コラム

第1回 いいチームってなんだろう?

あけましておめでとうございます。2023年もたいへんお世話になりました。

毎年企画している年賀状コンテンツ。今年のテーマは、「いいチームってなんだろう?」です。

日本仕事百貨では、これまでさまざまな仕事を紹介してきました。特徴のある企業さんが多く、たくさんのご縁も生まれました。引き続きいろいろな生き方、働き方を紹介していきたいと思います。

昨年からは新たに、「自分の仕事をする人が増えている」というビジョンを掲げました。

お金を稼ぐためだけにしていない仕事、お客さんではいられない仕事。無理なく健やかに、ワクワクするような仕事。

でも、そもそも仕事って一人ではできないもの。

自分の仕事をするためにも会社や地域、団体など目的を持って一緒に行動する「チーム」の存在は必要不可欠だと思います。

どんなチームだったら、そんな未来を実現できるんだろう。

2024年は、このテーマについて探求していきたいと思っています。

そこで、まずは身近な「会社」というチームに焦点をあてて、シゴトヒトのメンバーがイメージする「いい会社」について、2組に分かれて話し合ってみました。

お正月のおともに、ぜひ読んでみてください。

 

まずは1組目から。高尾山口駅の目のまえにある宿泊施設、「TAKAONE」の屋上で話し合いました。

写真左から
杉本:入社3年目、編集者。取材・記事の執筆をしている。

槌谷:入社1年目、クライアントの窓口業務や、新規事業の立ち上げなどを担当。
後藤:入社8年目、編集者から総務を経て、いまは主にイベントなどを担当。
中川:日本仕事百貨の前編集長。現在は長崎に拠点を移し、フリーランスとして働いている。

三方良し=いい会社?

杉本:いい会社ってなんだろうって考えてみて、パッと思い浮かんだのが、ゴバイミドリさん。オリジナルの緑化システムを使って、都市部のビルや住宅の緑化プロジェクトをしている会社さんです。関わる人へ与える影響がすごいなって気がしていて。

たとえば、都市の緑化を進めることで環境問題に関与できるし、無機質で均一な都会の空間に自然の揺らぎがあることで、人々のストレスも緩和できる。

ほかにも、ゴバイミドリさんは里山の森林管理のサポートをしているそうなんです。その代わりに、育った苗木を提供してもらって都市部で使っているので、都市部の緑を増やせば増やすほど里山にも還元される。

杉本:ずっと同じ施工会社さんや、金網メーカーさんたちと協力していて。それによってノウハウが蓄積されて、より自由なデザインや施工を実現できるようになっています。

働く人はどうかというと、都市開発とか大きい案件になるほど、工期の早さや価格の安さを優先的に求められることもあって、心的負担も多いそうなんです。だから、できるだけ自分たちの理念に共感してくれる人と一緒に仕事をしていて。

制度としても、年間休日を140日にするとか、夏は会社としてまとめて休みを取るとか。お客さんも、関係会社も、働く人も。関わる人に対する優しさのある会社さんだなって思います。

中川:三方良しみたいに、みんなにwin-winの良い形がある。そこに事業ドメインや切り口の独自性が加わることで、持続可能な事業になるし、信頼関係の強いチームができあがっていくのかもしれないね。

杉本:たしかに、三方良しは、ひとつの大きな要素かなと思いますね。

一貫している=いい会社?

槌谷:わたしは会社マニアというか、いろんな会社のことを知るのが好きで。そのなかでも、会社が実現したい世界観が見えると素敵だなって。

中川:マニア的には、具体的に好きな会社とかある?

槌谷:個人的に応援しているボーイズグループがいるんですけど、彼らが所属している会社の取り組みを見ていると、「いい会社」を考えるきっかけをたくさんもらいます。

その事務所では、『才能を殺さない』っていうことを大切にしていて。社長はもともとアーティストグループのメンバー。わたしはファンクラブに入っているんですけど、作曲の様子をSNSで配信したり、ダンスやカメラのワークショップも開催したりしてて。

才能を殺さないで磨くのは、アーティストだけでなく、ファンも一緒。一貫して体現しようとしているところが、すごいなって思います。

会社に入ったら、個性を消される、みたいな感覚があるじゃないですか。個人と組織の利益って相反するものだよね、みたいな。でも、本当は別に対立関係じゃないと思うんです。

お金を稼ぐためだけじゃなくて、自分たちで考えているビジョンも実現できる会社になるには、どうしたらいいんだろうって、最近は考えています。

後藤さんはいかがですか?

幸せにしたい人が明確にいる=いい会社?

