「好きな土地で暮らすのって、すごくナチュラルで当たり前のことなんじゃないかな。好きな場所で働いて、楽しい仕事をして。それって、想像するよりハードルは低いと思うんです」
そう話すのは、株式会社コスミック代表の中野さん。
コスミックは、沖縄本島と石垣島で、主にアパレル系の土産ものの販売や、オリジナルTシャツの製作事業をしています。
お土産屋さんで扱っているもののほとんどが、自分たちで企画から製作までおこなった商品たち。企画から販売まで手がけられるのが大きな強みです。
今回は石垣島で2店舗目としてオープンするお店で働く人を募集します。
接客やアパレルでの経験は求めません。必要なのは、なんでも楽しめる心意気と、面白いことにチャレンジする少しの勇気。
それさえあれば、人生を面白くするチャンスを掴める仕事だと思います。
石垣島は、沖縄本島から南西に約400キロ、台湾からは約270キロの場所にある島。竹富島、西表島とともに、八重山諸島の一つとして知られている。
こうして書くと本土からすごく遠くに感じるけれど、羽田空港や中部国際空港、関西空港など、主要な空港からは直行便が出ているので、想像よりも楽に行くことができる。
羽田を出発して3時間ほどで、石垣空港に到着。空港からはバスかタクシーが便利。今回はタクシーで向かう。
途中は農地や牧場が広がる風景。タクシーの運転手さんが「あれがパイナップルだよ」と、苗のてっぺんに実った果実を指さして教えてくれる。約30分で市街地に到着した。
まちの中心には、いくつものお土産屋さん。訪れたのは3月初旬だけど暖かく、石垣島に来たんだと気持ちがたかぶる。
中心街にあるアーケード街「ユーグレナモール」の端っこに、コスミックの石垣島1号店「OKINAWA POP 樂園」を見つけた。
お店にはドラえもんがどんと構えている。中に入り、店員さんに声をかけると、代表の中野さんを呼んでくれた。
「遠くからありがとうございます。せっかくなのでカフェで座ってみんなで話しましょうか」
中野さんは那覇に住んでいて、朝の便で石垣島に来たそう。
「僕自身は、沖縄本島に住んで25年になります。福岡出身なんですが、大学進学で沖縄に来て、そのまま居着いちゃいました」
コスミックに入社したのは、24歳のころ。最初はアルバイトとして店頭で販売をしていたそう。
12年ほど前に、代表の引退に伴って中野さんが代表を務めることに。それ以来、沖縄を拠点に会社を成長させてきた。
「今年で創業41年になります。最初は先代の社長さんが、路上でアクセサリーを売ったことからはじまって」
「それからTシャツが売れる流れが来て、Tシャツを自分たちでつくって売るようになり、最初のお店を那覇の国際通りに構えたと聞いています」
Tシャツブームは続き、店舗も増加。とくに海人(うみんちゅ)Tシャツがブームになった時期は、飛ぶように売れたそう。
そのころはじめたのが、オリジナルTシャツをつくって販売する事業。
「いわゆるおもしろTシャツみたいなのを売ったりしてね。それで沖縄本島に13店舗くらいつくったかな」
「インバウンド向けの漢字Tシャツとか、オーダーメイドのスポーツチームTシャツとか。事業を広げて、最近はドラえもんとかキティちゃんとコラボしたオリジナルTシャツをつくることも増えてきました」
ほかにも『Lily’s Ice Cream』というブランドも運営。
染めのTシャツをアイスクリームっぽい柄にしているシリーズで、アーティストの「CREAM」とコラボアイテムを出すなど、外部の人とも関わりながら表現の幅を広げている。
「言ってしまえば、ちょっとダサいお土産を変えていきたいというか。かっこいいものとか、今までにない切り口のお土産をつくりたい」
「最近他社さんに『面白いお土産を調べていくと、だいたいコスミックさんにたどり着くんですよね』って言ってもらえて。それはうれしかったし、そうありたいなと思っています」
商品は中野さんが考えたものもあれば、社員スタッフやアルバイトが考えたものもあるそう。立場に関係なく、面白そうと思ったものを提案し、形にできる環境がある。
「僕がそう仕組んでいるとかじゃなく、昔からなんですよね。上の人との距離が近いというか。なんでも気軽に提案できるのはいいところなのかなと思ってます」
「就職説明会とかでよく言うのは、毎日文化祭をやってるみたいな会社ですって(笑)。自分たちで考えて手を動かす文化があるんだと思います」
続いて話を聞いたのは島袋さん。入社して約15年のベテランだ。「袋」の読みから「ぶーさん」とみんなから呼ばれているそう。
新店舗を担当しているので、入社する人にとっては身近な存在になる。
「新店舗はここからすごく近くて。既存の店舗からも歩いて1分くらいのところです。今は工事中で、夏ごろオープン予定ですね」
「新しい店舗はオリジナルTシャツをつくれるお店、として打ち出します。プリンターを置いて、その場でお客さんがオリジナルのTシャツをつくれるお店になる予定です」
最初は国際通りのお店でアルバイトとして入った島袋さん。
