求人 NEW

人、文化、自然、歴史
まちに繰り出す
顔の見えるテレビ局

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「カッパを探しています」

遠野駅前の掲示板には、当たり前にそんなポスターが貼ってある。

まちを歩いて見つけた「おもしろい」や「これなんだろう?」を、外の視点から発信していく。今回、地域おこし協力隊として入る人に、ぜひ任せたい仕事です。

舞台は、岩手県遠野市。全世帯の85%が加入するケーブルテレビ「遠野テレビ」で働く地域おこし協力隊を募集します。

経験は問いません。テレビとYouTubeでのコンテンツ制作に、企画から原稿作成、撮影、編集までトータルに挑戦できる環境です。

趣味で動画配信に取り組んできた人や、地域活性化に情報発信の面から関わってみたい人。

経験はない、けれど挑戦してみたい。映像の分野にそんな想いを抱いたことがある人に、ぜひ知ってほしい仕事です。

あわせて、観光分野でグリーンツーリズムに関わる協力隊も募集します。

 

東京から約3時間。東北新幹線やまびこを新花巻駅で降りる。

そこから1〜2時間に一本ほどのローカル線・釜石線に乗り換えて遠野へ。

気持ちがいい夏の日。車窓からは田んぼと周囲の山の鮮やかな緑が見える。45分ほど列車に揺られ、遠野駅へ降り立った。

内陸部にある遠野は、四方を山に囲まれた盆地。

カッパが棲むといわれる観光名所のカッパ淵や、日本屈指の生産量を誇るホップからつくられるビール。そして遠野地域の逸話や伝承をまとめた説話集『遠野物語』など、さまざまな資源に恵まれている。

かつて遠野は、城下町として多くの商家が並び、栄えていた。駅から歩いて10分ほどの、当時実際に使われていた蔵を活用したエリアには、博物館や資料館などの観光拠点が集まっている。

今回入る協力隊の拠点のひとつである、遠野テレビの「町なかサテライトスタジオ」があるのもこの近く。

遠野テレビの本社は別の場所にあるものの、より市民に近い場所で発信を行なっていこうと今年5月に運営をはじめたばかり。シェアオフィスやイベントスペースの機能もあり、地域の企業2社と合同で使用している。

今回入る人の上司となるのが、報道制作グループの菊池さん。気さくにいろいろなことを教えてくれる、「頼れるお兄さん」という雰囲気の方。

「ここに行けばデジタル関連のことがわかる、自分もなにか発信できる、と地域の人に思ってもらえる場所にしたいと考えていて。地域の方にイベントなどで使ってもらって、それをニュースでも発信しています」

今年からはじめたYouTubeのコンテンツ制作もここで行なっているそう。

22年前に設立された遠野テレビが、今年さまざまな変化を迎えているのには理由がある。

「遠野テレビは第三セクターとして設立されて、行政と近い立場で長年運営してきたんです。それが今年度から指定管理制度に移行して。より自由に、さまざまなコンテンツをつくることができるようになりました」

市内全世帯の8割以上が契約している、遠野テレビ。

毎日放送される地域のニュースは人気で、「高校サッカー部が県大会進出」「〇〇さんの家でめずらしい野菜を収穫」など、地域密着のコンテンツも豊富。

「以前は公平性を保つために、まちのどこかひとつのお店を紹介することはむずかしかった。今はそれができるようになったぶん、より深いところまで取材して、視聴者が知りたい情報を伝える力が求められています」

「自分たちの力で稼いでいく、という側面も強まっていて。今後を考えたとき、ケーブルテレビだけだと限界がある。テレビの放送業務以外のところにどう力を入れていくか考えるなかで、地域DXの推進を担っていく、という動きが生まれています」

サテライトスタジオの運営やYouTubeの配信も、その取り組みの一環。

ほかにも、遠野テレビ経由でインターネットを契約してくれた家にはWi-Fiルーターを設置して遠隔見守りサービスを提供したり、子ども向けにeスポーツの体験イベントを開いたり。地域の企業に対しては、PR映像制作の仕事も受けていきたいと考えている。

テレビという枠にとらわれない、広く地域に関わる事業領域へと変化が生まれている最中。

協力隊として入る人は、サテライトスタジオでのYouTubeコンテンツ制作と、本社でのテレビ番組制作、両方に携わっていく。変化の渦中にある遠野テレビを、新鮮な視点から盛り上げていってほしい。

「今までケーブルテレビは、遠野市内という限られたエリアでの放送でした。これからは、外へ発信していく要素がどんどん強くなっていく。遠野の魅力を伝えるとき、我々地元の人間の考え方だけでは及ばない部分が出てくる。今あるものにとらわれず、新しい発想で発信してもらいたいと思っています」

アイデアはまず、所属する報道制作グループの企画会議へ。

企画から撮影、編集、発信までのすべてはこのグループで担っている。もちろん、いずれかの経験があればすぐに活躍できる。

撮影現場は2、3人でまわすことが多いものの、なかにはすべて一人でまわす現場もあるそう。

最初は機材の扱いに苦労するかもしれないけれど、趣味で動画制作の経験がある人や、SNSでの発信が得意な人も大歓迎。

地域に根づいたメディアの今後をともに考えていけるチャンスは、そうそうないと思う。

「仕事を通じて地域の人と交流できるのは、移住者にはやっぱり大きいと思っていて」

取材をしていたら、仕事にも暮らしにもつながりそうですね。

「自分も実はそうなんです。市内出身とはいえ高校から別の地域に行って戻ってきたので、あまりコミュニティを知らないままこの仕事に就いて。家から離れた地域は、本当に知らないところって感じでした」

