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「ここは何なんですか? ってよく聞かれます。不思議な場所なので、いつも一言では言えなくて」
1階はギャラリー。デザイナーやアーティストの展示が月替わりで行われる。
2階、3階に上がると、さまざまな種類の家具が展示されたショースペース。でも、そこに座って仕事をしている人たちもいる。
「どうぞゆっくりしていってください」
そう声をかけられて、近くにあったソファに座ってみる。周囲の家具を見ていると、さっきのスタッフさんがやってきて、デザインのことやものづくりの背景など、いろんなことを教えてくれる。
簡単には言い表せない。でも、居心地がいい。
そんな場所が、Karimoku Commonsです。
愛知県を拠点に、長年木製家具をつくり販売してきた「カリモク家具」。
家具との新たな出会いを生む、実験の場として運営しているのが、Karimoku Commons。2021年に東京、2023年には京都にもオープンしました。
それぞれの拠点で、接客やギャラリーの企画運営、Webサイトの運営などに総合的に関わるスタッフを募集します。
試行錯誤しながら進めていくことが多い環境なので、それぞれの特技や適性によって、任される仕事も柔軟に変わっていきます。
「なんだかおもしろそう」と感じたら、ぜひ読み進めてみてください。
表参道駅から、六本木方面へ通りをまっすぐ進んで10分ほど。
駅前の雰囲気とは打って変わった、落ち着いた住宅街にある3階建てのビル。ここが、Karimoku Commons Tokyo。
1階のギャラリーは、ちょうど展示の入れ替えのタイミング。階段を上がると、カリモク家具のコレクションが展示されたショースペースが広がる。
何人かのスタッフさんが、空間のところどころでパソコン作業をしている。これが日常の風景なんだろうな。
出迎えてくれたのは、中内さん。新しく入る人の直属の上司となる方。
お会いするのは、オープンしたばかりの2年前の取材以来。中内さんは、この間もずっと中心メンバーとしてKarimoku Commonsに携わってきた。
「2年前はこの場が何なのか本当に手探りで、どうすればいいのか悩みながら仕事を進めていました。仕事に答えがない、というのは同じなんですけど、今はあえて正解を決め切らずに、新しい可能性を追求し続ける場、という立ち位置がはっきりしてきたように思います」
「そんななかでも、『オフィスでもショースペースでもあり、ここに訪れる方々と何かを共有する場にしたい』という、もともとのコンセプトは変わらずにやってきています」
お客さんと接し、コミュニケーションをとりながら、スタッフは仕事をする。
そこから新たなアイデアが生まれればと、ハイブリッドな場の設計になっている。
「展示しているコレクションは4種類。カリモク家具がこれからずっと家具づくりをしていくために大切なコンセプトを持った、でもきちっと言葉にしないと伝わらない、そんなコレクションを並べています」
たとえば、今座っているのは「MAS」。
戦後に大量に植樹されたものの、輸入材や住環境の変化により、なかなか利活用が進んでいない国産針葉樹。柔らかく軽いため扱いはむずかしいものの、カリモク家具の技術力とデザイナーとのコラボレーションにより、魅力的な家具に仕上がっている。
同じフロアにある「Karimoku New Standard」は、幅が狭く利用されにくい、小径木を材料に用いたもの。
複数の木材を独自の技術で組み合わせることで、意匠的にも強度的にも優れたものを生み出している。
「営業スタッフが、ミーティングにここを使うことも増えてきています。コモンズの存在意義として一番大きいのは、実際に暮らしや仕事のなかで家具が使われるイメージを、お客さんに空間として見ていただけることです」
「今も、椅子に座っていますよね。しばらく話していても座り直さなかったり、座り心地に意識が向かないなら、身体に負担がかかっていないってことだと思うんです」
中内さんにそう言われて、ハッとする。たしかに、何の違和感もなく座り続けているかもしれない。
こんなふうに身をもって、カリモク家具の心地よさを体験できるのが、Karimoku Commonsの強み。
「この2年の大きな変化として、とにかくメンバーが増えました。もともと東京の常駐が1人だったところから、東京に6人、京都に2人が常駐する体制にしたことで、接客品質や運営が安定するようになりました」
「そこに僕や愛知の本社のスタッフが週代わりで加わって。情報を共有しながら運営しています」
今回入社する人と一緒に働くことになる、前回の日本仕事百貨の記事をきっかけに入社したおふたりにも話を聞く。
東京で働いているのが、金子さん。Karimoku Commons Tokyoでの接客・運営、PRを主に担当している。
「入社してちょうど1年です。節目のこのタイミングで自分が話す側になっているのがすごく不思議で、少し緊張しています」
前職は空港のグランドスタッフ。5年ほど働いたものの、コロナ禍をきっかけに転職を考えはじめた。
「誰かを元気にしたり、幸せにできるような人になりたいっていう想いがあって。でも空港では、お客さんがいないとそれが実現できないんだと、コロナ禍で目の当たりにして。もっと日常に近いところで働きたいと思いました」
「どんなライフスタイルでも、根っこにあるのが“暮らし”です。そこがちょっと楽しくなって、幸せを感じられるようなお手伝いがしたい。そんな軸で仕事を探しているときに、偶然見つけたのがここの求人でした」
転職活動をするなかで、グランドスタッフという専門性の高さが、ネックになることもあった。
