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たとえば、会社のみんなで使う備品が足らなくならないように、いつも気にして補充してくれる。機器の操作中に問題が起きて困っているとき、様子に気づいて声をかけ、丁寧に解決方法を教えてくれる。
ちょっとしたこと、と思いがちだけれど、そうした積み重ねによって会社の雰囲気がよくなったり、目の前の仕事に集中できたりすることもある。
円滑に仕事を進められるように、細やかな気遣いや工夫を進んでしてくれる人の存在は、大きいと感じるときがあります。
今回紹介するビジネスコンシェルジュという職業は、そんなふうに会社にいい空気を吹き込むような仕事だと思いました。
具体的には、提携するクライアントのオフィスに常駐し、従業員から寄せられる問い合わせに対応したり、会議室や備品の管理をしたり。その会社で働く人たちをいろんな形でサポートするだけでなく、働く人たちがまだ気づいていない困りごとの種を見つけ、改善していきます。
このサービスを提供しているのが、コクヨ&パートナーズ株式会社。
まだ耳馴染みのないビジネスコンシェルジュという職業について、話を聞きに行きました。
午前9時過ぎ。品川駅港南口から、オフィスビルへ向かう人の流れにそって歩いていく。
品川シーズンテラスというビルに入り、エレベーターで18階まで上がると、コクヨ&パートナーズで採用担当をしている常見さんが迎えてくれた。
コクヨ&パートナーズの母体であるコクヨは、文房具やオフィス家具の製造・販売、オフィスの空間設計のほか、2004年からオフィスワークのアウトソーシングを行ってきた。
“働き方改革”が謳われるなか、2016年に分社化。
「本来その企業が注力すべき仕事に集中できるよう、コア業務以外を私たちに任せていただくことで、働く人たちのパフォーマンスが上がっていく。そんなふうに働きやすさのサポートを行う職業を私たちは『ビジネスコンシェルジュ』と総称していて。大手企業を中心に延べ100社の現場で活躍しています」
ビジネスコンシェルジュのサービス内容は幅広い。
たとえば、従業員から寄せられる困りごとについての問い合わせ対応のほか、営業先のお客さまに渡す手土産の用意に、会議室の管理や機器の操作説明など。
「誰にでもできそうな仕事と思われるかもしれませんが、それをプロフェッショナルとしてやろうとしたら簡単ではないと思います」
「相手にとって必要なことを先回りして考え、聞かれる前に用意しておく。そんなふうに一歩先ゆく気づきや工夫ができてこそ、ビジネスコンシェルジュだと私たちは考えています」
たとえば、複雑な機器の取扱説明書の内容は、パッと見てわかりやすいように要点を押さえたり写真を載せたりしてアレンジし、A4用紙1枚の資料にまとめてみる。
一日のあいだに似た内容の問い合わせが何回か寄せられていたら、きっと同じことで困っている人も多いはず。わざわざ質問に来てもらう時間を省けるように、翌日までに従業員が確認できる専用ホームページにFAQ集をつくって案内しておく。
「 もっとこうあれば便利になるんじゃないかと、ビジネスコンシェルジュたちは日々アンテナを張って改善を重ねています。まだ認知度は低いですが、最近ではTVや雑誌にも取り上げられはじめていて。これから益々、ビジネスコンシェルジュという仕事が世の中に認知されていってほしいなと思っています」
ここまで聞いてきた仕事のほかにも、来訪者や代表電話に対応する「受付」や、郵便・宅配便を整理して各部署に届ける「メールルーム」、営業のための資料づくりをサポートする「デザインリメイク」といった仕事もある。
「いずれも、人のサポートをしたいという人にとっては、活躍できる場だと思います。今回応募してくれた方のやりたいことや働き方の希望を伺ったうえで、その方にあったクライアント先での仕事を紹介して、いいマッチングにつなげたいです」
今度は、ビジネスコンシェルジュとして働く人にも話を聞く。
品川シーズンテラス内のコクヨ株式会社で、ビジネスコンシェルジュリーダーを務めているのが川城さん。
現在は主に業務の振り分けや指示、コクヨ&パートナーズ本社にいる上司への情報共有などを行っている。
クライアントごとに、川城さんのようなリーダーを含め2~4名のビジネスコンシェルジュが駐在しているそう。
「私は前職で接客経験があり、転職してもお客さまと接する仕事をしたいなと思っていて。福利厚生の面から考えても、コクヨ&パートナーズは育休・産休の制度がしっかりしていたので、応募を決めました」
2015年に入社してから約1年間は、常駐先の企業で代表電話対応や受付など対外的な業務を担当。
その後産休・育休を経て2017年秋から復帰。現在は、従業員の問い合わせ対応やサポートをメインに、時短勤務で働いている。
ビジネスコンシェルジュは、日々どんなふうに働くことになるのだろう。
「ここでは、朝出社したらまずメンバーと朝会を開き、その日の流れを共有します。そのあと、従業員の方がお客さまにお渡しする手土産を準備・発注したり、最新のビジネス記事の中から注目のものを選んでデジタルサイネージにアップしたり。問い合わせの集計などもしていきます」
そうした日々の業務に加えて、従業員から寄せられる問い合わせにもその都度対応していく。
