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点と点をどうつなぐ?
“ぶらり” を楽しむまちづくり

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「観光」のあり方は、少しずつ多様化しているように思います。

ツアーガイドに案内してもらって名所を巡るだけでなく、実際にまちを歩いてみる。定番の人気店もいいけれど、地元の人が普段から通う店を教えてもらう。さらに、そのお店に行くと隣に座った常連さんが、お酒をごちそうしてくれる。

旅先での出会いや体験を通じて地域を味わうスタイルは「着地型観光」と呼ばれ、ここ数年の間にますます注目を集めてきました。

福島県・会津美里町。

会津若松市から西に位置するこのまちは、2005年に旧会津高田町、会津本郷町、新鶴(にいつる)村が合併して誕生しました。

舞台となるのは、新鶴地域。

ブドウ畑が広がる道を登っていくと高台に温泉とワイナリーが。振り返れば、会津盆地の先に磐梯山(ばんだいさん)が見える。

この地域にある資源を活かして、まち歩きを楽しめる場所にしたい。その想いから、観光まちづくりに力を入れはじめています。

その担い手となる地域おこし協力隊を募集します。

まずは地域に住む人たちとの関係性づくりから。3年かけて新鶴の魅力を発掘し、SNSで情報を発信したり、イベントを開催したりして伝えていきます。

旅先で土地の歴史や人を知ることが好き。まちの商店や居酒屋で地元の人とつい仲良くなってしまう。そんな人に似合う仕事だと思います。

 

東京駅から郡山駅まで新幹線で1時間ちょっと。そこからワンマン鉄道に乗り換える。

車内にはリュックを背負って登山靴を履いた高齢の方が多い。プシュッとビールを開ける音もする。秋の行楽へ向かうのだろうか。

1時間ほどで乗り換え、さらに10分ほど電車に揺られると会津高田駅に着いた。

はじめに向かったのは、会津美里町役場。

「こんにちは。遠いところからありがとうございます」

穏やかな東北のなまりを感じる。あいさつをしてくれたのは、町役場の黒須さん。今回の協力隊の担当でもある。

2階へ案内してもらい、さっそく新鶴地域について話を聞く。

「新鶴地域は、ブドウ畑が一面に広がるヨーロッパのような美しい景観の中に温泉やワイナリーなどの観光資源が集結していて、旅行者にとってリラックスできる最高の場所だと思うんです」

会津美里町の中でも標高が高く、広い土地を抱える新鶴地域では、古くから「おたねにんじん」が育てられてきたという。ただ、「おたねにんじん」は一度つくると土地が痩せ、同じ場所でつくり続けることができない。

そこで、水はけもいいことから、同じ条件でつくり続けられるブドウが育てられるようになり、県内でも有数のワイン用ブドウの産地となった。

「観光地としてのポテンシャルは、高いと思いますが、地域の知名度はまだまだで…」

「新鶴地域にある観光資源を最大限に活かして、たくさんの人が足を運びたくなるような場所にしていきたいんです」

その想いから、地域おこし協力隊の制度を2016年から取り入れることに。

「協力隊の一期生として来てくださった橋本竜太郎さんは、協力隊の任期中に、新鶴ワイナリーの立ち上げに携わっていただいて。そのあとは、未経験からブドウ農家として就農したんです」

現在、自社栽培したブドウを100%使用したワインの販売も行っている。将来的には、ブドウを自社で醸造するためのマイクロワイナリーを建てて、ワインやブドウと地域の食材を活かした料理を提供する場所もつくっていきたいそう。

「熱意を感じますよね。橋本さんも地域おこし協力隊の着任当初は、いろいろと苦労をされたみたいで。それでも、消防活動や村行事、農作業の手伝いなどを通して、地域の方々と関係性を築いたことで、少しずつ農地を貸してくれる方が増えて、今の仕事に繋がっているそうです」

「今回来てくださる地域おこし協力隊の方にも、地域の方々との関係性を大切にして、活動に取り組んでいただきたいと思っています」

温泉やワイナリーなど、今ある施設の魅力も引き出しつつ、この土地に住む人たちの営みにも目を向ける。

そうすることでまちに眠る可能性も見つかっていくはず。

具体的にどんなことをしていくのか、ここで黒須さんが3年間のロードマップ表を見せてくれた。

「最初は、まちを歩いて地域の方にあいさつしたり、お話を伺ったり。とにかくまちを知ってほしくて」

「暮らしに慣れてきたら、『新鶴』を多くの人に知ってもらうために、広報媒体の作成やイベントの企画などをしていただきたいと思います」

まち歩きをすると、普段暮らしている人が気づかない魅力に気づくこともあると思う。

それをWEB上で記事にしたり、SNSを通して町内外へ情報発信をしたり。

情報発信と同時に、「町外」からの移住者である地域おこし協力隊の独自の視点で、まちに足を運びたいと感じてもらえるようなイベントの企画や運営にも携わることになる。

「ロードマップは目安なので、途中で変更があってもいいんです。いいアイデアがあれば、活動に加えてよくて。地域おこし協力隊として着任してくださる方にとって、全く知らない土地で新しいことをはじめるのは、とても不安だと思います。わたしも全力でサポートするので、一緒に進めていけたらうれしいです」