「そこから交流を深めていくのは、たぶん自分個人だとむずかしかった。だから、取材のかたちで最初の関係づくりができたのは大きかったですね。友だち100人つくろうってはじめて、今はそれ以上に増えましたよ(笑)」

自分がまちで見つけたおもしろいと思うものを、コンテンツとして発信できる。テレビをきっかけに出会った人と、プライベートで親しくなることもある。

「遠野テレビの人」であることは、働くうえでも暮らすうえでも強みになりそうだ。

 

「小さなことでもいいので、遠野のここが好き、というところを見つけて伝えてくれたらうれしいですね」

そう話すのは、遠野市役所の佐々木さん。駅から歩いて5分ほどの場所にある、遠野市役所で話を聞いた。

これまでに35名を受け入れ、そのうち6割が定住しているという、遠野市の地域おこし協力隊。

現在は、それぞれの協力隊が市内の企業や団体に所属して活動する形をとっている。

「会社に所属する3年間は訓練期間のようなものと考えています。そのなかで、企業とうまくマッチングしたらそのまま就職してもいい。起業を目指す人なら、企業で活動しながら、地域にあった事業のかたちを探りながら準備することができます」

任期の3年が終わった後、どのように地域で働き、暮らしていくか。就職という選択肢があることで、安心して応募できる人もいるかもしれない。

仕事面以外にも、会社に所属するメリットが、地域とのつながり。

「その地域の人を知らない、どこに行ったらいいかわからないという状態から、企業が間に入ることで、接点となって地域と結びつけてくれる。人間関係を広げていきやすいのも、地域に根付いた会社でまず働く魅力だと思います」

 

アドバイザーとして、協力隊の活動をサポートしている河原木(かわらぎ)さんにも話を聞いた。まちづくりのコンサルタントとして、さまざまな行政と仕事をしている方。

「3年後に起業するのか就職するのかは、その方の選択次第。そこに向けて、副業も含めていろんな構想を立てながら自分を磨いていくことになります」

「たとえ起業しなくても、自分の事業計画のようなものを、目的意識を持って立てられるようになってほしい。その流れに寄り添うのが私の役目かなと思っています」

Uターン移住の先輩でもある河原木さん。

遠野の人たちって、どんな雰囲気なんでしょう。

「外から入ってきた人を拒否したりすることはなくて、なんとなく関心を持ってくれる人が多い。かつての遠野は、沿岸部から盛岡に行くときに必ず通る流通の拠点だったので、閉鎖的な雰囲気がないんです」

江戸時代は山の上にお城があり、城下町だった遠野。「馬千匹、ひと千人」と言われるほど、多くの人が行き交った。

移住者が過ごしやすい雰囲気は今も変わらない。

若い店主が営む雑貨屋さんや移住者が開業したブルワリー、安藤忠雄設計の図書館「子ども本の森 遠野」など、ここ数年で魅力的なお店や場が次々に生まれている。

何か新しいことに挑戦するには、適した環境かもしれない。

「一点だけネガティブなことを言わせてもらえば、冬が寒い。雪は少ないですけど、マイナス10℃、20℃になります。暖房をつければ全然大丈夫ですけど、厳しいですよ。でもそのぶん春が待ち遠しいと思える。そんな感覚も、東京にいたら味わえないものですから」

 

今まさに、新鮮な目で地域に触れているのが、協力隊として今年4月から活動している、角田(かくた)さん。

角田さんの勤務場所は、市役所から歩いて数分の場所にある「遠野旅の産地直売所」。農村や市内の商店街を巡る観光ツアーの予約受付や、発着場所になっている。

グリーン・ツーリズム担当として入る人は、角田さんと一緒に働くことになる。

出身は岩手県の雫石町。SNS広告で遠野市の協力隊募集を知り、Jターンで遠野にやってきた。

「もともと好きだった旅行や観光を仕事にできたらという想いが長年ありました。岩手出身で祖父母も農家だったので、農家さんや地元の人たちが元気になるような活動のサポートがしたいと思って」

「もともとはずっと東京で事務の仕事をしていて。長年同じ仕事を続けていると、そこから異業種に転職って、なかなかむずかしい。でも地域おこし協力隊としてなら、未経験でもそのチャンスが得られるので、思い切って応募してよかったです」

今は、学生やインバウンド向けのツアーのコーディネートを中心に担当。スケジュールを組んだり、宿を手配したり、ガイドとして同行することもある。

「こっちに来てから、遠野がグリーン・ツーリズムで有名なところだと知りました。もともと遠野には全然縁がなくて。来てみて初めて、風景がすごくきれいだな、みなさん親しみやすい人柄で溶け込みやすそうだなって思いました」

「ここにいると季節のにおいをすごく感じて。春だったら桜、今なら夏の花が咲いているとか、小川がきれいとか、ちょっとしたことでも感動がある。あとはビールやジンギスカンがおいしいとか、小さいことの積み重ねで、遠野っていいところなんだなって感じています」

 

歴史や自然の積み重ねのうえに、新たな営みや文化が生まれ続けている遠野。

新鮮な目線で、このまちをぜひ歩いてみてください。

誰かに伝えたくなるようなおもしろいスポットが、きっと見つかると思います。

(2023/7/28取材 増田早紀)

この企業の再募集通知を受ける

おすすめの記事