山のサハラさん2020/8/1
8月1日 土曜日
「ここの山小屋の小屋番さん、なんだかみんな優しいよね」
お客さんにそう言われ、少し考えてから、「多分、うまいものを食べているからです」と笑って答えた。
小屋番の内飯は、お客さんに出す食事とは別につくる。
客食用の食材から残った切れ端なんかも使い、高い牛肉や日持ちしない魚はほとんど食べられない。けれども、一食一食、うまいものを食べてやろうという気概を持って、有るものでこしらえます。
それに、ラッキーなことに、わたし達小屋番が〝おやっさん〟〝おかみさん〟と呼んでいる山小屋の先代が麓の畑で野菜を育てている。
春には三つ葉、春菊
夏にはズッキーニ、トマト、きゅうり
秋にはかぼちゃ、じゃがいも
冬にはネギ、白菜
他にも多種多様な野菜、山菜やハーブ、ブルーベリーや豆類といった、季節の贈り物が山へと届きます。(ヘリコプターか、歩荷で)
山小屋で働きはじめるまでは、料理なんてしなかった。 実家はコンビニを営んでいて、冷蔵庫には常に食べ物がありました。
けれどもここ山小屋では、料理をしないと仕事もできなければ、美味しい食事にもありつけない。
さて、今晩は何を食べようか。
厨房には、傷みはじめたりんごや朝飯に残った味噌汁など。りんごをすって煮詰めたら、醤油ベースのソースにし、チキンソテーにかけてみる。
味噌汁は具をザルにあけてみじん切り。トマト缶や挽き肉と合わせてミートスパゲティにしました。
明日もほどほど、優しくありたい。
「山のサハラさん」は、日本仕事百貨のメールマガジンから生まれたコンテンツ。全国を旅するように働く佐原真理子さんが綴る日記です。