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生身で感じる
高原地帯の
仕事と生き方

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

長野県・開田(かいだ)高原。

標高3067mの御嶽(おんたけ)山の麓に位置し、開田高原の標高は1000〜1500m。

年間平均気温は15℃と爽やかな気候で、夏場の寒暖差を利用してつくられるそばや高原野菜、在来馬である木曽馬の故郷としても有名です。

夏は涼しい高原地帯も、真冬になると最低気温はマイナス20℃まで下がります。

豊かな自然の恵みと厳しさを感じながら、暮らし働く。

歴史や文化も残る開田高原で、今回は木曽町の地域おこし協力隊を募集します。

取り組むのは、ヘルスツーリズムの推進。

「一般社団法人木曽おんたけ健康ラボ」に所属して、心身ともに健康になれるようなヘルスツーリズムツアーの企画運営や、地域の野菜や木材などを使った商品開発を担います。

経験は問いません。どんどん地域のなかに入って学び、五感で感じ、考えて実際に手を動かしてみる。なんでも吸収したいと思う人にとって、きっと楽しい環境だと思います。

 

取材日の前日、昼過ぎから電車に乗って向かったのは木曽福島。

東京からはおよそ3時間半。開田高原の麓にあるこのまちで前泊し、翌朝のバスに乗って高原を目指す。

取材日の朝、目当てのバスがやってきた。

思っていたよりも雪は少なく道路状況は良好、すいすい進んでいく。

しばらくして、トンネルに入る。窓を眺めたまま、ぼーっとしていると急に景色が変わった。

広がっていたのは、白樺の群生林。積雪も相まって幻想的な空間になっている。

外を眺めているうちに、あっという間に最寄りのバス停に着いた。日が出ているからか、そこまで寒くなさそうだ。

このあたりで標高は約1000mほど。空は開けていて、澄んだ空気が気持ちいい。遠くには、台形型の霊峰御嶽山がどっしりと構えている様子が見えて、何だか安心感もある。

初めて訪れたけど、落ち着くところだなあ。

バス停から歩いてすぐの場所、木曽おんたけ健康ラボと書かれた建物を見つけた。

「今日はあったかいね。最近は雪があんまり降ってないから、雪もちょっと欲しいけど(笑)」

「気温が下がるときは20℃とか。冬に気温の話をするときは、マイナスをつけないんですよ、当たり前すぎて」

ラボのなかで気さくに声をかけてくれたのは、代表理事の田上さん。

木曽おんたけ健康ラボができたのは5年前。

もともとは、地元の宿泊業者を中心とした開田高原ヘルスツーリズム推進協議会という名前で活動していた。

木曽馬と歩くイベントなどを有志で開催していたけれど、まちおこしをより力強く推進していこうと、人を雇って法人化することに。

まちの施設を改修して運動できるスペースにしたり、山を整備して気軽に遊べるフィールドをつくったり。

ハード面の整備と並行して、雪上を歩くスノーシュー、不整地での走行も楽しめるファットバイクのサイクリングなど、新たなプログラムの開発にも力を入れてきた。

「もともと、木曽地域でずっと消防士をしていて。でも将来は、自然をフィールドに健康づくりを実践するトレーナーになりたいと思っていたんだよね」

52歳のときに退職し、独立した田上さん。

個人で子ども向けの健康づくりなどに取り組んでいたところ、健康ラボのスタッフに誘われ、代表を務めることに。

運動指導の資格のほか、以前から取得していた救急法のインストラクター資格や重機の操縦免許を活かして、ラボの裏にある森を開拓するなど幅広く活動してきた。

現在、ラボで働いているスタッフは、田上さんを含めて5名。

トレーニング指導士や健康運動指導士など、それぞれが得意な分野を持ち、さまざまなプログラムを提供しているものの、それのみで十分な売り上げをあげることはむずかしいとのこと。

今後は、まちのいろいろな制度や補助金も利用しつつ、継続的に収益を確保する方法を模索したい、と田上さん。

そのひとつが、今回入る人に担当してほしい、特産品を活かした商品開発。

「ここには自然の財がいっぱいある。休耕地も結構あるので農作物をつくることもできるし、それを活かして特産物の販売にもつながるようにしていきたい」

「健康は日々の運動だけじゃなくて、栄養のある食事をとることもだからね。食が抜けて運動だけになると、必ず弊害が起きてしまう。ここで採れるキャベツとかきゅうりとか茄子とか、すごくおいしいんですよ」

ほかにも、カブの茎を乳酸菌だけで発酵させる漬物“すんき”など。冬の名物として昔から親しまれ、現在はスローフードとしても注目されている。

高原野菜も多く採れる地域なので、新しく入る人には、豊富な素材をもとに開発メニューをどんどん考えていってほしい。

 

とはいえ、商品開発には時間がかかるもの。

まずはラボの既存事業である、健康づくりのプログラムの企画・運営に関わりながら、ラボや地域のことを知っていけるといいと思う。

このまちで生まれ育ったという中島さんに、話を聞かせてもらう。

現在は、ラボでマネージャーを務めるかたわら、地域で健康指導の仕事もしている。

「施設内ではボルダリングやアーチェリーができたり、裏の森ではサイクリングやウォーキングが楽しめたりするので、夏場は一般のお客さんが多いですね。繁忙期になるので、終日フル回転って感じです」

「最近は健康経営が注目されているので、企業のチームビルディングなどに活用されることも増えてきていて。ちょうど明日はツアーがあるので、あれやらなきゃ、これやらなきゃで、今週はいそがしいですね」

