突然ですが、「カッパ」にどんなイメージがありますか?
小さい子どもや、通学中の学生、登山や野外フェスなどのアウトドアだったり。大人になってから日常的に使うことは、そう多くないかもしれません。
けれど、まちを見てみると、カッパをはじめとする防水ウェアを身にまとい、日夜働く人たちがたくさんいます。
工事現場や交通整理、港でコンテナの積み下ろしをする人。また、水産業などの1次産業分野や医療現場まで、人々の暮らしを支える人たちにとって欠かせない仕事道具です。

船橋株式会社は、レインウェアと防水エプロンの企画から製造、販売までを一気通貫で行う会社。特に、環境が厳しい現場で働く人のための防水ウェアを手がけています。
今回募集するのは、それぞれの現場の困りごとから商品提案をする営業、トレンドや現場の声から商品を企画し、販売戦略を考える企画マーケティング。あわせて、商品をデザインするパタンナーも募集します。
現場の声からチームで最適な形を模索するものづくり。使う人のことを思い、試行錯誤を楽しめる仲間を探しています。
名古屋駅から近鉄名古屋線に乗り換え、10分ほどで船橋株式会社の最寄り駅、伏屋駅に到着。穏やかな住宅街が広がる駅前は、なんとなくほっとする。
車で5分ほどの川沿いに、工場兼オフィスが見えてくる。

1階が倉庫、2階が製造工場、3階がオフィスやミーティングルーム。入ると、ちょうど昼の休憩を終えたスタッフ数名とすれ違う。明るく挨拶をしてくれて、気持ちがいい。
3階にあがり、ミーティングルームで迎えてくれたのは、代表の舟橋さん。

あれ?「ふね」の字が社名と違うような。
「船橋株式会社は、創業者の祖父が名づけたんです。『うちの会社は、BOAT(舟)ではなく、たくさんの人が乗れるSHIP(船)であってほしい』と願い、『船橋』とつけました」
1921年に創業し、関東大震災を機に高まった需要に応え、カッパ製造をはじめる。
何度も押し寄せる荒波を100年以上超えてきた。
1959年の伊勢湾台風は、東海地方を直撃し、未曾有の被害をもたらした。被災を免れた船橋株式会社は、スタッフ総出で被災した人たちにおにぎりを配り歩いたそう。
「祖父は、今一番必要なものは食べものだ!と。何か困っていることがあれば手伝ってこいと、仕事はそっちのけでスタッフたちを送り出しました」
「『困りごとを解決するのが仕事だ』っていうのが祖父の信条でしたね。その姿勢は今も船橋の中に生き続けています」
船橋株式会社が主につくるのは、ハードな現場で働く人のためのレインウェアと防水エプロン。
雨風、油、薬品、目に見えないウィルス、はたまた悪天候下での事故。現場に潜むどんなリスクがあるかで、働く人を守るウェアの性能やデザインは大きく異なる。
たとえば、高所作業用のモデルなら、転落防止のハーネスの上から着用でき、反射材や蛍光色を用いたデザインにより遠くからも作業員を視認しやすい。
裏地はメッシュ素材で、熱やムレを逃す開口部があり、長時間の作業でも快適な着心地でいられる。一見するとよく見るウェアだけれど、着ている人にとっては作業のしやすさが違う。

創業100年を機に、これからの会社の在り方を整理し、改めて組織の土台を強くしていこうとしている。
『滴(テキ)の中で輝く人へ。』をビジョンに、より現場に足を運び、働く人の困りごとを解決するための商品づくりに力を入れていくと決めた。
「それまでは雨や水から守るってことに目を向けていました。けれど、現場に行って実際に目にする働く人たちの姿はかっこいいんです」
「ヒーローみたいな彼らを輝かせたい。カッパは単なる雨具ではなく、現場で働く人の命を守るための道具です。生き生きと活躍でき、同時にさまざまなリスクから守るウェアをこれからもつくっていきたい。今は、次の時代の船橋株式会社になる過渡期を迎えています」
OEM品や量販店にあるようなカッパではなく、自社で企画提案できる高付加価値の商品づくりへと舵を切る。同時に、商品をつくり届ける会社組織や営業、企画マーケティングといった各ポジションの在り方の整理も進めているところ。
舟橋さんの息子で、営業の昌樹さんはこの動きの中心を担うひとり。別の日にオンラインで話を聞いた。

「最近では、カッパやエプロン以外にも、子牛を寒さから守るカバー、バイオリンケース、エアバックの残布をアップサイクルしたカバンとか。変わったところだと白装束とかも扱ってきました」
「10枚だけつくってほしいという要望も、手間のかかる加工も社内に製造ラインを持っているから柔軟に対応できるのが強みなんですよね」
業界も用途もなんとも幅広い。実はニッチな困りごとをもつ現場は多いのかもしれない。細やかなニーズへの対応は、会社のものづくりの可能性や販路を広げる。お客さんにとっても会社にとってもメリットになることだと思う。
「まだ世にない商品に関われるのは面白いですね」
「お客さんは、北海道から沖縄まで。遠方でも直接会いに行くことを大事にしているので、出張は月に1、2週間と多いです。個人的には、各地のグルメを楽しみに頑張れているところがあります(笑)」
営業の仕事で特に重要なことが、顧客ニーズの深堀。営業がしっかりとお客さんと関係を築きヒアリングを行うことで、お客さんの困りごとにぴたっとはまる商品づくりができる。
最近あった相談が、「入館証を無くしてしまう」というもの。詳しく聞いてみると、業務用のカッパのポケットから入館証を取り出していると、仕舞うときに落ちて紛失してしまうことがたびたびあったそう。
そこで昌樹さんは、カッパの左胸にパスケースをつけることを提案した。実際に社内の担当へ連携し何度も試作品を製作。2ヶ月ほどで商品化まで至った。
取り出す必要がなく、作業の邪魔にもならないカッパが生まれた。たった1件の相談でも役に立てることはとことん実現していく。

