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問い、想像し、
自分ごととして
まちづくりを実験する

「あなたの考えるいいまちって、なんですか?」

そう聞かれたら、なんと答えるでしょう。

土地や路地、家々、お店などの街並み。そこで暮らす人、働く人。その人たちが営む生活や仕事。育まれてきた技術に文化…。

まちはいろいろな要素からなるもので、人それぞれ捉え方はちがうと思います。

「まちは受動的にできるものじゃなく、人の意識や働きかけによって能動的につくることができる。そう仮定して、よりよいまちをつくっていく方法を導き出したい」

そう話すのは、有限会社仙六屋の代表・茨田(ばらだ)さん。

仙六屋は、東京・大田区を拠点に、不動産の企画・賃貸・仲介・管理業に加えて、より多くの人と関わりあう場としてのカフェを運営している会社です。

今回は、不動産とカフェ、それぞれの部門で募集します。不動産や建築、飲食の仕事の経験は、あると望ましいとのこと。

そもそも「まち」とは何か。まちに関わる人たちの手で、その価値をつくることはできるのか?

問いをもとに、想像しながら仮説を立て、実行し、アップデートを繰り返す。それをよしとする職場です。

 

京浜急行線・品川駅から約15分で梅屋敷駅に到着。

駅前には、東西それぞれに商店街が伸びていて、平日の昼過ぎでも多くの歩行者や自転車が行き交う。

仙六屋カフェがあるのは、高架沿いに歩いてすぐのところ。

お店の前まで来ると、代表の茨田さんが迎えてくれた。

町工場や昔ながらの商店が点在するこのエリア。かつては海苔の産地として知られ、茨田さんの実家も、昔は海苔の養殖をしていたそう。

東京湾の埋め立て開発による一斉廃業を機に、不動産業を本格始動。大家として仲介・管理業を営んできた。

「自分が跡を継いでからは、市場に溢れるものとはちがう、時の経過で価値が積み重なっていくような物件をつくろうと、改修時にリノベーションをしていきました」

「ただ、日本全体で人口が減り続けるのに対して、物件は余っていくばかり。次第に、物件だけでなく、まち自体の価値を高めていく必要があると考えるようになったんです」

まちづくりでは、大手デベロッパーや行政が中心となって、大規模な再開発を行う手法もある。けれど、まちの個性を残しながら発展していくためには、まち全体を持続的にアップデートし続けなければ、何も変わらない。

それと同じように、物件や土地の所有者が、部分的に改修や建築を繰り返すだけでは、いいまちづくりにはつながらないんじゃないか。

どうすれば、まちをよくしていけるのだろう?

「たまたま僕は、このエリアでいくつか不動産を所有していて、それらはまちの印象をつくりだす一部になっている。それをどのように活かすのか、どんな人に入居して使ってもらうのか。ちゃんと丁寧に考えてつくるのと、ただ右から左に流すのとでは、まちの雰囲気がちがってくると思うんです」

「自分は不動産業を通じて、まちへの働きかけをしやすい立場にあるんだと気づいた。だから、やろうって思ったんですよね」

たとえば、カマタ_ブリッヂという物件は、「小さな商店街」をコンセプトに、賃貸マンションの1階を3つの店舗で構成。

どんなお店に入ってもらえたら、上の階に暮らす人たちに喜んでもらえて、なおかつ周辺に住む人やまち全体にとって、いい影響が及んでいくだろうか。

入念なリサーチからはじめて、業態を絞って募集を行い、ときには自分たちからも声をかけながら、入居者を募っていった。

紆余曲折ありながらも、カフェバー、パン屋さん、クラフトビール販売店の入居が決まり、創業・開店までのサポートもしたんだそう。

少しずつ、周辺に賑わいが生まれつつある。

ほかにも、まちの人たちが自身の活動を発表する場所として、空き物件などを期間限定で開放する試みも進めてきた。参加者のなかから、近隣に花屋さんを開業する人も現れたという。

今回募集する不動産スタッフは、日常業務として自社物件の管理を担いつつ、こうした企画に携わっていく。

「最近、“まちづくり”っていう捉えどころのない言葉を言い換えるとしたら、なんだろうと考えていたんですけど… それって公共性なのかなと思っていて」

公共性、ですか。

「自分以外の人やものごとに対して、関心を持ったり想像力を働かせたり。自分まわりの環境を少しでもよくしようと、できるときに、できることを継続してやってみたり」

「そういう意識や活動がより多く芽生える土壌があると、いいまちになっていく気がしています。まちってもしかしたら、そういう意識を醸成することで、つくっていけるのかもしれないなって」

一人ひとりの働きかけが、まちに影響を与える。

それを信じて実感できる社会を構築したいと、茨田さん。

「まちの人全員が、まちづくりに関わらなくたっていい。でも、関わってみたいと思ったとき、共感する人が集まったり、やりたいと思ったことを表現できる仕組みがあれば、一歩目を踏み出しやすいと思うんです」

まちの人たちが活動できる場、まちについての記憶やアイデアを集積させていく場、不動産と人をつなぐ相談の場…。

「仙六屋カフェ」は、そんなふうに多くの人と関わりあいながら、まちをアップデートさせていく実験の場として構えた場所だ。

看板メニューのひとつ「福田屋のクリームモナカ」は、地元で長年愛されていた甘味処・福田屋から、メニューを事業承継したもの。

お店そのものを継ぐことはできないけれど、クリームモナカという商品は残すことができるかもしれない。そんな思いから復刻することになり、お客さんのなかには、味や思い出を懐かしむ人も多いという。

