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夢を叶えるために、必要なものはなんだろう。
恵まれた才能?たくさんの資金?特別なスキル?
新潟・三条の商店街を歩いて感じたのは、挑戦が生まれる環境の大切さ。
住民、お店、行政が一体となって、やりたいを応援する。自分の好きなことで人が喜ぶ経験をしたり、思いがけず機会をもらえたり。
やってみたいを形にして、生きている人たちを紹介します。

新潟県三条市にある商店街を拠点に、カフェレストラン運営、マルシェ・イベントの企画運営など、人とまちをつなぐ事業を展開している株式会社TREE。
若者を呼び込むことで商店街の活性化に成功し、人口減少下におけるまちづくりのモデルとして、全国からの注目を集めています。
今回募集するのは、TREEで働きながら、自分の生業づくりに取り組む人。
地域おこし協力隊の制度を活用するため、任期は3年。卒業後は独立やTREEに就職する道もあります。
自分の夢を形にしたい、誰かのやりたいことを叶えたい。少しでもピンと来たら、まずは読み進めてみてください。
三条市までは、東京から新幹線と電車を乗り継いで2時間ほど。
駅を降りてまだ雪の残る商店街を歩く。

昨年以来、訪れるのは2度目。外観はどこにでもある商店街だけど、古着屋やカフェなど、新たなお店が増えている印象。
そんな一角に、趣のある古民家を見つけた。ここがTREEの運営するカフェレストラン。

築80年の歴史ある建物で、うなぎの寝床と呼ばれる奥行きのあるつくり。入り口からカフェ、コタツのある和室、古着屋、そして中庭が続いている。
施設内には、地域のクリエイターが制作した雑貨、バレンタインや占いイベントの張り紙など。さまざまな取り組みがあって面白い。
最奥にあるレストランで、TREEの代表を務める中川さんに話を聞く。明るい雰囲気で親しみやすい方。

「三条市みたいな10万人くらいの地方都市って、実はチャンスが溢れているんです。まだ人も多いのに、高齢化で空き店舗が増えている。自分がやりたいことを試すうえで、もってこいのまちだと思います」
金属加工のまちとして古くから知られている燕三条地域。
中心地から少し離れた場所にあるのが、TREEが拠点を構える「一ノ木戸(いちのきど)商店街」。かつては有名な寺院の参拝客で賑わう場所だった。
流れが変わったのは、40年ほど前。
新幹線が燕三条に開通し、郊外に大型店舗ができたことで転居者が増加。住民の高齢化とあいまって、シャッターを閉める店が後を絶たなくなった。
こうした状況を受け、三条市では「中心市街地の活性化」に取り組んでいる。
活性化の中心を担うのが、株式会社TREEだ。
商店街に飲食店をつくることで若者を呼び込み、やりたいことを持った人と空き店舗をつなげる。
また、商店街でも商売ができる様子を見せることで、自発的に出店する人が増えてきた。

「TREEを立ち上げて9年。これまでに15店舗が生まれて、年間5万人の訪れる商店街になりました」
取り組みが評価され、国土交通大臣賞、総務大臣賞などを受賞。総務省の地域力創造アドバイザーとして依頼を受け、悩みを抱える地域の課題解決にも携わっている。
「三条市の人口は全国でも平均値で、成功事例を参考にしやすいそうです。三条とほかの地域がつながって交流が生まれたら、もっと面白くなっていくと思います」
「外を見たことで自分たちの魅力も再発見しました。まちをあげて『やってみたい』を応援してくれて、活躍する20〜30代が多いのは、三条ならではですね」
一例として紹介してくれたのが、市から委託を受けてTREEが企画・運営した「Lululu Marché(るるる まるしぇ)」。
商店街を歩行者天国にして、まちなかオープンカフェ・国際交流・地域おこし協力隊マーケットの3つのイベントを合同で開催。
当日は50名以上が出店し、来場者は7,000人を超えた。
三条の高校生が考案したアイスを販売したり、国際交流のためにカナダから来た方が文化紹介のためにパンケーキをふるまったり。
誰でも参加することができて、自分のやってみたいを形にしている。

「三条市では、大きなマルシェが年4回、小さなイベントは数えきれないほど開催されています。出店を重ねてファンがつくことで、将来の独立につながる。リピーターさんに愛されるかが、成功の鍵を握っていると思いますね」
「家賃も安いので、売上が小さくても利益を出しやすい。TREEと同じように奥行きのある物件も多いので、月の家賃が5万円で、自宅と店舗が持てることもあるんです」
都心では場所を持つハードルは大きいけど、三条では気軽に場所を持てる。やってみたいことを形にしやすい環境だと思う。
中川さんは、どんな人に来てほしいですか。
「経験やスキルは要らなくて。やりたいことも、実践を通して見つけていけば良いと思います。一度きりの人生で挑戦したい人や、熱意ある人に来てほしいですね」
「東京だと人が多くて埋もれちゃうけど、三条なら手を挙げれば注目してもらえる。都会で悶々とするくらいなら、こっちでやりたいことを形にしない?って伝えたいです」
自分の進みたい道がまだ決まっていなくても、誰かが一緒に見つけてくれる。そうやって一歩ずつ進んできたのが、マネージャーの永島(ながしま)さん。
平日はTREEで働きながら、休日はフォトグラファーとして全国を飛び回っている。前日までは撮影で愛知にいたんだそう。元気な語り口が印象的な方。

