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人と人を結ぶ器の店
老舗問屋の
新しい在り方

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

東京・南青山5丁目の交差点を曲がった通りは、かつて骨董品や古美術を扱うお店が多く集まったことから「骨董通り」と呼ばれています。

周辺には、根津美術館や若手の工芸作家の作品を扱うギャラリーもあります。

その一角に新しく、実用の器の楽しみを紹介するお店ができました。「うつわ御結(おむすび)」は、日本の若手作家がつくる、焼き物や漆器などの器を集めたセレクトショップです。

表情豊かな和食器を眺めていると、そこにどんな食材を盛り付けようか、イメージが膨らんでくる。

お店を運営しているのは、京橋白木という会社。問屋として120年以上の歴史がある老舗ですが、これまでは量産される食器の取り扱いがメインで、個人作家の作品を対面で販売するショップのあり方は、今まさに模索しているところ。

その気持ちを語ってくれたのが、京橋白木の4代目を担う竹下茂雄さん、雷太さんご兄弟。子どものころから柔道に親しんだスポーツマンで、とても気さくなお人柄の2人です。

「僕ら、もともとは業務用から器の世界に入ったので、いまだに美術ギャラリーとかに行くと緊張しちゃうんです(笑)。このお店は、なるべくゆったり、器に親しめる空間にしていきたいなと思っています」

と、素直な言葉で話してくれました。

今回はこのお店で働く人を募集します。

小さなお店なので、接客販売だけでなく、オンラインストアの運営や商品の発注など仕事は多岐にわたりますが、一つひとつ慣れていけばいい。知識よりも、興味を持って仕事に向き合える人を探しています。



地下鉄の表参道駅から骨董通りを歩いていくと、縹色の暖簾が見えてきた。真ん中には、水引の梅結びの模様。「器」の文字も見えて、すぐにここだとわかった。

お店に入ると、和家具を基調とした什器に、いろんな器が並べられている。

土の肌合いを感じさせる平皿や、細かな彩色を施した鉢もの、茶碗や酒器、木目のきれいな拭き漆のお盆もある。

重ねられた同じお皿でも、物によって形や模様が一つひとつ微妙に、というか結構、違っていておもしろい。これがきっと和食器を選ぶ醍醐味なんだろうな。

お店の奥には、掛け軸の書が飾ってある。

「それは、僕の曽祖父が書いたものなんですよ」と紹介してくれたのは、京橋白木の代表を務める竹下茂雄さん。創業者から数えて4代目に当たる方だ。

京橋白木の創業は1896年。荒物雑貨の卸売にはじまり、戦後は主に外食産業用の食器や資材を扱う問屋としての役割を担ってきた。

「テーブルの上だけじゃなく、厨房で使う鍋やざる、たわしやペーパー類のような消耗品まで、飲食店に必要なものはすべて、うちで用意できますよ」

「カタログを見て、品番で注文をもらい、納品する。食器も今まではそのシステムのなかで、量として取り扱う道具のひとつだったんです」

誰がどこでつくったものか、ではなく、サイズや価格、納期など、数字ではかれる情報だけでやりとりを進めることも多かった。

一方、その価格競争で生じるしわ寄せは、おのずと、ものづくりをする人たちに向けられてしまう。

このサイクルで本当にいいんだろうか。

そんな疑問を感じていたころ、コロナ禍が、取引先である外食産業全体をストップさせてしまった。

「そのときあらためて外食の価値ってなんだろうって、考えてみたんです。おそらくこれからは外食の頻度が少なくなる分、“体験の質”を求める人が増えると思います。せっかく外でご飯を食べるなら、大切な人と美味しいものを囲んで、いい時間を過ごしたいっていうふうに」

人の心を満たす食事は、味だけでなく、見た目や空間全体で演出されるもの。

食材の産地や製法と同じように、器など食卓を彩る道具のストーリーにも関心を持つ人が増えるはず。

そのとき自分たちは、問屋として何ができるだろう。

その問いのなかから見えてきたのが、小売店という形。制作現場に足を運び、つくり手と話し、直接仕入れたものを届けていく試みとして「うつわ御結」はスタートした。



お店に並ぶ器の仕入れやセレクトを一任されているのが、竹下さんの弟で、京橋白木の専務を務める雷太さん。

「僕はこの会社に入って、15年くらいになります。今までは同じ焼き物の産地でも、量産の工場としかお付き合いがなくて。その近くで活動している個人の作家さんのことは全然知りませんでした」

「ひとくちに作家と言っても、代々、家業として陶芸をしている方もいれば、都市部の美術大学を出て産地に移住した人もいて、バックグラウンドはいろいろです。有田、唐津、美濃… 産地ごとに素材や技法の共通点はあるんですが、そこから作家さんはそれぞれ自分たちの表現を探っていて」

