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この建物って、どうしてこんなに装飾的なんだろう?
あの橋って、いつからそこにあるんだろう?
まちを歩けば、見えないものが見えてくる。なんてことなかった風景も、知れば知るほど、面白くなる。
合同会社まいまいは、京都と東京を拠点に、定員20名ほどの小さなまち歩きツアーを企画・運営している会社です。
NHKの人気番組「ブラタモリ」の京都編にも立ち上げ段階から企画協力しているので、まち歩き好きなら知っている人も多いかもしれません。
地理に歴史に、グルメ、植物、建築、サブカルチャーなど、さまざまなジャンルの愛に溢れる専門家が、独自の視点でツアーガイドをしているのが特徴。
今回募集するのは、ツアーの企画・運営と、新規事業立ち上げを担う事務局スタッフです。
知的好奇心が旺盛で、知らないことを知るのが大好きなあなた。日常をおもしろがるのは、誰にでもできることではありません。
ピンと来た方は、ぜひ読み進めてみてください。
新幹線で京都へ。そこからバスで10分ほど、まいまい京都が間借りしているカフェに到着する。
迎えてくれたのは、代表の以倉さんと事務局スタッフの藤井さん。
事務所スペースに案内してもらい、まずは以倉さんにお話を聞く。
「もともとは吉本興業の子会社で、音楽やイベントの仕事をしていました。その後、たまたま大阪市のツアーに携わることになって、まち歩きの楽しさに目覚めたんです」
派手なイメージのエンターテイメント業界とは、共通点を見つけにくいまち歩き。以倉さんは、まち歩きの「あるがまま」感に魅了されたという。
「わざわざ何かをつくったり、演出したりしなくても、まちっていうのは見方が変わればただそれだけでおもしろい。それがすごく刺激的でした」
「一方で、大阪市という行政の事業なので、予算が付かなくなると継続できなくなるのがもったいないなと思って。民間でやるべきじゃないかと考えて始めたのが『まいまい京都』です」
さまざまなまち歩きツアーを企画・実施する事業者として、2011年に「まいまい京都」を、2018年には「まいまい東京」をスタートさせた以倉さん。
NHKの人気番組「ブラタモリ」が京都や大阪、神戸でロケをする際には全面的に企画協力し、まいまいのガイドさんたちもこれまで20名以上出演した。
まいまいのツアーの特徴は、短い距離を2〜3時間かけてじっくり楽しむこと。
ガイドさんは、庭師や、考古学者、廃線マニア、舞妓さんに地元の主婦など、ユニークなメンバーばかり。
「同じ企画でも、季節や時間帯が変わるだけで見え方が変わってくるので、リピート参加してくれる方も多いんですよ」
参加者は回によってマチマチだけど、学生から80代までさまざまで、ほとんどが1人参加。500回以上参加しているツワモノもいて、みなさん知的好奇心が高いそう。
実際にツアーを企画している、事務局スタッフの藤井さんも話に加わってくれた。
「100回参加という方はザラにいますね(笑)。みなさん、自分が元々興味がないジャンルだとしても『まいまいがやっているツアーなら面白いだろう』って、興味を持ってきてくれるので、信頼を寄せてもらっているんだなと感じます」
一人ひとりが「知りたい」「おもしろい」「好き」という軸で興味があるツアーに参加する。だからリピーターさん同士が集まっても、ベタベタしすぎない、ゆるやかな関係性が生まれているという。
「『また会いましたね』って仲よく話しているけど、お互い名前は知らないとか。すごく話が盛り上がっても現地解散なので、『じゃあまた』って」
藤井さんは、生命保険会社の営業、リクルートでの制作、プロダクションでのライターなどを経て、フリーランスに。
まいまいでは京都のツアー企画を担当している。
具体的には、どんなふうにツアーを企画しているんだろう。
「まずはとにかく出会った人。そのほか、書籍やインターネットの情報、知人の紹介などをもとに、ガイドさんを探してきます。本を読んでおもしろかったら、ダメ元でアプローチすることもあって。どんどん当たって砕けています(笑)」
ガイドさんが決まったら、次はツアーのタイトル決め。時間をかけ、助詞のひとつに至るまで、細かくこだわっているそう。
タイトル会議では、1ツアーのタイトルにつき、多くて1〜2時間かかる場合もあるのだとか。
たとえば、と見せてくれたのが、京都府宇治市にあるダムをまわるツアーの2タイトル。
「【天ヶ瀬ダム】京阪王国、宇治にかけた夢!ダム湖に沈んだ『おとぎ電車』の痕跡 ~宇治線着工前の大転換、起死回生の遊覧鉄道、運命を決した天ヶ瀬ダムまで~」
「【天ヶ瀬ダム】歩いていける絶景ダムへ!ダム湖に沈んだ『おとぎ電車』をたどって ~京阪王国・宇治にかけた夢!旧陸軍火薬庫への巨大築堤、名古屋を狙う野望の痕跡~」
なるほど。同じ場所を紹介する文言でも、上は歴史ロマンが漂うドラマチックな雰囲気。下は「歩いていける」というところで、親しみやすい感じがする。
「その通りで、上のほうはマニアックな人が来てくれたのですが、集客数は少なめ。下のタイトルに変えたら、たくさんの人に来てもらえるようになりました」
