※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
「庭って趣味の領域ではなくて、もっと敷居の低いものだと思うんですね」
「僕は音楽が好きだけど、趣味と呼べるほどじゃなくても音楽を聴く人はいるし、そういう距離感がいいなって。人と植物との関係も、そんなふうに生活に根差すかたちでもっと広げていきたいと思っているんです」
有限会社ブロカントは、植物を取り入れた空間づくりを行う会社。
BROCANTE(ブロカント)は、フランス語で「古道具」という意味。フランスのアンティーク家具・雑貨の販売と、造園・外構工事を手がけています。

今回募集するのは、プランナー。打ち合わせから、設計、施工管理、最後は自分で植物を植えるところまで。一貫して担うので仕事は多岐にわたりますが、経験は問いません。
個人住宅を中心に、商業施設や集合住宅など幅広く手がけています。お客さんの要望やイメージを深く理解し、柔軟な姿勢でかたちにしていきます。
向かったのは、自由が丘にあるBROCANTEのお店。
住宅街に溶け込むような2階建ての白い建物で、外構に植えられた植物が柔らかい雰囲気を醸し出している。

1階はフランスのアンティーク家具・雑貨、2階では植物や雑貨を取り扱っている。
事務所は横浜にあるけれど、今回はこちらで。
「第三者の方から、会社や仕事に対して質問されることってあまりないことなので、毎回取材してもらうと、すごく発見があるんですよね」
優しく迎えてくれたのは、代表の松田さん。肩の力が抜けていて、自然体という言葉がよく似合う方。

「このお店は販売だけでなく、プランニングの窓口にもなっていて。時々僕やプランナーもお店で接客しているんですよ」
松田さんがBROCANTEを創業したのは2003年。
当時は、日本でもイギリス風の凝ったイングリッシュガーデンが流行していた時代。「こんな庭にしたい」と依頼は舞い込むものの、数年で維持できなくなってしまう場合が多かった。
松田さん自身も管理の難しさを痛感したし、ただ眺めているだけの庭に面白みを感じなくなっていく。
そんなとき、フランスで友人の家を訪ねたことが大きな転機になる。
「庭の果樹の実を食べたり、花も好きなように植えていたり。狭くても、みんな外でわいわい飲み食いしている。すごく洗練されているわけでもないけれど、無理がない。生活に庭がすごく密着しているように感じました」
「そういう生活をいいなと思う人は、日本にも多いはずだと思って。手入れの大変さや費用面といった負の部分が目立ちやすいけど、植物の性質やレイアウトなどをうまく設計することで、コントロールできる部分もあるんです」

たとえば、マンションのベランダを緑で彩りたいとき。
植物への水やりを大変に感じるかもしれないけど、実はエアコンの穴から管を出して水道を取りつけることもできるという。
「そうした工夫の一つひとつが、植物と暮らす楽しみにつながっていくと思うんですね」
そういえば、外の階段にブドウの鉢植えもありましたね。
「あれはデラウェアっていう品種で、ブドウの中では鉢植えで管理しやすいし、虫もつきにくいんです。以前働いていたスタッフは、干しブドウにして楽しんでましたよ(笑)」
「そういう植物の付加価値を積極的にお客さんにも提案したい。私自身がすごく楽しいので、お客さんにも知ってもらえるとうれしいんですよね」
プランナーの辰口(たつぐち)さんも、楽しそうに仕事の話をする方。以前はインテリアデザイナーとして、10年間以上活動していた。

「主に商業施設のお店のデザインを手掛けていたので、常にいま一番旬なものを表現して、ミリ単位でディテールにもこだわっていました」
「でも、自分が30代後半に突入すると、感性的に若い人のほうが向いている仕事のように思えて。これから歳を重ねても、発展的に仕事ができる道はどこか考えるようになりました」
造園会社に自宅の庭をつくってもらったとき、それによる空間の変化に惹かれたという。
「インテリアデザインはお店のオープン時が最高の形だけど、造園は年数をかけてどんどん変化していく。そんな空間づくりに魅力を感じるようになって」
ちょうど日本仕事百貨でBROCANTEの記事を見つけ、入社することになった。今年で8年目になるベテランスタッフだ。

「一連の流れを、すべて一人で担当するんです。現場を監督しながら、職人さんと一緒に自分で木を植えたり、手伝ったりすることもあって」
「お客さんに直接喜んでもらえたらうれしいし、次はもっとこうしようと思う。言い訳できない大変さはあるけれど、すごく健全な仕事だなって思います」
仕事は、お客さんからの問い合わせに応えることからはじまる。
担当が決まると現場に足を運び調査し、お客さんの要望や困りごとを聞きながらプランを組み立てる。
その後は見積書と図面をつくり、具体的な提案へ。予算との兼ね合いもあるので、丁寧に擦り合わせながらお客さんと二人三脚でつくっていく。