後藤:わたしが思い浮かべたのは、浅間山の麓、北軽井沢を拠点に活動している、きたもっくさんかな。代表の福嶋さんが広大な土地に木を1本1本植えるところからキャンプ場づくりが始まって、コテージも自分たちで施工して。

そこから、自伐型林業を行ったり、建材やストーブとか焚き火のための薪も自分たちで製材したり。養蜂に、焚き火を通じた場づくりを実践するミーティング施設「TAKIVIVA」の運営も。さまざまな事業が根を張り巡らせていくような感じで広がっているんだよね。

薪も、全国いろんなところに提供する選択肢もあるかもしれないけど、自分たちの足元に広がる地域や自然に還元することを大切にしているから、“35キロ圏内”の地域に限定して流通しているそう。

いろんな事業がバラバラになっているんじゃなく、つながって動いている。スタッフの一人ひとりにも、考えが浸透するようにコミュニケーションも大事にされていて。地に足がついているというか一体感がかっこいいなって思うし、考え方を共有する大切さを最近よく感じています。

槌谷:きたもっくさんって、誰を幸せにしたいか、はっきり決まっていると思いますね。それって大事なことなのかもしれない。もちろん変わっていく可能性もあると思うんですけど。

決まっていないと、働く人は自分の仕事の先に何があるのかわからないように思うんです。

中川:記事にしやすいところはいい会社だって思うこともある。それはやっぱり、自分たちのことをちゃんと言語化できているっていうことなのかなと。

その人なりに、いま自分がやっていることが何につながっているのか。誰を幸せにしているのかってこともそうだし、それを他人の言葉じゃなく、自分の言葉で言えるのが大事だと思う。

やりたくないことはやらない=いい会社?

中川:同じ状況にポンって置かれても、『えっ』て思う人もいれば、『めっちゃ合う』って人もいる。結局、そこがずれてしまうことが不幸だと思っていて。その人のエネルギーがちゃんと活かせるところに配置できれば、会社に与える影響って、いい方向に変わると思うから。

槌谷:自分で決められることが多いことも、大事な要素なのかな。この会社にいないといけない、じゃなくて、自分がいたいからここにいるっていう状態がずっと続いているとか。

あとは、自分の範囲が広い、みたいな感覚。自分の目の前の作業だけじゃなくて、会社全体のことを自分ごとに感じている人が多いと、会社全体が生き生きしているイメージがあるし、良い方向に向かっていくことが多い気がします。

中川:マイナスがないというか、自分を殺してそこにいる時間がないことも大事だよね。

埼玉県の所沢市で木工家具をつくっているlaboratory代表の田中英一さんは、全部やるんだよね。財務や経理も、ものづくりも、料理も掃除も、なんでもやる。

英一さん曰く、『作家はつくるだけやっていればいいっていうのは間違いで、そのほかのことも全部丁寧にやるから、初めて木が削れるんだ』って。

中川:話を聞いていて、そうだよなと思った。一つの椅子にどれぐらいの材料費や時間がかかっているのか、すべてExcelに算出されているんだよね。

めちゃくちゃロジカルだから、「このテーブルはいくらです」って確信を持って言える。それは同時に、自分たちの仕事に自信を持てることにつながるんだろうな。

とはいえ、みんながみんな数字を考える必要もない。そこが会社である意味だと思うんだよね。

自分が得意だと思えることは、まるっとやればいいし、苦手なら別の人が補えばいい。そういう支え合いが自然と起きていく会社は発展性があると思う。

『うっ』っていう時間をなくす。そのための工夫をちゃんとしているのが、いい会社なんじゃないかな。ざっくりした話になっちゃったけど。

あと、このあいだ発見したことを喋っていいですか。

一同:どうぞ(笑)

中川:やりたいことをやるのか、やりたくないことをやらないのか。この2つの考え方があるときに、俺はやりたくないことをやらないほうが、自分にとってはしっくりくると思ったんだよね。

やりたいことはなくなるかもしれないじゃない? 美味しいチョコレートをつくりたいと思っても、できちゃったらその先に目指すものもなくなっちゃう。まあ、それが無限に出てくる人もいるんだけどね。

でも、やりたくないことをやらないって、無限に続けられるなって。それをしないという選択は常に続けられるから、持続的なんだなっていう発見をしました。

杉本:ちなみに今は、何をしない選択をしてるんですか?

中川:フリーランスになった理由の一つは、自分のバイオリズムに対して、会社のリズムが必ずしも一致しないときがあると感じたからなんだよね。

そうなったときに、帳尻合わせで頑張ることがきついって感じるようになっちゃって。そんなこともあって、いったん正社員からフリーランスになることを選んだ。

やりたいことを見つけようっていうのももちろん大事だし、いいことではあるんだけど、俺のベースにあるのはそっちかな。

「やりたくないこと、後ろめたいことは、やってない』ってみんながはっきり言える会社が、いい会社。やりたいことに向かっている会社よりも、そっちのほうが俺はしっくりくる感じがする。

おわりに

みんなで話すなかで、いい会社のさまざまな要素が出てきました。

結局のところ、バシッとこれがいい会社だ!って言う必要もなさそうだけれど、「よく見えている会社」は、いい会社と言えるのかもしれません。

目先の利益に捉われず、自分たちのビジョンのために動くとか。ドライブしたいけど、ケアが必要だと思ったら、立ち止まってみるとか。自分たちだけではむずかしいところは、ほかの人に頼るとか。

目指す方向性や社内外の状況が、よく見えている。

そして、見栄を張らずに一つひとつ対処していく。

いいときもわるいときも、そうやって調節できる会社はいいチームなんじゃないかな。

まだまだいろんな答えがありそう。続いては2組目です。

(2023/10/25 書き手 杉本丞)