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最寄り駅の改札口を出て、「マイ・ホームタウン」に着いたときの印象って大切だと思います。
バスに並ぶ人の列、雑多な自転車、路上にはごみもちらほら…。
駅前の印象がよくなったら、もっと人が憩い、まちがにぎわい、ファミリーも増えるんじゃないか。
多くの人が利用する場所だからこそ、さまざまな要望や思惑、技術面や予算の制約などが複雑に絡み合います。
長年、問題を抱えてきた駅前のリノベーションは一筋縄ではいきません。
市民、企業、行政。どの立場の人にとっても自分ごとだからこそ、「まちづくり」はむずかしい。
そんな現場へ飛び込み、まちで暮らす人、それぞれの立場を踏まえながら解決策を導き出していくのが、まちづくりコンサルタントという仕事です。
街角企画は、大阪を拠点に活動している組織。ここでまちづくりコンサルタントとして働く人を募集します。
中途採用希望者や2026年3月期新卒者向けの定期採用です。
まちづくりや地域活動に関わった経験がある方、大学や大学院等で学んだ方で、現場にどっぷりと関わりたい。そんな人であれば、未経験でも活躍できる職場だと思います。
街角企画の事務所があるのは、天神祭で有名な大阪天満宮の近くの川沿い。
ビルの4階のドアを開けると、お久しぶりですね、と代表の山本さんが迎えてくれた。
「おかげさまで、以前の記事を見て入社したスタッフは元気に活躍してますよ」
街角企画は、山本さんが2004年に立ち上げた会社。
きっかけは阪神淡路大震災。復興支援に携わるなかで、大きな問題が生じても“愛されつづけるまちづくり”が大切と強く感じた。
立ち上げ当初から一貫しているのは、市民と一緒に計画を立てていくスタンス。そこがこだわりであり、街角企画という名前の由来でもある。
「街角で考え、街角からはじめよう」を合言葉に、市民目線でまちのありたい姿を思い描き、ともに形にするプロセスを大切にしてきた。
「僕らの仕事は、まちづくりの技術を使って、社会課題を解決すること」
「人口減、出生率の低下、そして能登半島地震といった自然災害…。社会情勢に左右されるので、時々の市民の関心事が仕事に直結しています」
たとえば、と話してくれたのが、「リノベーション・神戸」という駅前の魅力アッププロジェクト。
神戸市は人口減の課題を抱えていて、もっとファミリー層に支持されるまちにしたいという想いがあった。
「関わっているのは、JR六甲道と下町の地下鉄長田です」
「六甲道では、駅前の駐輪場を移設して、スッキリさせ、スマートで憩える広場に様変わりさせようと、プロジェクトが進みつつあります」
話しながら見せてくれたのは、基本計画のパンフレット。
神戸大学の学生とともに市民参加のワークショップを経て作成したものだそう。
計画をつくるだけでなく、市民とのワークショップの企画、運営は、街角企画の大事な役割。
市民には自由に発言をしてもらいたい一方で、空間やコストなどさまざまな制約があるなか、図面の理解などの専門的な判断はむずかしい。
そこをうまく平易なことばで説明し、市民の率直な意見や思いを引き出し、計画に反映するのがまちづくりコンサルタントの腕の見せどころだ。
「事業や設計を担う、行政や専門家はどうしても専門用語を使いがちなので、市民にはわかりにくく、市民とまちづくりとの壁となりがちで、そこをうまく通訳することで、安心して発言してもらう。そして発言してもらったことを技術的に解釈して、提案につなげる」
「ほかのプロジェクトでは、すごく限られた狭い駅前空間に最適なものを、ぴったり整備するにはなにがいいか、社会実験を行いました。どこにでもあう共通解はなく、そのまちにあった答えを探るところが、まちづくりの醍醐味です」
試してみることで、図面だけではわからないことを実感してみる。
「計画を一緒に仕上げていくなかで、市民のライフスタイルそのものも一緒につくっていくイメージですね。行政と市民の間に入って、市民の暮らしのニーズを的確に伝える。それが面白いところなんじゃないかなと思います」
山本さんは力強く話してくれる。
「人口が減少するなか、人口の奪い合いという都市間競争も生じていますが、まちを愛する市民がいて、それに応えるまちづくりがある。そんなまちが一番、人を惹きつけるのだと思います」
最近のトレンドは、大阪・守口市の小中学校の魅力的な建替えがファミリー層の増加につながっているプロジェクトや、茨木市でおこなっている自治会など日常的なコミュニティ活動を元気にしようというプロジェクトだそう。
街角企画のメンバーは5人。1人が産休に入ったため、今は4人で仕事をまわしている。
どちらかというとコミュニケーションに長けた人が多いので、全体のバランスを考え、新しく入る人は建築系の素養があるとうれしい、と話してくれたのは、次に話を聞いた林さん。
転職組の林さんは、以前からの個人的なネットワークも活かして、公設公営のコワーキングスペースの運営を通じたものづくり産業の活性化プロジェクトなどを担当している。
「聞く、話すっていうコミュニケーションの土台はありつつ、企てる、まとめる、形にする、という力が必要で。つまりは、コミュニケーションをとったうえで、合意形成して、妥協点も見出しながら実現していく。ロジカルな思考がわたしたちにとって大切なスキルだと思います」