「先ほどご紹介した橋本さんもその一人ですが、新鶴には地域を盛り上げるために尽力されているキーパーソンがたくさんいます。その方たちの話を聞きにいくのもおもしろいと思いますよ」

黒須さんが話してくれた新鶴にいるキーパーソン。一体どんな人なんだろう。

 

役場から車で北に進むことおよそ10分。丘陵地を進んでいくと、田んぼからブドウ畑にだんだんと景色が変わっていく。

はじめに見えたのは「新鶴温泉 んだ」。そこから歩いて3分ほどのところにあるのが「新鶴ワイナリー」。周りには、1.7ヘクタールのブドウ畑が広がっている。

太陽に照らされてそよそよと揺れるブドウの葉。その目の前にある存在感のあるワイナリーは2019年に建てられた。隣に併設されているレストランは、コロナ禍の影響によって現在は休業中だそう。

中に案内してもらい、新鶴のキーパーソンの一人である小林さんに話を聞く。

「新鶴ワイナリー」の運営を手がけている方。ワイナリーができる数年前から、ワイン用のブドウ栽培と委託醸造をしていたそう。

ワイナリーを立ち上げるきっかけは何だったんでしょう。

「新鶴地域は、地元農家さんの高齢化によって、ブドウ畑の担い手が不足していて。耕作放棄地も増えているのが現状なんです」

「ブドウ畑のきれいな景観を残し続けるには、ただ畑を維持するだけではなく、ちゃんと地域の経済も回るような仕組みをつくっていく必要があります」

そこで思いついたのがワイナリーだった。

ワイナリーができたことで、採れたてのブドウをその場で醸造、加工、販売まで可能に。レストランも併設することで地域で収穫された作物も提供できるようになった。

「新鶴で採れるブドウは上質です。50年前くらいからシャトー・メルシャンの委託でシャルドネという品種をつくっていたんです」

メルシャンとは、日本ワインの原点となるブランドのこと。そのほかにも、このワイナリーでは15種類の品種を育てていて、オリジナルのワインも味わうことができる。

「コロナ禍も落ち着いてきたので、イベントも徐々に再開しています。10月の下旬には、ワイナリーマルシェをやるんですよ」

新鶴地域の豆農家さんが企画し、コロナ禍以前からつながりのあったパン屋さんや雑貨屋さん、マッサージ師の方など、町内外問わず10店舗ほどが出店するとのこと。

今年の12月には「新鶴温泉 んだ」ともはじめて共同でイベントを開催するのだとか。

地域の人たちも協力して、まちの活性化に取り組む動きが高まってきている。

「新鶴は景色もいいし、近くには文化財もある。いろんな資源が点在している場所なんですよね。地元の人たちはそれを知っているんだけど、外に知ってもらう機会があんまりなくて」

「もっと活かしていきたいんですけど…。今回地域おこし協力隊として来てくれる人とも二人三脚で一緒に考えられたらうれしい。自分自身、ワイナリーのほかにもまだまだやりたいことがたくさんあるんです」

照れ笑いしながら小林さん。これから挑戦してみたいことを聞いてみた。

「ワインに合うチーズづくりとか。近くに牧場もあるし… 味噌をつくっている農家さんもいるな。発酵ツーリズムとかをやってみてもおもしろそうですね」

だんだんとほぐれていく表情に何だかほっとする。

小林さんのほかにも、移住してきた地域おこし協力隊の先輩や近隣の農家さん、この地域に住む人たちの想いを聞いていくことで、いろいろなアイデアが出てきそうだ。

たとえば、いまは小林さんのようにイベントなどを企画している人が少ない。まちには大きなグラウンド場もあるので、合宿地として打ち出して、練習後は温泉に浸かって、お風呂あがりにワインが飲めるなど、いろんな施設や人を巻き込んだ企画ができるとおもしろそう。

情報発信も、たとえばいろいろな農家さんをたずねて、作物の育て方やおいしい調理の仕方をまとめて発信するだけでも、情報としての価値は高そうだ。

ここに住む一人ひとりがキーパーソンなのかもしれない。

 

広い土地、想いを持つ人、その手でつくられる作物や施設。

点と点をつなげ、線にするとどんな未来が描けるのだろう。

点を発見していくおもしろさも、線にするむずかしさも。両方味わいながらチャレンジできる場所だと思います。

(2023/10/24 取材 大津恵理子)

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