求人 NEW

障がいのある人
じゃなくて、○○さん
一人ひとりを見て考える

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「重度の障がいを持つ方の支援の、魅力を知ってほしいんですよね」

社会福祉法人はる代表の福島さんが、さらりと言った言葉。

正直、最初はあまりぴんときていませんでした。

重度の障がいのある方の支援は、どちらかというと大変なことではないのだろうか…?

でも取材を終えるころには、なぜここで働く人たちが口々にそれを「魅力」や「おもしろい」と言うのか、わかる気がしました。

社会福祉法人はるは、佐賀で障がいのある方の生活介護や就労継続支援、グループホーム事業などを行っています。なかでも、重度の知的障がいや自閉症の方々の支援に力を入れています。

今回募集するのは、そうした方々のサポートをする支援員と、そのチームリーダーとなる方。

支援員は、未経験でも現場で学んでいける環境です。リーダー職は、経験者を求めています。

どんな魅力があるんだろう?と気になった方はまず、読んでみてください。

 

佐賀駅までは、博多から特急で40分ほど。

改札前に、代表の福島さんが迎えに来てくれた。

ホテルやショッピングモールが立ち並ぶ駅前から車で数分走ると、一気にのどかなエリアへ。

「ちょっと行けば温泉もあるし、登山もできる。県庁所在地なので生活に不便はないですし。まちも自然もあって、住みよいですよ」

10分ほどで、本部事務所に到着。

会議室へ通してもらうと、壁にかけられた色鮮やかな絵が目に入った。

わあ、素敵な絵ですね。

「この絵は、うちの生活介護の事業所に通う、重度の知的障がいと自閉症のある方が描かれた絵なんですよ」

ほかにもいろいろな利用者さんの作品が飾られた会議室で、あらためて福島さんから話を聞くことに。

福島さんは佐賀出身。教員になろうと関東の大学へ進んだけれど、ほかの世界も知りたくなり、休学してインドへ行ったりもしていたそう。

当時、養護学校(今の特別支援学校)の教員免許もとった福島さん。ただ、障がいのある人にはほとんど会ったことがなかった。せっかく勉強したなら会ってみようと、近所の福祉事業所を訪れる。今から25年前のこと。

「最初はすごくびっくりして。体が硬直して寝たきりの人もいれば、自閉症で独り言を言いながらうろうろしている人もいる。ああ、すごいところに来てしまったなと」

でも不思議なことに、一日いると帰るころには楽しくなっていた。結局、そこへ足しげく通うことになる。

「たとえば脳性麻痺の方が、ほとんど動かない手で、おいでおいで、ってするんです。で、行ったら『これがさ、これがいいんだよねえ!』って。何かと思ったら、その方の趣味のモデルガンについて、すっごい一生懸命教えてくれて」

なんて魅力的な人たちなんだろう。「障がいのある人」ではなく「○○さん」という一人ひとりが、福島さんの目に映り始めた。

一方、そんな人たちが世の中で偏見にさらされ、生きづらさを抱えていることも目の当たりにする。利用者さんの家族からは「自分たちがいなくなったあと、この子がどうなるか」という不安も聞くようになった。

「ご本人もそのご家族も素敵な人たちなのに、すごく苦労していて。その苦労を、少しでも取り除いていきたいと思ったんです」

2002年、故郷の佐賀ではるを設立。

以来19年を、障がいのある人々とともに歩んできた。

現在のはるは、重度の知的障がいや自閉症の方々が多く利用する。行き場のない方を断らずに受け入れていくうちに、自然とそうなってきた。

ここで大事にしてきたことは何だろう。

「一人ひとりの方を大事にする事業所でありたい。それが一番ですね」

全員に対して同じ支援をすること=平等、ではない。一人ひとりの特性を踏まえて、それぞれに合わせた支援をすることが求められる。

「ときには暴れんさったりとか、なかなか緊張感のある場面もあります。ただ本人も、やりたくてやってるわけじゃないんです。うまく表現できないから、そうせざるをえないところがあって」

「だから人が好きで、探究心のある方は向いてるんじゃないかな。利用者さんの行動に対して、なんでそういう行動をしているんだろう?と理由を考えることが好きな人は、はまるんじゃないかなと思います」

今回の募集では、未経験からでも学べる支援員に加えて、リーダーとなる経験者からの応募も期待しているそう。

障がいのある人々と関わってきた経験を活かして、より一人ひとりと向き合って支援をしていきたい。そう思う人が仲間に加わってくれると心強い。

 

続いて話を聞いたのは、グループホームの課長を務める上田さん。

入職10年目の上田さんは、グループホームでスタッフの管理や連絡調整などを行う。以前はアート部門の担当として4年ほど、全国や海外を飛び回っていたとか。

アート部門、というのは?