「TREEに来て、『働き方は一つじゃなくていいんだ』って思えたんです。親の世代は同じ仕事を続けるのが当たり前で、その価値観がぐるっと変わったというか」
三条市出身で、前職は保育士だった永島さん。
転機は、知り合いだった中川さんに撮影の依頼をもらったこと。
「カメラは趣味程度でしたが、『イベントで撮影してみない?』と声をかけてもらって。当時はとにかく撮ることが楽しくて、うれしかったことを覚えています」「
「ウェディングや家族写真など。その後も依頼をもらって撮影するなかで、カメラをやりたい気持ちが強くなっていきました」
翌年に保育士を辞めてフォトグラファーとして活動をはじめる。
5年続けてきたことで、インスタグラムのフォロワーは3.8万人に。いまでは全国から依頼が入るようになった。
「着付け、ヘアメイク、花屋の人と一緒に、ウェディングフォトの活動もしています。こんなことできない?って相談から、やりたいことも広がっていくと思いますよ」

新しく入る人は、まずは地域との関係づくりから。
商店街でお店を営む人たちに挨拶して、自分のことを知ってもらう。
スキルがある人は、いきなりイベントの企画もできる。経験がなくて、やりたいことを探したい人は、先輩のお手伝いから始めていけるといい。
「誰かのやりたいを支える、マネージャーやサポーターも大歓迎です。最近入社したエンジニアの子は、商店街のお店を一覧できるサイトを制作していますよ」
まちづくりに関心があれば、三条市内の商店街と連携したり、イラストが得意なら、商店街のお店をまとめたマップを作成したり。
点と点を結んで一つの線にすることで、まちは面白くなっていくと思う。
取材も終盤に差し掛かったころ、地域おこし協力隊としてTREEで活動している吉田さんがやってきた。
花屋の開業を目指しており、一緒に話を聞かせてもらうことに。

「TREEに来てすぐに、永島さんが写真展を開いて。『お花を飾ってくれない?』と声をかけてくれたんです。まだ入って間もない私を信頼してくれて、うれしかったですね」
1年目に「Lululu Marché」の企画を担当し、自身もイベントへの出店を重ねた。2年目となる今年は、商店街での出店に向けて準備を進めている。
「独立に向けた計画の立て方も、イベント企画を通して学びました。壁にぶつかって限界を越えることもありましたけど(笑)、機会をくれて、ありがたいなと思っています」
話を聞いていると、中川さんから永島さん。次は永島さんから吉田さんに、バトンが渡されていることに気づく。
チャンスをくれる人が近くにいることで、やってみたいは形になっていくんだろうな。
TREEを後にして、少し離れた場所にある別の商店街へ向かう。
ブックカフェ「絵本の店 omamori」と書かれた、黄色の店舗に到着した。

将来のモデルとして、ぜひ会ってほしい人がいるんです。そう紹介してもらったのが、このお店を営む、まるのさん。
4年前に地域おこし協力隊として着任し、お店を立ち上げた。普段はお店に立ちながら、デザインの仕事もしている。

「もともとは東京の大手人材会社で企画職をしていました。在宅フルリモートで人とのつながりが薄かったこともあり、人に直接何かを手渡せる仕事がしたいと思って」
「当時は新卒4年目で、自分もまっさらな状態。どこでも行けて、何にでもなれるから、チャンスがあれば飛び込みたいと思っていました」
友人との本づくりがきっかけで、絵本の世界に興味を持ったまるのさん。三条市で本屋の店主を募集する求人を見つけて応募する。

「お店にある什器をはじめ、ほとんどが貰いものなんです。近くの図書館で使用しなくなった本棚を友人が車で運んで、設置まで手伝ってくれました」
室内の飾り付け、壁の塗装、カウンターの造作なども、お客さんと一緒にした。
みなさん、気にかけてくれるんですね。
「挨拶ついでにお話する人も多くて。そこから手伝ってくれたり、応援してくれたりするんです。商店街の近くに暮らすのは初ですけど、良い距離感だなと思います」
「何かをつくって販売することも、自分にはできないと思っていて。みなさんに背中を押してもらえて、やってみることができました」
「誰にでも優しいわけではなくて、応援したくなる人柄もあると思うよ」、と隣で聞いていた中川さん。
取材の合間にも、お店の前を通る人に挨拶したり、差し入れをくれた方に感謝を伝えたり。まるのさんが、関係性を大切にしていることが伝わる。

大企業からの転職に、不安はありませんでしたか?
「規模やお金の不安はありました。選書サービスや全国での出店など、届ける範囲を広げることで、自分のなかのバランスを保っています。あと、無駄なお買い物が減ったので、貯金はすごくできましたね(笑)」
「三条で知り合った子がきっかけで、台湾に4回も出店できて。海外で仕事ができるとは想像もしていませんでした。夢が叶ったというか、夢とも思っていなかったことが叶って。こんな人生になってうれしいなと思っています」
場所がある。生活の保証がある。チャンスを応援する人がいる。
その土壌があるから、やってみたいは形になっていくのだと思いました。
三条市には、ほかにも11種類の地域おこし協力隊で募集があるようです。少しでも興味を持ったら、まずは気軽に話を聞いてみてください。
やってみたいと思っていた夢が、このまちで叶うかもしれません。
(2026/02/06 取材 櫻井上総)