異業種で、自分の経験をどう活かしていくのか、自分自身でも明確に見つけられていなかったという。
「でも、コモンズの最終面接で『お客さんのために心をつかってきた前職の経験を、この場所で活かしてほしい』って副社長が言ってくださって。そんなふうに言ってくれた会社は初めてで、すごくうれしかったんです」
自分も役に立てるかもしれない。この会社の商品なら自信を持って勧められる、と感じたそう。
スタッフの主な仕事のひとつが、接客。本社での研修後、OJTで実際にお客さんと関わりながら、心地よい距離感の接客を身につけていく。
「ここに来るのは、ギャラリーの展示が目的の方だったり、家具を検討していて現物を見に来た方だったり。目的がいろいろなので、どうして今日ここに来てくれたのか聞きながら、それぞれの方のペースに合わせてコミュニケーションをとっています。『よかったら座って休憩してください』って、一言かけるだけのときもありますよ」
印象に残っているのが、入社間もないころに接客した大学生2人組。ギャラリーの展示を見たあとにショースぺースにも来てくれて、金子さんが案内をした。
就職活動を控えていること、地方から来たので東京の風景が新鮮なこと。屋上のベンチに腰掛けていろいろな話をしていると、金子さんのキャリアにも興味を持ってくれた。
「さらっと見ていくだけの方は、もちろんそれでいいと思うんです。けれど、家具のことをもっと知りたい、スタッフとも関わりたいと思ってくれているお客さまには、そういう接客をしたいと思っています」
「コモンズのメンバーって全然違うバックグラウンドを持っていて、個性豊かなんですよ。役割は違っても、目指すべきところは同じで、チームとしてみんなが手を取り合っていける関係だと感じています」
目指すところは同じ。金子さんが思う、Karimoku Commonsが目指す先って、どんなところですか?
そう投げかけると、一つひとつ言葉を選びながら、金子さんは答えてくれた。
「木を使って暮らしを豊かにするのが、カリモク家具の一番大きな目標です。そのためには、使いたくなる家具をつくることはもちろん、森林があるべき循環を取り戻すことだったり、いろんなことが必要で」
「一言で言うと難しいんですけど、その目標のためにいろんな挑戦をしていく場所、その手段を模索して共有する場所がコモンズだと思っています」
金子さんと同時期に入社したのが、朝岡さん。この日はオンラインで参加してくれた。
もともと東京勤務で、Karimoku Commons Kyotoのオープンを機に京都に移住し、常駐スタッフとして働いている。
新卒で入ったWebマーケティングの会社を経て入社。経験を活かして、InstagramやWebサイトの運営、データ分析なども担当している。
「ものづくりや生活文化に関わる仕事をしてみたい、という想いは学生のころからありました。社会全体を考えて、いい循環を生み出すことがすごく大事だと思っているので、国産材を活用しながら持続可能なものづくりをしている、カリモク家具の姿勢がいいなと思ったんです」
今年2月から運営している、Karimoku Commons Kyoto。東京が軌道に乗ってきたなかで、ほかのエリアのお客さんやスタッフにも活用してもらえる場をつくろうと、オープンした。
京都の町屋の跡地に建てられた、5階建ての建物の1~3階。
間口が狭く奥行きが長い、京都らしい土地に建っているKarimoku Commons Kyotoは、家具のある暮らしをよりリアルに想像しやすい空間となっている。
「烏丸御池駅の近くにあるので、観光のついでにふらっと寄られるお客さまが多いです。外国の方も多いですね。カフェかと思って入ったけれど、おもしろそうなスペースだからよく見てみようという方もいます」
ここで家具を選んで購入する、という雰囲気とは違いますよね。
「そうですね。なんだか種を蒔いているような気分になります。今は購入しなくても、触ったり話を聞いてくださったり。その方がいつかこの場でのことを思い出して、カリモク家具を選んでみようかなって思ってもらえたら、何よりうれしいです」
イベントの企画やギャラリー運営も、重要な仕事のひとつ。
Karimoku Commons Kyotoでは、カリモク家具が京提灯の老舗とペンダントランプを共同開発したことをきっかけに、提灯製作の実演と体験ワークショップを開催した。
「私たちでは語りきれない提灯のことや、日々工房でどんなふうにつくられているかを知ってもらって、新商品に興味を持ってもらうきっかけにしたいと思いました。イベントやギャラリーの仕事は毎回手探りで進めていくことが多くて、大変ではありますね」
「私は企画から携わったんですけど、『京都っぽいからやっている』にならないように、すごく気をつけていて。どうしてカリモク家具がやっているのか、その意味をしっかり持った企画にしたいと思っています」
朝岡さんは、どんな人と一緒に働きたいですか?
「ここで働く人はみんな、正解がないこと、変わっていくことを肯定している感じがします。そこに共感してくださる人、同じような考え方をしてくれる柔軟な方と働くことができたらうれしいです」
「コモンズってそういうものだよねという以上に、世界ってそういうものだよね、くらいの捉え方で。コモンズの本質を一緒に探していけたらいいですね」
一言では表せない、そう言いながらも、新しく入ったおふたりが自分自身の言葉を尽くして、この場への想いを話してくれたことが印象的でした。
Karimoku Commonsはどんな場所なのか。集ってくる人たちによって、少しずつ定義されつつあるようにも感じます。
それを日々考え、互いに言葉を交わし合うことを楽しめる人なら、きっと心地よく働いていけると思います。
(2023/8/8取材 増田早紀)