「分かりやすく、シンプルに伝えるということが大切です。大事にしているのは、ガイドさんの愛情が伝播していくこと。ああ本当に好きなんだな、楽しいんだな、っていうことが参加者さんに伝わるように意識しています」
今回募集する事務局スタッフは、業務委託で働くことになる。もちろん引き継ぎはおこなうけれど、手取り足取り教えるわけではないため、能動的に動ける人に来てもらいたいそう。
「業務委託の集まりなので、働き方は自由です。事務所スペースはあるけど基本的にテレワークがメイン。スケジュールの管理は自分でしないといけません。待ち姿勢の人だと慌てることになるかも。ネット環境と、パソコンと、コミュニケーション能力は必須だと思います」
「情報はクラウド化して共有していて、チャットワークやGoogleのグループウェアを使って作業しています。新しい仕組みやツールを使うことになると思うので、前向きに取り入れていってくれたらうれしいですね」
東京では、それに加えて新規事業の立ち上げができる人を募集中。プロジェクトリーダーを経験していた人など、スケジュール管理や提携先との調整、交渉ができる人を探している。
京都では新しい取り組みとして、2022年に「京都モダン建築祭」を開催した。
話してくれたのは以倉さん。
「『京都モダン建築祭』は、近現代に建てられた、京都のモダン建築を特別に一斉公開するというイベントです。2022年にはじめて開催して、3万人もの人にお越しいただきました」
「予想を遥かに上回る人出だったぶん、運営面では課題も出てきて。2023年11月に開催予定の第2回では、日数と建築数を増やして、受け入れ人数を分散できるよう企画中です」
京都市役所の本庁舎、平安女学院や京都大学といった学校の校舎、美術館、図書館、教会から個人住宅まで、長い歳月をかけて大切に守られてきた、美しい建築の数々。
建築好きはもちろん、SNSで評判を見かけた人や、近くにあっても入ったことがなかったという近所の人など、多くの来場があった。
今は次回開催に向けて、実行委員会や行政と連携しながら事務局として動いているところ。
「東京でも、建築の一斉公開イベントができると面白いですね。大切に受け継がれてきた多彩な建築は、まちの魅力を深く伝えてくれます」
「建築にすごく詳しい!というところまでは必要ないですが、興味があって好きになってくれる人がいいですね」
求めるスキルは高めだけれど、大きな規模のプロジェクトにも、えいや!とポジティブに向かえる人だったら、楽しく働けると思う。
日をあたらめて、東京都内で「まいまい東京」の事務局スタッフである尾島さんにも話を聞いた。
尾島さんは、日本仕事百貨でもよく紹介している生活雑貨と工芸品のお店「中川政七商店」で10年ほど働いていた方。店舗数が1から50ほどに増えていった拡大期に、生産管理や自社メディアの編集などを担当していた。
まいまいに入ってみて、どうでしたか?
「私は藤井さんの紹介で入ったんですが、最初に言われたのは『今までやってきた編集に近いと思うよ』ということでした。自社メディアでは、職人さんにインタビューして記事にして魅力を伝えていたのですが、それがツアーという形に変わっただけ、というか」
「シェアする場所が、記事か現場かということなんですよね。おもしろいガイドさんを見つけてきて、その人が見ている世界やおもしろいと思うポイントを、ツアーという場所で語ってもらう。それはすごく楽しいことだと思いました」
実際に御茶ノ水駅周辺を散歩をしながら、まちのことについて教えてくれた。
「ここは、都市史研究者のガイドさんと一緒に御茶ノ水をめぐるツアーで訪れた場所です。階段の欄干部分にデザインされているのは、すぐそばにかかっている聖橋と湯島聖堂、ニコライ堂。近くには神田明神もあって、実はこのエリア、いろいろな宗教の聖地があつまるサンクチュアリになっているんです。そうした土地のらしさが、こういうところにも現れているのが面白いですよね」
「ほかにも御茶ノ水を鉄道や、建築目線で歩くツアーもあります。普通に過ごしていたら通り過ぎてしまうような場所でも、視点が変わると見方が変わってきますよね」
ツアーの企画のほか、当日の同行もする尾島さん。
ガイドさんのなかには、ツアーで紹介するものへの愛が高まりすぎて、参加者さんにお尻を向けて、そちらばかり見て説明してしまう方もいるとか。
「ガイドさんの体の向きや、スピーカーの向きをそっと変えたりしてサポートしています(笑)」
「たとえばお庭を見にいくツアーの日に雨が降っていても、『雨に濡れている石がきれいなんですよね』とガイドさんが一声かけるだけで、参加する人の気持ちは変わる。ガイドさんと連携しながら、そのときそのときのツアーを楽しんでもらえるよう工夫を重ねています」
最後に、印象的だった尾島さんの言葉を紹介します。
「何をしていても、まいまいフィルターで見ちゃうんです(笑)。テレビで面白い人を見たら、この人ツアーやってくれないかなとか、本屋さんでもこの人いいなって。苦ではなくて、生活のなかで、息をするみたいにずっとそのフィルターが起動している感じです」
心地よく、公私混同をしながら、好奇心を持ってまちと人をおもしろがる。
ディープな愛を伝える、丁寧な仕事がそこにはあります。
(2023/5/8、5/12 取材 今井夕華)