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「音楽って、趣味として意識するまでもなく、みんな生活のなかで自然に楽しんでいますよね。植物との関わりも、そんなふうになったらいいなと思うんです」そこにあることで、さりげなく気持ちをほぐしてくれるという意味では、たしかに音楽と植物は似ているのかもしれない。

今回はここで、プランナーとして働く人を募集します。
打ち合わせから、設計、施工管理、最後は自分で植物を植えるところまで。一貫して担っていくので、仕事は多岐にわたりますが、経験は問いません。
いつも通る道端に咲いている花や、木々の表情、その変化に気づくことができる人なら、その視点を活かせると思います。
ブロカントの事務所があるのは、横浜市都筑区。横浜市営地下鉄のセンター南駅を出たところで、地図を見ると、事務所の近くには茅ヶ崎城址公園という緑地があるらしい。
駅からは、住宅街を歩いて20分ほど。途中、道端に花が植えられていたり、小さな農園で草むしりをする人がいたりして、のどかな雰囲気。
その一角に、緑に包まれた建物を見つけた。

入り口で声をかけると、代表の松田さんが迎えてくれた。「天気がいいから、外で話をしましょう」と、案内されたのは建物の脇の小さな庭のようなスペース。
奥のテーブルセットには、木漏れ日があたっている。

向かい合って座った椅子やテーブルも、既製品にはない味わいがある。
この場所、いい雰囲気ですね。
「今日は取材なので、ちょっと掃除をしたんですけど、普段はそんなに手間をかけていなくて。向こうの大きな木は、鳥のフンから発芽して自然に生えてきたものなんです。いい感じだからそのままにしていたら、屋根の高さを超えました」
「結局、庭は植物が良くしてくれるんですよね。予算がなくて控えめにまとめた庭も、数年後に植物が育つと、『ああ、すごいよくなっちゃったなあ』っていうこともある。僕たちの仕事は、植物の力を借りて、空間づくりを手伝うことなんだと思います」

アパートなどの集合住宅に暮らしていると、縁がないように感じてしまうけれど、都市のなかにも潜在的な需要はたくさんあると、松田さんは言う。
「打ち合わせでも『庭っていうほどじゃないんですけど』って、前置きする人は多いです。駐車場の隅で物置になっているようなスペースでも、植物を楽しむ空間はつくれるんですよ」
たとえば、私の部屋のベランダは奥行きが50cmくらいしかないんですが、何か育てられますか?
「日当たりにもよりますが、今の季節だとニラとかどうですか。葉物はいいですよ。レタスなんかだと、外側から少しずつちぎって食べられるから」
それ、いいですね。一人暮らしだと、レタスを1玉新鮮なうちに食べきれないのが悩ましくて。自分のベランダにあったら、いつでも必要な分だけ食べられる。
ハーブを育てて料理に使ったり、ブルーベリーなどの実を収穫したり、ちょっとスペースがあれば外にテーブルを出して食事をしてみたり。話を聞いていると、植物があることで生まれる新しい暮らしのシーンに、なんだかワクワクしてくる。

「僕はもともと、建築とグリーンが調和している景色がすごく好きで。日本のお寺とか、ヨーロッパのツタが絡んだような建物とか、いいバランスですよね。時間が経って、人と植物がいい関係を築いているのを見ると、ああ、いいな、これをつくりたいなって思います」

「やっぱり、自分で腑に落ちていないと、相手にも伝わらない。自分で『これは、たまんないな。絶対喜んでもらえるな』って、高まっているプランは、お客さんにも共感してもらえるんですよね」
一人ひとりの感じ方は、違っていて当たり前。スタッフの数だけ答えがある。
「こうあるべきっていう考えを押し付けると、広がりがなくなってしまう。根底にあるものが共通していれば、会社としてテイストを画一的にする必要はないと思います。各自がのびのびできていれば、結果は必ず出る。僕の仕事は、その環境を整えることなんでしょうね」
言い換えると、スタッフには指示がなくても自分で考えていける自発性が求められているのかもしれない。
松田さん自身も、「うちはわりと“放任主義”なので(笑)」と言う。
「新人なのに、こんなに任せてもらえるのか…!って驚きました」と、入社した当初のことを振り返るのは、5年前に新卒で入社した三次(みつぎ)さん。

「まずは自分で調べながら、わからないことは聞く。最初は、何がわからないかわからないので、毎回ドキドキしていました。だけど、任せてもらえたおかげで、成長できたんだと思います」
お客さんへの提案の幅を広げられるように、普段から引き出しを増やしておくことも大切だという。
「時間を見つけては、生産者さんや植木屋さんのところへ、植物を見に行って。同じ品種でも樹形によって雰囲気が変わるので、これはいい日陰になりそうだな、みたいな感じでインプットしておくんです」

1週間ほどで完結するものもあれば、1ヶ月以上かかる場合もある。
「外回りって結構可能性が広くて。たとえば、駐車場に柱を立てて上にデッキをつくり、2階の窓からつながる庭をつくったこともありました。こんなこともできるんだって、お客さんも驚いていましたし、私も勉強になりました」

「プランを練っているときはすごく悩みますけど、引渡しの数年後に現場を訪ねると、植物が大きく育っていて、花を切って部屋に飾ってくださっていることもあって。そういうのを見ると、なんて楽しい仕事をしているんだろうって、うれしくなります」
新卒でこの世界に飛び込んだ三次さん。ゼロから仕事を覚えてきたようで、実は、子どものころから何気なく積み重ねてきた時間が、今につながっていると感じることもあるという。

もともと料理好きでもあった三次さんは今、庭で採れるものを使った料理研究会を社内でやってみようと計画中。
「植物って、香りや味など、楽しみ方が幅広い。私は提案に、果樹や食べられる植物を入れることが多くて、ときどき果樹園みたいになることもあるんです(笑)」
担当者ごとに、提案の形も変わってくる。入社2年目の橘さんにも、今やってみたいことを聞いてみた。

枝や葉などのゴミも、コンポストを使えば堆肥化できる。庭を維持していくための工夫も提案してみると「知らなかったけど、やってみたい」と、興味を示すお客さんも多いという。
そうやってお客さんと直接やりとりをしながら、仕事を進めていけるこの環境に、橘さんはやりがいを感じている。
「僕は以前、別の外構造園の会社に勤めていたんですが、親方の指示通りに作業を進めることが多くて、自分で提案させてもらう機会は少なかったです。ブロカントでは最初から最後まで、自分で考えながら進めていけるので、すごく新鮮です」
プランニングのスタートは、まず、お客さんの要望を汲み取るところから。
住まいの雰囲気から好みがわかる部分もあるけれど、大切なのは、家族構成やライフスタイルなどをヒアリングして、庭づくりにつなげるコミュニケーション。さらに、予算との折り合いを考えながら、希望を具現化していく。

新築の場合、まだ建物すらないところから完成した庭をイメージしなければならないので、お互いに難しい。
一方で建築ほど、細かいディテールまで完璧にすり合わせるわけではないので、希望のポイントを押さえれば、あとは担当者の創意工夫を取り入れる余地がある。
言われた通りにするだけでなく、ちょっと相手に贈り物をするような気持ちがあるといい。
「僕はいつか、生き物をコンセプトにした庭をつくってみたくて。ペットでもいいし、鳥とか、虫とか、いろんな生き物の息が聞こえるような空間があると楽しいんじゃないかと思います」

庭づくりの仕事は、日々、身近なものから感じる心地よさを、自分のなかにインプットすることからはじまるのかもしれません。
(2021/9/16 取材 高橋佑香子)
※撮影時はマスクを外していただきました。