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寄り添うフィッティング
足も、心も、軽くなる

困りごとや悩みを抱えているとき、具体的な解決策も大事だけれど、まずその葛藤やモヤモヤを外に出せると、なんだか前向きに進んでいけることってあると思います。

パラマウント・ワーカーズ・コープ(以下、パラマウント)は、お客さんに寄り添うことを何より大切にしています。

靴のフィッティングやオーダーインソールの製作などを通して、お客さんの足や体の悩みに向き合っています。

お店では、足圧を測定したり、足や体のくせを分析して、お客さんの悩みの原因を探ります。

整形外科医や柔道整復師などの専門家をお店に招いたイベントを開催することもあります。

スタッフも足や体について学びながら、それをお客さんに実践したり。切実な足の悩みに応えようと日々努力を重ねています。

今回は、催事販売スタッフと直営店スタッフの募集です。

靴のフィッティングを通じて、お客さんの気持ちも軽くする、そんな仕事だと思います。

 

東急東横線の新丸子駅を降り、東口を出ると商店街が広がっている。

飲食店や純喫茶、マッサージ屋などがひしめき合ってにぎやか。

商店街をまっすぐ3分ほど歩くと国道沿いに、パラマウントの直営店「ポディア武蔵小杉店」が見えた。

店内に入ると革靴やスニーカー、サンダルなどが並んでいる。

中央には靴のフィッティングスペース。

足のサイズを測る器具やオーダーインソールをつくる機械などが置かれている。一人ずつ丁寧に接客できるよう、基本は予約制だという。

穏やかな笑顔で出迎えてくれたのは、代表の竹内さん。

「うちは元々、大手靴メーカーの下請けでしたが、倒産もありまして。労働組合が自分たちで経営を始め、靴の製造だけでなく、販売も始めたのがきっかけなんです。いまの事業体になって、色々な方に助けてもらいながら、今年で28年目になりますね」

全国各地での催事販売や東京・神奈川の直営店で、靴を対面で販売している。

理学療法士と靴を共同開発したり、オーダーインソールを導入したりと、足の悩みに応えるため、創業時から試行錯誤を重ねてきた。

現在、革靴のオーダーは全体の1割以下という。フィッティングを通じて、お客さんの足に合った既製シューズの提案がほとんど。

お客さんは60代を中心とした中高年の女性が8割以上を占める。外反母趾や巻き爪、膝や腰の痛みなど、足にトラブルを抱えている方が多い。

そのため靴のフィッティングやインソールの製作にとどまらず、整形外科医や整骨院などの専門家とも連携している。

整形外科の先生がお客さんの歩き方を見て、オーダーインソールを製作したり、整骨院の先生から体のくせを和らげるパーソナルストレッチを教わるイベントを定期的に店舗で開催。お客さんからの人気も高いという。

けれど、フィットする靴を提供したり、足や体へのアプローチだけでは、お客さんが本当に満足のいく購入にはならないと竹内さん。

「足にぴったり合う靴を選ぶのも大事だけど、気持ちを緩めることが、同じくらい大事なんですよ」

気持ちを緩める?

「心が固まっちゃっていると靴のフィット感も落ちるんです。足が痛くて、体の調子も悪い。そうすると心も疲れてくるんですね」

病院に行き、診察まで長い時間待っても、先生に話を聞いてもらえるのはわずか数分で終わってしまう。

日ごろから感じている悩みを、本当はもっとじっくり聞いてほしい。

そんな気持ちを抱えている人は少なくないという。

だからこそ、パラマウントの接客は、お客さんの気持ちをまるごと受け止めることから始まる。

「効率だけを求める方には向かないかもしれませんが、仕事にやりがいや意義を見出したい方には、いい環境だと思います」

「今ってネットで簡単に買い物ができますよね。販売の仕方っていろいろありますが、パラマウントが創業当初からずっと続けてきたこの対面販売は、この社会に必要だし、これからも大事に残したいと思ってるんですよ」

 

催事販売の最前線で、23年にわたり全国を飛び回っている営業部長の佐藤さん。遠方エリアの多くを担当している。

「接客はきらいじゃなくて。麻雀が好きで、高校を卒業してから、雀荘でバイトもしていました。麻雀って、人間性がすごく出るんですよ。そういう人間観察が、意外と今の仕事に役立ってるのかなって思います」

「相手の表情を見ながら話題や言葉のさじ加減は調整しますが、ちょっとピリ辛なコミュニケーションを取り入れて、記憶に残る接客をすることもあります」

ピリ辛なコミュニケーション…?

「足に不調が出て病院に相談しにいくと、加齢・体重・筋力の3つを原因として診断されることが多いんですね」

「ありきたりなことしか言わない先生は三流かもしれない、とズバッと言うこともあります。そんなこと言う靴屋はなかなかないと思う。でもそのピリ辛が、ぐっと信頼関係を深めてくれることがあるんです」

あえて「お客さん、気難しいからですよ」と、突っ込むことで笑いが生まれることも。

ネット販売の普及などで、どこでも気軽に靴が買えるようになった現代。

そのなかでも、こうやって一歩踏み込んだ接客は印象に残るし、ここで買いたいという理由につながっていると思う。

催事販売スタッフは佐藤さん含め3人。ほかの2人は主に関東近辺を担当している。

「僕は1月下旬から出張が始まって、栃木と群馬に行きます。3月になると雪が溶けてくるんで、青森・岩手・山形に、そのあと九州ですね。九州は年に4回ほど行くんですけど、1回あたり2〜3週間販売して帰ってくるんです。僕は年間160泊ぐらいしています」

