2024年の年賀状企画、「いいチームってなんだろう?」
身近な「会社」というチームに焦点を当てて、シゴトヒトのメンバーが2組に別れて話し合いました。
1組目を終え、つづいては2組目です。
(第一回はこちら)
(写真左から)
長島:入社1年目、クライアントの窓口業務や、新規事業の立ち上げなどを担当。
増田:入社6年目、編集者。子育てのかたわら、取材・記事執筆を担当。
田辺:入社1年目、編集者。取材・記事の執筆を担当。
ちなみにここは、清澄白河にあるリトルトーキョーの3階です。
このフロアは、さまざまな分野のゲストをお招きし、多様な生き方・働き方を語り合う「しごとバー」の開催をメインとするスペース。
さらに階段を降りると、神田からお引越ししてきたオーガニック・レストラン「the Blind Donkey(ブラインドドンキー)」がお店を構えています。
しばらくお休みをいただいていたイベントも、おかげさまで晴れて再開しています。あたらしい風が吹く場所、清澄においでの際は、ぜひお立ち寄りください。
この3階の一角で、日本仕事百貨のスタッフが今回のテーマについて話をしました。
田辺:まずは『いい会社とは?』について、それぞれの意見を付箋に書いて出し合いますか。
増田:「いい」って、なにか定義はあるんですか?
田辺:そこは決めていません。会社にとってなのか、求職者にとってなのか、もしくは日本仕事百貨にとってなのか。主語によって変わると思うので、それも探っていきたいです。ざっくばらんに話せたらいいなって。
長島:いい会社の要素を抜き出せたら、クライアントリレーションの僕としては普段の仕事に活かせると思っていて。たとえば、自社の課題が見える化できるようなサービスにつながるかもしれない。
もちろん答えのない問いなので、この場はとにかく思ったことを出しましょう。
田辺:補足助かります(笑)
田辺:たくさん出ましたね。大まかにジャンル分けしてみました。左上から時計回りに『会社のあり方』『個人のあり方』『働く環境』ですね。
気になるものをあげるとすると…「利益よりビジョンの達成」は、思いつくクライアントさんがいて。それが中川政七商店さん。
田辺:中川政七商店は、“日本の工芸を元気にする!”をビジョンに、歴史あるものづくりを残すための事業に取り組んでいる会社。取材のとき、「どんな人が活躍できるか」という質問に対して、副社長の荻野さんの言葉が印象に残っていて。
「すべての意思決定の先には、利益の最大化ではなくビジョンの実現がある。ものが好き、ものづくりや産地を応援したい、とか。どんなかたちであれ、ビジョンへの自分なりの共感があるといいですね」
田辺:中川政七商店が主催する、全国の工芸メーカーが出展する展示会の場で取材をさせてもらったんです。メーカーと小売店をつないで “販路を開拓すること”が目的の展示会で。
全国の工芸メーカーを一堂に集めて、商談や接客などを丁寧にサポートするので、運営側としては時間も手間もかかるはず。
でも、その言葉を聞いたときに、目先の効率だけを重視するのではなくて、中長期的に工芸が元気になるために必要なことなんだって納得したんです。
増田:中川政七商店は全国に直営店を展開しているから、スタッフ数も、規模も大きい。
たとえ事業が幅広くても、それぞれが担うひとつ一つの仕事の先が、ビジョンの達成につながっているって実感を持てるような環境づくりが大切だよね。
田辺:会社のビジョンを自分ごとにする、ですね。
もちろんお金がなければ、あたらしい事業に挑戦できないし、継続もできない。ビジョンの達成を目指した上で、ちゃんと売り上げが立つ。そんな健全な経営のあり方が、自分ごとに落とし込みやすいんだと思いました。
増田:わたしは自分ごとに関連して、「個人のやりたいことと会社の方向性がつながっている」を書いた。
増田:思いつくクライアントは、ダイバーシティホテルを運営している、アフェクタスさん。「ダイバーシティ」っていう特徴のコンセプトを掲げているんだけど、働いている人がそれを押し出している感じはまったくなくて。
宿泊業だから、仕事も年齢も性別も国籍も違う、多様な価値観や文化を持つ人が来てくれる。いろいろな人と接点が自然に生まれる環境だからこそ、誰に対してもフラットに接する姿勢が生まれていると思ったんだよね。
あと、それとは別軸で、社長が「自分で稼げる人を育てたい」って思いを持っていて、将来の独立も大歓迎。
