求人 NEW

掘って知って広めて
自分の仕事をつくる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

全国各地の自治体が活用している、地域おこし協力隊。3年間、それぞれの地域で与えられたミッションに取り組む、地域活性と移住促進を目的とした制度です。

3年間は仕事と給与がある一方で、その任期後の多くは、隊員自身が自分で仕事をつくっていくことが求められているように感じます。

もちろん、行政もできる限りのサポートはしたいけれど、最終的にはその人次第。

何ができるのか考えるためには、地域の情報が必要になると思います。

人のことも、まちのことも。地域を深く理解していくことで、まちの課題や自分にできそうなことが見えてくる。結果として、それが仕事につながっていく。

島根県のほぼ真ん中に位置する川本町は、人口3千人ほどのまち。

かつて町内にある島根中央(旧川本)高校の吹奏楽部が、全国のコンクールで何度も優勝したことから、昭和60年に「音楽の町」を宣言しました。

町内には一級河川である江の川(ごうのかわ)が流れ、隣のエリアには石見銀山。古くから宿場町として発展してきた歴史もあります。

今回は、地域おこし協力隊としてまちの情報発信を強化する人を募集します。

他地域からの移住定住を促進すべく、町内向けの広報誌の制作や、町外に向けてのSNSの活用など。まだ知られていないまちの情報を広める役割です。

情報発信をしながら、自分はまちでどんなことができるか、考えていけるといいと思います。

 

4月の中旬。

出雲空港から車を走らせる。

市街地を抜けて山あいを進むこと2時間ほど。遠方に集落が見える。

道を走っていると猿の親子が目の前を横切り、山には雲がかかっている。都会では見慣れない景色と体験で、ちょっと不思議な気分。

川本町に着くと、雨が降ったり止んだりしていてちょっぴり肌寒い。

スーパーや病院、コンビニや飲食店などはまちの中心部に集まっていて、歩いてまわれるくらいの距離感だ。

古くからあるお店が多い印象だけれど、ところどころに新しいお店も。この日は夕飯を食べてホテルに戻った。

翌朝、打って変わって雲ひとつない好天。まちの高台からきれいな緑の山々が望めて気持ちいい。

ところどころに見える赤い屋根は、石州瓦(せきしゅうがわら)と呼ばれる島根県独特の瓦なんだそう。

まずは川本町役場へ。

まちのことについて教えてくれたのは、地域情報係で係長を務める山﨑さん。新しく入る人の上司となる人で、DXの推進や町内テレビ放送の仕事も担っている。

もともと松江に住んでいて、10年前、川本町役場への入庁を機に川本町へやってきた。

「スーパーもあるし、病院にドラッグストア、ホームセンターもある。最低限生活に必要な機能っていうのは集約されとるんで、全然困らなかったですね」

「あと、子どもがふたりおるんですけど、子育てに関しては都市部のまちと比べてもかなり充実していると思います」

町内には保育所が3つあって、田植えや川遊びなどの自然を活かした体験活動が盛ん。

また教育委員会では、自然のなかで親子で楽しめる時間をつくろうと、タケノコ掘りや鮭の観察会などのイベントを定期的に開催している。

制度も充実していて、保育料が無料で給食費もかからない。

「医療費も高校卒業まで無料で。手厚いんですけど、なかなか伝えきれていない。新しく入る人に外からの視点で発信してほしいというのが、一番の願いですね」

まちの情報発信としては、どんな取り組みをしてきたんですか?

「町内向けの広報誌とかチラシ、あとホームページとFacebookですね。やっぱりまちの一番の課題は人口減少なので、移住定住につながる情報を発信していきたいと思っています」

具体的に取り組んでほしいのが、毎月発行している広報誌の作成。一部は外注しつつも、そのほかすべてのページを職員がつくっている。

今年の3月号のメイントピックは、地元の高校を卒業する生徒たちの将来の夢。冊子には、生徒の顔写真とともに3年間の振り返り、今後の進路について書かれている。

「コロナ禍も落ち着いてきて、世の中も大きな転換期に入っていると思うんです。次の5月号の広報誌では、3年間を振り返って今後どう取り組んでいくか。特集でまとめたいと考えているところです」

「あと、川本町に流れる江の川は、ここ5〜6年で3回ぐらい氾濫したんです。梅雨の時期には、防災に関する特集もやってみたいなと」

昭和47年には大洪水があって、まちにも大きな被害が出た。

浸水でどこまで水が流れてきたか分かる線が建物に記されていたり、再建後にまちが建てた町営住宅が残っていたりなど、その跡がいたるところにある。

氾濫が多いと大変なように思うけれど、山﨑さんは淡々と話してくれる。

江の川では、毎年花火大会がある。山をバックにして打ち上がる花火を、川辺に座って見るのがまちの風物詩だという。

江の川は、昔からまちの人にとって切っても切れない川本町のアイデンティティのようなものなのかもしれない。

ほかにも、スポーツクラブの子どもたちや、高齢者の方が主催する英会話教室の特集など、今後広報誌で取り上げてみたい企画についても教えてくれた。

広報誌はどちらかというと町内向けの情報発信。外に向けてまちのことを発信していくには、SNSも活用していく必要がある。

「町内外の人が知りたい情報が何かをまずは整理して、どういうツールで発信していくべきか。それを考えてもらいたくて」

どんな人だと、うまく情報発信していけるでしょう。

「チャレンジ精神のある人、ですかね。役場も100人いないぐらいの規模なので、決裁も早いし、応援してくれる人も多い。思いのある人なら、やりたいことはできる環境かなと」

