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家具屋のルーツを活かして
一歩一歩、よくなる暮らしを
お客さんとつくる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

古民家やカフェのリノベーションに何度か参加したことがあります。

そのときに感じたのは、決断するポイントが山ほどあるということ。

壁や天井を壊して断熱材を入れたり、床や壁紙を張り替えたり、がらりと印象の変わった空間にインテリアを配置したり。まっさらな状態の家を目の前にすると、できることの幅が広すぎて、かえって手が止まってしまうんです。仲間と一緒に「いったいどこから手をつけたらいいのだろう…」と、気の遠くなる思いも何度も経験しました。

こんな空間をつくりたいという理想はあっても、それを現実に形にするのはむずかしい。その思いを汲んで、一緒に形にしていってくれるプロの力はやっぱりすごいなと思います。

広島・呉に戦前から続くドゥクラフト土肥家具は、地方ならではのゆるやかな関係性とスピード感のなか、お客さんの人生にそっと寄り添っていく会社です。

住宅リフォームを中心に、オーダー家具の制作や雑貨などの販売を通して、お客さんの生活をよくしていくことに取り組んでいます。

今回は、主に住宅リフォームのヒアリングから提案、工事の完了までに伴走する企画営業スタッフを募集します。また、工務管理や広報の担当者も募集中です。

建築や設計の経験者はもちろん、経験がない人も。

「暮らしに向き合う」ことに興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

 

呉市は、広島県で3番目に大きな街。

JR呉駅からレンガ舗装された歩道を10分ほど歩くと、商店街の入り口そばにあるドゥクラフト土肥家具のショールームに到着した。

あたたかみのある家具や雑貨がならぶ店内を抜けて、奥の打ち合わせスペースへ。

迎えてくれたのは、社長の土肥さん。まずは会社の成り立ちから聞かせてもらうことに。

「開業は戦争が始まるちょっと前の、昭和13年。うちのじいさんは伊達っこきで、ばあさんは商売好きな人でした。小遣い稼ぎと言ったらおかしいですが、昔は建築の職人が雨の日に仕事場に出てきて、余った材料で家具をつくることがあったようです。じいさんが欄間を彫ったり家具をつくったりして、ばあさんがそれを売る。そういうところから始まりました」

戦争で亡くなったおじいさんの跡をおばあさんが継ぎ、土肥さんのご両親が継ぎ、3代目として家業を継いだ土肥さん。

一人っ子で、後継者になることは自然に意識してきたそう。芸大で写真を学びたいという思いもあったけれど、大学は商学部へ。途中からダブルスクールでインテリアの専門学校へ通い、就職はバブル時代の波にのってゼネコンに入社した。

「楽しかったけど、会社のために頭を下げる日々にどこか違和感がありました。もっと純粋に、お客さんの喜ぶことをしたいなって」

一方、家具業界をかえりみると、変化する時代のなかで既存の事業をつづける難しさも感じていた。

「たとえば婚礼家具。昔からお嫁に行く人たちが運びきれないほどの家具を持っていくんですけど、両親世代の人は喜んでも、当のお嫁さんはそこまでいらないよという感じで。いくら上質な家具でも、望まれないものを売りたいとは思わないから」

家具屋として地域に根付き、培ってきた経験や信頼を活かしながらも、新しい提案ができないか。

そこで土肥さんは、専門学校やゼネコンでの経験をもとに、住宅のリフォーム事業を開始。空間設計から、インテリアの製作、コーディネートまで、一貫して任せられると評判は徐々に広がった。

それから25年が経った今では、リフォームの仕事が全体の9割を占める。

 

企画営業担当の梶山さんは、リフォーム・家具・雑貨となんでも扱える土肥家具に魅力を感じて入社を決めたという。

「私もゼネコンで働いてたんですけど、もう少し人の暮らしに近い仕事をやりたくて。お客さまも、一口にリフォームと言ってもどこから手をつけていいかわからないので、家具の相談からはじまることもありますし、リフォームのあとで、家具やカーテンの相談を受けることもある。一連でお話しできるのが良いなと思います」

土肥家具にリフォームをお願いするお客さんは、もう一度、さらにもう一度とリピートする人が多い。

いっぺんに家全体をリフォームするのではなくて、お客さん側の負担も考えながら、数か年計画で一緒にリフォームを考えていく。お客さんのためになることを考えた結果、このスタイルに至ったという。

「お客さまから元気をいただくことが多いんです。リフォームをするときって、娘さんが恋人を連れて挨拶に来るからとか、お孫さんが生まれるからとか、お子さんが巣立つからとか、人生の節目のタイミングが多いから」

あの人のところも、あの家もと、うれしそうに話す梶山さんと土肥さん。

入社後、まずは梶山さんや土肥さんに同行しながら、お客さんとのやりとりや現場の実務を学んでいくことになる。

土肥家具のリフォームは、契約するまでの流れにも特徴があると土肥さんが教えてくれた。

「うちの会社の特殊なところは、先に図面を書くところです。一般的には、先に見積もりを出すんですよ。でもわたしたちは、最初のヒアリングのあと、お客さんがイメージしやすいように無料で図面を書いて、それをもとにベストなプランを話し合うんです」

