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仕事をしていておもしろいと感じるのは、思いついたアイデアが、ほかの人との共同作業で磨かれていくときだと思います。ひとりで温めるアイデアもいいけれど、他人とつくることでアイデアは成長し、想像を超えたものになる。
今回紹介するPAAK DESIGN(パークデザイン)株式会社は、「いいもの」を目指して、お客さんとも、社内のメンバーともコミュニケーションを重ね、アイデアを磨いていくチームのように感じました。

店舗やオフィスの空間設計のほか、宿の運営や古材を活用した家具・雑貨の販売など、設計事務所の型にとらわれず、幅広い仕事に取り組んでいます。
今回募集するのは、PAAK DESIGNの屋台骨とも言える建築・内装設計監理。
設計やデザイン、ものづくりが好きな人はもちろん、ゆくゆくは独立を目指したい人にとっては、存分に腕を磨ける環境だと思います。
拠点を置く、宮崎・日南市の城下町、飫肥(おび)へ話を聞きに行ってきました。
宮崎空港からバスに乗り、海岸に沿って南に向かう。1時間半ほどすると、景色が海から山へと変わった。終点・飫肥で降車すると、道沿いには白壁の建物が立ち並んでいる。

PAAK DESIGN株式会社の事務所は、この通りに面した喫茶店と同じ建物にある。


日南市出身の鬼束さん。大学進学で上京してからは、東京で建築設計の仕事をしていたそう。独立し、なんとか一人で仕事も回せるようになってきたころ、地元である宮崎のことが頭をよぎるようになった。
「地元のこと、なんにも知らないなぁと、ふと思って。ちょうどその頃、日南市の油津という地区の商店街の活性化に取り組んでいる方がいたんです。話を聞くうち、自分も地元のためになにかできることがあるんじゃないかと思うようになり、Uターンしました」
商店街の活性化に取り組む、株式会社油津応援団で設計の仕事を担当。3年間で20件以上の店舗やIT企業オフィスの立ち上げに関わった。
その後独立し、4年前に立ち上げたのがPAAK DESIGN株式会社。
「会社を立ち上げた当初から、自社のことを『設計事務所』とは呼ばず、建築デザインで培ったノウハウと地域資源を掛け合わせられたら、と思っていました。そうすれば、いろいろな仕事が生まれるんじゃないかという予感があったんです」

店舗・オフィスの設計や古民家のリノベーションはもちろん、観光客がまちを周遊するための企画、レモン農家から「余ってしまうレモンをどうにかできないか」と相談されることもあったという。
「お客さんのなかには『コーヒーを出したいけれど、ほかのことは何も決まっていない』という方もいて。そんなときは、どんなお店にしたいのか、どんな人に来てほしいのか、イメージを整理するところからはじめます」
設計事務所では、お客さんの要望に沿って空間設計をするところからはじまることが多いけれど、みなさんはもっと手前のところから関わるんですね。
「せっかくお店をはじめるなら、ちゃんと利益がでて、楽しく続けられる状態がいいと思うんです。ただ要望を満たすだけの設計なら、僕らでなくてもできる。お客さんが想像していない部分まで考えを巡らせてデザインに落とし込むのが、僕たちの価値だと思っています」

さらに、「今までのお店づくりで培ったノウハウを、自分たちの事業でも活かしてみよう」と、今春からスタートしたのが「PAAK HOTEL 犀-sai-」。

ほかにも、規格外品の柑橘を使ったクラフトコーラや、集めた古材からつくった家具や雑貨を販売するECサイト「PAAK Supply」を、昨年夏立ち上げたところ。
「仕事が多岐にわたっているので、何屋さん?って思われるかもしれない。でも、課題に直面すると、自分だったらどうやって解決するだろう?と考えることが習慣になっていて」
たとえば、空き家になった古民家があったとして。条件がいい物件でも、プレーヤーの少ない地方では活用する人が現れず、そのまま解体されてしまうことも少なくないという。
「東京だったら『自分じゃなくても、ほかの人がやるだろう』って思うけれど、ここでは自分から行動を起こさないと何も起きない。行動すれば、周りの意識も変わっていくと思うんです」
お客さんの想いをかたちにするために学んだことが会社の知識になり、それをアウトプットすることで「こんなこともできるんだ」と、周囲に気づきが生まれる。
よりよい空間づくりにかける想いが、お客さんとの間にいい循環を生み出しているのだと思う。
今回募集する設計担当は、PAAK DESIGNの軸になる人。年々受注する案件が増えていることもあり、新しくチームに加わってくれる人を探したいそう。
現在、鬼束さんとともに設計を担当しているのが、大迫さん。3年半前に新卒で入社した。