「佐賀県域や全国に障がい者のアートを広げていく事業に参画していて。そのなかで、支援にはアートの視点を取り入れることが大切だと実感したんです。日々の活動でもアートを意識することが増えたと思います」

あちこちに飾ってある利用者さんの作品も、そうした流れのなかで生まれてきたものだとか。

ところで上田さん、現役の熱気球パイロットでもある。

現在も競技バルーンの活動と、はるでの仕事を両立しているそう。

そもそも熱気球がやりたくて、福岡から佐賀の大学へ入った上田さん。就職にあたり、競技の第一線で飛びながら働ける場所を探していたときに、声をかけてくれたのが福島さんだった。

「だからもともと福祉に興味があったわけじゃないんです。ただ利用者さんと触れ合ううちに、どっぷりはまっていって」

グループホームでの仕事は、そこで暮らす利用者さんの生活を支えること。

平日は朝起きて出かけるまでと、帰ってから寝るまで。週末は日中も含めてサポートを行う。

「朝起きて、顔を洗って、ご飯を食べて…という流れの説明も、一人ひとり伝え方が違うんです。文字がいいとか、絵カードがいいとか。声をかけたほうがいい人もいれば、かけないほうがいい人もいて」

どんな生活リズムがいいか。どんな関わり方がいいか。言葉で気持ちをうまく表せない人たちを相手に、日々考えていく。

「心地よさそうだなとか、しんどそうだなとか、無理して合わせてくれてるなとか。体や目から出るサインを読み取ることが醍醐味でもあります。日々一緒にいるからこそ、わかることもあって」

ご飯があまり食べられていないなら、それはメニューのせいなのか、生活リズムによるのか、それとも別の原因か。どこから変えてみようか。

そうやってスタッフ同士で話し合う時間が楽しいと上田さんは言う。

「日々、何かがあるって前提で。最近だと、部屋の壁を叩いてみたらバリバリッて割れて、遊んでいるうちに、壁を全部壊しちゃった利用者さんがいて。で、壁を修理した途端に、今度は天井を叩き割って。天井がこう…、崩落するかのように粉がたくさん落ちてきて」

あ、またか。どうしよう。

スタッフも人間だから、ときには気持ちが混乱することもある。

ただそのなかでも、できることを考えていく。

その人にとって、この「壊す」って行為は何だろう。不快感を訴えているのか、過去の経験がフラッシュバックしているのか、天気のせいか、単純に楽しんでいるのか…。あらゆる可能性を検討し、本人に何をどう伝えるかも含めて考えていく。

「それで結果的に落ち着いたときは、すごくホッとするんですよね。みんなで考えて、実践して、達成して…というサイクルは日々あるので。そういう現場に入っているときは、本当、アドレナリン出まくりで」

 

その話を、わかる…という感じで笑いながら横で聞いていたのが、大田さん。

大田さんは、朝から夕方までの活動を行う生活介護の事業所で働いている。

仕事のかたわら、映像制作などの表現活動も行っていて、この日の服も自分で描いた絵をプリントしたものだとか。スタッフさんも個性豊かだな。

山口出身の大田さんは小学生のころ、近所の同級生が特別支援学級に通っていた。

進路選択のとき、ふと特別支援学校の先生になろうかなと思い、佐賀にある福祉系の大学へ。

「でも教育実習に行くなかで、決まりの多い学校は自分には合わないなと思うようになって。そのころ、友達が学生企画で障がい者のアート展をやりたいと話していて、関わったんです」

そこで出会ったのが、当時はるでアート事業を担当していた上田さん。

「なんだこの世界!って。障がいがどうこうというよりも『この人のこういうところがおもしろい!』って議論が生まれていくのが、めちゃくちゃ熱いなって」

その熱量に惹かれ、はるへ就職して5年目になる。

生活介護の仕事は、朝から夕方までの活動サポート。ウォーキングやプールなどの屋外活動から、室内のアート活動や作業まで、内容は幅広い。

一人ひとりに対して、どんな活動をどんなスケジュールで組み立てるか。みなで話し合いながら考えていく。

「思いを伝えることが苦手な方も多いので、この人はどういうことが好きだろう?と、反応を見ながら試していく感じですね」

たとえば、以前はなかなか合う活動が見つからなかった利用者さん。いろいろな活動を試すなかで、「さをり織り」という織物作業がフィットした。

徐々に活動が広がり、あるときはチャリティ団体のイベントで、ご本人と一緒に販売も行ったそう。

「それからはご本人も、さをり織りしながら『これどこで売る〜?』と言うようになって。モチベーションがあがったみたいなんです」

ちなみにこの利用者さんも、最重度の障がいのある方。以前は突発的な行動も多かったけれど、今はものづくりを通して自分のリズムをつかみ、少しずつ地域とのつながりも育んでいる。

こうした長期の変化を見守れることも、学校とは違う魅力かもしれない。

新しく入る人は「熱くて、愛のある人がいいな」と大田さん。

「日々いろんなことがあって。僕たちも人間だから、ちょっと強めに言ってしまったりすることもある。でもそういうとき、あとですごく反省するんです。あー、よくなかったなって」

そんなとき、素直にごめんなさいやありがとうを言う。声をかけられない利用者さんにも、そういう気持ちを持って現場に入る。

「そこは結構、大事にしてて。だから…愛にあふれてる人がいいですね」

 

会議室を出て、隣接するグループホームをのぞかせてもらうと、日中の活動から帰ってくる利用者さんたちを待っているところだった。テーブルには夕食の用意。ここに利用者さんたちの暮らしがあるんだな、と実感する。

車で移動し、生活介護の事業所も見学に。

こちらは利用者さんが帰ったあとで、スタッフのみなさんが翌日の準備中。

利用者さんの一日の流れは、ホワイトボードに文字で書かれていたり、絵カードで示されていたり、本当にバラバラ。みなさんそれを当然のこととして、「○○さんの明日の準備」を整えていく。

一人ひとりを、大事にする。

よく聞く言葉ではあるけれど、ここはそれをおもしろがりながら、地道に実践している場所なんだなと思いました。

(2021/10/21取材 渡邉雅子)
撮影時はマスクを外していただきました。

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