たとえば、住む人の背の高さ。利き手はどちらか。そういった細かなこともヒアリングした上で、図面や写真を交えた提案書をつくる。

「この間取りならこう」とパッケージ化されがちな業界のなかで、逆の道をいくようなやり方をしている。

「すごく遠回りなんですけど、だからこそお客さんとの信頼関係もできていくんです。空間をつくったあとの暮らしのことまで考えていると伝わるから、お客さんも僕らを大切にしてくれる。そういう方とは自然と長いおつきあいになっていきますね」

目の前の人を大切にしたい。

そんな土肥さんの思いは、お客さんのみならず、一緒にはたらく人にも向けられている。

「とにかく利益を上げるために価格競争をして、職人さんを叩いてたたいて安くして。一緒に仕事する人をそういう消耗戦で戦わせるのが嫌なんです。お受けできない要望は、お断りすることもあります。うちはそれができる規模なんですよね」

営業と言ってもノルマはなく、競合他社と相見積もりするような競争もあまりない。設計事務所やゼネコンの経験者で、少しペースを落としつつ丁寧に働きたい、という人には合うかもしれない。

 

工務部の江尻さんは、一昨年の入社から1年とすこし。日々覚えることの多さに溺れそうです、と苦笑しながら話してくれた。

「ぼくはもともと建築の専門学校に通っていました。家って年代ごとに造りが違うんですけど、教科書ではリアルな感覚を掴みづらい。現場で作業しながら、初めてわかることもたくさんあります」

土肥家具では、企画営業部がお客さんとコミュニケーションをとりながら設計・デザインを決めていく。

工務部の仕事は、現場の運営や職人さんとのやりとり。設計の細かな部分は、現場の裁量に委ねられることもある。

江尻さんは「大変」と言いながら、現場での発見を話すときはとても楽しそう。

「小学5、6年生くらいのときに、団地から一軒家に引っ越しをしたんです。新しい家は近所だったので、組み上がっていくようすを間近に見ていて。建築への興味はそこが始まりだったと思います」

住宅リフォームを中心としながらも、企業のコンセプトビルのプロジェクトや、古民家のリノベーションまで、さまざまな案件がやってくる土肥家具。江尻さんはそのなかで少しずつ経験を積んでいる。

「正直、好奇心が満たされるどころか、おなかいっぱいです(笑)。ひとつ図面を描くなかでも、社長と話しているとこういう考え方があったか!みたいに気付かされますし、古民家もいざ解体してみると、想像と全然違う造りになっていたりして。毎回発見がありますね」

企画営業の梶山さんも、入社してから慣れるまで一番大変だったのは、覚えることの多さだったそう。

どこか特定のパーツ、たとえば扉ひとつとっても、選択肢は無数にある。素材や色など単体での展開はもちろん、壁や床との組み合わせまで考え出すとキリがない。

決まった答えのない仕事はむずかしいけれど、自分なりの答えをお客さんと一緒につくっていけるのがおもしろさでもある。

みなさんは、どんな人と一緒に働きたいですか?

「スキルよりもまず、お客さまに親切な人です」と梶山さん。

「技術や知識もまあ必要ですけど、それよりも善意というか。一生懸命考えてくれてるなっていうことは、お客さまにも伝わるんです。工事させていただく上で、それが一番大切なことですね」

お客さんによって、最適解は変わる。見た目が一番な人、機能性を重視する人、掃除のしやすさにこだわりたい人。

どんな空間にしたいのか、明確に言葉にできるお客さんばかりではないので、とにかく細やかにヒアリングしていく姿勢が大事なのかもしれない。

隣で聞いていた土肥さんは、「話を上手に聞ける人」がいいという。

「意外にちゃんと話を聞くって難しいんです。たとえばインタビューができる人、そしてものを書ける人は、良い企画営業のスタッフになれると思います。話を聞いて、本当に相手の方が望むことを理解する。これが基本ですから」

「理想の空間を理解できたら、あとはそれを造形化すればいい。そのためのシステムは、お金をかけて扱いやすいものにしています。ソフトのなかでリビングっていう箱を置いたり、横にトイレっていう箱を置いたりして、3Dって押したらぽーん!って形になる」

それは心強いですね! なんだか、わたしにもできそうな気がしてきました。

ぼく自身ももともと文系人間ですから、と土肥さんは笑う。建築を学んだことのある人も多いものの、家具配達をしていた人、元自衛官の人、これまでにもいろんな仲間が集まってきた。

チームのなかで、提案内容を相談し合うこともよくある。いろんな視点が交わることで提案の幅はさらに広がっていくので、異業種での経験も活かしやすい環境だと思う。

SNSやホームページでの発信にも今後力を入れていきたいそうなので、その意味でも編集やライティングの経験はうまく活かせそうだ。

リフォームや家具はあくまで手段で、向き合いたいのは「生活を豊かにする」こと。

人生の節目や、ささいな日常の改善に寄り添う日々は、自分自身の人間らしい生き方、はたらき方に立ちかえるような時間にもなるかもしれません。

(2022/2/4取材 瀬戸麻由)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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