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自分で選んで
触って、食べて
器と米の違いを楽しむお店

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

ずらりと並んだメニューのなかから、何を食べようかと考える時間は、悩ましくて楽しい。料理には、食べるだけじゃなく、選ぶ喜びがあると思う。

けれど、器を選べるお店は、なかなかないんじゃないか。

石川県小松市で今年5月にオープンした「HO GA(ホウガ)」は、そんな視点から生まれた、ありそうでなかったお店です。

地元の伝統工芸品である九谷焼をはじめ、各地の作家が手がけた器と、味わいや食感の異なるさまざまな品種のお米を組み合わせて楽しむことができます。

今回は、飲食部門を支えるスタッフを募集します。

料理人としての経験がなくても、器や料理が好きな人なら大歓迎。メニュー開発やディナー営業など、今後やっていきたいことはたくさんあるので、一緒にチャレンジすることを楽しめる人が向いていると思います。

 

石川・小松空港に初上陸。羽田空港からだと1時間、福岡空港や千歳空港からでも1時間半ほどで到着する。

HO GAへは、車で約20分。年間15万人が訪れる白山信仰の寺・那谷寺(なたでら)のほうを目がけて南へ進む。

古民家の趣を残したまま改装された外観は、住宅街にぴたりと馴染んでいる。はじめて訪れたら、素通りしてしまいそうなくらい。

そんな外の雰囲気に対して、お店のなかはリノベーションされたモノトーンの空間が広がっている。差し込む光と窓越しの緑が心地いい。

「オープンして日も浅いので、試行錯誤しながらお店づくりをしています。駐車場の看板も、もうちょっとわかりやすく出そうかな」

代表の緒方さんが迎えてくれた。

千葉県出身で、以前は金沢のホテルで働いていた緒方さん。イベントや展示を通じて、当時からつくり手と関わる機会は多かった。

全国転勤枠だったため、石川県でもっと暮らしたいという想いから、転職を考えるように。九谷焼の複合型文化施設「九谷セラミック・ラボラトリー」、通称“セラボクタニ”の立ち上げメンバー募集を見つけ、地域おこし協力隊として3年間運営に携わった。

「セラボクタニでは、九谷焼の制作体験や作品を買うこともできるのですが、九谷焼をある程度知っている人でないと、足を運びづらいと感じていて。もっといろんな人に作品のすばらしさや、実際に使ってもらってそのよさを知ってほしいなと思っていたんです」

「食は、日常的な暮らしのなかに必ずあるものですよね。ぼくはもともと食べることが好きで、いつかお店をはじめたいと思っていて。器に触れる間口を広めるためにも、飲食店はいいきっかけになるんじゃないかというところから、場所の構想を広げていきました」

協力隊時代の3年目には、九谷焼の窯元・錦山窯と共同で、食と器のペアリングイベント「九谷餐会」を4回にわたって開催。さまざまなジャンルのゲストシェフを招き、食材からではなく、九谷焼から着想を得てコース料理を考えてもらう、というものだった。

そうした経験を下敷きにして、今年の5月2日にオープンしたHO GA。

器は汁椀、平皿、茶碗、小鉢のセットを4種類のなかから、お米は季節に応じて、味わいや食感の異なる2種類のなかから、自由に組み合わせを楽しむことができる。

すべて九谷焼というわけではなく、さまざまな産地やつくり手の器を揃えているという。

「違いを楽しんでもらいたい、という想いがあって」

違いを楽しむ。

「実際に使ったり、食べ比べたりすることで、一つひとつのよさが見えてくるんですよね。ものに対しての愛着も、そこから湧いてくるというか」

「プロダクト寄りの器も扱っています。作家ものだから、九谷焼だから、じゃなくて、『いいものは、いい』と思って使いたい。お客さんにも同じように、自分で選ぶ楽しみを感じていただけたらなと思っています」

 

HO GAで扱っている九谷焼の作家さんにも話を聞いてみる。

田村星都(せいと)さんは、代々九谷焼をつくってきた家系の4代目。極細の筆を使って和歌などを書き込む「細字」という技法で、独自の世界観を表現してきた。

「九谷焼は伝統工芸で、代々続くおうちも多いぶん、作品として狭く限定されがちなところがあって。緒方さんのような外部の方、焼きもののバックグラウンドがない方に関わってもらうのは、産地としてありがたいことだと思っています」

HO GAで扱っている星都さんの器は、オリジナルのもの。

大きさやリム幅、立ち上がりの角度や質感など、何度も打ち合わせを重ねながら形にしていった。

その過程で、緒方さんは意識していたことがあるという。

「ぼくが器をお願いするときに思っていたのは、あまり限定したくないなって」

限定したくない?