ツアーの受け入れ時には、団体とのやりとり、食事や各種プログラムの手配・調整も担っている中島さん。

そのほかにも、ヨガやピラティスのインストラクターとしてプログラムを運営することもあれば、給与計算や税金の申請などのお金まわりのことも担当している。

中島さんは日々ラボで働くなかで、どんなことを意識して働いているのだろう。

「気づいてもらうことが大事かなって。たとえば、モニターツアーを実施したときに、地元の宿の栄養士さんに監修してもらって、塩分をかなり低くしたうえでお料理を出していただいたんですね」

「参加者の方がすごくおいしいって言って食べてくれて。自分の家に帰ったら、家の料理がすごくしょっぱく感じた、今までこんなに塩分をとってたんだって気づいたそうで」

そのほかにも、各種アクティビティを通して、筋力の衰えを感じる人や運動不足を痛感する人など、気づきは人それぞれ。

その気づきを普段の生活でも活かせるよう、身近ではじめられるアドバイスを心がけているとのこと。

相手のことを気にかける姿勢は、新しく入る人にも大事にしてほしい。

「先読みして動ける感覚がある人と働きたいかな。たとえば、アクティビティに必要なものが出てきそうだと思ったら、先に準備しておくとか。人数も少ないので、指示を待つんじゃなくて、自ら考えて動ける人だといいですね」

まずは中島さんのサポートをすることで、ラボの雰囲気やどんなお客さんがいるのかを学べると思うし、商品開発のヒントになるようなニーズもお客さんと話すなかで出てくるはず。

なにより体を動かすのが好きな人は、きっと楽しめる環境だ。そのフットワークを活かして、さまざまな仕事に挑戦していってほしい。

「商品を開発するときは、できるだけ地元の企業さんと一緒にできればと考えています。お菓子をつくっている会社や漬物をつくっている会社とか、わたしの実家が地元で旅館を営んでいることもあって、知り合いも多いんです」

「最初は自分が間に入りつつ、つながりができたら、どんどん任せていきたいですね」

 

ラボで働く地域おこし協力隊の寺内さんは、東京から開田高原に移住して2年目。

ラボでウォーキングのインストラクターを務めたり、フィールド整備を担ったり。自宅の古民家を利用して、移住定住に関する取り組みなどもおこなったりしている。

移住の決め手はなんだったんでしょう。

「簡単に言うと、人がいいところですね」

人がいい。

「ここに移住してくる前、地元の旅館に泊まったら、そこの若女将が車でまちを案内してくれたんですよ。『この家空いてるよ』って感じで、ほかにも、あの人に聞いてみるといいよとか、地元の人が教えてくれて」

馴染みのない土地での家探しは、移住を考えるうえでひとつの悩みの種。

寺内さん自身、片っ端から地元の人に声をかけていったという。その行動力と、地元の方の協力やご縁のおかげで、歴史の長い古民家を借りられることになったという。

「東京から移住してきたので、覚悟はしていたんです。なんだお前、っていう感じは多少あるだろうなって。でも、挨拶回りに行ったときも、誰一人としてそういう人はいなくて」

「逆に、驚くぐらい喜んでくれたんです。『電気が消えてる家ばっかり増える一方で、まさかこっちに移住してくる人なんかいると思わなかった、ありがとう』って。面食らいましたけど、そう言ってもらえてありがたいですね」

今後は、より地域外の人たちにもまちに興味をもってもらえるよう、地元の大工さんなどを巻き込んで、古民家を改修するDIYイベントなどを検討している。

こんな風に、自分が興味のある分野と地域のためにできることを掛け算して取り組んでいけると、活動に広がりもできていく。

「隣に住んでるおじさんは農家なんですけど、夏は朝4時半ぐらいから外で作業していて、自分が仕事を終えて家に帰ってもまだやってるんですよ」

「ちくしょう、自分も負けらんねえなと思って頑張って。でも秋になったら収穫も終わって、隣のおじさんはなかなか出てこなくなったんです。俺はその間も続けて頑張る。冬が来たら、雪が一気に降ることもあって雪かきが必要になる」

すると、再び隣家のおじさんが外に出てきて作業を始める。

「自分は疲れ切っちゃっているんですけど、向こうは元気なんですよ。こういうことかと」

「あったかい夏の時期に動く。で、秋はおいしいものを食べながら、冬に備えてゆっくり休む。こっちの人は季節に合わせて1年のリズムができているんだ、と思って。それは学べてすごく面白かったですね」

 

寺内さんは、こんなことも話してくれました。

「最近思ったのが、東京は時間があるなって」

どういうことですか。

「スイッチひとつで何でもつくし、料理しなくてもコンビニがある。便利な生活だからこそ、生きるためにやることが少ないのかなって。それで生まれた自分の時間は、携帯でSNSを見たりとか」

「こっちに来たら生活するために生きる。冬だったら、木を切って薪ストーブの燃料を準備しないといけないとか、自宅の改修を進めないと寒くて住めないとか。たいへんなこともあると思うけど、そこに魅力を感じる人なら、ここはバッチリだと思います」

“郷に入れば郷に従え”という言葉があるけれど、寺内さんはまさにそれを実践してきた方。

自然も文化も人との関係性も、都会とは異なる部分も多いけれど、まずは受けとめ感じてみる。両手を広げて、開田高原の空気を思いっきり吸いこむように。

それぐらいオープンな気持ちと体があれば、冬の厳しい寒さも乗り越えていけるはずです。

(2022/01/19 取材 杉本丞)

※撮影時は、マスクを外していただきました。

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