求人 NEW

なければつくればいい
観光のないまちで
交流をつくり出す

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「だからこそ、川本町」

これは、島根県・川本町のキャッチフレーズです。

まちは島根県のほぼ中央に位置し、まちを縦に貫くように一級河川の江の川(ごうのかわ)が流れています。古くは石見銀山の玄関口として栄えてきました。

昔は1万人ほどいた町民も年々減少して、現在は3千人ほど。だからこそ、都会にはない人と人のつながりもある。

目立った観光地があるわけでもない。だからこそ、これからできることがたくさんある。

一から生み出すことに興味がある人に、今回の仕事はぴったりだと思います。

募集するのは、地域おこし協力隊として、観光振興を推進するスタッフ。

川本町観光協会に所属して、イベントの企画・運営、SNSでの情報発信を担います。

自然、歴史、鉄道、伝統芸能、食、人。このまちで何ができそうか、一緒に想像しながら読んでみてください。

 

川本町には、出雲空港から車でおよそ2時間、広島空港からも同じくらいの時間で着く。今回は、出雲空港から向かう。

出雲市街を抜けると、そこから山あいの道が続き、川本町に着いたのは夕方ごろ。

スーパーや病院、コンビニや飲食店などはまちの中心部に集まっているので、生活に必要なものは整いそうだ。

夕飯どころを探しながらまちを散策していると、会う人会う人が挨拶してくれる。人と人のつながりを感じられて、あったかい気持ちになる。

翌日向かったのは、川本町観光協会の事務局を担う「かわもと暮らし」の拠点。

まちを案内してもらいながら、観光協会事務局次長の大久保さんに話を聞いた。

「普段は、イベントの企画・運営、SNSやホームページで観光情報を発信しています」

川本町出身の大久保さん。5年前にまちに帰ってきてから、観光協会で働いている。

率直にまちの観光の現状について聞いてみる。

「もともと観光地ではないまちとして育ってきたので。目玉になるものがないところが、一つの大きな課題ではあるんですよね」

「ですけど、それはもうどうにもならない。だから課題として捉えるのではなくて、今あるもので何か工夫して人を呼び込んでいることが、このまちの強みというか」

そういって教えてくれたのが、三江(さんこう)線跡地の再活用。

三江線は、JR西日本のローカル線。島根県の江津市と広島県の三次市を結ぶ全長約108キロの路線で、江の川沿いを走っていた。

ところが利用者数の減少と、災害へのリスクの高まりが重なって5年前に廃線になってしまう。

ファンも多くいたし、川本町の発展には、三江線が人と物を運送してきたことが大きく関わってきた。このまま何もせずに残すのではなく、廃線跡をつかってできることはないだろうか。

検討した結果、線路跡を走行できるレールバイクのイベントを開くことに。

「この前はビタ止め選手権をしました。レールバイクを走らせて、ある一定の線の上を通過するときに足を離して、決められたラインのどれだけ近くで止められるかを競うというもので。日本でここしかやってないので、盛り上がりましたよ」

そのほかにも、ホームをつかった「駅ヨガ」やコンサート、待合室でのワークショップなど。さまざまなイベントをひらいている。

「コスプレをして線路内で撮影できないか」という依頼もあったことから、これからはコスプレイベントもできるかもしれない。

新しく観光協会に入る人も、まずはイベントのサポートから仕事を覚えていきつつ、自分なりの視点でイベントを企画できるといいと思う。

一般的な観光協会の仕事というと、観光案内所での観光客の案内や事務仕事が多い。

ただそれらは、石見銀山や出雲大社といった、多くの人を呼び込める一大観光地だからこそ成り立つ仕事でもある。

川本町の場合は自分たちで資源を掘り起こして、イベントをつくり、PRして人を呼び込むところまで。一から十まで全部やらなければならない。

大変だと思うけれど、大久保さんは続けてこんなことを話してくれた。

「今まで観光の歴史はなかったからこそ、自分たちの手で新たなお客さんに来てもらう仕組みをつくっていける。そのチャレンジは、おもしろいと思います」

なければつくればいい。そんな逞しさも感じる。

イベントに利用しているレールバイクも、実は大久保さんと数名の私費で購入したもの。

三江線が廃線されるときに、記念品の手ぬぐいを制作して販売し、その売り上げが元手になっているというから驚きだ。

もうひとつおもしろいと思ったのは、川本町の年間イベントのスケジュール表があること。町内にある団体のイベントがひとつにまとめられていて、それは各団体のイベントが被らないようにするためだという。

また、観光協会がイベントを開催するときも、高校生ボランティアと一緒に実施したり、ほかの団体のイベントと共同開催したり。

取材に同席していた移住定住窓口の担当者の方も、「まちが一つになろうというスタンスはすごく感じますよ」と教えてくれた。

 

観光の歴史がないからこそ、一からつくるおもしろさがある。人口が少ないからこそ、お互いの顔が見えてみんなで協力しやすい。

そんな前向きな姿勢は、まちの大きな魅力に感じる。

「一人だけで何か起こしてやろうとか、あんまり気負わずに応募してもらえたらと思っています」

優しい表情で話してくれたのは、川本町役場産業振興課の多々良さん。

配属されて3年目、観光振興のほか、町内の事業者支援などに取り組んでいる。

川本町出身の多々良さん。高校から大学までほかのまちで生活していたけれど、就職を機に戻ってきた。

「子どものときは全然見えてなかったなって」

見えてなかった、というと?