「『エプロンが重い』ならより軽い生地をおすすめしますが、お客さんのなかに『こうして欲しい』のイメージがないこともあります。いろいろな声から、お客さんが求めるものを言葉にして整理し、形にするのが僕たちの仕事です」
「船橋は、代理店と、食品工場・食肉加工場などのユーザーへの販売の両方をしていますが、今は販売の9割が代理店なんです。だからこれからは、ユーザーへの直接販売に力を入れていきたい。そのために、僕たちが集めた現場の声を具体的な商品に落とし込む企画マーケティングのポジションを今回の募集ではじめて採用しようとしています」
新設される企画マーケティングのポジションに入る人は、開発課の立松さんの働き方が参考になると思う。
新卒で入社し、6年目。実際にユーザーの元を何度も訪ね、商品開発に取り組んできた。

商品開発課は、サンプル製作から量産の製造管理をする部署。
企画マーケティングは、「営業」がお客さんの困りごとを聞き取り、試作・本製作する「商品開発課」をつなぐポジションだ。
どういう仕事なのか、参考になりそうと紹介してくれたのが、立松さんが開発した、水産現場に特化したエプロン。立松さんは、企画マーケティングが担う、お客さんの困りごとを反映した商品づくり、販路開拓も担当した。
「名古屋市中央卸売市場という魚屋さんが集まる大きな市場があります。昔はお得意先だったのですが、最近は営業にあまり行けていないこともあって、ほとんどのお店が他社製のエプロンを使っていました」
「そこで4年前に新しいエプロンを開発するプロジェクトが立ち上がって、担当を任されました。違う魚を扱う5軒の魚屋さんにモニターをお願いして。毎週2回市場に通い、結局100回くらい試作したんじゃないかな」
100回も!
「やっぱり現場で使ってもらわないと、わからないことが多くて。どこが擦れるとか、動きづらいとか」
「最初は、魚屋のおじさんたちも全然話を聞いてくれないし、なんならちょっと怖い雰囲気だし、通い続けて打ち解けるまで大変なこともありました。けれど、試作品に対して率直に意見をくれて、こっちも満足してくれるものをつくるために改良を重ねて。気づいたらかなりの数をつくっていましたね」
「ただ、つくるのが好きっていうのもありますね」と、立松さん。
そうして完成したエプロンは、厚手で水や血液に強く、摩擦にも耐える丈夫な仕様。
最大の特徴は、肩紐をなくしたデザインだ。
たすき掛けでとめる従来のエプロンだと、長い時間つけていると肩が凝る。その困りごとに応えるため、胸の部分にチューブ状の芯を入れて、自立するし、身体の動きに合わせて曲がるつくりのものを生み出した。

今でも月1のペースで市場に通い、改良を進めているそう。次は腰紐をワイヤーに変えた商品を、生産の手間と価格を抑える形で実現できないかと考えている。
「魚を扱う人が最適だと感じられるものをつくりたい。これはもう僕の趣味みたいな感じですね(笑)」
「市場でチラシを配ったり、市場内の販売店や組合に取り扱ってもらったりと、同じ困りごとをもつ人にちゃんと届くような販売の仕方を考えて。商品のストーリーも伝えられるし、クオリティにも自信があります。自分がつくったものを、お客さんが納得して買ってくれるのはすごくうれしいですね」
今では、名古屋を中心に全国にこのエプロンは広がっているそう。

「ちゃんといいものをつくり、売り出せばチャンスはある。ほかにも、トリマー用のエプロンをつくっています。魚屋とは求められることが違ってまた面白いんです」
新しく企画マーケティングとして入る人も、現場の声から商品企画をしてほしい。
まずは船橋株式会社がどんなものづくりをしているのか、製造の現場に入り、実際に手を動かす。そのうえで営業と同行し、クライアントの困りごとから、どんな解決策があるかを考え提案し販売戦略を考える。
ゆくゆくは、立松さんがつくったエプロンのような、船橋の定番商品づくりにも携われる。
新しいポジションではあるけれど、商品に関することは立松さんや製造チーム、販売戦略に関しては、舟橋さん、昌樹さんたちに相談しながら進めていくことになる。
「今のビジョンに向けた取り組みや体制づくりはまだはじまったばかり。安く大量につくるような案件もあるし、クライアントの困りごとに対して力になりきれていない案件もあります。現場の仕事とビジョンの間を埋めていく取り組みは、これから頑張っていこうかという感じです」
「ものづくりの会社なので、料理とかプラモデルとかDIYとかでも、何かつくるのが好きな人が来てくれるとうれしいです。一緒に手を動かしながら最適な形を考えていきましょう」
雨風、薬品、ウィルス、事故。ハードな現場で働く人たちの命を守り、同時に活き活きと活躍できるように。
創業から100年を迎え、もう一度「創業期」のような熱量で根っこから組織を編み直しています。
地図のない海で一緒に泥臭く試行錯誤し、組織そのものを自らの手で形づくることを楽しみながら、共に舵をとってくれる仲間を募集します。
(2025/04/28 取材、2026/03/20 更新 荻谷有花)