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自分はつくるよりも、とどける側のほうが向いているのではないか。
でも、職人や現場のそばにはいたい。
そう考えているなら、読んでほしいです。
愛知県瀬戸市は1000年以上の歴史がある、日本屈指のやきもののまち。
陶磁器のうつわ全般を指して「せともの」と呼ばれるほど、今も昔も多種多様なやきものがつくられています。
この地で73年つづく、株式会社中外陶園。
招き猫や干支置物など、日本の暮らしに馴染みの深いやきものを中心に、2000アイテム以上を生み出してきました。
さらに時代のニーズに合わせ、守るべき技法や伝統は変えず、新しいプロダクトやものづくりの環境に挑戦しつづけています。
この秋、中外陶園の直営店「おもだか屋」がリニューアルオープンします。それに伴い、スタッフを一新して募集します。
接客を通じて物語を伝えたり、売り場を自分のアイデアで彩ったり。販売だけでなく、ディスプレイ、在庫管理、イベント企画など、多岐にわたる業務を担います。
本社も工房もすぐそば。社員も50名ほどで、会社全体の動きや文化を肌で感じやすく、自分でアイデアを出して実行に移す機会も多い職場だと思います。
名古屋駅から、在来線を乗り継ぎ1時間ほどで、尾張瀬戸駅に到着。栄からは直通で来ることができ、アクセスも良い。
改札を出ると、陶器店や窯元がちらほら。招き猫を軒先に飾る家も多い。
駅から歩いて10分ほどで、おもだか屋に到着。となりには、招き猫のコレクションが5000体も並ぶという招き猫ミュージアム。
9月のリニューアルオープンに向けた改装工事が進んでいる。
「お久しぶりです!まだ出来上がっていませんが、ぜひ中を見てください」と、代表の鈴木さんが温かく迎え入れてくれた。
なかに入ると、むき出しの壁や仮置きされた棚の間を職人さんたちが忙しく行き交っている。
お邪魔にならないうちに、すぐそばの本社に移動する。
前回の取材から、2年ぶり。なにか変化はありましたか?
「今年新たに3人が入社して、社員数は50名を超えました。ベテランとフレッシュな若手が揃い、まるで大家族のようです」
最近は、奈良にある中川政七商店へ研修旅行を実施したそう。
「学ぶことがたくさんありました。売り場や物流の仕組みを変えてみたり、ペーパーレス化やミーティングの効率化を進めたりしています」
「売り上げも4期連続で伸び、100年後の企業継続を見据えた採用戦略や、若手の育成教育にも注力を続けていますね」
取材に来るたび、会社に新しい風が吹いていてワクワクする。楽しそうに話してくれる鈴木さんも印象的。
1952年、鈴木さんのひいおじいさんが創業した中外陶園。
中外陶園の4代目を家業として継いだ鈴木さんが代表となってから、伝統を受け継ぎながら、時代に合わせたアップデートを重ねてきた。
たとえばBEAMSとコラボしたオレンジ色のまねき猫、シンプルさを追求し、表情さえも削ぎ落とした「SETOMANEKI」など、ユニークなラインナップを展開。
「僕の経営において大切な考えが、『まずやってみる』こと。国産のものづくりへの期待が高まる今、柔軟に新しい挑戦を続ける姿勢が大事なんです」
伝統へのこだわりやものづくりへの情熱を惜しまずに、時代に合わせてときに大胆に踏み出す。その姿勢こそ、中外陶園の強みといえる。
その象徴といえるが、2023年にオープンした体験型複合施設「STUDIO 894」。
絵付け体験、アートギャラリー、OBUSCURA COFFEE ROASTERSが監修するカフェの機能を持つ。
訪れた人はおいしいコーヒーを飲むだけでもいいし、同じスペースで絵付けを楽しむ人もいる。ギャラリーでは、さまざまなジャンルのアーティストの企画展が開催されている。
「瀬戸観光での一つの目的地になっている。常連さんがご友人を連れてきてくださったり、瀬戸に暮らす人にとって親しみやすい場所になっていたり。僕らにとっても、この場所は自信になっています」
STUDIO 894の成功を受け、今回取り組むのが「おもだか屋」のリニューアルだ。
28年前、先代がオープンしたおもだか屋は、自社製品が並ぶ直営店として地元に親しまれてきた。
「リニューアルの最大の目的は、STUDIO 894や隣接の招き猫ミュージアムと連携し、中外陶園全体をひとつの『ビレッジ』のように楽しめる空間をつくること」
中外陶園で働く社員にとっても、自社製品が売れる現場を体感することで、仕事の意義ややりがいを感じられる瞬間が増えるはず。
「コーヒースタンドやギャラリーも、普通に考えたら陶器屋がやることではない。従来の陶器屋の枠を超えるような挑戦も、楽しめるような企業文化をつくっていきたいんです」
おもだか屋は、どんな場所になっていくのだろう。
「お店づくりを進めるうえで、日々コミュニケーションをサポートしてくれる存在です」と鈴木さんが紹介してくれたのが、太田さん。
入社8年目ながら、店舗事業のリーダーとして、STUDIO 894、おもだか屋、招き猫ミュージアムの運営を任されている。
愛知県生まれで、県内の大学に進学した太田さんは、留学やデザインイベントへのボランティア参加など、興味のあることに積極的に挑戦してきた。
「中外陶園を知ったとき、干支置物や招き猫をつくるニッチな仕事に、素直に面白そうだと思いました。地域の産業を応援できる点にも惹かれましたね」
