままちの風景になる。
泥臭くもクリエイティブな仕事の担い手を探しています。
(2025/11/20 取材 田辺宏太)