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道具から見えてくる
コーヒーの世界

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

巷にコーヒー屋さんが増えたおかげで、スペシャルティコーヒーという言葉をよく聞くようになりました。

厳選したコーヒー豆を使って、こだわりの手法で焙煎、抽出。一杯の価値を極限まで高めたコーヒーは、飲んだ人の満足感のみならず、まわりまわって豆の生産者が正当な対価を得ることにもつながっています。

今回は、ものづくりからスペシャルティコーヒーの世界を支える仕事を紹介します。

株式会社ケーアイは、さまざまな陶磁器製品を小売店やホテル、バリスタに届けている会社。岐阜に本社がある光洋陶器が母体です。

製販一体の強みを生かし、バリスタの声から形にしたドリッパーやカップは、コーヒーのプロの世界でも高い評価を得ているそう。

今回募集するのは、主に海外の小売店やバリスタとコミュニケーションを重ね、製品を企画販売する海外営業。あわせて、ECサイトの管理運営担当も募集します。

 

ケーアイの事務所があるのは、東京・中目黒。池尻大橋駅から歩いて約10分、目黒川に面したビルの5階にある。

この日は東京ではめずらしい雪の日で、あたり一面真っ白になっていた。

入り口で雪を払い、エレベーターで5階に上がる。

「ご無沙汰してます。雪大丈夫でしたか?」

そんなふうに迎えてくれたのは、代表の加藤さん。

ケーアイを訪れるのは、今回で二度目。3年前に募集したときもいいご縁につながったそう。

「おかげさまで、そのとき入った人は今も活躍してくれています。今回はひとり退職することになったのと、事業が大きくなってきたこともあって、新しい人に入ってもらいたいと思っていて」

ケーアイは、美濃焼で有名な岐阜に本社を持つ陶磁器の販売会社。

さまざまなメーカーの食器類を店舗やホテルなどに販売すると同時に、母体である光洋陶器の製造ラインを活かし、自社ブランドも展開している。

5年前からはとくにコーヒー関係の製品に力を入れていて、カップやドリッパーのブランド「ORIGAMI」は、コーヒーのプロたちからの人気も高い。

たとえば、代表的な商品であるドリッパー。ギザギザした、あまり見慣れない形だ。

これは、バリスタがよく使う円錐型とウェーブ型、両方のフィルターに対応したドリッパーが世の中にないという声を受け、1からつくり上げたもの。

円錐型に合う角度、なおかつギザギザの角の数をウェーブ型に合わせることによって、1つのドリッパーで二種類のフィルターに対応することができる。

「ちょうど取材に来てもらった3年前くらいに、ORIGAMIのドリッパーを使ってくれていた中国代表の方が、バリスタの世界大会でチャンピオンになったんです。それがきっかけで、海外からのお問い合わせが急激に増えて」

「一時は需要に対して製造がまったく追いつかなくて、半年以上お待ちいただいたときもありました。今は製造部門との連携をより密にして、オーダーと同時に生産から出荷までスムーズに進められるような体制を整えています」

2018年にはECサイトをオープン。コロナ禍に入ってからは、自宅でコーヒーを楽しみたいという人が増え、一般向けの売り上げも上がっているそう。

「これなんかは、最近つくったものなんです」と加藤さんが見せてくれたのは、カッピングボウルという商品。

カッピングボウルとは、数種類のコーヒーを並べて風味を品評する「カッピング」専用のカップ。ワインでいうテイスティングのようなものだそう。

「これはカップオブエクセレンスという、世界で最も有名なコーヒーの品評会を開催している団体と一緒につくったんです。カッピングは粉の量や注ぐお湯の量もきっちり決まっていて、150ccか200cc。その量が一目でわかるように目盛りを内側に入れています」

「あとこれはすごく細かいこだわりなんですが… 品評会では、カップに粉を入れた状態で重ねて運び、会場で並べてお湯を注ぐんですよ。なので、重ねたカップの底面に粉がつかずに積める仕様になっています。家庭用品では考えないようなところまで、こだわってつくりました」

品評会でのみ使われる、とても狭い領域の商品。そのぶんとことん使い勝手にこだわることができる。

カップオブエクセレンスという権威ある品評会と一緒につくったことで、ORIGAMIのブランド力もより一層高まってきているそう。

「ほかには、抹茶碗や抹茶用のカップもつくりました。抹茶ラテを競う大会があるくらい、コーヒーと抹茶は意外と結びつきが強くて。商品発売後に、ロシアだとスペシャルティコーヒーを出すお店では必ず抹茶のメニューがあるというお話をお客さまから聞いて、海外の新たなマーケットにあらためて気づかされることもありました」

「とてもニッチな領域に入ったと思ったら、実は意外とそのマーケットが広かった、っていうことが多いんですよね。国内では狭い領域だとしても、世界という大きな視点で見ると需要がある。もちろん経営もあるので、ドリッパーを軸にしっかり売りながら、小さな需要を拾い上げていく、という感じです」