「最終的には協力隊の人に定住してほしいと思っているので。3年間で町の魅力を知ってもらって、自分の仕事をつくるとか。定住につながる準備もしてくれたらいいなと思っています」

広報の仕事を通してまちのことを知る、地域の人とつながる。

働く人自身にとっても、地域で暮らしていくためのいいステップになるはず。

 

移住定住の窓口をしている、地域活性化団体「かわもと暮らし」の浪崎さんにも話を聞く。

「任期後の仕事は、最終的には本人に見つけてもらう必要があって。ただ、3千人の人口規模なんで、まちとして足りない部分がすごく多いと思うんです」

「そこと自分のスキルや能力をマッチできると、仕事になるんじゃないかな」

浪崎さんも移住者のひとり。子育てを機に川本町へやってきて、現在はまちからの委託を受けて、移住定住の窓口を担っている。家探しのほか、地域おこし協力隊のサポートも担当している。

暮らしのことはもちろん、キャリアについての相談も気軽にできると思う。

「川本町役場はかなり人数を絞っているので、3つの仕事をひとりで担当する、みたいな状態なんです。情報発信をお願いしたいのも、手が回りきっていない現状があるからで」

「かわもと暮らし」の仕事も、行政の手が回りきっていないところを担っている。

「行政と関わるなかで、まちの現状が見えてくるんですよ」

「あ、ここ自分好きだなとか、行政の手が足りてないなとか。そこを自分が埋めることができるなら、委託事業として仕事が生まれるんじゃないか、みたいな。そんな発見ができるといいと思います」

地域おこし協力隊からデザイナーになった人や、機織りで生計を立てている人など。移住して自ら仕事をつくり、町内外で活躍している人はすでにいる。

彼らに話を聞いてみることで、地域の面白い人を外に発信できるし、将来の自分のキャリアについても何かヒントをもらえるかもしれない。

浪崎さん自身、東アフリカにあるマラウィで教員をしていた経験を持っている。海外での経験やキャリアチェンジの話を聞いてみるのもいいと思う。

物腰やわらかい雰囲気の浪崎さん。まちを一望できるところってありますか?と聞くと、「一緒に山を登りますか?」と誘ってくれた。

人柄もこれまでの経験も、もっと聞いてみたいな。

1年目は、地域のイベントや活動に参加して、顔見知りになるところから。

地域活動が盛んな川本町。草刈りやお祭りなどのほか、バレーや野球、フットサル、太鼓、英会話教室など。自分の趣味や興味に合わせて顔を出してみるといいかもしれない。

 

最後に話を聞いたのは、地域で新しく仕事をつくっている曽我さん。

古民家を改修してオープンした隠れ家カフェ「Irohaco」を経営しつつ、インタビューライターやフォトグラファーとして活動するなど、多方面で活躍している。

もともと川本町の地域おこし協力隊として観光協会に勤めていた。新しく入る人にとってもいろいろと参考になる話が聞けると思う。

「学生のときからまちづくりに興味があって。空き家とか商店街を活性化させて、まちを元気にするような取り組みがしたいから、地方公務員になろうと思っていたんです」

志望していた役所の面接で、「熱意は受け取ったけれど、希望する部署に何年も配属されなかった場合はどうする?」と聞かれた曽我さん。答えることができなかった。

そこで、まちとの関わり方をあらためて考え直し、祖母が住む長野へ向かう。

畑の管理や飲食店でのアルバイトなど、地域で働きながら地元の人とつながろうとしたけれど、なかなか人脈や活動に広がりが生まれなかった。

ほかの地域を探していたとき、川本町での地域おこし協力隊の募集を見つけた。

「協力隊なら役場とも関わりが多くて、町民からの信頼も厚いじゃないですか。小さなまちだからこそ、人間関係から活動の幅も広がりやすいと思ったんです」

着任が決まり、観光協会のスタッフとしてイベントの企画・運営を担当することになった曽我さん。

地域の人と話すと「まちが寂しいよね」「そこの物件空いているけど使う人がいないんだよね」など、まちの現状が見えてきた。

「ほかにも『子育て世代の居場所がない』という声や、廃線になった駅舎でたむろしている高校生から『ほかにいい場所がないんですよね』といった話も聞いて」

「地域の人が気軽に集まれる場所が必要だと思ったんです。その課題が、自分のやりたかったこととマッチしていたので、お店を開くことにしました」

今では、子育て世代のお母さんたちがお店を使ってくれているそう。

最後に、川本町に移住してよかったことを聞いてみる。

「伸び伸びと活動させてもらえるところですかね。挑戦しようとする人を応援してくれる気風はあると思います」

「応援してくださる方はたくさんいるんですけど、一緒に挑戦してくれる仲間はまだまだ少ないと感じていて。チャレンジ精神を持った人が来てくれたらうれしいですね」

 

川本町には、たくさんの資源があると思う。

歴史や自然、人々の暮らしや生き方・働き方など。切り取り方によっては、いろんな人が興味を持ってくれる種になると思う。

そこで知ったことが、結果として3年後の仕事にもつながっていく。

自分次第でいくらでも挑戦できるまちだと思います。

(2023/04/20 取材 杉本丞)

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