「そのなかでも、建物や公共空間を対象としたプロジェクトについては、建築的なスキルが欠かせません」
さまざまな手法を組み合わせながら、段階を踏んで、市民や行政、そして関係者みんなの腹落ち感を醸成していくことが重要なのだそう。
「ワークショップって魔法の技術だね、みたいなことを言う人がいるけど、ワークショップを開けばうまくいく、いい提案がまとまるわけではないんですよね」
「それぞれ立場も意見も異なる人が一同に集まって話すわけですから。バラバラなものが出てくるのをまとめるのは難しい。だから、プロセスをしっかり踏んだ上で、事前のシミュレーションを入念にするんです」
どんな意見が出てきそうか。意見が出たときにはどう聞き返してみようか。さまざまな立場から、みんなが楽しみ、成果に微笑む姿を想像する。
「ワークショップに関しては、小林さんが一番慣れています。小林さんはどう思います?」
そう話をふられたのが、リモートで参加してくれた小林さん。普段は愛知から遠隔で働きつつ、イベントなどのときには一緒に現場へ。
建築設計事務所で働いた経験もあり、技術面でも後輩から頼りにされている。
「みなさん偏らず、お話を聞くことを意識していて、声が大きくない人の意見も反映できるように心がけています」
「もう1つ、テーブルの雰囲気がよい状態で進めたいと思っていて。30分とか1時間とか、短い時間ではあるんですが、どれだけいい空気をつくれるかというのは、とくに気をつけていることです」
ワークショップに参加している人たちは、大切な時間を削って参加している。せっかく参加してもらうからには、まちに貢献している実感を得てもらうことが重要。
自分の声が届いていると思えば、まちで起こることがさらに自分ごとになっていく。
「それぞれ参加している動機が違うなか、みなさんの動機に対して答えられるような進め方をしないと、満足できない人が出てきてしまう。慣れないうちは、その気配りは難しいかもしれないですね」
新しく入った人は、最初からテーブルを任せられることはない。
まずは記録係などからはじめて、だんだんと1つのテーブルを任せられるようになっていく。
「よかったねってみんなが思ったとき、実はそこには黒子役の人がいる。話し合っているときは気づかないけど、振り返れば『うまくまとめてくれたよね』と感じてもらうのが私たちの役割で」
「気配りをしながら意見をまとめる技術は、経験を積むなかでうまくなっていくんじゃないかな」
「大島さんは人の話をちゃんと聞くのが上手だから、すぐできるよ」と、小林さんの話に出たのは一番若手の大島さん。
2年前に日本仕事百貨の募集記事を読み、新卒で入社。
学生時代、商店街で子ども向けのワークショップを運営したことで、まちづくりに興味を持った。
「ここにいる猫がかわいかったところにも惹かれて(笑)」
「あと大学のときにデザインを少しやっていたので、チラシをつくったりすることはできる。それも活かせたらいいなというのもあったし、地域の方と近いところで何かできたらという思いもありました」
地域の人と近い距離でおこなう仕事の1つに、まちづくりセンターの業務がある。
まちづくりセンターでの主な仕事は、地域活動への補助金の執行支援。夏祭りをしたり、餅つきをしたり、高齢者のお世話をしたり。行政ではできない、コミュニティによる共助を育んでいる。
具体的には、区役所内にあるまちづくりセンターや小学校単位の集会所などに出かけて、コミュニティ活動をサポートしているそう。
「行政に対して企画書を出すとか、報告書を出す、あとは企画を形にすることやウェブでの広報関係とか。補助金を使う取り組みって、地域の人だけではむずかしいことが多くて」
「そういったところを私たちがカバーするのが大まかな役割ですね。地域の人とダイレクトに接しながら進めていくので、距離感の近さは感じられるし、ありがとうって地域の人から言ってもらえたりするのは、やっぱりうれしいです」
大島さんのように人知れず活躍する人の存在があってこそ、まちがよくなり、市民がまちを好きになるという好循環が育まれるのだろうな。
最後に、山本さんがこんな話をしてくれた。
「僕たちの仕事は、市民と身近に接するなかで、日常の暮らしの質を高めることがベースにあって。そのスキルをベースに、駅前や商店街、被災地など、都市やまちの課題解決などに取り組んでいるんです」
「ふだんから市民と身近に接して喜びや悲しみに寄り添っているからこそ、はじめての土地であっても、コミュニティの声をよく聞き、一緒に考えて、信頼を得てプロジェクトに伴走することができる。リアルなフィールドに接して、人の表情、歩く速度、そしてまちの空気感が変わる様子にワクワクしたい、そんな人だったら、簡単ではありませんが、一緒にチャレンジできるんじゃないでしょうか」
自身が子どもの頃にお世話になったこども会、地元の商店街の懐かしいお祭りのような心に残る経験、あるいははじめて訪れたまちだけど、なんかこのまちの人いいよね、居心地いいよね、と感じる気持ち。
そんな感性を大切にして、リアリティを持ってまちに関わっていきたい人が活躍できる仕事なのだと思います。
行き詰まったときには、看板猫に癒してもらいながら、ともにまちづくりをしてみませんか。
(2024/12/06 取材 稲本琢仙)