「本当に些細なことですけど、たとえば昔は近所のおじさん、おばさんにしか見えてなかった人たちが、実はお店をひらいていて、住民の生活を維持する役割を担っている、みたいな」

「人への見え方も変わってきましたし、建物一つにしても外観でしか見てなかったけど、それが建てられた理由や背景が見えてきたといいますか。目の前にあるものだけじゃない、歴史や文化が見えてきたって感じです」

今後は、どんなことをしてみたいですか?

「江の川を活用したものは、やってみたいですね。僕らにとってはすごく身近な存在なんです、江の川って」

「梅雨時になると洪水は怖いんですけど、まちの中にこんな大きな川が流れていることは、大きな資源だと思っています」

これまでのまちの取り組みといえば、毎年おこなわれる夏祭り。

江の川から山をバックに打ち上がる花火は、夏の風物詩。すぐ近くの対岸から鑑賞するというから、かなり大迫力だと思う。

また、石見銀山のとなりにある川本町。町内には、いくつもの城跡や、神社、お寺も多い。

たとえば、安土桃山時代に建立されたお寺や、この枕で寝ると「悪夢を喰らい、吉夢を見せる」と伝えられる珍宝「獏頭の玉枕」が納められているお寺など。

石見銀山の争奪戦に大きく関与したと言われる丸山城跡は、雲海を臨むスポットとして知られている。観光協会主催の「天空の朝ご飯」は、雲海を見ながらまちのパン屋さんの食事とカフェのコーヒーが楽しめる人気のツアーだ。

歴史を観光資源に、何か企画できる可能性はまだまだありそう。

「外からの視点でこのまちを見てもらって、地元の人間が気づかないものとか、その方が持っているものをこのまちで活かしてもらう。それが今一番重要なところだと思っています」

 

観光協会で働く原さんは、まさしく自分の興味やスキルを活かして活動している方。

昨年の10月に、地域おこし協力隊として着任したばかりで、もともと東京のIT企業で働いていた。現在は、イベントのサポートをしながら、新しい企画を構想中。

「まちの人も程よい距離感というか、移住者の方もすでにたくさん住んでいらっしゃるので、孤独で不安みたいな感じはあんまりなかったですね」

「わたし自身が海外に住んでたこともあって、英語とフィンランド語を少し話せるんです。川本町にある江川太鼓っていうチームが、20年以上デンマークのチームと交流をしていて。その方たちが来日するときに通訳として、お手伝いもさせてもらっています」

原さんは、どんな人に来てほしいですか?

「何か好きなことがある人だといいと思います。鉄道でもアウトドアでも歴史でも。川本には、まだコンテンツとして造成されてないものがほとんどなので、想いを持った人のほうが、何か形にできると思うんです」

「好きなものがあって、それが川本にあるものとマッチするような人が来るといろいろ進んでいくこともあるんじゃないかな」

そう話す原さん自身、好きを仕事にしようとしているところ。

お酒好きを活かして、世界で8600人しかいない国際唎(きき)酒師の資格を取得した。

これは海外企業や訪日外国人に対して、直接日本酒を提供しつつ、セールスプロモーションの企画・実施まですることができる資格。

「川本町に酒蔵はないんですけど、どぶろくや甘酒をつくっていらっしゃる事業者さんがいるので、そこを中心にイベントを企画できたらいいなって思ってます」

ちなみに資格取得のための資金は、協力隊の活動費から出ているとのこと。

一般的に協力隊の活動費は、移動や作業道具、消耗品などに適用されることがほとんどだけど、川本町では隊員の3年後のキャリアのことも考えて、柔軟に対応している。

 

最後に、産業振興課の多々良さんが話していたことを紹介します。

「町長がよく言うのは、どんな仕事に対しても、原点に立ち返るところが大切だという話をしていて。どうしてその制度や事業ができあがったのか。『歴史的背景も知って納得したうえで、業務に取り組んでほしい』と」

「観光資源がない、じゃなくて、まだ掘り起こしていないだけ。実はスポットが当たっていないだけで、外から人を呼び込める資源はたくさんある。そんな風に常に考えて行動しなさいという、戒めだと思います」

川本町には、磨けば光るものはたくさんあるように感じました。

何より、そのことを大切に自分たちの強みにしようとする前向きな姿勢は、新しく入る人にとって、心強い環境になるんだろうな。

(2023/04/20 取材 杉本丞)

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