製造管理チームを経て、今年の1月からは店舗事業のリーダーに。対外的なブランディングや顧客との接点づくりを推進している。
「先週は国外にブランドを発信する試みとして、台湾でのポップアップ出展をしてきて。はじめての出張で、いい経験でしたね」
おもだか屋のリニューアルでは、まずは買いものがしやすいように、店舗の内装や導線を整える。
具体的には、商品を陳列する棚の拡大、レジスペースの拡張、免税対応の強化、リュックを背負ったままでも動きやすい導線の確保など、売り場に反映する予定。
「どんな体験をお客さまに提供したいか、働くみんなが気持ちよく過ごすにはどうすればいいか。そんなアイデアを話し合う、スタッフミーティングの場は定期的につくっていきたいですね」
新しく加わるスタッフは、太田さんやほかのスタッフと日々コミュニケーションをとりながら、接客や売場づくり、SNSでの発信などの店舗運営を担う。
マネージャーはそれらに加え、シフトや予算、在庫の管理といった店舗運営の中心を担ってほしい。
英語は必須ではないけれど、海外のお客さんも多いから、柔軟に対応できるといいと思う。
お店と本社の橋渡しをする太田さんが、現在整えているのが、お客さんとの会話を、商品開発に活かす仕組み。
「たとえば、お客さまとのコミュニケーションのなかで、『招き猫の色をカスタマイズできたらいいのに』とか『持ち運びやすい小さな干支置物が欲しい』といったヒントが見つかると思うんです」
「その声を本社の開発チームに届け、新商品のアイデアにつなげられるようにしたい。製造管理にいた経験もあるので、なにか気づきがあればなんでも相談してほしいですね」
ほかにも、STUDIO 894と連携してイベントを企画してみるなど、訪れる人が楽しめる仕組みはどんどんと試してみてほしい。
「中外陶園の直営店は、唯一ここだけ。工房もすぐそばにあるので、招き猫や干支物の背景を理解しながら、お客さまにその魅力を伝えられたり、自分のアイデアでお店を動かしたりできるやりがいがあります」
「せとものや招き猫について、知識がなくても大丈夫。お店でお客さまと話しながら、楽しんで学んでいけるはず。一緒にいいお店をつくっていきましょう」
最後に話を聞いたのが、昨年の4月に入社した柴田さん。開発チームで干支物や招き猫の商品開発に携わり、STUDIO 894のポップのデザインなども担当している方。
チームは違うけど、コミュニケーションをとる機会は多いと思う。
前職は、名古屋のデザイン系専門学校の教員をしていた。やきものは未経験だったけれど、ものづくりへの興味と接客経験を活かせる仕事を探すなかで、中外陶園を知ることに。
「きっかけは、日本仕事百貨の求人記事でした。中外陶園がつくるものを調べてみたら、伝統的な招き猫や干支置物のイメージを覆すようなデザインに惹かれて」
「とくに、シンプルで洗練された『SETOMANEKI』に一目惚れして。『こんな焼きものがあるんだ!』と、すぐに応募しましたね」
現在は商品開発のほか、カタログ作成や店舗のポップ制作などを担当している。
ほかにも、毎年中川政七商店が主催している「大日本市」という合同展示会では、中外陶園のブース出展をサポート。
商品の魅力を伝えるディスプレイを考えたり、来場者との会話を通じてせとものの背景を伝えたり、対外的なブランディングも担っている。
「日々、中外陶園のものづくりへの徹底したこだわりに驚いています。どの商品も、ミリ単位で形状を微調整したり、絵付けや釉薬の発色や質感を何度も試作したり。一つひとつ、こんなに丁寧につくっているんだ!と感動しました」
中外陶園の職場環境はどうですか?
「異業種からの転職でしたが、とても温かく受け入れてくれる雰囲気がありますね。とくに印象に残っているのは、2週間の研修期間。工房、製造、出荷、店舗など各部署を回り、役割や雰囲気を丁寧に学べました」
「工房では職人さんが道具の使い方や焼き物の背景を教えてくれて、質問にも気さくに応じてくれました」
毎朝の朝礼では、それぞれの業務進捗を確認したり、現場の困りごとを共有したりする時間も設けているそう。
「コミュニケーションが苦手な人には、部署間連携や積極的な意見交換が求められるので、少しハードルがあるかもしれません」
制度面も充実していて、働きやすさを実感している。
「引越支援手当や、家賃補助手当のおかげで、瀬戸に移住してきた私には本当に助かりました。育児休業制度も整っていて、子育て中の社員の方も働きやすそう。育児休業制度も整っているため、ライフスタイルが変わっても長く働ける環境だなと感じます」
「瀬戸のまち自体も、若い人が営むカフェや本屋が増えていたり、国際芸術祭「あいち2025」の開催地のひとつに瀬戸市が選ばれたり。どんどん、活気づいています」
地域を盛り上げる人たちと刺激し合い、コラボレーションアイテムや展示イベントなども企画できそうだ。
「地元の方や観光客と交流することで、脈々とつづく瀬戸のものづくりの文化を肌で感じることができる。ものづくりや地域とのつながりに興味がある人には、楽しみが尽きない場所だと思います」
お店づくりは、会社の顔になるだけでなく、まちをつくっていくことにもつながっていく。
アイデアを商品化につなげたり、たくさんの人が訪れるイベントを考えたり。興味次第でできることは広がるはず。
ものづくりの世界に飛び込む一歩目として、ぴったりの場所だと思います。
(2025/05/21 取材 田辺宏太)