今はまず、雷太さん自身が気に入ったものを少しずつ集めているところ。産地の工房に足を運び、しっくりくる器を選んでいる。

工房を訪ねたときは、完成品だけでなく制作工程も見学する。

「今まで僕たちが見てきた量産の工場では、あらかじめ粘土の状態で用意されているのが当たり前だったんです。だけど作家さんは土も釉薬も道具も、全部自分でつくっているっていう話を聞いて、すごく驚きました」

話を聞いているうちに、自分もその作業の一部を体験したくなった雷太さん。あるとき、作家さんと一緒に山に入り、土の採取作業を手伝ってみたのだそう。

「せっかくなら、一番大変そうな工程をやってみたかったんです。掘った土を土嚢袋に入れて持ち帰るんですが、水分を含んでいて、すごく重たくて。持って帰るだけでも大変でした。そこから粘土の状態にするまでには、さらにいくつもの工程があって」

「むちゃくちゃ大変な作業なのに、作家さんは苦ともせず、むしろ楽しそうで。おもしろい人だなあって思いました。そういう現場を知ると、お店に立って接客するときの言葉も増えるというか。産地の様子や作家さんの人となりを、お客さんに話してみることもあります」

うつわ御結は母体である京橋白木と同じく、飲食店のオーナーなどが顧客となることを見込んでオープンした。一方で、雷太さんが実際にお店に立っていると、家庭用に購入していく人も少なくないという。

「骨董通りっていう場所柄もあるかもしれません。たとえばそこの板皿も、『お茶会でお菓子をお出しするのにちょうどいいわね』って買っていかれた方がいて。そんな使い方もあるんだなって、お客さんから教わることも多いです」

お店に並んだ器がお客さんの手に渡り、家庭やお店でどんなふうに使われているか。雷太さんは、お客さんから聞いた「その後」を可能な限り作家さんにも伝えるようにしているという。

「以前ある作家さんに、お店でこんなふうに使われているんですよって、メニューの写真を撮って見せたら、すごく喜んでもらえて。僕は、そのうれしそうな顔が忘れられないんですよね」

「作家が自分のつくった作品のその後まで知る機会は、なかなかない。僕たちの存在意義っていうのは、つくり手と使い手の間に立って両者を結びつけることなんだなって、そのときに気づかされました」

仕入れたものを売るだけでなく、ときにはオリジナル製品の企画に携わることもある。

「このあいだは、焼き鳥屋さんで使うお皿をつくってもらって納めたところです。もともとは刺身皿としてつくられた別の作品があって、それを気に入ったオーナーさんが、お店のメニューに合う形でつくってほしいっていう話になって」

使い手とつくり手が、コミュニケーションを取り合いながら、ひとつのものをつくっていく。その最初のきっかけが、このお店から生まれていく。

「僕らは、これまでの仕事のなかで飲食店とのつながりが深いので、サイズや用途などユーザーのリアルな声を拾うことができる。それって、地方で活動する若手の作家さんにとっては大切な情報なんです。せっかくいいものをつくっても、サイズ感が違うと売れないっていうこともよくありますから」

「作家さんとお客さん、双方の役に立つことを考えて動いていく。それが巡り巡って、うちの利益になればいい。やみくもに数字を追うんじゃなくて、まずは『お客さま繁盛』を第一に考えないと、歪みが生まれてしまうと思います」

仕入れからお店の接客まで、今はほとんどを一人でこなしている雷太さん。

これから入る人は、まさに二人三脚のような形で、このお店の形を一緒につくっていくことになる。

「僕自身も店舗での接客はしたことがなかったし、口下手なので、新しく入る人にいきなり高度な接客を求めるつもりはありません。営業トークで売り込むというよりは、お客さんが自分のペースでゆっくり見られるように接してもらえたらと思います」

一日中お客さんが出入りするような忙しさではないので、空いた時間でオンラインストアの商品登録をしたり、写真撮影をしたり、慣れてきたら商品の受発注なども担っていく。

お店には飲食店のオーナーも訪れるので、来店時に交わしたやりとりを営業担当に共有するなど、本社ともうまくコミュニケーションを取れるとよさそう。

うつわ御結は、青山のほか、八丁堀にも店舗がある。現在八丁堀店はリニューアルに向けた準備中だけど、オープン後は2店舗の運営に横断的に関わっていく可能性もある。

「知識や経験は、仕事をしながら少しずつ身につけたらいいので、まずは興味があるっていうことが大事だと思います。自分で料理をしたことがあるとか、そういう実感を大切にしてもらえるといいですね」

「僕らの仕事は、ものをつくる人がいて初めて成り立つものです。産地やつくり手へのリスペクトはいつも持っていてほしいから、新しく入る人にも、いつかは産地や工房に一緒に行く機会をつくりたいと思っています」

つくり手と使い手を結ぶ、新しいタッチポイントとして生まれたお店。

両者の間に立つ人の思いやりの深さが、そのご縁をさらに豊かなものにしていくはずです。

(2021/12/22 取材 高橋佑香子)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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