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みちのくの温泉と
あったかい人のつながり
まちの未来をつくる

岩手・陸前高田。

岩手県の南東部に位置し、三陸海岸の象徴でもあるリアス式海岸のある、海・山・川がそろう自然豊かなまちです。

2011年に発生した東日本大震災の津波で唯一残った「奇跡の一本松」や、震災当時の記録を伝える「いわてTSUNAMIメモリアル」があるまちとして、知っている人も多いかもしれません。

そんな陸前高田にある黒崎仙峡温泉を拠点に、まち全体の観光振興に取り組む地域おこし協力隊を募集します。

主な役割は、温泉施設の魅力づくりやSNSなどを通じた広報活動。将来的には、陸前高田全体の魅力づくりにも取り組んでもらいたいとのこと。

これまでの経験は問いません。観光を通じて地域の魅力を伝えていきたい。そんな人に知ってほしい仕事です。

 

東京駅から新幹線に乗り、岩手県の一関へ。

そこから電車でまっすぐ東に進み、宮城県の気仙沼へ。さらにバスに乗り換えて、海沿いの道路を北上する。

さっきまで晴れていた空も、トンネルを抜けた先では雪景色。風景が刻一刻と変わり、まるで冒険しているような気分になる。

約4時間半をかけて、ようやく陸前高田駅へ到着。

その足で、近くの陸前高田市役所へ向かう。

外には横断幕が掲げられており、佐々木朗希投手のメジャーリーグ挑戦を祝っている。

今回入る人は、市役所4階の商工観光課を活動拠点としつつ、黒崎仙峡温泉で活動する予定。

黒崎仙峡温泉は、国立公園のなかにある、太平洋の雄大な水平線や三陸海岸特有の荒波を望むことができる日帰り温泉施設だ。

まずは、今回の募集背景について、観光課の直樹さんに話を聞く。

気さくで親しみやすい雰囲気がある方。

「震災後に、黒崎温泉の入館者がガクッと減ってしまって。最近は近隣にお住まいの方の高齢化もあり、施設の利用者が年々少なくなってきているんです」

震災前の2010年には約54,000人だった来館者数が、2023年には約35,000人にまで減少。

奇跡の一本松などの震災にまつわる資料を見にくる観光客は増えているけれど、黒崎温泉まで足を伸ばす人がなかなか増えてない状況。

一方で直樹さんは、黒崎温泉の持つポテンシャルに可能性を感じている。

「ここには豊富な海の幸があるし、なにより温泉に入って眺める景色が最高で。黒崎温泉をもっと魅力的な場所にしていきたい。そんな想いから今回は募集をすることにしました」

新しく入る人は、市役所で観光課スタッフとコミュニケーションを取りながらアイディアを練り、実際に温泉施設でも働く。

受付やお風呂掃除、お土産の販売といった基本的な業務を学びつつ、温泉に入ったり、近くの観光地を散策したり。

自身もこの場所を楽しみながら、黒崎温泉に足を運びたくなる魅力をつくっていってほしい。

「たとえば美しい景色を見て回るハイキングルートを開発したり、海を見ながらヨガをするイベントを企画したり。自分の関心があることから考え始めてもらいたいですね」

「土台になるのは、地域の人との信頼関係です。黒崎温泉で働く人や訪れる人の率直な声を拾って、応えていく。その積み重ねで『そこまで言うなら喜んで協力するよ』って力を貸してくれる人が出てきます。企画を形にする上で、地域の人の協力は欠かせませんからね」

現在、施設利用者の7割ほどが高齢の方。いまのお客さんも大切にしながら、若い人や家族連れの方が、週末に訪れたくなる施設にもしていきたい。

「並行して、海の幸を活かした食堂の看板メニュー開発や、ここでしか買えないお土産の企画・取り扱いも増やしていきたくて。たくさんの人がこの景色を楽しんで、大切な時間を過ごしてもらいたいですね」

「興味があれば、企画の経験がなくても大丈夫です。まちには、新たに企画をつくった地域おこし協力隊の先輩もたくさんいる。すでに実績もあるので、過去の企画を参考にすることもできますよ」

たとえばと言って教えてもらったのが、「みちのく潮風トレイル」のイベント企画。

このトレイルは、青森県八戸市から福島県相馬市までの、太平洋沿岸の4県28市町村をつなぐ1025kmものルート。

観光物産協会で働く協力隊が発案者に声をかけ、黒崎温泉を経由地に加えてもらったことで、多くの参加者が施設に立ち寄るようになった。

ほかにも初心者向けの短いルートの整備や、歩きながら野鳥観察を楽しむイベントなど、協力隊の関心から生まれた企画もある。

また黒崎温泉では、昨年、初めて2週間のインターンシップをおこなった。内容は、「温泉×海の幸」をテーマにした、施設の魅力づくり。

「そのとき来てくれた子は、『新しい看板メニューがほしい』という声を聞いて、食堂のメニューを考案してくれました。『施設の周りに伸びている草が気になる』という声を拾って、自ら率先して草刈りをしたこともありました」

「老若男女問わず積極的にコミュニケーションをとり、みんなに頼まれたことも進んで取り組んでいました。2週間経って任期が終わるころには『次はいつ陸前高田にやってくるの』ってみんなから聞かれていて、地域の人から愛される存在になっていましたね」