そのために経営や企画、運営ノウハウを社員に共有していて。将来独立を目指す人や、試行錯誤していくベンチャーマインドを持った人が存分に活躍できるのはいいなと。
増田:とはいえ、もちろん働いて1年で独立じゃ短すぎるから、会社が順調なときもそうでないときも見てもらって、3年くらい働くのが必要とも伝えている。
長島:そう書いてあれば、明確にやりたいことがある人や、長く続ける覚悟がある人の応募が集まるように思いますね。
長島:僕は自分で書いた「社内に親切な人が多い」について話したいです。
長島:会社が、社内の人と人との関係を重要視して、コミュニケーションがうまく回るような場や機会をつくることって、とても健全だと思っていて。
「ありがとう」ってきちんと伝えるとか、困ったとき助けを求めやすいとか。そういう雰囲気を醸成していくことはいいことだと思う。居心地の良さにもつながるんじゃないかな。
田辺:すごくわかる。前職が接客業で「自分に余裕が無いと、人にサービスをしている余裕が生まれない」って日々痛感していました。
社員一人ひとりが無理のない業務量で、かつ業務内容に納得していて、健やかな状態でいる。そのためには、仕事を自分ごととして考える以前に、安心して働く環境が何より大事ですね。
長島:みんなが常に頑張れている会社ってほぼいないと思っていて。頑張れる人と、頑張りきれない人がいるはず。組織でいることの良さって、誰かがほかの人の分まで頑張ることができる環境をもっていることだと思う。
たとえば組織全体で10の力を出すってときに、今ちょっと自分は0.5しか出せないけど、ほかの人が1.1ずつ頑張れば、結果として10になるみたいな考え方。
増田:今出てきた話でさ、「この会社実際にやってるよ」っていう事例が出せたらいいよね。理想論で終わらないように。
全員:どこだろう・・
増田:ひとつ思い出した。「うすはり」が有名な、ガラス食器を生産する松徳硝子さん。これまでに記事を3本掲載しているんだけど、どんどん働く人の労働環境が良くなってるの。
田辺・長島:おもしろい。
増田:機械化が進むものづくりの世界で、機械にできない仕事を職人の手で行っている。工程のほとんどが繊細な作業だし、ガラスの特性もあって、一日に生産できる量にもおのずと限りが出る。
熱い窯の前でずっと立ちっぱなしという厳しい労働環境の一方で、休日も少ない状況。代表の齊藤さんが課題を認識していて、変えていかなければならないって赤裸々に話してくれたんだよね。
齊藤さんが代表に就任した2019年に、「より質の高いグラスをひとつでも多く作り、きちんと儲ける」「しっかり働き、しっかり休む」っていうスローガンを掲げて。
当時、年間休日99日だったのが、完全週休2日制も実現させて、2023年時点では119日に増えている。
コロナ禍にはじめた時短操業を今も続けていて、1時間短い勤務時間でも、以前と変わらない成果を上げられているんだって。それだけ効率よく働ける仕組みが整ってきている。
田辺・長島:すごい・・。
増田:結果、離職率も下がったし、フィジカルやメンタルに支障をきたす社員の方も激減したみたい。
強い意志を持って、会社の課題に対してできることから着実に取り組んでいる。その様子を、取材を重ねながら横で感じられたのが、すごくうれしい。
長島:会社の課題をしっかり認識できるって、大事なことですね。
増田:求人記事でそれを言えるっていうのが、何よりすごいと思う。応募する人にとっても、ギャップがなくなるはずだから。そんなありのままの姿に共感してくれて、求人もいいご縁につながっているんだよね。
田辺:こうやって変わっていくんだって、記事を読むごとに成長を追えるのは、読者としても、取材する側としても面白いことですね。
僕たちの組では、「自分ごと」という言葉がよく使われていたなと思います。
一人ひとりが集まって、組織をなしている。
だからこそ、会社の進む方向に納得していたい。将来やってみたいことにつながる仕事をしていたい。周囲の人に恵まれ、心地よい環境であってほしい。
理想像のように聞こえるし、すべてが満たされることはきっと難しい。
けれど、わずかでも、ゆっくりでも、理想を現実に近づけていくことはできるのではないかと思いました。
みなさんは、今回のコラムを読んでどう感じたでしょうか?
お正月休みを機会に、「いいチーム」について、もしくは、今自分が働いている環境について。じっくり考えてみるのもいいかもしれません。
(2023/11/1 書き手 田辺宏太)