コラム

“今まで天井しか見ていなかった人が、椅子に座ったかたちで移動できるようになるということは、きっと生活がガラッと変わりますよね。そういう可能性があるんだなとしみじみ感じて。”

ただ純粋に、向き合う 』 より
有限会社そう工房 代表 角田篤彦さんの言葉

このコラムでは、これまで私たちが出会ってきた人たちの"大切にしたいことば"を紹介しています。
今回大切な言葉を教えてくれたのは、日本仕事百貨の記事を読んで、オーダーメイドの車いすや座位保持装置をつくっている「そう工房」で働くことになった田中さん。
座位保持装置とは、自分の力だけで座ることが難しい人のために、姿勢を保持して家族と一緒に食事したり学習したりするのをサポートする椅子です。
人とものづくりに向き合う、等身大のお話を聞かせてくれました。

見えている世界がガラリと変わる。そうした状況がその人にとってどれほど大きなことなのか。そのとき本人も周りもどんな気持ちになるのか。想像が追いつかなかった。それでも、「それってきっとすっごいことだ!」と漠然とした確信を持ち、興味を抱いたことが応募のきっかけでした。

もともと私はものをつくることが好きで、仕事につながればいいなという希望はありました。しかし当時置かれていた状況のなかで、自分には無理なことと決めつけていました。矛盾を抱えながら生活していくうちに、“自分が納得し満足できる人生を歩むためには行動に移さなければいけない“という思いが強くなり、意思を固めたのが32歳の冬。そのときこの記事に出会いました。

記事には、聞きなれない言葉や想像ができないことも多くありましたが、働いている人たちの言葉や写真にうつる表情からは、包み込むような優しさと、自分の意思できちんと生きているような強さを感じました。

それに加えて自分の中にすーっと染み渡ったのが、記事の冒頭にあった『何かものごとに出会うたび、今の自分が良いと思う選択をしていく。』という言葉。今自分がいる状況、これからどう生きていくか、自分自身はどう思っているのかと改めて問うと、不思議と答えは見えてきて、それからは怒涛のごとく行動に移しました。

入社して早くも1年が経過し、今は製作兼営業、時おり縫製を行っています。工房でのものづくりは、自分の頭の中で考えるのはもちろん、色んな目線からの思考が必要で、立場の異なる人たちと一緒に、使う人一人ひとりのための椅子をつくる面白さや難しさを実感する毎日です。一つのことを知ると、その何十倍もの疑問やさらに必要となる知識が溢れ出てきます。

今はまだ仕事を覚えることに必死でがむしゃらな日々を過ごしていますが、今は自分が自分として生きていることを実感できています。いつか自分も、誰かの目線が少しでも良い方向に向かっていくように、その人がその人らしく生きていけるための椅子をつくるお手伝いをしていけたらと思います。

有限会社そう工房
製作・営業 田中理香さん

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