関わる人に喜んでもらいたい、その気持ちを行動に移せる人が向いているんだろうな。

今回入る人は、市役所の観光課には週4日程度、黒崎温泉に週1日の勤務を予定している。

はじめは黒崎温泉に足を運んで通常業務を教わり、温泉や近くの自然環境への理解を深めていく。その後は市役所で中長期的な計画を立てながら、リサーチをして具体的な企画を練る。

観光課スタッフと一緒に企画を検討し、直樹さんに提案。承認がもらえたら実際に形にしていく。魅力づくりと並行してSNSでの発信も担当する予定。

「まずは腰を据えて黒崎温泉の魅力化に取り組んでもらいますが、興味があれば、新しくできたキャンプ場や野外音楽堂の活用、花火大会や海水浴場など、ほかの観光分野に関わることもできます。いろんな場所に足を運んで、まちの魅力を体感してみてください」

 

役場をあとにして、黒崎温泉に向かう。

市内から車で20分ほど走ると、施設の入り口に到着。

目の前には太平洋が広がっており、都会では味わえない雄大な景色に思わず見とれる。

「いい景色ですよね。ここにテントサウナがあったら最高だと思いませんか」

心の声を代弁してくれたのは、特定非営利活動法人高田暮舎の三井さん。

新しく入る人の移住支援から着任後のフォローまで、幅広くサポートをしてくれる方だ。

大学3年生のころに東日本大震災を経験し、災害ボランティアとして東京から陸前高田に通っていた三井さん。

復興後の持続可能なまちづくりを目指して、卒業後に移住。現在は、陸前高田の関係人口を増やす活動に取り組んでいる。

「修学旅行や民泊の受け入れなど、若者と地元の人の交流の場をつくったり、移住者が陸前高田で暮らす場所も整えたりしてきました。その経験を活かして、市役所のみなさんと地域おこし協力隊の受け入れ体制もつくっています」

「地域の課題解決やまちづくりを学ぶために、海外や東京から学生も毎月来ていて。NPOの職員も近くに住んでいるので、想像以上に若者がいると思いますよ(笑)」

具体的にはどんな形でサポートに入ってくれるのでしょうか。

「僕を含めた数人のチームで、陸前高田に住むにあたっての相談や、仕事が軌道に乗るまでのサポートをしていきます」

たとえば、温泉の来館者数を増やすために、看板メニューをつくる場合。

地元の漁師さんに魚を分けてもらい、自宅で調理しながら試作を重ねる。意見や感想をもらうために、試食会を開く。

レシピが完成したら、食材の仕入れ先や数量、販売価格を決めて、調理のオペレーションを考える。写真を撮ってSNSで発信し、集客につなげる。

こうした一連のプロセスを洗い出したり、相談先を一緒に考えたり。さまざまな面で力を貸してくれるそう。

「週ごとに業務計画を立てて、振り返りの1on1もやります。高校の文化祭やお祭りなど、地域コミュニティのイベントにも参加していきたいですね」

三井さんも複数の業務を兼任しているため、活動が軌道に乗ってきたら、三井さんとは週に一回ほどの関わりになる。

ただ、黒崎温泉から車で5分の場所にある三オフィスには、常にNPOのスタッフがいる。困ったことがあればいつでも相談できる環境。

三井さんをはじめとして、頼れる人たちが近くにいるのはとても心強い。

「今回の取り組みは、黒崎温泉としてもはじめてのチャレンジです。正直、仕事内容も含めて決まっていないことも多くて。繁忙期には現場が増えるかもしれません。でも、そこに喜んで応えられる人であれば、充実した3年間になると思います」

「信頼関係を築く力は、これからの人生にきっと役に立つはず。地域に興味がある人、仕事を通して成長したい人は、まずは気軽に話を聞いてほしいですね」

 

最後に話を聞いたのは、近くで林業と木工業を営んでいる直(なお)さん。

27歳のときに千葉から陸前高田へ移住し、地域おこし協力隊として着任。現在は独立して、家族3人で暮らしている。

「東京の大学に通っていたころに東日本大震災を体験して、人間として生きる力が身に付く自然に近い暮らしがしたいと思いました。小規模林業に興味があったので、いくつかの自治体を見て、そのなかで惹かれたのが陸前高田でした」

協力隊として働いてみてどうでしたか?

「3年間をどう過ごすか、自分でゴールを設定することが大切だと思いました。やりたいことを模索しながら、自分で考えて動ける人だと、どこの地域で暮らしていけると思います。そういう人には、みんなが自然とサポートしてくれますよ」

3年先の独立を見据えて移住を決めた平山さん。

市役所に紹介してもらった講師の方のもとで林業の技術を学んだ。起業の知識もなかったけれど、市の担当職員をはじめ、多くの方に支えられながら、なんとか事業として形にすることができた。

「ある日、市役所から『倒木があって道が通れなくなっている』と連絡があって。まだ修行中でしたが、すぐに駆けつけました。なんとか片付けることができて、市役所や企業さんにすごく感謝されたんです」

「そこから市のお仕事をもらえるようになって、いまの仕事にもつながっています。どんな些細なことでも、頼まれたことに応えることが大事ですね」

 

困っている人がいたら、力になりたい。誰かに助けてもらったら、今後は自分が力になりたいと思う。

そんな想いを胸に人と関わり続けた先で、3年後、このまちにどんな景色が広がっているだろう。

人とのつながりを実感しながら、陸前高田のまちを少しずつ面白いものにしていく。

その確かな手応えが感じられる仕事だと思いました。

(2025/02/06 取材 櫻井上総)

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