ただ、これらはあくまで一例。取り組む業務は企業ごとに異なるし、役割によっても仕事内容は変わってくる。
「ビジネスコンシェルジュのどの仕事でも大事になるのは、従業員の方がまだ気づいていないような困りごとを先に見つけ、解決していくことです」
「いつのまにか仕事がしやすくなっている。そんな環境をつくれたらと、いつも考えながら業務にあたっています」
一例として川城さんが話してくれたのは、文房具の貸し出し状況を改善したときのこと。
「従業員の方たちが使う文房具の置き場があって。その場で使うか、借りて持ち出せるようになっているんですね」
川城さんたちが毎日備品をチェックしていると、使い手が借りたままなのか、数が不足しているものが多かった。
「そうすると、その場で使いたいのに使えない人が出てきてしまいます。なので、普段どういうふうに使っているかを観察したり、よく使う文房具や使い方で困っていることについてヒアリングをしたりしました」
見聞きしたことを踏まえて川城さんたちが考えたのが、コンパクトな手持ちバッグにハサミやカッター、カッターマット、ホチキスなど使用頻度の高い文房具一式をまとめたセット。
長時間を要する作業をしたい人に向けたもので、それさえあれば大抵の制作に必要な道具が揃い、使い勝手がいい。
何より、対象を分けることで、その場ですぐに使いたい人の文房具が足りなくなるという状況を解消できた。
「私たちビジネスコンシェルジュは基本的に専用のスペース内で仕事をしますが、それだけだと気づけないことがきっとある。だから、自主的に動いてオフィスの中を見るようにしたり、何気ない会話や挨拶も積極的にしたりしています」
コミュニケーションを通じて、困りごとの種に気づく。気づいたら、改善に向けたアイデアを形にしてみる。
それを繰り返すことによって、働く環境全体にも少しずつよい雰囲気が生まれていく。
「以前、本の貸し出しサービスをもっと活用してもらおうと、従業員の方が購入してほしい本に投票できる仕組みをつくったんです」
最初は手づくりのデータを印刷した紙を貼り出していたのを、見やすいようにとデザインされたボードに変更。
さらに、まわりの景色に同化しすぎず、なおかつ景観を損ねない程度にベース色を毎月変えているそう。設置場所もどこがいいか何度も移動させてみた。
「まだ試行錯誤の途中ですが、少しずつ成果は出てきていると感じています。メンバーも前向きな考えの人が多く、常によくしていこうという気持ちで取り組んでいるので、日々充実感があって。仕事も子育ても家のことも、全力投球できています」
一緒に働く人たちとのチームワークが大切だと話すのは、現在マネージャーを務める鈴木さん。
入社10年目で、以前は川城さんと同じ現場で働いていたことも。今は、ビジネスコンシェルジュたちの業務設計や管理などを行っている。
「ビジネスコンシェルジュにとって大事なのは、一緒に働くメンバーとも、常駐先の総務担当者の方とも、些細なことまで意思疎通をしっかりすること。そういう関係性ができてはじめて仕事が円滑に進むし、お客さまから高い評価をいただけると思うんです」
コクヨ&パートナーズの一員でありながら異なる組織の人たちと毎日顔をあわせて働くのは、新しい会社に転職したような感覚なんだそう。
「クライアントによって職場の雰囲気や従業員の方のカラーも異なります。スピーディな回答が求められるところもあれば、じっくり丁寧に説明したほうがよろこばれる企業もある。最初はとにかく総務部の方たちとのやり取りから、どんなことが求められているか吸収するようにしていましたね」
「もちろんはじめのうちは不慣れなこともあります。でも、少しずつ名前と顔を覚えてもらえたり、個人宛てに相談してくれることもあったり。そのよろこびのほうが勝るかな」
鈴木さんは入社からこれまで、外資系IT企業やマスコミなど複数の常駐先で、ビジネスコンシェルジュとして働いてきた。
立場も、ビジネスコンシェルジュの一メンバーから、リーダー、マネージャーまで経験している。
コクヨ&パートナーズには、鈴木さんのように契約社員からスタートして、正社員へステップアップしている人も多いという。
「私も入社当時は、相手に分かりやすく伝えるための話し方を工夫したり、従業員の方の困りごとをどう見つけて改善していけばいいかを常に考えたり、毎日学ぶことばかりでした」
「そういうことを実践で学べたのがよかったですね。同じコクヨ&パートナーズのチームメンバーの力を借りてがむしゃらにやっているうちに、自然と自分にできることの幅が広がってきたと感じています」
これから加わる人も、まずは現場ごとにリーダーからOJTで仕事を教わっていくことになるそう。そのほかにも、本社で行う体験型・ディスカッション形式などの研修もあるとのこと。
最後に、ビジネスコンシェルジュにはどんな人が向いていると思いますか?
「人のために何かすることによろこびを感じる人ですね。言われたことだけをやるのではなく、ちょっと気の利いたことまでしたくなる。そういうことを楽しめる人にとっては、楽しくてしょうがないお仕事だと思います」
一歩先をゆく気づきと工夫を大切にしている人たちの、前向きな姿勢が印象的でした。
(2019/02/26 取材 後藤響子)