在庫を車に積み込んで、現地に向かう。販売の準備で12足入りの段ボールを40~50箱ほど運ぶ。会場が入口から遠かったり、エレベーターがない建物もあるので、体力に自信がある人は頼りになりそう。

新しく入る人は、先輩スタッフと一緒にまずは近隣エリアを担当。催事がないときは店舗で接客をしたり、佐藤さんに同行して、サポートスタッフとして出張することもある。

同行を重ねながら、足の見方やサイズ測定、フィッティング、インソールの製作などを覚えていく。

「地方での販売って、クレームを出してはいけないプレッシャーがあるんですよ」

地方の販売は、基本的に年に2回しか同じ場所に行けない。

購入後に「ここが痛い」と足の痛みが出ると、すぐに対面で調整できず、お客さんの不満につながってしまうこともある。

だからこそ、その場で納得して買ってもらう必要があるという。

以前、購入したお客さんが会場に来て不満を言うと、売り場全体の空気が悪くなってしまう。

「そのときに言い訳をすると会場の雰囲気がどんどん悪くなっちゃうんですよ。だから『僕の責任です、すみません!』とあえて大きな声で謝ります。そうすると場の空気も少しずつ変わっていくんです」

北は北海道から南は鹿児島まで全国行脚しているが、同じ場所は年2回なので、決して利用しやすいとは言えない。

それでも長年にわたって家族で来て、毎回のように利用する方も少なくない。利用者の8割以上がリピーターだという。

時代の流れなのか、靴の専門店がなくなる地域もあり、足に悩みを抱える人たちにとっては、かけがえのない存在なのかもしれない。

お客さんの期待も高く、プレッシャーは大きいだけに、満足してもらえたときの達成感はたまらないと佐藤さん。

充実した仕事終わりはおいしい酒を飲みながら、その地域の方々と話をするも、楽しみの一つ。

佐藤さんの仕事の原動力にもなっている。

「私が仕事をしてよかったなって思うのは、お客さまの人生の中にちょっと存在してるって感じる瞬間かな」

「小学生で初めて会った子が、社会人になって革靴を合わせに来てくれたり、10年ぶりに会った人が『大学卒業して、就職して、結婚して、離婚して今になります』とか。いろんな人生に触れられるんです」

ときには、お客さんの最期に関わることも。

「以前、靴をフィッティングしたお客さまがお亡くなりになったとき、その人の奥さんが『生前、夫が気に入って履いていたので靴も一緒に棺に入れました』って、伝えにきてくれたこともありました」

お客さんに何かを残せるって、なかなかあることでもないように思う。

 

武蔵小杉店の店長を務める武田さんも、日々精進して仕事に向き合っている。

「僕は先輩の佐藤みたいに『ピリ辛』接客はまだまだ勉強中です(笑)」

店舗での接客がメインだが、催事販売のヘルプに行くこともある。愛嬌のある笑顔が印象的で、なんでも気軽に相談できそう。

新卒で商社に入社したが、ナレーターを目指したいとの思いから退職。

ナレーターの仕事と、靴屋のアルバイトの両立を3年ほど続けたのち、正社員の仕事を探し、靴好きを活かせるパラマウントに入社した。

入社後、これまで働いてきた靴屋との違いを感じたそう。

「ここには足や体に悩みを抱えた人がきます。自分の体の悪いところをお医者さんに指摘されまくって、自分がダメなんだって気持ちになっている方もいるんですよ」

「最初の5分がすごく重要だと思っていて。相手の話をじっくり聞いたうえで、その人のいいところ、頑張っていることを伝えるようにしています。たとえば、外反母趾がひどくて本人はすごく悩んでいるけれど、立ち姿がすごく綺麗だったりするんですよ。『足の不安定さをカバーして、きれいな立ち姿ですね』とお話したり」

歩き方のクセや日常生活の様子を聞いて、「この人にはこれだ!」という1足を提案する。

地域に密着した店舗だからこそ、長年通ってくれるお客さんも多い。

「来店いただくたびに『新しいことをやってるな』って感じてもらえるよう、自分の引き出しを増やすようにしてます。自宅でできるストレッチなどのセルフケアをお伝えすることもありますね」

靴だけで体全体の悩みを解決するのはむずかしいからこそ、いろいろなアプローチでの接客を心がけている。

「自分が接客をしたお客さまが1年半後に、また自分を指名して来てくれた時は、何かその人にとって良い部分を残せたんだなって、すごくうれしかったですね」

「人の役に立ちたいと思っている人と一緒に働けたらうれしいですね。お客さまに対しても、会社に対しても、献身的な人の方がやりがいを感じられる仕事だと思います」

 

パラマウントでの仕事は、マニュアル化できない、人間同士のピリ辛で温かいコミュニケーションが印象的でした。

お客さんとの距離感は経験を積み重ねてできるようになることもあれば、センスみたいな感覚が求められるようにも感じます。

でも、全国を旅しながら、行く先々で待ってくれている人のために汗を流す。店舗でじっくりとお客さんの足と人生に向き合う。

靴を通じて、人の心と体のケアができる環境があると思います。

(2026/08/12取材 小菅綾香)

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