カフェスペースのほかにイベントスペースも備えていて、コロナ禍以前は地域の人が企画を持ち込み、イベントやワークショップをひらく機会も多かった。

認知度も少しずつあがり、最近ではカフェをきっかけに、仙六屋のエリアマネジメントの活動を知ってもらえるように。

相乗効果が現れつつあるものの、カフェの運営面に目を向けると、働く人が続かないという課題を抱えているのだそう。

「単純にカフェをやっていればいいんじゃなくて、まちって何?っていう概念的な話もするし、何十年先と長い時間軸の話もする。もちろん営業するからには数字の話も」

「そのうえで、自分たちの目指すまちのあり方に対して、このカフェができることってなにか。働く人たちと一緒に、議論して試行錯誤して…。でも、皆さんだんだん疲れていってしまうんですよね」

目の前の現場と、まちの未来。振り幅の大きい思考を行き来しながら、行動に移していくことを求められる。想像以上にタフさが必要な環境なのだと思う。

「経営者として、もっとレベルアップしなければと思っています」と、茨田さん。コミュニケーションのあり方や働き方については、アプローチを変えて工夫したいと話す。

現在カフェは、11時から14時までと営業時間を短縮している。

いろんな人に訪れてもらえるように、まずはお店の体制を整えること。そして、日々ブラッシュアップしながら、新しいことにも挑戦していきたい。

「今は、イベントスペースも活かしきれていなくて。もっとこの場所の意味づけや役割を明確にして、運営したい。今回は、お店づくりと場づくり、それぞれ主導していってくれる人に加わってほしいんです」

イベントスペースは、写真で見る以上に広い空間。イベント開催のほか、物販や場所貸しをしていく選択肢もある。責任は伴うものの、自由度は高く、裁量も大きい。

「まちをよくしていくために、カフェとして何ができるか。正解はないからこそ、働く人のクリエイティビティを思う存分発揮してほしいなと思っています」

「クリエイティビティって、いろんな形で表れると思うんです。お店の雰囲気だったり、カフェのメニュー、お客さんとの挨拶や会話、働いているときの所作や振る舞いかもしれない」

自分にできることを考えて、体現していく。自分の働きが、まちに影響していく実感や手応えを得てほしいと、茨田さんは話す。

 

「今いちばんお店のことを知っているのが彼女です」と紹介してもらったのが、カフェの契約社員として働く樋山さん。

昨年の10月にアルバイトとして加わり、今年1月から契約社員に。

今は保育園のパートと掛け持ちしつつ、業務の幅を広げているところだそう。ふんわりとした雰囲気を持ちつつ、好奇心の強さも感じる方。

「私はよく、気になるカフェを検索してはマップに印をつけておくのが習慣で。仙六屋も最初はマップで見つけて、遊びに来たのがきっかけでした」

「そのときは、保育園の仕事もしつつ興味のある仕事はなんでもやってみよう!と思っていたところで」

ちょうどアルバイトを募集していたのを見つけ、すぐに応募したという。

働いてみて、印象はどうでしたか?

「まずいちばんは、働く皆さんが個性豊かっていうこと。自分を繕うことなく働ける雰囲気が、すごくいいなと思いました」

「あとは、たとえばドレッシングも手づくりしていたり、メロンソーダも何種類かのシロップをちょっとずつ配合してつくっていたり。実はメニュー1つひとつにこだわりがあるんです。自信を持っておいしいって思えるものを、お客さんにお出しできるのがうれしくて」

日々の仕事は、オープン準備に始まり、接客、配膳、会計、洗い物。合間を見て、備品や食材を発注したり、庭のグリーンを手入れしたり。窓ふきや掃除なども欠かせない。

契約社員となってからは、シフトの作成や、掲示物の制作、収支計算にもチャレンジしている。

営業時間の短縮や、メニューを絞らざるをえないことが、今いちばん心苦しいことだと、樋山さん。

「まちにとって仙六屋がどうあるべきか。もっと考えられるようになりたいと思いつつ、目の前のことに追われはじめると、つい現状維持になってしまって…」

やることも考えることも、たくさんある。そのなかで樋山さんが大切にしているのが、お客さんと会話するちょっとした時間。

「お客さまとお話すると、新しい発見があるんです。このあいだは、女性が一人でいらっしゃって、帰りがけにちょっとお話したら、これから銭湯に行くところだったみたいで。私もサウナ好きなんです (笑)。近所でおすすめのサウナや銭湯の話に花が咲きました」

ちょっとしたコミュニケーションの積み重ねで、お客さんに「また来たい」と思ってもらえるお店に育っていく。

それは同時に、このまちで暮らす人の日常を彩っていく一つの要素になりえるんだと思う。

 

仙六屋が大切にしているのは、小さな試みからはじめて、発展させていく姿勢です。

目に見える変化は、なかなか起こらないかもしれない。

それでも、自分の考えるまちへの働きかけを、日々実践していきたいと思う人にとっては、挑戦しがいのある環境だと思います。

(2022/3/31取材 後藤 響子)

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