「最初のヒアリングでは、お客さんの求めているものを拾い上げるのは当然なのですが、大事なのは、その裏側にある『どうしてそれを求めているのか』という部分」
「数時間という限られた時間のなかで、温度感まで拾い上げられるとプランがつくりやすいんですよ」
具体的にはどんなことが考えられますか。
「たとえば、小さなお子さんがいるご家庭なら、『今だけの時間をお庭で一緒に楽しみたい』という思いがあるかもしれません。そんなときは、日除けとしてのパーゴラにブランコを吊るしたり、ツル性の植物で緑の木かげをつくったりと、お庭を楽しめる工夫を提案します」
「お子さんが中学生くらいになったときには、ブランコを外してもう少し植栽するとか。『今だけ楽しめればいい』と割り切って選ぶ素材もあれば、将来的に用途を変えながら長く使っていける構造や設計を選ぶこともあります」

単に植物を配置するだけでなく、そのベースとなる壁やテラス、駐車場といった建築物全般のレイアウトを考え、空間をデザインする。
生活動線、照明や水栓の位置、素材感など。外部空間にある全てを機能性と意匠性の両面から考え、プランニングしていく。
契約後は職人さんたちとスケジュールを組み、現場で施工。最後に植栽をして、納品するまでが一連の流れだ。
「植栽工事が全体の一割に満たない案件でも、その一割の植物が空間全体を大きく変えることもあります。この仕事の面白さは、まさにそうしたところにもあるのかなって」
工事を終えた後もメンテナンスに行ったり、追加の相談が届いたりと、お客さんとの関係が長期的に続くことも多い。
辰口さんが印象に残っているお客さんも、5年ほどのお付き合いになるという。
「はじめは駐車場や外構まわりに少し植栽するだけだったんですけど、生活していくうちに『自分でも植えてみたんだよね』って連絡があって。お客さんが庭づくりを楽しんでいる姿を見ると、すごくいいなって思います」
「最後の植栽のタイミングで、葉っぱのつき方や形を考慮して、ちょっと角度を変えてみるだけでも、庭全体の印象が変わるんです。成長したらまた変わってくるし、そこは面白いですね」
そう話すのは、入社して3年目になる吉見さん。

「小さいころから絵を描くことが好きで、美大に進みました。空間づくりに興味があったので、映画とか舞台背景のセットデザインを勉強して。ただ、より生活に寄り添う空間を手がけたいなって」
たまたまBROCANTEの求人記事を見つけ、直感でその雰囲気に惹かれた。
限られた打ち合わせ時間でお客さんと信頼関係を築き、隠れたニーズまで汲み取るのは、簡単なことではない。入社したてのころは、先輩スタッフと二人で案件を担当し、仕事の進め方を間近で見ながら覚えていった。
「わからないところがあれば事務所にいる先輩たちに質問して。そういう時間はすごく大きかったですね」
工事の現場に行く際には、事前にホームセンターで砂やセメントなどの資材を買って車に積み込み、当日は自ら運転して現場で下ろすことも。吉見さんはそこまでギャップに感じなかったそうだけど、体力が必要だったり、泥臭い仕事もある。

「自分で見積もりもつくるので、粗利についても考えます。でも、お客さんにあった提案を大切にしているので、会社から数字だけで見られたことは1度もなくて。だから個性のあるお庭がつくれているんだろうなって」
あるとき吉見さんが担当したのは、新築住宅のお庭への植栽。周囲を高さ3メートルほどの白い壁に囲まれた庭で、そこを通って玄関へ向かう印象的なアプローチがあった。
白い花が好きなことや、具体的な好みも聞きながらプランニングを練っていく。
「植物を植え始めたタイミングから喜んでくださって。『全然空間の雰囲気も違いますね』『葉っぱが風で揺れる様子を見ているだけでも癒されます』、とおっしゃっていただいて。もう少しボリュームが出てきたころに、また見に伺えるのが楽しみなんです」
新しく入る人も、まずはお客さんの満足度を高めることを第一に考え、そこから徐々に会社の利益や全体像に目を向けていけるといいと思う。
会社の今後について、代表の松田さんに聞いてみた。
「良くもわるくも自分のカラーが強いんですよね」
普段はリモート勤務を導入していたり、プロジェクトも一人で担当することが多かったり。個人の裁量で自由に働ける分、社内で改まって組織のことについて考える機会はそこまで多くないという。
「やっぱりまずは、会社のみんなが安心して、自分の人生を幸せに感じてもらえることが第一ですね。私がいなくても会社が自走できる状態にしたい」
そのためにも、今後は数字への意識も上げていきたいし、組織として、仕組みやルールの導入と浸透も進めていきたい。12人ほどの規模なので、新しく入る人の声も反映させていきやすいと思う。
「その先は、日本の「住」に対する意識をよくしたいというか」
「植物がなくなったら、すごく殺風景な世界になると思うんですよね。だから、植物のある暮らしをもっと多くの人に届けていきたいです」

泥臭い仕事もあるし、お客さんの要望を深く理解するには時間もかかると思う。
それでもどこか植物との関わり方と同じように、のびのびとした雰囲気が感じられる。
ひとつずつお客さんが満足するお庭をつくっていく。会社としてより良くするために、守るべきところはおさえていく。
そんな姿勢がこの場所に根付いています。
(2025/07/25 取材 杉本丞)