現在、海外営業を主に担当しているのは加藤さん。

数字を求めて売っていくというよりも、一人ひとりのお客さんとしっかりコミュニケーションを交わすことを大切にしている。

「いつまでにいくつ必要ですか?みたいな、数字ありきのコミュニケーションではなくて。その国のコーヒーのマーケットはどうなっているのか、コーヒーを淹れる過程でどんなことに困っているのか。そういうところから入ることが多いです」

「この前中東の人と話したら、中東は宗教的にお酒を飲むことができない人が多くて、そのぶんコーヒーの需要がすごくある、って聞いて。そんなの調べてもなかなかわからないじゃないですか。知らなかった世界を知れるっていうのも、海外営業の面白いところなんじゃないかなと思います」

加藤さんは、ケーアイのものづくりを通じて、コーヒー業界全体を少しでもサポートできたらと考えている。

というのも、カッピングボウルを一緒につくったカップオブエクセレンスでは、入賞したコーヒー豆をオンラインサイトで情報公開し、国際オークションにかけているそう。

通常の豆の流通では、間に中間業者が入るぶん生産者の取り分が少なくなってしまう。一方このオークションでは、落札金額のほとんどが生産者に入る仕組みになっている。

生産者にとっては、自分たちが丹精込めて育てた高品質な豆を世界に知ってもらい、なおかつ農園規模の大小にかかわらず正当にコーヒー豆を評価してもらえる、貴重な機会。

それをカッピングボウルから支えている、というのは、ものづくりの醍醐味でもありますね。

「そうなんです。わたしたちも最初はそこまで想像していなくて。こうしていろんなところからお声かけをいただくなかで、コーヒー器具を通じて業界全体の課題解決に少しでも役立っているなら、素直にうれしいです」

海外の代理店は、アメリカやアジア、ヨーロッパに20ほどあるそう。それ以外にも、バリスタと直接取引をしているものもあるため、海外の取引先は多い。

今は基本的にはzoomでのオンライン打ち合わせやメールでのやりとりが多いので、ある程度の英語スキルはあったほうがいいとのこと。

バリスタの大会に行って直接ユーザーと話す機会もあるので、コーヒー好きな人にとっては面白い仕事だと思う。

 

続いて話を聞いたのは、主に国内のライフスタイルショップへの営業を担当している山口さん。

ケーアイに入社したのは、7年前。前職のメガネ販売の会社で加藤さんと一緒だったことがきっかけで、ケーアイに入社した。

「最近は海外からの問い合わせも増えているので、まだまだORIGAMIの伸び代はあるんじゃないかなと思ってます。僕は国内が担当ではありますが、東京オフィスは5人と小さい集まりなので、一人ひとりができることをいろいろやっている感じですね」

働いてみてどうですか?

「たぶん、ORIGAMIっていう製品のおしゃれなイメージ、だけで入ってくるとギャップがあるのかなと思っていて」

ギャップ、というと?

「たとえば営業担当でも、在庫の管理とか、お客さまのご要望を伺いながら工場のスケジュールに生産予定を組み込んでいく、とか。結構細かい調整ごとが多いんです。そういう折衝をうまくバランスとってできないと、しんどくなってしまうのかなと」

たとえば、と話してくれたのは、先ほど加藤さんが見せてくれたカッピングボウルのこと。

最初の試作品では、伏せて焼くことで断面を薄くし、軽量化できるという工場側の提案で進んでいたそう。ただ一方で、その伏せるという一手間によって、普通に焼くよりもコストと時間がかかるのがデメリットだった。

より良いものを、という工場からの提案だったけれど、実際に使うお客さんの視点だと、もしかしたら軽さよりもコストや納期の短さのほうが大切な要素かもしれない。

どの要素を最優先にするのか、冷静に判断して進めていくことが営業担当には求められる。

「カッピングボウルのときは、結果的に軽さよりも効率を重視したいというお客さまの意見で、伏せずに通常の焼き方をするほうに落ち着きました」

「こういう調整ごとって、本当に日々起こってくるんですよ。工場側の提案をどうするかっていうのもあるし、逆にお客さまの希望が工場として対応できない、ということもある。そのコミュニケーションをしっかりと成立させていくためにも、ある意味精神的なタフさを持った人に来てもらえたらうれしいですね」

 

お話を聞いていて、海外のコーヒー文化の幅広さと奥深さがとても新鮮でした。

ひとつのお店を構えるだけでなく、器を通じてさまざまな国とつながり、その地のコーヒーを知る。

コーヒーが好きで、もっと知りたい、自分の世界を広げたいと思っている人には、とても楽しい環境だと思います。

(2022/1/6 取材 稲本琢仙)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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