「人と人とのコミュニケーションっていうんですかね。喋るのが好きで。販売員って面白いんですよ。どっから来たの?とか聞いて、会話が広がって。修学旅行生とはめちゃくちゃ仲良くなりますね。こっちこっち!って呼んで、友達みたいに接してました(笑)」
「一時期、ハチマキ巻いて前掛けつけて接客したこともあって。僕はそのほうが自分のキャラクターを出しやすかったんです。だから新しい人も、接客用の真面目な自分じゃなくて、ありのまま自分でお客さんに接してほしいなって思いますね」
最後に話を聞いたのは、蟹江さん。3年前に愛知から沖縄へ移住し、コスミックへ入社。
石垣店がオープンするのに合わせて、石垣島へ移住した。
「数年前にノリで沖縄に遊びに来て。居酒屋で知り合った女の子たちと、一緒に住もうって盛り上がって、家探して住みはじめたのが移住したきっかけですね」
それは… ノリがすごいですね。
「当時は家があれば大丈夫だと思っていて。しばらく沖縄で遊んでたんですけど、仕事しないとやばいなと思いはじめて、探した結果コスミックで働くことになりました」
「石垣島は、はじめて行くので不安もあったんですが、住んでみるとめちゃめちゃ楽しくて。今は石垣のほうが沖縄本島より友達が多いくらい染まってます」
太陽のように明るい笑顔で話してくれる蟹江さん。3月のはじめだけど、もうすぐ大好きな夏が来る、とうれしそうにしていた。
今働いている石垣のお店について聞いてみる。
「1号店は基本的にキャラクターもののTシャツとかを沖縄風にアレンジして販売しています」
お店にはいろんなキャラクターTシャツがある。特徴は、どのキャラクターも日焼けしていること。沖縄らしさを出すにはどうすればいいだろうとスタッフで考えてデザインした。
一番売れている人気商品は、ドラえもんのアパレル。
「断トツで一番ですね。石垣はまだインバウンドよりも日本人のファミリーやカップル層が多いので、ドラえもんの人気が高いんです」
会話の節々で「楽しい」、と話す蟹江さん。どんなところが楽しいんでしょう。
「たとえば、ディスプレイをどんなふうにしたら商品が売れるのかとか。あとは客層や季節に合わせて商品の位置を変えるとか」
「そういった試行錯誤で売り上げが変わるので、試しながら考えながらやっていくのが面白いなって思います。だんだんと、どうしてこの商品をここに置くのか、みたいなこともわかってくるんですよ」
蟹江さんが提案してつくった商品もあるんですか?
「石垣限定でつくった『ウミイキタイ』の商品ですね。石垣は海が近いから海にしようって。お店ごとにカラーが決まってるんですが、石垣店のカラーはオレンジなんですよ」
「新しく入る人も、仕事に慣れたら企画とかを考えてくれて全然いいと思います。面白そうなものを、もっとつくっていきたいですね」
蟹江さんは本州からの移住者。気になる石垣での暮らしについても聞いてみる。
「休みの日は天気が良かったら海に行きます。ダイビング行くか、シュノーケリングに行くか。友達と予定が合えば、フェリーで15分くらいの竹富島に行くこともあります。あとは山登ったり、ビーチでヨガをしたり、お酒を飲んだり(笑)」
「石垣の自然は本当に良くて。ちょっと車を走らせるだけでも、海が見える。それがすごくテンション上がっちゃうんですよ。やばいきれい!みたいな(笑)。その感動は3年いても変わらないですね。いいところで暮らしているなって気持ちになります」
移住、それも行き先が島となると、ハードルが高いようにも感じる。けれど、想像するより都会で住みやすい、と話す蟹江さん。
「来る前は八百屋とかしかないと思ってたんですけど、石垣はニトリやドンキ、イオンもある。ただね… マックがなくなっちゃたんですよね。一番近いマックが宮古島になりました(笑)」
石垣島は移住者も多く、移住者のコミュニティもあるそう。外に顔を出せば、知り合いはすぐにできそうだ。
海のアクテビティに興味がない人でも、のんびりしている空気感や、人との距離の近さやあたたかさなど。そういったものに惹かれて移住してくる人も多い。
「基本的にみんな明るいし、ポジティブなんですよね。そういう、言葉で表し難い雰囲気に惹かれている人が多いのかなと」
「東京だと下向いて携帯触ってるじゃないですか。石垣は星がきれいなんで、上向いて生活してますよ(笑)」
蟹江さんはどんな人と働きたいですか。
「元気で笑顔が素敵なら誰でもウェルカムです。自分で楽しいことを見つけられると、島生活がより楽しくなると思います。今の生活がちょっとつまんないなって思ってる人は、石垣に来れば楽しくなります。それは保証できますよ」
「私自身もずっとここで働くかわからないし、もし合わなかったらリスタートすればいい。まずは一歩踏み出すのが大事だと思いますね」
石垣島では、それぞれが島暮らしを楽しみながら、明るく朗らかに過ごしているのが印象的でした。
距離だけ見るとハードルが高いと感じるかもしれません。けれど、その一歩を踏み出すことができれば、自分に合った暮らしが待っている。
そんな魅力がある場所だと思います。
(2025/03/05 取材 稲本琢仙)