「その作家さんご自身の作風をちゃんと出してほしいという想いがあったんです。形も、ふつうのレストランだったら『丸に統一してほしい』って言うかもしれないですけど、四角いお皿があってもいい。星都さんには、やっぱり細字を入れてほしいと思っていました」

星都さんは当初、レストランで使う器に細字は合うのかな?と思ったそう。緒方さんの意向を受けて、料理を載せたときのバランスも考えながら、自身の作風を反映していった。

「すぐ近くに那谷寺のある環境なので、それだったらこういう歌も入れられますよとご提案して。奥の細道で、那谷寺を訪ねた芭蕉が詠んだ句があるんです。山水の色絵に、その句を添えました」

作家にとっては、作品のプレゼンテーションの場にもなる。個展の会場にHO GAのショップカードを置いてくれる方や、友人知人を連れて何度も食事をしに来てくれる方もいるそうだ。

HO GAのオンラインショップでは、作家の器を購入できるほか、その人の横顔に光を当てた「Side by Side」という読みものやpodcastも配信している。また、レストランの休業日に店内を活用して、ギャラリー営業もスタート。

こうしたところからも、つくり手との関係性を丁寧に築き、魅力を伝えていきたいという緒方さんの姿勢が伝わってくる。

 

「HO GAさんでうまいって言うて食べてもらえば、この地を開墾した先祖さまも喜ぶんじゃないかって。そう思うね」

そんなふうに話すのは、お米農家の吉村さん。

「わたしはこっから2kmほど行った菩提町いうところにおるんですけども、うちの2軒隣に緒方さんが引っ越してこられて。『新米がとれましたんで、どうぞ』って米を持ってったんですわ。それがきっかけで、HO GAさんでも使っていただくことになりました」

もともとJAに出荷していて、単一農家として販売したことはなかった。HO GAでは、生産地にちなんだブランド“菩提米”として、吉村さんのお米を提供している。

品種は晩期のコシヒカリ。寒暖差の大きな初秋に収穫時期が重なることで、甘みが増すという。

「おいしさの一番のポイントは水やね。今年みたいに雨の少ないときでも、菩提で水が切れることはまずない」

つくり方において、吉村さんが心がけていることはありますか。

「やっぱり、まめに、まめに、いうか。手ぇかけてやれば、それだけ応えてくれる、いう感じ。ほかは…減農薬いえば減農薬やし、肥料も少なめにやっとる。できることをしてる感じやね」

そんな吉村さんの話を、隣で聞いていた緒方さんが続ける。

「学生のとき、東京の青山ファーマーズマーケットの事務局の仕事をしていたんです。そのなかで『これはオーガニックですか?』とか、『無農薬ですか?』とか、それだけの基準で選ぶお客さんが結構多かったんですよ」

「もちろんそれもいいけれど、ぼくはもっと、品種ごとの個性や味わいの違いを知ったうえで、お気に入りのお米や野菜を見つけてほしいと思っていました。なんでもかんでも農薬を使わないことで、おいしくなくなったら意味がない。個人的には、農家さんには農薬を使ってもらって構わないし、むしろ必要なことだと思っています」

いろんな価値観や基準があるなかで、何を選ぶのか。そんな問いを投げかけつつ、「こんなおいしさや楽しみ方があるよ」と提案しているのが、HO GAというお店なのかもしれない。

 

これから一緒に働くことになる人にも話を聞いた。

店長の山﨑さんは、お菓子の専門学校を卒業後、作家として活動していくなかで緒方さんと知り合い、一緒にお店を立ち上げることになった。

「わたしもいつか自分でカフェがしたくて。みんなが食べて『おいしっ』て思えるなら、つくるものはなんでもいいんです。それ以上に、『どんな器に乗せたら、食べる人に楽しんでもらえるやろ?』って考えちゃう。それを緒方さんに話したら、一緒にやらない?って」

製菓の経験はあるものの、仕事として料理をするのはここがはじめてだという山﨑さん。

現在は、外部の方に監修してもらったレシピをもとに調理している。

「練習はしていても、大量に仕込むと感じが変わってくるので。毎回ちょっとずつ改良して、落ち着くところが落ち着いたら、次何したらいい?って考えて。ずっと手探りですね」

器を楽しんでもらうために、とくに気を配るのが盛り付け。

ハンバーグのソースをどのようにかけたらいいか、器の向きはどう使うと見栄えがいいか。試していくなかで、少しずつ感覚が身についていく。

キッチンの正社員は、今のところ山﨑さんひとり。常時2、3人のアルバイトスタッフとともに運営しているものの、シフトの都合やスイーツづくりと掛け持ちしていることもあり、日々の仕込みと提供で精いっぱいなのが現状。

「料理に対してのフットワークが軽い方がいてくれたら、すごく助かります。料理が好きで、器や人に対して先入観なく向き合える人。あとは明るくて、サバサバした感じの人のほうが合うかな」

料理人としての経験は、なくても大丈夫。

今後、自分たちでメニュー開発もしていきたいので、たとえば日々の料理をSNSにアップしたり、レシピサイトに投稿したりするのが好きな人は向いているかもしれない。

ディナー営業や、オリジナルスイーツ「ごまどら」の季節限定フレーバーや通販など、これから着手したい計画もいろいろとあるそう。製菓が得意な山﨑さんとうまく分担しながら、いい体制をつくっていってほしい。

最後に、代表の緒方さんはこんなことを話していた。

「ベンチャーの立ち上げ期なので、試してはやめる、みたいなことも多いです。ひとつ、変わらないのは、関わる人それぞれにとっての意味が生まれていくようなお店であれたら、ということで」

「今いるメンバーのなかでも、ラテアートを勉強したいとか、もともとお茶屋さんで働いていて、ティースタンドをやりたい人もいる。to goの業態でまちなかに進出するのもおもしろいし、宿もいつかやれたらいいな、とか。一人ひとりが自分なりの意味を重ねて、お店を育てながら、まちに新しい風景をつくることができたらと思っています」

器やお米のつくり手、一緒に働く人たちのあいだにも、すでに気持ちのいいチーム感が醸成されているように思います。

料理が好き。その気持ちを携えて、ぜひこのチームに加わってください。

(2022/7/28 取材 中川晃輔)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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