大迫さんが休学して携わるようになったのは、油津商店街にある学生が運営するゲストハウス。その設計をしていたのが鬼束さんだった。
当時は、PAAK DESIGNが立ち上がって1年ほど経ったとき。鬼束さんが声をかけたのがきっかけで、入社することになった。
PAAK DESIGNでは設計・監理のほか、家具の選定から発注、開梱、設置まで担当することもある。
ときには古材から家具や雑貨をつくることも。
「これ、僕がデザインしたんですよ」と飫肥杉のうちわを見せてくれた。

「ただ、ふらっと外に出れば美しい城下町に満天の星空が広がっていて。飫肥という場所で働いていることが救いになっていますね。仕事の行き帰りでむやみにストレスを感じることがない。ちょっとした自慢なんです」

印象に残っていることを聞くと、工場跡地をオフィスにリノベーションした案件について話してくれた。
「そこのコンセプトは『ワークピクニック』でしたね」
ワークピクニック?
「クライアントさんの要望をヒアリングした後、設計を提案するときに、ワンワードでコンセプトをつくるんです」
「同じオフィスで、作業している人もいれば、食事をとる人もいる。公園のように同時多発的にいろいろなことが起きている空間になったら、仕事のアイデアにもつながるかもしれないと考えて、『ワークピクニック』というコンセプトを立てました」

「『本当に人が来たくなるのかな?』と、そもそものところに立ち返るようにしています。要望通りにつくれば楽だけれど、長い目でお客さんのためになるのかどうかを考えることが大切で」
「吟味した結果、クライアントさんが最初にイメージしたものと異なるアイデアを恐る恐る、提案することもあります。最終的に先方が判断した案でベストを尽くしますが、最近は僕らの提案に乗っていただけることが増えてきたように感じますね」
さまざまな角度から、お客さんのことを思って考え抜く。その姿勢がにじむ提案だからこそ設計を任せてもらえるのだろうし、空間設計にとどまらない相談が舞い込んでくるのだと思う。
大迫さんは、どんな人と働きたいですか?
「いそがしい状況でも『しんどいな、まぁいいか』と思えるくらい、楽観的な見方ができる人がいいですね。設計ができてものづくりが好きなら、うちの仕事は楽しいと思いますよ」
「それと、いろいろな仕事や土地を知ることに興味のある方がいいかもしれません」
そう話に加わってくれたのは、今年の7月から働いている尾崎さん。

東京から飫肥に移住してきた尾崎さん。移住の先輩として、飫肥のまちはどうですか?
「やっぱり車がないと不便で、こちらへ来てから教習所へ通ってます(笑)。地域の方から声をかけてもらえることも多くて、自分ひとりでコミュニケーションが完結しない環境がおもしろいですね」
また、PAAK DESIGNでは宮崎だけでなく、北海道から東京、鹿児島まで全国各地のお客さんと仕事をしている。
地方だけじゃないし、都会だけでもない。自分の目で、足で、それぞれの地域の特色を知ることを楽しめる人だったら、ここでの仕事はとても面白いと思う。

設計デザインというスキルがあると、なんでもできてしまうように感じます。
「うちで仕事をすれば、空間設計から経営まで、いろんなことができるようになると思いますよ。お客さんに応じてやり方もさまざまだし、仕事の型が決まっているわけでもない」
「仕事をこなすというよりは、デザインや提案で人を感動させたい!と、心から思えるかどうか。それが一緒に働くうえで大切なことだと思います」
いいな、と思うポイントがあれば、まずは鬼束さんや大迫さんと話してみてください。
8人目の仲間とどんな仕事が生まれるのか、今から楽しみです。
(2021/10/25取材 阿部夏海)
※取材時はマスクを外していただきました。